三省堂 大辞林 |
かぞ 【▽父】
しし 【▽父】
ち 【▽父】
ちち 2 1 【父】
⇔母
「二児の―となる」
(2)新しい物事の開拓者。先駆者。また、偉大な貢献をした人。
「近代経済学の―」「独立の―」
(3)キリスト教で、神の呼称。三位一体内の子キリストに対して父。
» (成句)父父たれば子も子たり
» (成句)父の恩は山より高し
ちゃん 1 【▽父】
てて 【▽父】
映画情報 |
父
| 原題: | |
| 製作国: | 日本 |
| 製作年: | 1988 |
| 配給: | 松竹 |
| スタッフ | |
| 監督: | 木下恵介 キノシタケイスケ |
| 製作: | 大谷信義 オオタニノブヨシ |
| 静間順二 | |
| 高橋松男 タカハシマツオ | |
| プロデューサー: | 脇田雅丈 |
| 伊藤秀裕 イトウヒデヒロ | |
| 藤本潔 フジモトキヨシ | |
| 脚本: | 木下恵介 キノシタケイスケ |
| 企画: | 高橋松男 タカハシマツオ |
| 撮影: | 岡崎宏三 オカザキコウゾウ |
| 音楽: | 木下忠司 キノシタタダシ |
| 美術: | 芳野尹孝 ヨシノノブタカ |
| 編集: | 杉原よ志 スギハラヨシ |
| 録音: | 島田満 シマダミツル |
| スチール: | 金田正 カネダタダシ |
| 助監督: | 横堀幸司 ヨコボリコウジ |
| 照明: | 佐久間丈彦 サクマタケヒコ |
| キャスト(役名) |
| 板東英二 バンドウエイジ (日暮菊太郎) |
| 太地喜和子 タイチキワコ (妻・八重) |
| 野々村真 ノノムラマコト (大次郎) |
| 斉藤ゆう子 サイトウユウコ (美枝) |
| 森口瑤子 モリグチヨウコ (明子) |
| チャールズ・ボイド (チャールズ) |
| 玉井碧 (日暮寿美) |
| 水木涼子 ミズキリョウコ (菊太郎の叔母) |
| 加藤盛大 カトウ (大次郎の子供の時A) |
| 武田佑介 タケダユウスケ (大次郎の子供の時B) |
| 草野大悟 クサノダイゴ (光二郎) |
| 今福正雄 イマフクマサオ今福将雄 (菊太郎の叔父) |
| 曽我廼家文童 (音楽教室の先生) |
| 宮尾すすむ ミヤオススム (光二郎の義兄) |
| 芦屋小雁 アシヤコガン (川名) |
| 菅井きん スガイキン (マツ) |
| 解説 |
| 現実感の乏しい夢を追い続ける父親と、それにふり回される家族の姿を描く。牧村裕の作文「父」を元に、「二十四の瞳(1987)」の木下恵介が脚本を執筆。監督は「新・喜びも悲しみも幾歳月」の木下、撮影は「星の牧場」の岡崎宏三がそれぞれ担当。 |
| ストーリー※ストーリーの結末まで記載されていますので、ご注意ください |
| 日暮菊太郎は妻子があり、不惑の年齢を迎えてもなお見果てぬ夢を追い続けていた。地元の鹿児島市で県会議員選挙に立候補するが落選し、家族そろって熊本へ移った。そこでは女子プロレスを興行するが、これもうまくはいかない。家庭を顧みない夫に愛想をつかして、妻の八重はついに離婚を決意。長男・大次郎と共に東京でレストランを始めた。菊太郎の母マツも息子のやることには腹をたてていたが、どうにもならなかった。大阪からブラジルへと渡った菊太郎はチャールズという黒人歌手を連れて帰ってきた。そして自分はプロモーター気取りで彼に「人生劇場」や「お富さん」など日本の歌をキャバレーやナイトクラブで歌わせている。八重と大次郎は鹿児島へ戻ることにしたが、菊太郎は相変わらずおでん屋を始めたかと思うとハワイへ行ったり、と忙しい。おはら祭りの日、マツが踊りに参加するというので八重と大次郎は見に行ったが、二人は人ごみの中に菊太郎の姿を見たような気がしたのだった。 |
物語要素事典 |
父
