正則溶液とは? わかりやすく解説

正則溶液

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/14 04:06 UTC 版)

溶液」の記事における「正則溶液」の解説

溶質溶媒との間の凝集力ファン・デル・ワールス力厳密にロンドン分散力)のみの場合、その溶液を正則溶液(せいそくようえきregular solution)と呼ぶ。すなわち、静電相互作用イオン結合)、会合水素結合)、双極子相互作用分極)等が作用しない溶液が正則溶液となる。正則溶液の語はヒルデブランド(J.H. Hildebrand)による命名である(1929年)。 経験的に正則溶液となる溶解(あるいは混合)は次のような場合該当する混合熱は非ゼロ発熱あるいは吸熱生じる) 混合エントロピー変化理想溶液同等 正則溶液の性質溶質溶媒溶解パラメーターの差に支配され溶解度理論的に溶解パラメーター定式化することができる。 成分1と成分2が混合して溶液となるときの溶解熱考えると以下のようになる成分1の蒸発エネルギーを Δ E 1 V {\displaystyle \Delta E_{1}^{V}} 成分2の蒸発エネルギーを Δ E 2 V {\displaystyle \Delta E_{2}^{V}} と置き、気体状態にある成分1: n 1 {\displaystyle n_{1}} mol成分2: n 2 {\displaystyle n_{2}} molそれぞれ凝集し液体となるとき(混合しない)のエネルギーは以下のように表される。 − Δ E 0 = − ( n 1 Δ E 1 V + n 2 Δ E 2 V ) {\displaystyle -\Delta E_{0}=-(n_{1}\Delta E_{1}^{V}+n_{2}\Delta E_{2}^{V})} 気体状態にある成分1: n 1 {\displaystyle n_{1}} mol成分2: n 2 {\displaystyle n_{2}} mol凝集し溶液になるときの全凝集エネルギーそれぞれの成分分子分子接している割合がその成分容積分率に等しいから、成分1と成分2の接触による凝集エネルギーを Δ E 1 ⋅ 2 V {\displaystyle \Delta E_{1\cdot 2}^{V}} として以下のようになる。ここで V 1 {\displaystyle V_{1}} および V 2 {\displaystyle V_{2}} は各成分液体モル体積である。 − E M = − Δ E 1 V n 1 2 V 1 + 2 Δ E 1 ⋅ 2 V n 1 n 2 V 1 1 / 2 ⋅ V 2 1 / 2 + Δ E 2 V n 2 2 V 2 n 1 V 1 + n 2 V 2 {\displaystyle -E_{M}=-{\frac {\Delta E_{1}^{V}n_{1}^{2}V_{1}+2\Delta E_{1\cdot 2}^{V}n_{1}n_{2}V_{1}^{1/2}\cdot V_{2}^{1/2}+\Delta E_{2}^{V}n_{2}^{2}V_{2}}{n_{1}V_{1}+n_{2}V_{2}}}} 従って液体成分1: n 1 {\displaystyle n_{1}} mol成分2: n 2 {\displaystyle n_{2}} mol混合して溶液になるときの混合熱はこれらの混合前後凝集エネルギーの差 Δ E M = Δ E 0E M {\displaystyle \Delta E_{M}=\Delta E_{0}-E_{M}} で与えられ以下のようになる。 Δ E M = n 1 V 1n 2 V 2 n 1 V 1 + n 2 V 2 ( Δ E 1 V V 1 − 2 Δ E 1 ⋅ 2 V V 1 1 / 2 ⋅ V 2 1 / 2 + Δ E 2 V V 2 ) {\displaystyle \Delta E_{M}={\frac {n_{1}V_{1}\cdot n_{2}V_{2}}{n_{1}V_{1}+n_{2}V_{2}}}\left({\frac {\Delta E_{1}^{V}}{V_{1}}}-{\frac {2\Delta E_{1\cdot 2}^{V}}{V_{1}^{1/2}\cdot V_{2}^{1/2}}}+{\frac {\Delta E_{2}^{V}}{V_{2}}}\right)} ここで分子間力ロンドン分散力のみの場合は、各成分間の分子間力が各成分分子間力幾何平均近似され、成分1と成分2の接触による凝集エネルギー Δ E 1 ⋅ 2 V {\displaystyle \Delta E_{1\cdot 2}^{V}} が各々物質凝集エネルギー Δ E 1 V {\displaystyle \Delta E_{1}^{V}} と Δ E 2 V {\displaystyle \Delta E_{2}^{V}} の幾何平均表され以下のようになる。 