炭疽病とは? わかりやすく解説

たんそ‐びょう【炭×疽病】

読み方:たんそびょう

炭疽


炭そ病

(炭疽病 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/01 10:01 UTC 版)

炭そ病に罹ったエンドウマメ

炭そ病(炭疽病、たんそびょう)は、主に糸状菌のColletotrichum属菌によって引き起こされる植物の病害である[1]

概要

果樹野菜花卉などの園芸作物をはじめ、樹木類、芝草などといった広範囲の植物に発生する病害である[1]。世界的には亜熱帯地域、熱帯地域においても幅広く発生しており、マンゴーアボカドバナナコーヒーなどの果実やトウモロコシサトウキビソルガムといった穀物で大きな被害を与えている[1]

農業生物資源ジーンバンクの「日本植物病名データベース」において登録されている日本での炭そ病の宿主植物は、合計で約320種。広葉樹96種、草花81種、野菜類41種、果樹類38種、特用作物24種、食用作物13種などと多くの植物に幅広く発生していることが確認できる[1]。登録されている宿主植物のうち70種以上が複数種の炭そ病菌によって犯されており、宿主と病原菌の組合せは400通りを超えている[1]。さらに新病害や病原菌も年々追加報告されており、今後も増加していくと予想されている[1]

炭そ病菌の分類

Colletotrichum属菌の分類は、分生子や付着器の形態、菌叢の色調、菌糸生育速度の培養性状によって暫定的に38種1変種8分化型に整理されていたが、分子系統解析が積極的に取り入れられた結果、再編が進められている[1]

発生と症状

炭そ病菌の多くの菌種の生育適温は、摂氏25度前後にあるため、春から秋にかけて発生することが多い[1]

また、伝染方法が雨滴伝搬であるため、梅雨秋雨といった長雨や頭上灌水は発生を助長させる[1]。この時期に台風などの強風を伴う降雨は発病を拡大させることになる[1]

炭そ病の症状や発生部位は植物によって様々であり、果実などの広範囲に及ぶ[1]。果実や茎などの病斑部には窪みができやすく、また同心円状の輪紋を伴うのが共通的な特徴である[1]。高湿度条件下では病斑部に鮭肉色の分生子塊を形成することがある[1]

防疫

炭そ病の防除においては、病害防除の基本である病原菌の密度を下げて病害の発生しにくい環境を作ることが必要となる[1]。また、いずれの品目も薬剤防除が必須となっている[1]

イチゴ栽培を例に挙げると、感染親株を除去して無病親株を利用することが重要となるが、親株の定植時期は気温が低いため、炭そ病菌が潜在感染していても肉眼で感染の有無を判断することはできない[1]。そのため、前年に炭そ病が発生した圃場からは親株を採取しないことや病害検定を行った信頼できる苗を親株として利用するといったことが必要となってくる[1]スイカキュウリといった野菜類では前作の被害株を除去した上で使用済み支柱など用具の消毒も行うことが必要になってくる[1]ブドウカキといった果樹類では前年に炭そ病が発生した罹病枝を剪定時に除去し、生育期も罹病枝や罹病果を取り除くことが必要となる[1]

炭そ病菌は水跳ねによって飛散するので、被害を拡大しないように降雨を防げる施設栽培は炭そ病発生抑制に非常に有効な方法である[1]。イチゴでは育苗期の雨よけ栽培や底面給水、株元灌水育苗法や点滴灌水などの水跳ねのない灌水方法が導入されている。

薬剤としてはベンゾイミダゾール系剤やQoI剤が用いられているが、1991年にはベンズイミダゾール剤耐性菌が確認され、2003年に佐賀県においてQoI剤耐性菌が確認され、問題となっている[1]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 炭疽病菌による病害の発生生態と防除” (PDF). JPP-NET. 2024年2月1日閲覧。

「炭疽病」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



炭疽病と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「炭疽病」の関連用語

炭疽病のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



炭疽病のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの炭そ病 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS