三省堂 大辞林 |
もうもく まう― 0 【盲目】
物語要素事典 |
盲目
★1.敵のために眼をつぶされる。
『オデュッセイア』第9巻 一つ目の巨人族キュクロプスの一人ポリュペモスは、オデュッセウスと部下たちを洞窟に閉じ込め、朝夕二人ずつ食った。オデュッセウスたちは力を合わせ、丸太を尖らせて隠し、美酒をポリュペモスに与えて眠らせた。そして丸太をポリュペモスの一つ目に突き刺し、盲目にした→〔名前〕2a。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第4章 オリオンが、オイノピオン王の娘に求婚する。しかし王はオリオンを酔わせ、眠っている間に彼を盲目にし、海辺に捨てた〔*オリオンは太陽の昇る方向へ向かい、太陽光線によって治癒せられ、視力を回復した〕。
『今昔物語集』巻4-4 クナラ太子を憎む継母は、夫阿育王の歯印を盗み出し、「太子の両眼をえぐり捨てよ」との宣旨を偽造する。太子は、「父の宣旨にそむくわけにはいかぬ」と言い、賎民を召して自分の眼をえぐり取らせる。
『士師記』第16章 サムソンは愛人デリラの裏切りによって、ペリシテ人に捕えられる。サムソンは両眼をえぐられ、青銅の足かせで獄屋につながれる。
『リア王』(シェイクスピア) グロスター伯は、老リア王がゴネルリ・リーガン姉妹から迫害されていることを知って、王を救おうとする。しかしリーガンの夫コーンウォール公によって両眼をえぐられる。
*息をかけられて盲目になる→〔息〕2の『ファウスト』(ゲーテ)第2部第5幕。
*鳥に両眼をつつき出されて盲目になる→〔継子〕1の『灰かぶり』(グリム)KHM21・〔盲目〕8の『発心集』巻5-1。
『オイディプス王』(ソポクレス) オイディプスは旅の途中に出会った男を、実の父ライオス王と知らずに殺す。また、ライオス王の妃イオカステを、実の母と知らぬまま自分の妻にする。やがてそのことを知ったイオカステは縊死し、オイディプスは母イオカステの着物から抜き取った黄金の留針で、自分の両眼を突き刺す。
『景清』(幸若舞) 源頼朝に赦免された悪七兵衛景清は、「頼朝を見るたびに『主君の敵』との思いがわきおこるから」と言って、その場で自らの両眼をえぐり出す〔*『出世景清』(近松門左衛門)5段目では、景清は、頼朝の後姿を見て反射的に斬りつけようとしてわれに返り、「これも両眼あるゆえ」と、眼をえぐる〕。
『春琴抄』(谷崎潤一郎) 美貌の盲人春琴は、火傷を負って醜く化した顔を、佐助にだけは見られたくないと言う(*→〔顔〕2)。佐助は、自ら針で両眼を突いて失明する。春琴は「よく私の心を察してくれた」と感謝し、佐助は「そのお言葉を伺いました嬉しさは、両眼を失うたぐらいには換えられませぬ」と喜ぶ。盲目の師弟は相擁して泣く。
★3a.男が、神聖な女性の裸体を見たために、罰を受けて盲目になる。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第6章 テイレシアスは、女神アテナの全裸の姿を見たために盲目にされた〔*ヘラの怒りをかって盲目にされたともいう〕→〔性交〕8。
ゴダイヴァ夫人(レディー・ゴダイヴァ)の伝説 十一世紀のこと。コベントリーの領主レオフリックが、領民に重税を課した。レオフリックの妻レディー・ゴダイヴァが、課税を取りやめるよう懇願し、レオフリックは「お前が白昼全裸で馬に乗って、町を廻るならば、取りやめよう」と答える。このことを知った領民たちは家に閉じこもり、レディー・ゴダイヴァの裸を見ないようにするが、仕立屋のトム一人は、のぞき見をして、目がつぶれた。
*神に仕えることとなった処女の姿を見て、失明する→〔禁忌〕4の『大鏡』「三条院」。
*神の姿をのぞき見た片目が、失明する→〔のぞき見〕1cの『英雄伝』(プルタルコス)「アレクサンドロス」3。
*女が、異形の男を恐れて目を閉じたため、盲目の子を産む→〔妊娠〕7の『マハーバーラタ』第1巻「序章の巻」。
巻機山の伝説 男が夜の巻機山で迷い、一軒家に宿を請う。その家にいた山姫が、「私も里へ下りたいから」と言って道案内し、男は山姫を背負って山を下りる。山姫は「背負っている間は、私を見るな」と禁ずる。麓の村の灯りが見えた所で、男は横目でちらっと山姫を見てしまう。山姫は消え、男の片目は横にらみのまま、もとにもどらなくなる。以来、男の家には代々一人は斜視の子供が生まれるようになった(新潟県南魚沼郡塩沢町)。
★3c.男が、女性の犯されるありさまを見たために、仕返しに目をえぐられる。
『月澹荘綺譚』(三島由紀夫) 大澤侯爵家の嫡男照茂は、行為は他人に命じてやらせ、自分は静かにそれを見て楽しむという性格だった。彼は結婚する前年の夏、別荘月澹荘に滞在中、グミを摘む白痴の村娘君江を、別荘番の勝造に命じて犯させた。照茂は、犯される君江の顔をじっと見つめていた。翌年、照茂は君江に崖から突き落とされて死んだ。彼の両眼はえぐられて、グミが詰めこまれていた。
『沙石集』巻7-16 ある男が、金泥で書写した大般若経を焼き、金泥を取ろうとしていたところ、両眼が抜けて火鉢に落ち入った。
『トビト書』(旧約聖書外典) トビトは律法を守る人であり、同胞の死体が放置されているのを見ると、それを手厚く埋葬していた。ある年のペンテコステの夜、トビトは、殺されて広場に棄てられた同胞の遺骸を葬った後、死者に触れた身体で家に入るのをはばかり、庭の塀の傍らに床をとった。すると雀がトビトの両眼に糞を落とし、彼は失明した→〔道連れ〕1c。
★5.盲目ゆえ誤解する。
安寿塚の伝説 山椒太夫のもとから解放された安寿姫と逗子王丸は、母を尋ねて佐渡へやって来る。安寿姫が下男一人を連れて先行し、母を捜し出すが、母は盲目になっていた。それまで村の悪童たちが「おれは厨子王丸だ」「安寿姫だ」と言って、何度も母をだましていたので、母は「またしても悪童のいたずらか」と怒り、杖で打って打って、安寿姫を殺してしまった(新潟県佐渡郡相川町)→〔涙〕3。
『街の灯』(チャップリン) 浮浪者チャーリーが、盲目の花売り娘から一輪の花を買う。その直後に一人の紳士が高級車に乗りドアを閉めて走り去ったので、音だけを聞いた娘は、チャーリーを大金持ちと勘違いする。チャーリーは娘のために懸命に働き、目の手術費用を工面する。
★6.盲人をだます。
『赤い部屋』(江戸川乱歩) 「私」は退屈しのぎのため、法律に触れぬ殺人を考案し実行する。ひねくれた強情者の盲人按摩が下水工事の穴の側を通るので、「私」は「ソラ危ない。左へ寄れ」と、本当のことをわざと冗談めかして言う。按摩はからかわれたと思い、「私」の言葉に逆らって右へ寄り、穴に落ちて死ぬ。
『妹背山婦女庭訓』2段目「芝六住家」 盲目の天智天皇が猿沢の池を訪れている時、蘇我入鹿が謀叛を起こす。忠臣藤原淡海が、「御所へ帰りましょう」といつわって、天皇を猟師芝六の家へかくまう。天皇はあばら屋を宮中と信じ、眼病平癒のために管弦を奏するよう命ずる。芝六らはやむをえず万歳を歌い舞う。
『創世記』第27章 老いて盲目になった父イサクは、長子エサウに財産を相続させるため、祝福の言葉を与えようとする。しかし母リベカは、エサウよりもその弟ヤコブをかわいがっていたので、ヤコブを代わりに父イサクの所へ行かせる。目の見えぬ父イサクは、ヤコブを長子エサウと思って祝福する。ヤコブは弟でありながら、兄エサウの主人となる。