『アーサーの死』(マロリー)第21巻第1章~第4章 アーサー王と異父姉マーゴースとの間に生まれたモードレッドは、父アーサーがフランスへ遠征中に、勝手にイギリスの王となり、また父王の妃グィネヴィアと強引に結婚しようとする(*グィネヴィアはこれを拒否してロンドン塔に立てこもる)。反乱の知らせを受けて帰国したアーサーの軍と、モードレッドの軍とが闘い、アーサーはモードレッドと相討ちをして、二人とも死ぬ。
『サムエル記』下・第13~18章 ダビデ王の子アブサロムは、妹タマルが異母兄アムノンに辱められたことに憤り、アムノンを殺す。アブサロムは、やがて王と称して父ダビデと敵対する。エフライムの森の決戦で、アブサロムは敗れ死ぬ。
★2a.父殺し。
『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー) フョードル・カラマーゾフには三人の息子と一人の私生児がいた。秀才の次男イワンは、「神がなければすべてが許される」という虚無的な理論を語り、私生児スメルジャコフが、イワンの理論にそそのかされて父フョードル・カラマーゾフを殺す。それはイワンが心の底で望んでいたことだった。
『今昔物語集』巻3-27 悪友提婆達多が阿闍世王をそそのかし、「君は父王を殺して新王となれ。私は仏を殺して新仏となろう」と言う。阿闍世王は父頻婆沙羅王を捕らえ、七重の室内に幽閉して殺す。
★2b.父になろうとする男を殺す。
『午後の曳航』(三島由紀夫) 十三歳の登は、未亡人である母房子と二等航海士塚崎竜二の情事を、隣室の覗き穴から見て恍惚とする。彼は、海の男竜二を英雄視し、あこがれる。しかし竜二は海を捨てて陸に上がり、房子と結婚して、登の父親になろうとする。父親としてのふるまいをし始める竜二を登は嫌悪し、仲間の少年たち数人とはかって、竜二を殺す。
★3.父と息子とが、同じ女と関係を持つ。
『苦の世界』(宇野浩二)その2 鶴丸に金がないので、彼の愛人である芸者「あさ顔」は、他の男に身うけされる。名古屋駅の改札口に「あさ顔」を迎えに来た男を鶴丸が遠目に見ると、何とそれは彼の父親だった。
『源氏物語』「桐壺」「若紫」「紅葉賀」 桐壺帝は、藤壺女御(=先帝の四の宮)が十六歳の頃、彼女を後宮に入れる。それから数年後に桐壺帝の息子光源氏が、藤壺女御(*光源氏にとっては継母にあたる)と関係を持ち、光源氏十九歳・藤壺女御二十四歳の年の二月十余日、秘密の子(=後の冷泉帝)が誕生する〔*→〔百足〕4の『夢の浮橋』(谷崎潤一郎)は、そのタイトルも内容も『源氏物語』にもとづいている〕。
『ドン・カルロ』(ヴェルディ) スペイン王子ドン・カルロは、婚約者フランス王女エリザベッタを一目見ようとして出かけ、フォンテンブローの森で道に迷ったエリザベッタと偶然出会い、言葉をかわす。ところがエリザベッタの結婚相手は、突然、王子ではなくその父王フィリッポに変更されてしまう〔*後、父王フィリッポと王子ドン・カルロは、異端者の宗教裁判を巡って対立する〕。
『初恋』(ツルゲーネフ) 十六歳の「わたし(ヴラジーミル・ペトローヴィッチ)」は、二十一歳の公爵令嬢ジナイーダに恋をするが、彼女には他に愛する人がいるようだった。やがて「わたし」は、自分の父がジナイーダの愛人であることを知った〔*しかし、ほどなく父は四十二歳で急死し、ジナイーダも別の男と結婚した後、出産のため死んだ〕。
*左大将とその息子が、同じ女(対の上)と関係を持つ→〔母〕6の『有明けの別れ』巻1。
★4.父に及ばぬ息子。
『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要第1章 幽閉されたダイダロスは空を飛ぶ翼を作り、息子イカロスとともに脱出する。しかしイカロスは父の注意にもかかわらず、高く飛びすぎたために、太陽熱で翼の膠が溶けて海に墜死する。
『変身物語』(オヴィディウス)巻2 太陽神の息子パエトンは、父に懇願して、一日だけ父の代わりに黄金作りの馬車に乗って空を駆ける。しかし軌道を踏み外し、天も地も炎に焼かれる。ユピテル(ゼウス)が雷電を投げ下ろし、パエトンは死んでエリダノス川に墜落する〔*→〔海〕1の『パンタグリュエル物語』(ラブレー)第二之書第2章に異伝〕。
★5.父の霊・父祖の霊。
『アエネーイス』(ヴェルギリウス)第5巻 トロイア陥落後、アエネーアスは部下たちとともに海上を彷徨し、新国家をうち建てるべきイタリアの地に船を向ける。夜、亡父アンキーセスの霊がアエネーアスのもとに現れ、「イタリアの地に上陸したら、巫女シビュラを案内人として地下界に降り、わしに会いに来るがよい」と告げる→〔冥界行〕3。
『大鏡』「師輔伝」 冷泉帝は物の怪にとりつかれており、行幸などはどうなることかと人々が心配した。しかし大嘗会の御禊の折には、立派に行幸された。これは、祖父にあたる九条殿(師輔)の霊が、帝の後ろを抱いて御輿の中に付き添っていたのだった。
『源氏物語』「明石」 三月上巳の日以来、須磨の浦には暴風雨が続き、光源氏のいる寝殿の廊にも落雷がある。十三日の暁近く、光源氏の夢に亡父桐壺院が現れ、「住吉明神の導きのままに、はやくこの須磨の浦を去れ」と告げる。その日、明石入道が舟で迎えに来て、光源氏は明石へ移る。
『今昔物語集』巻10-24 漢代の人賈誼は、息子の薪が幼い頃に死んだ。薪が父賈誼の墓前で学問の成就を願うと、賈誼の霊が現れ、以後十五年に渡って毎夜墓前で薪に学問を授けた。
★6a.父と娘の性関係。
『魚服記』(太宰治) 十五歳の少女スワは、初冬の夜、眠っているうちに炭焼きの父に犯され、滝にとびこむ→〔魚〕4。
『好色敗毒散』巻1-1「長崎船」 長崎のにわか分限者角左衛門が、難波の色里の太夫に恋着して身請けする。酒宴の席で角左衛門は「かつて貧しかった時代に六歳の娘を手放した。この太夫を見て、娘も生きていればこれぐらいの年恰好、と思ったのが恋の始め」と語る。目前の太夫こそ、角左衛門の別れた娘だった。
『創世記』第19章 ソドムの町から逃れたロトと二人の娘は、山の洞穴に住んだ。そこには男がいなかったので、二人の娘は父親ロトに酒を飲ませて眠らせ、父とともに寝て子を得た。
『土』(長塚節) 鬼怒川西岸の貧農勘次の娘おつぎは十五歳で母を亡くし、以後幼弟与吉や祖父卯平の面倒を見つつ、父とともに田畑を耕す。おつぎが二十歳になった頃、村人の間に、勘次とおつぎの父娘相姦の噂が立つ。
『変身物語』(オヴィディウス)巻10 ミュラは父王キニュラスを恋し、暗闇の中、自らの正体を隠して父王との交わりを重ねる。幾夜かの後、キニュラスは燈火で女を照らし、それが娘ミュラであることを知る。憤ったキニュラスは剣を抜いてミュラを追い、ミュラは曠野へ逃げて、九ヵ月さすらった〔*『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第14章では、娘の名はスミュルナ、父の名はテイアースで、父娘は十二夜の間臥床をともにした、と記す。『神曲』(ダンテ)「地獄篇」第30歌は、ミュラは死後、地獄の第八圏谷第十濠に堕ち、狂乱状態で裸体のまま走り回っている、と記す〕→〔誕生〕1。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第2日第6話 王妃が臨終の床で「私と同じくらい美しい女とでなければ再婚しないでほしい」と請う。王は自分の娘と結婚しようとする。
『ろばの皮』(ペロー) 王妃が臨終の床で「私よりも美しく賢い女となら再婚してもよい」と、王に言い遺す。王は新しい妻を捜すが、条件にかなうのは王自身の娘である王女だけだったので、王は娘と結婚しようとする〔*『千匹皮』(グリム)KHM65では、妃同様の金髪を持つ美女を捜す〕。
★6b.父が娘を溺愛する。
『ゴリオ爺さん』(バルザック) 製麺業で財を築いたゴリオは、妻の死後、愛情をもっぱら二人の娘にそそぎ、莫大な持参金をつけて姉娘を伯爵、妹娘を銀行家に嫁がせる。二人の娘は結婚後もゴリオに金の無心を続け、ゴリオは娘たちの幸福を願って貴重な銀器を売り、年金を解約して金を工面する。やがてゴリオは無一文になり、病に倒れるが、娘たちは見舞いに来ず、臨終にも間に合わない。
『花嫁の父』(ミネリ) 弁護士スタンリーは妻との間に、一人の娘と二人の息子をもうけていた。二十歳になる娘ケイに恋人ができ、娘の希望どおりに華やかな結婚式が行なわれる。新婚夫婦は旅行に出かけ、その夜スタンリーは、娘のいない寂しさをかみしめる。そこへケイが旅先から電話をかけて来たので、スタンリーはたちまち元気を回復し、「結婚しても娘はずっと娘だ」と妻に言う。
『晩春』(小津安二郎) 早くに妻を亡くした初老の大学教授曾宮は、娘紀子(のりこ)と二人暮らしをしている。紀子は適齢期をすぎた二十七歳であるが、結婚したがらず、いつまでも父と二人でいたい、と訴える。しかし結局、曾宮に諭(さと)されて、紀子は見合い結婚をする(*→〔結婚〕3b)。結婚式の夜、帰宅した曾宮は一人でりんごの皮をむく。その手が途中で止まり、彼はうなだれる。
『秋刀魚の味』(小津安二郎) 会社重役の平山は、早くに妻を亡くした。長男は結婚して独立し、家には次男と娘がいる。娘の路子は二十四歳で結婚適齢期だが、平山はまだ路子を手放したくない。ある日平山は、中学生時代の恩師・佐久間先生に会う。先生は今、場末の中華ソバ屋となって、生計を立てている。先生も奥さんを亡くし、一人娘に家事をさせているうち、娘は婚期を逃して、いまだに独身だった。老父と中年娘の二人暮らしを見た平山は、「路子を嫁にやろう」と決心した。
『ロリータ』(ナボコフ) 三十代後半のハンバート・ハンバートは、十代前半の少女ロリータと関係を結ぶ。二人は父娘をよそおってアメリカ各地の自動車旅行を続け、モーテルを転々とする。
『歌行燈』(泉鏡花) 能楽界の御曹司恩地喜多八は、按摩宗山と芸競べをして彼を憤死させる。宗山の娘お袖は父の死後芸者に売られ、流浪の門付けとなった喜多八に巡り合い、舞を教えられる。父の仇である喜多八に、お袖は恋心を抱く→〔宿〕5。
『敵討義女英(かたきうちぎじょのはなぶさ)』(南杣笑楚満人) 小しゅんは若侍岩次郎と恋仲になるが、岩次郎が兄の仇として狙う舟木逸平とは、小しゅんの父竹筍斎のことだった。小しゅんは、「舟木逸平は父の友人で、今宵泊まるから討て」と岩次郎に教え、自分が父の身代わりに座敷に臥して、首を討たれる→〔仇討ち〕2。
『二都物語』(ディケンズ) 非道なサン・テヴレモンド侯爵兄弟が、医師マネットをバスティーユの独房に十八年間幽閉する。マネットは侯爵兄弟とその子孫を告発するが、後にマネットの娘ルーシーの夫となったチャールズは、侯爵の子であった。心ならずもマネットは、愛娘の婿を断頭台に送らねばならなくなる→〔瓜二つ〕1。
『御曹子島渡』(御伽草子) 蝦夷が島のかねひら大王の娘あさひ天女は、御曹子義経と夫婦になる。義経の頼みにより、天女は、父王秘蔵の兵法の巻物を蔵から盗み出す。義経は巻物を書写して島を脱出し、怒ったかねひら大王は天女を八つ裂きにして殺す。
『宇治拾遺物語』巻14-4 唐土の母が、「遣唐使某の子」と書いた札を子の首につけて、海に放つ。子は大魚の背に乗って日本まで運ばれ、難波の浦にいた父に見つけられる。魚に救われたゆえ「魚養」と名づけられた。
『熊野の御本地のさうし』(御伽草子) 摩訶陀国の善財王には千人の后がいたが、そのうちの一人、五衰殿のせんかう女御だけが王子を懐妊する。他の九百九十九人の后が妬んで讒言し、そのため、せんかう女御は山で斬首される。その折、后は王子を産み落とす。王子は山の動物たちや僧(ちけん聖)に養われ、七歳の時に内裏へ参上して、父善財王と対面する。王はせんかう女御の死を悔い悲しむ→〔神〕11。
