汲み出し
しゃく(汲み出し) (くみだし)
汲み出し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/18 19:01 UTC 版)
一次回収 油層の圧力が高い状態では原油は自ら噴出する(自噴する)が、油層の圧力が低い状態では自噴せずポンプによって原油を汲み上げる。これらの方法を一次回収(Primary recovery)という。 天然ガスが油層の上部に溜まっている場合は、原油の汲み上げによってこのガスキャップが膨張し原油を押し出すので、一次回収によって回収できる原油は総量の概算40%になる。ガスキャップがない場合は、原油の中に溶け込んだ天然ガスが泡となって膨張するだけであり、一次回収によって回収できる原油は総量の概算20%になる。 二次回収 一次回収で回収できるのは油層に含まれる原油の一部でしかなく、一次回収では生産ができなくなった油井では、原油を分離して後の水や天然ガスを油層に注入し残った原油を加圧して回収する。これを二次回収(Secondary recovery)という。 水を注入する方法は「水攻法」(Water flooding)、ガスを注入する方法は「ガス圧入法」(Gas injection)と呼ばれ、総称して回復法(Improved Oil Recovery)と呼ぶこともある。21世紀初頭現在では、それによって総合的に回収量が増えると見込まれる場合には、一次回収の最初から水やガスを注入するようになっている。 水攻法の「水押し効果」で回収できる原油は、内部で水が既に自然に接している場合で、一次回収分を含めて総量の概算60%になる。ガス圧入法は水押しほど有効ではないが、圧入する天然ガスは原油の回収に伴って産出されるガスであり、従来はガスフレアによって焼却処分されていた程である。 21世紀初頭現在では天然ガスはLPGとして有効に利用されるため焼却処分はあまり行なわれないが、いずれにしても油井の現場にふんだんにあって原油を十分汲み出した後でも再び取り出せるため、ガス圧入法として利用される事が多い。 三次回収 二次回収でも残った原油を回収するために三次回収(Enhanced Oil Recovery,EOR)または強制回収法と呼ばれる技術の開発、実用化が進んでいる。これは水蒸気、炭酸ガス、界面活性剤(洗剤)などを注入して原油の流動性を改善する方法である。 水蒸気を圧入する方法は「水蒸気攻法」(Steam floods)と呼ばれ、水蒸気によって沈積した粘度の高い石油を温めてパラフィンとアスファルトを温め溶かして、凝結した水と共に流動化させる方法である。水蒸気を回収井とは別の井戸から圧入する場合と、「ハフ・アンド・パフ法」(Huff and puff)と呼ばれる水蒸気の注入と石油の回収を1つの回収井戸で交互に行なう方法がある。 二酸化炭素を圧入する方法は「炭素ガス攻法」(Carbon dioxiside floods)と呼ばれ気体又は水に溶かした二酸化炭素を圧入する方法である。二酸化炭素は水にも溶けるが、石油にはさらによく溶けるために、二酸化炭素を圧入すれば石油に溶け込み石油が膨張するために回収が容易となる。回収した石油からは二酸化炭素を分離させて再び圧入に使用する。 界面活性剤(洗剤)を圧入する方法は「洗剤攻法」(Detargent floods)と呼ばれ、水に少量の洗剤を溶かして圧入する。洗剤が油を細かな粒に包み込むため岩石や砂との接着がはずれて流動性が増す。浅い油層に対して効果が高く、深い層では高温のために洗剤が分解されてしまうため使用されない。 「ミシブル攻法」(Miscible floods)と呼ばれる方法を使えば回収率が100%近くになる。これはブタン、プロパンといった液化ガスを注入する事で油層から原油を洗い流す方法である。ただブタン、プロパンといったガスは比較的高価であるため、油層に漏れがなく水も含まれていない場合に限り、原油の回収後にこれらのガスも回収できる見込みがあれば実施される。 空気を吹き込んで火を付ける「火攻法」(Fire floods)と呼ばれる方法もある(空気の量を調整するので、油層内の石油が全て燃えたりすることはない)。熱を加えて石油の流動性を高める方法である。
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