男性遍歴
★.数名あるいはそれ以上の男たちと関係を持ち、成長する、または破滅する女。
『あらくれ』(徳田秋声) 農家の娘お島は、養父母の決めた結婚相手を嫌い、祝言の晩に家を飛び出す。お島は神田の缶詰屋の後妻になり、山国の温泉宿浜屋の愛人になり、再び東京へ戻って裁縫師小野田と結婚し、商売を始めて職人を雇うまでになる。しかし夫婦仲はうまくいかず、お島は浜屋を思い出して温泉宿を訪れるが、浜屋は先頃事故死していた。お島は、気に入りの職人を宿へ呼び寄せ、「この男と一緒に店をやろうか」と考える。
『好色一代女』(井原西鶴) 好色庵に住む老女は、13歳で青侍と初恋を経験し、16歳で親の負債50両のため遊女になり、13年勤めた。その後も諸所へ奉公し、多くの男と関係を持って、65歳に達した。ある時、過去に堕胎した水子95~96体を幻視し、また、大雲寺の五百羅漢像が皆、かつて馴染んだ男たちの顔に見えたりした。老女は、生涯に1万余の男と関わったことを恥じ、以後、仏の道に入った。
『とはずがたり』(後深草院二条) 二条は14歳の春から、15歳年上の後深草院の寵愛を受けるようになるが、院の胤を懐妊中に、「雪の曙(=西園寺実兼)」との交情が始まり、二条は相次いで院の子・「雪の曙」の子を産む。さらに、院の了解のもと、近衛大殿(=鷹司兼平)や亀山院(=院の同母弟)とも関係を持ち、高僧「有明の月(=院の異母弟性助法親王?)」との間には2子をもうける〔*二条は26歳で院の御所を退き、31歳頃に出家して、32歳から諸国を旅する〕。
『ナナ』(ゾラ) 18歳でデビューした女優ナナは、美貌と豊満な肉体とを武器に、銀行家・軍人・伯爵など十指に余る男たちと次々に関係を持ち、さらには街娼までする。ナナは大邸宅に住んで贅沢な生活をし、男たちは、ある者は破産し、ある者は公金を盗んで投獄され、ある者は自殺する〔*後、ナナは20代初めに天然痘で死ぬ〕。
『南総里見八犬伝』第6輯巻之1第52回~第8輯巻之8下套第90回 30代後半の船虫は、鴎尻の並四郎と夫婦になって悪事を働くが、並四郎は犬田小文吾に殺される。次いで船虫は、妖猫の化身である贋赤岩一角の後妻になるが、贋一角は犬村大角に討たれる。次の夫酒テン二は犬川荘助に殺され、最後の夫媼内(おばない)と船虫は、犬士たちによって木に縛られ、牛の角で突き殺される。
『ファニー・ヒル』(クレランド) 15歳で孤児になった「私(ファニー・ヒル)」は、ロンドンへ出、だまされて売春宿へ引き入れられる。そこで見た美青年チャールズに恋し、処女を捧げるが、チャールズは父の手で外国へやられる。「私」はH氏の囲われ者になり、彼の従僕と関係を持ち、その他さまざまな性愛を体験した後に、60歳の紳士と同棲する。紳士の死後、多額の遺産を得た19歳たらずの「私」は、故郷へ帰る途中、チャールズと再会する。
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