『古事談』巻6-49 平珍材が美作から上洛する途中、備後国上治郡に寄宿し、郡司の娘を召して腰を打たせているうちに、娘は懐妊した。生まれた子は七歳になった時、郡司に連れられて京の珍材を尋ねて来た。珍材が子を見ると、二位中納言に至るべき相があった〔*『江談抄』第2-26に類話〕。
『山椒大夫』(森鴎外) 厨子王が生まれた年に、父陸奥掾正氏は筑紫の安楽寺へ左遷される。厨子王は十二歳の秋に、姉安寿や母とともに岩代の信夫郡の家を出て、父を尋ねる旅をする。母と別れ姉を失った後に、厨子王は都で加冠元服し、筑紫の父がすでに死去していたことを知る。
『浜松中納言物語』冒頭欠巻部~巻1 中納言は元服後まもなく父式部卿宮を亡くした。その後数年以上を経て、彼は、亡父が唐帝の第三皇子に転生したとの夢告を得、唐に渡って皇子と対面する。皇子は七~八歳ほどで、心のうちには中納言を我が子と知りつつ、言葉に出して親子の名乗りをすることはなかった。
『ジャータカ』第7話 ブラフマダッタ王が、遊園のたきぎ拾いの女と同宿し、女は懐妊する。王は、「男児が生まれたらこれを持って連れて来るように」と言って女に指輪を渡す。生まれた子ボーディサッタは、証拠の指輪を持って母とともに王宮を訪れ、副王の位を得る。
『田村の草子』(御伽草子) 将軍俊仁が陸奥の女に一夜の情をかけ、「もし忘れ形見があらば、これをしるしに尋ねよ」と、鏑矢一筋を与えて帰洛する。やがて生まれた男児ふせり殿は、十歳になって父が将軍俊仁であることを知る。彼は鏑矢を持って父を尋ね対面し、名を田村丸(元服して俊宗)とあらためる〔*田村丸は父の跡を継いで将軍となり、鈴鹿山の鬼神・大嶽丸や、近江国の悪事の高丸を討伐する〕。
『大岡政談』「天一坊実記」 八代将軍吉宗は紀州和歌山で生まれ、青年時に腰元・沢の井を愛して彼女は懐妊した。吉宗は、「男児出生ならば将来引き取ろう」とのお墨付きと短刀を渡した。それから二十年後、「天一坊」と名乗る僧がお墨付きと短刀を持ち、「自分は将軍の落胤である」と称して、江戸城にある吉宗に対面しようと、やって来た。しかしそれはにせ者だった。
『賀茂』(能) 秦(はだ)の氏女(うじにょ)が、川で拾った白羽の矢を庵の軒にさして置き、やがて懐妊して男児を産んだ。男児が三歳の時、人々が「父は?」と問うと、男児は白羽の矢を指してそちらを向いた。矢は、たちまち雷(いかづち)となって天に昇り、神となった。これが別雷(わけいかづち)の神である。
『播磨国風土記』託賀の郡賀眉の里 道主日女命が父なくして子を産んだ。諸神を集めて酒宴をすると、子は天目一命に向かって酒を奉った。それで天目一命が父であると知れた。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第1日第3話 王女が夫なくして男の双生児を産んだ。双生児が七歳になった時、その父親を明らかにするため大宴会が催される。貴族たちの中に父親はおらず、双生児はボロ服のペルオントに駆け寄り頬ずりをするので、彼が父であるとわかった→〔樽〕1。
前田公と徳田のおりんの伝説 前田利家公が、田植えをする娘おりんに目をとめ一夜召して、おりんは身ごもる。おりんは生まれた男児を抱いて城へ行く。大広間にずらっと侍が並ぶが、男児は利家公の膝に上がってにっこり笑う。この男児が三代藩主の利常である(石川県羽咋郡志賀郡徳田)。
*→〔口〕1の『捜神記』巻11-33。
『かるかや』(説経) 高野山で修行する苅萱道心のもとに息子石童丸が訪ねて来るが、苅萱は父と名乗らず、さらに北国修行と称して石童丸と別れ、信濃の善光寺に籠もる。五十年後、父は善光寺で、子は高野山で往生を遂げる→〔同日・同月〕2a。