『東海道中膝栗毛』(十返舎一九)3編下「塩井川」 座頭猿市が、仲間の座頭犬市を背負って塩井川を渡ろうとする。弥次郎兵衛が犬市の代わりにおぶさり、猿市は気づかぬまま弥次郎兵衛を対岸へ運ぶ。犬市が「早く渡せ」と呼ぶので、猿市は不思議に思い引き返すと、今度は喜多八がおぶさる。猿市はだまされたと気づき、喜多八を川の中へ落とす。また、掛川の茶店で猿市と犬市が酒を飲んでいるのを、喜多八が横取りする。猿市と犬市は「酒をこぼしたらしい」「お前一人で飲むな」とのやりとりの後、茶店の亭主に「我等を盲人と侮ってごまかしたな」と抗議するが、子供が一部始終を見ていて、喜多八の仕業と教える〔*『どぶかっちり』(狂言)に類話〕。
『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』第1話 少年ラーサロは、主人の盲人が祈祷をして人々から得る一ブランカ銅貨を、半ブランカ銅貨にすりかえて渡したり、盲人が持つ壺の中の葡萄酒をストローで盗み飲みしたりする。ある日、盲人がパンにはさんだ腸詰めをラーサロが食べてしまい、代わりに大根を入れたので、盲人は怒りラーサロを打ち懲らす。ラーサロは仕返しに、盲人が小川を飛び越す時、石柱に激突するように仕組んで逃げる。
『入鹿』(幸若舞) 入鹿暗殺を謀る鎌足は、病んで盲目になったふりをし、入鹿を油断させる。二歳の我が子が囲炉裏に落ちたのを、鎌足はあくまでも見えぬ演技をして助けず、見殺しにする。その場にいあわせた入鹿は、「鎌足は本当に盲目なのだ」と思って心を許し、ついに討たれる。
『鸚鵡七十話』第12話 バラモンの妻が、「夫を盲目にして、情夫と自由に逢引きしたい」と女神マーヤーヴァティーに願う。それを知ったバラモンは盲目のふりをし、妻は安心して情夫を家に引き入れる。バラモンは「盲人には杖がいる」と言って妻から頑丈な杖をもらい、目の前で愛欲にふける妻と情夫を打ち殺す。
『行人』(夏目漱石)「帰ってから」12~18 青年が召使いと関係を持ち、結婚を誓うもののまもなく後悔して破約する。女は暇を取って家を去る。二十数年後、男と女とは思いがけず劇場で再会するが、女はその時盲目になっており、男に気づかなかった〔*父が二郎たちに語る物語〕。
『発心集』巻5-1 但馬守の子国輔が、京に愛人を残したまま父に従って任地に行き、数年を経て帰京する。愛人を探し出すと、彼女は両眼を失っていた。かつて病み臥し息絶えた彼女は野に捨てられ、しばらくして蘇生したが、その間に烏が両眼をついばんだのだった。
『山椒大夫』(森鴎外) 丹後の国守となった厨子王が、母を捜して佐渡へ渡る。母は盲目になり、粟をついばむ雀を追っている。厨子王の持つ守り本尊の力で母の目は開き、親子は再会をよろこぶ(*→〔盲目〕5の安寿塚の伝説では、尋ねて来た安寿を、盲目の母が杖で打ち殺す)。
『舜子変』(敦煌変文) 継母に憎まれ、井戸に埋められそうになった舜は、他郷へ逃れ、十年ほどがたつ。舜は市場へ米を売りに行って、零落した盲目の父瞽叟と再会し、舌で父の眼をなめると父の眼は開いた。
『ラプンツェル』(グリム)KHM12 少女ラプンツェルは、魔法使いの女によって荒野へ追放される。夫である王子は絶望して塔から飛び降り、からたちのトゲで眼をつぶして森をさまよう。ラプンツェルは産み落とした男女の双子と暮らすが、数年後に、荒野に迷いこんだ王子を見つけ、抱きついて泣く。その涙が王子の眼に入ると彼の眼は開く→〔髪〕3b。
*→〔涙〕1の『お月お星(お銀小銀)』(昔話)。
★10.盲目の夫と苦労をともにする妻。
『マハーバーラタ』第1巻「序章の巻」 ヴィチトラヴィーリヤ王の妃アンビカーが産んだ息子ドリタラーシュトラは、生まれつき盲目だった。ドリタラーシュトラは成人後、隣国の王の娘ガンダーリーを妃とした。ガンダーリーは嫁ぐに際し、「自分も盲目の夫と同じく、目を使わないようにしよう」と決心し、幾重にも布で目隠しをする。彼女は生涯、目隠しを取らなかった。
