りゅうどうせい‐の‐わな〔リウドウセイ‐〕【流動性の×罠】
流動性の罠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/08 14:29 UTC 版)
流動性の罠(りゅうどうせいのわな、英: liquidity trap)は、景気刺激策として金融政策が行われる時、利子率が著しく低下している条件の下では、それ以上マネーサプライを増やしても、もはや投資を増やす効果が得られないことをいう[1]。
注釈
- ^ これをゼロ金利制約または非負制約(英: Zero lower bound, ZLB)という[2][3]。
出典
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- 1 流動性の罠とは
- 2 流動性の罠の概要
- 3 歴史
- 4 関連項目
流動性の罠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/10/31 02:38 UTC 版)
債券価格の上昇(利子率の下落)が極端であると、人々は債券の値下がりを予想して、貨幣で資産を保有するようになり、貨幣供給が増しても、貨幣保有が増すだけで、資金は債券購入に回らず、市場利子率はそれ以上低下しようとはしなくなる。 これを流動性の罠という。ケインズはこのことを、「ジョン・ブルはたいていのことは我慢するが、2 分の利子率には我慢できない」という言葉を引いて、市場金利には下限があることを示した。
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流動性の罠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 23:21 UTC 版)
池尾和人は「金融政策を研究している世界の専門家の間でも、ゼロ金利の制約下では量的緩和は効かないというのがコンセンサスである」「ほとんど金利が付かない国債とマネーの入れ替えを大々的に行うことにほかならない。ほとんど金利が付かない国債とマネーは似たもの同士で入れ替えても劇的な影響が生じるかは疑問である」と指摘している。 経済学者の齊藤誠は「ゼロ金利の制約下ではいくら貨幣供給をしても物価は上がらず、貨幣数量説が成り立つことはない」といった命題を数式で示している。一方で高橋洋一は、齊藤の数式に一切手を加えず再計算し「貨幣供給すればインフレになる」という正反対の命題も同時に導き出せたとしている。 「ベン・バーナンキ#バーナンキの背理法」も参照 高橋洋一は「名目金利がゼロ近辺になると名目金利の引き下げ余地はなくなるが、実質金利は予想インフレ率が高まればマイナスにできる。実質金利の引き下げ余地がなくなるということはない」と指摘している。 岩田規久男は「日銀がインフレ目標の達成に説明責任を負ってコミットしなければ、量的緩和によってデフレ脱却を達成できない。量的緩和はあくまでインフレ予想の形成のための手段の一つに過ぎない」と指摘している。 経済学者の星岳雄は「ある程度の効果はあったと考えるが、十分な量的緩和ではなかったためデフレを解消するには至らなかった。量的緩和自体が効かないというわけではない。量的緩和は将来の期待に働きかけることによってのみ有効性を発揮するものであるため、コミットメントが重要である。日銀の量的緩和では、消費者物価指数で見たインフレ率が安定的にゼロ以上になるまで量的緩和を解除しないという明確なコミットメントを発表したにもかかわらず、実際はまだデフレから完全には脱却していなかった2006年に量的緩和をやめ、ゼロ金利も同じ年に解除してしまった」と指摘している。 「流動性の罠#合理的期待形成学派の対策」および「流動性の罠#議論」も参照
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流動性の罠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 09:15 UTC 版)
詳細は「流動性の罠」を参照 投機的貨幣需要が無限大となり流動性の罠が発生している状況では、金融政策は無力化する。金利がゼロに近づくと、利子率2%を境にして消費も投資も増えなくなり、金融政策が完全に有効性を失う。ジョン・メイナード・ケインズはこれを流動性の罠(liquidity trap)と呼び、自由市場では当時のあらゆる金融政策が有効性を失う状態であるため許されないと断言した。 原田泰は「金利がゼロであっても、マネタリーベースを拡大させることで金融政策は実体経済を刺激することができる。量的緩和政策は効果があったという分析もある」と指摘している。原田泰、大和総研は「名目金利が低い場合でも、量的緩和を行えば、金融はどれだけでも緩和することができる」と指摘している。 高橋洋一は「名目金利がゼロ近辺になると名目金利の引き下げ余地はなくなるが、実質金利は予想インフレ率が高まればマイナスにできる。実質金利の引き下げ余地がなくなるということはない」と指摘している。 経済学者の翁邦雄は「金融政策ができることの一つに、期待に働きかけるというのがある」と指摘している。岩田規久男は「金融政策は人々の予想・期待に働きかけることで有効性が発揮する政策である」と指摘している。ポール・クルーグマン(Paul Krugman)は日本経済について、流動性の罠に落ちたにもかかわらず、市場の予想を上回る大規模な金融緩和を行うことでインフレ期待を作らないから、救いようがないと日本経済の病根を指摘した。
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流動性の罠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/18 06:28 UTC 版)
詳細は「流動性の罠」を参照 日本のゼロ金利政策下での不況などに代表される、流動性の罠に近づいた場合などの金融政策の有効性が低下した場合や、1929年の世界経済のように恐慌のように急激な景気悪化に陥った場合などには、2013年現在でも財政政策の発動による需要の喚起が必要という見方もある。ただし、日本が実際に流動性の罠にあるのか、あるいは流動性の罠が現実の経済としてありえるのかについては疑問の声もある。
※この「流動性の罠」の解説は、「財政政策」の解説の一部です。
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流動性の罠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 15:29 UTC 版)
「ポール・クルーグマン」の記事における「流動性の罠」の解説
1980年代のバブル不況後の日本の経済をニュー・ケインジアン的なモデルを使ってモデル化し、流動性の罠に落ちていることを指摘した。 日本銀行が多額の日本国債を引き受けることに関連するインフレーションについては「人々の消費がその経済の生産能力(供給力)を超える状態のときに限り、紙幣増刷由来のインフレが発生する」と述べる。というのも流動性の罠に陥っている状況では、IS-LM分析でLM曲線がフラットになっているためにマネタリーベースの増加が金利上昇を喚起しないからである。 流動性の罠は発生原理の説明がないことをリチャード・ヴェルナーから批判されている。
※この「流動性の罠」の解説は、「ポール・クルーグマン」の解説の一部です。
「流動性の罠」を含む「ポール・クルーグマン」の記事については、「ポール・クルーグマン」の概要を参照ください。
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