『三人法師』(御伽草子) 妻子を捨てて遁世した篠崎六郎左衛門入道が数年ぶりに故郷へ戻ると、妻は死に、幼い二人の子(姉と弟)が、母の骨を拾っている。入道は「父である」と名乗ろうとするが思い返し、そのまま立ち去る。
*父が素性を隠したまま、娘と短い対面をする→〔死〕4の『球形の荒野』(松本清張)。
『景清』(能) 平家の武将悪七兵衛景清は、一門滅亡後、盲目の身となって日向の国宮崎に流される。かつて景清が尾張熱田の遊女に産ませた娘人丸が、父を捜して宮崎まで旅し、乞食姿で藁屋に住む父景清と対面する。景清は我が亡き後の供養を頼んで、娘を故郷へ帰す。
『オイディプス王』(ソポクレス) オイディプスはテーバイのライオス王の子だったが、山に捨てられ、コリントス王に育てられた。オイディプスは成長後、旅に出て、三叉路で、ライオス王が数名の供人を連れ車に乗って来るのと出会う。道を譲る譲らぬの争いとなり、オイディプスは相手を実の父と知らず、杖でなぐり殺す。
『王書』(フェルドウスィー)第2部第4章「悲劇のソフラーブ」 イランの英雄ロスタムは、ある時、対立するトゥーラーン国の属国に足を踏み入れ、そこの王女との間に男児ソフラーブをもうけた。ソフラーブは成長後、イランに攻め入る。ロスタムとソフラーブは、互いを父子と知らずに一騎打ちをする。ロスタムは高齢だったが、神に祈って若い時代の力を取り戻す。ソフラーブに致命傷を負わせた後に、ロスタムは自分が息子と闘っていたことを知る。
『神の骨』(川端康成) 四人の男が、喫茶店の女給弓子から同文の手紙を受け取る。「生後すぐ死んだ赤ん坊の骨を送ります。赤ん坊はどなたにも似ていませんでした」と書かれてあり、紙包みが同封されていた。一ヵ月後、四人のうちの一人が弓子に「君は御骨をどうしているんだ」と問うと、弓子は「皆さんに分けたから私は持っていない」と答えた。
『ナナ』(ゾラ)12 女優ナナが、妊娠三ヵ月で流産した。そのニュースを聞いてナナの大邸宅へやって来た十二人ほどの紳士たちは皆、誰が父親なのだろうと考えつつ、ぼそぼそと話をしていた。互いに弁解しあっているようだった。
『黄色い顔』(ドイル) エフィの夫はアフリカ人の血を引いており、二人の間に生まれた娘は皮膚が黒色だった。やがて夫が病死し、エフィは白人男性グラントと知り合って再婚するが、黒人の娘がいることを打ち明けられず、娘に黄色い仮面をかぶせ、近所の家に隠す。グラントは遠方から異形の人物を見て驚愕し、ホームズに調査を依頼する。
『タイタス・アンドロニカス』(シェイクスピア)第4幕~第5幕 ゴート族の女王タモーラは、ローマ帝サターナイナスの皇后になるが、彼女には秘密の愛人・ムーア人のアローンがいた。やがて皇后タモーラが生んだ王子は、黒い身体を持っていた。アローンは生き埋めの刑になった〔*皇后タモーラは、将軍タイタスに殺された〕。
『シャクンタラー』(カーリダーサ)第7幕 ドゥフシャンタ王は聖者の苦行林を訪れ、一人の少年を見て愛情を感じ、「行方知れずのシャクンタラーとの間にもうけた子ではないか」と思う。少年の手首から護符の霊草が地面に落ち、ドゥフシャンタ王はそれを拾う。少年とその両親以外の者が拾えば霊草は蛇となり、拾った者を噛むはずだったので、ドゥフシャンタ王と少年は父子であることがわかった。
『閲微草堂筆記』「槐西雑志」151「骨肉の鑑定」 親と子の血を取って混ぜ合わせ融合すれば真の親子だ、という鑑定の古法があった。ある男がこれを信用せず、自分の血と息子の血をまぜても融合しないので、「鑑定法は当てにならない」と主張した。しかしその息子は、妻が情夫との間にもうけた子だった。
*→〔髑髏〕1の『南総里見八犬伝』第6輯巻之5下冊第60回・第7輯巻之2第65回。
★13.養父。
『道草』(夏目漱石) 健三は三歳から八歳まで、島田夫婦のもとで養育された。彼らは健三をかわいがって恩を着せ、将来の健三からの恩返しを期待していた。ところがやがて島田夫婦は離婚することになり、健三は実家に復籍した。健三が学業を修め洋行から帰ってまもなく、老いた島田が健三の家をしばしば訪れ、金を無心するようになった。不愉快な数ヵ月の後、健三は手切れ金百円を渡して、ようやく島田との関係を絶つことができた。
ウィキペディア |
父親
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/01/18 09:10 UTC 版)
(父 から転送)
お父さんと一般には言い、親しみをこめて「とうさん」「親父」(おやじ)などと呼ばれる場合もある。日本語においてこれらの呼称は、養父など社会的な父親、すなわち文化人類学で言うところのペイター (pater) であるか、生物学的な遺伝的な意味での父親であるジェニター (genitor) であるかとは無関係に用いられる。
「お父さん」という呼称は、
にも用いられる。2、3の場合は、話者が子の立場に自らを擬して言うという特徴がある。5の場合、おじ(いとこのお父さん)やいとこおじ(はとこのお父さん)など傍系尊属に当たる男性を指す場合もある。
また、子から見て1親等の親族で男性の親のこと[要出典]とも言う[誰?]。
幼児語で父親のことを「パパ」と言うが、「パパ」は「ママ」ほど意味のひろがりはない。なおパパの語源はローマ教皇を表すPope(英)と同じでありギリシャ語 παππας(pappas)→ラテン語 papa→Popeとなる。
キリスト教においては神は「父」と呼ばれる。ヘブライ語の「アッバ」(「父ちゃん」「パパ」の意)という幼児語が当てられており、畏怖の対象というより親しい存在とされている。
- ^ デジタル大辞泉
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- ^ Minnesota Fathers & Families Network. "Fathers to the Forefront: A five-year plan to strengthen Minnesota families." (Saint Paul, MN: Author. 2007).[1]
- ^ Diamond, M. J. "My Father Before Me: How Fathers and Sons Influence Each Other Throughout The Life Cycle." NY: Norton, 2007
- ^ Children Who Have An Active Father Figure Have Fewer Psychological And Behavioral Problems
- ^ Pruett, K. "Fatherneed: Why father care is as essential as mother care for your child," New York: Free Press, 2000.
- ^ "The Effects of Father Involvement: A Summary of the Research Evidence," Father Involvement Initiative Ontario Network, Fall 2002 newsletter.
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- ^ “New Left Review - Jack Goody: The Labyrinth of Kinship”. 2007年7月24日閲覧。
漢字辞典 |
出典:漢字辞典 |
父
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