★11.盲人国。
『盲人国』(ウェルズ,H・G・) アンデス山脈登山隊の案内人ヌネスは、雪の斜面を滑り落ちて盲人国に到る。ヌネスは、「盲人国では片目の者でも王様だ」との古諺を思い出し、盲人たちを支配しようと試みる。だが、彼らの聴覚・嗅覚・触覚などの異様な鋭さに、ヌネスは自分の無力を思い知らされる。ヌネスは盲人の娘と恋をし、手術を受けて盲目になることに同意する。しかし手術の前日、ヌネスは盲人国から逃げ出す。
『座頭市物語』(三隅研次) 盲目の座頭市は旅の途中、仕込み杖による居合抜きの腕を見込まれて、下総の飯岡助五郎一家の客分になる。ある日、座頭市は釣りに出かけ、平手造酒(みき)と知り合うが、彼は笹川繁造一家の用心棒だった。やがて飯岡一家と笹川一家の喧嘩(でいり)が始まる。座頭市は平手造酒と決闘し、彼を斬らねばならなかった。座頭市は「平手さんを弔い、仕込み杖も一緒に埋めてくれ」と寺に頼み、彼を慕う美女おたねを振り捨てて、また旅に出る〔*続編以降では、座頭市は捨てたはずの仕込み杖を再び手にして、多くの敵と戦う〕。
*闇の中の盲人→〔闇〕4の『暗くなるまで待って』(ヤング)。
*盲目の子を捨てる・捨てようとする→〔子捨て〕2の『蝉丸』(能)・〔背中〕1aの『夢十夜』(夏目漱石)第3夜。
*盲目の人を開眼させる→〔唾〕1の『マルコによる福音書』第8章。
*いったん盲目になるが、血の力で開眼する→〔血〕2。
ウィキペディア |
視覚障害者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/01/16 08:27 UTC 版)
(盲目 から転送)
視覚障害者(しかくしょうがいしゃ)とは視力が全く無い、または視機能が弱く、日常生活や就労などの場で、不自由を強いられる人たちのことである。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
- ^ http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/shintai/06/index.html 平成18年身体障害児・者実態調査結果 24ページ
- ^ http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/shintai/06/index.html 平成18年身体障害児・者実態調査結果
- ^ 風が吹けば桶屋が儲かるの例でわかるように、盲人が多く三味線弾きを生業としていた。
- ^ 金貸しを賤業とする考え方は西洋にもあり、特にユダヤ人が差別の対象となった。『ヴェニスの商人』が、その典型的な例である。
- ^ 特に、屋内で、入口や着席した位置を起点にして説明する際に有効である。
- ^ http://www.sasaki-kensho.jp/kokkai/080225-100000.html ※リンク先の記事では「新旧五千円紙幣の横幅は同じ」と受け取られる表現となっているが、五千円紙幣E号券(2004年発行)は横幅がさらに1ミリ拡張されたため誤りである
- ^ http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2394063/2951624
- ^ ポリティカル・コレクトネス
品詞の分類
- 盲目の天才ピアニスト・辻井の葛藤と挑戦TV LIFE
- 工信部:新興産業に対する盲目的投資を懸念|政策|ChinaPressChina Press
- 盲目男性が時速292キロで運転、トルコでギネス記録更新ロイター
盲目に関係した商品