Δ E M = n 1 V 1n 2 V 2 n 1 V 1 + n 2 V 2 { ( Δ E 1 V V 1 ) 1 / 2 − ( Δ E 2 V V 2 ) 1 / 2 } 2 {\displaystyle \Delta E_{M}={\frac {n_{1}V_{1}\cdot n_{2}V_{2}}{n_{1}V_{1}+n_{2}V_{2}}}\left\{\left({\frac {\Delta E_{1}^{V}}{V_{1}}}\right)^{1/2}-\left({\frac {\Delta E_{2}^{V}}{V_{2}}}\right)^{1/2}\right\}^{2}} ここで成分1の溶解パラメータを δ 1 = ( Δ E 1 V V 1 ) 1 / 2 {\displaystyle \delta _{1}=\left({\frac {\Delta E_{1}^{V}}{V_{1}}}\right)^{1/2}} 、成分2の溶解パラメーターを δ 2 = ( Δ E 2 V V 2 ) 1 / 2 {\displaystyle \delta _{2}=\left({\frac {\Delta E_{2}^{V}}{V_{2}}}\right)^{1/2}} と置くと混合エネルギーは以下のようになる。 Δ E M = n 1 V 1n 2 V 2 n 1 V 1 + n 2 V 2 ( δ 1 − δ 2 ) 2 {\displaystyle \Delta E_{M}={\frac {n_{1}V_{1}\cdot n_{2}V_{2}}{n_{1}V_{1}+n_{2}V_{2}}}(\delta _{1}-\delta _{2})^{2}} この式を n 2 {\displaystyle n_{2}} で偏微分することにより成分2の部分モル溶解エネルギーに関する式が得られる。ここで ϕ 1 = n 1 V 1 n 1 V 1 + n 2 V 2 {\displaystyle \phi _{1}={\frac {n_{1}V_{1}}{n_{1}V_{1}+n_{2}V_{2}}}} は成分1の容積分率である。 ( ∂ Δ E Mn 2 ) n 1 = Δ E ¯ 2 = V 2 ϕ 1 2 ( δ 1 − δ 2 ) 2 {\displaystyle \left({\frac {\partial \Delta E_{M}}{\partial n_{2}}}\right)_{n_{1}}=\Delta {\overline {E}}_{2}=V_{2}\phi _{1}^{2}(\delta _{1}-\delta _{2})^{2}} また成分2の溶解に関する部分モルギブス自由エネルギーは、部分モル溶解エントロピー理想溶液場合等しいと置くことができ、また部分モル溶解溶解エンタルピーは Δ H ¯ 2 = Δ E ¯ 2 + P Δ V ¯ 2 {\displaystyle \Delta {\overline {H}}_{2}=\Delta {\overline {E}}_{2}+P\Delta {\overline {V}}_{2}} のうち P Δ V ¯ 2 {\displaystyle P\Delta {\overline {V}}_{2}} = 0 と近似され、部分モル溶解エネルギー Δ E ¯ 2 {\displaystyle \Delta {\overline {E}}_{2}} にほぼ等しいと置くことができるため以下のようになる。これが正則溶液であると仮定される場合成分1(溶媒)に対す成分2(溶質)の溶解度 X 2 {\displaystyle X_{2}\,} を与え基本式となる。また成分2の活量 a 2 = f 2 f 2 ∘ {\displaystyle a_{2}={\frac {f_{2}}{f_{2}^{\circ }}}} は純粋な液体対す溶液成分2のフガシティー比率である。成分2の活量係数は γ 2 = a 2 X 2 = exp V 2 ϕ 1 2 ( δ 1 − δ 2 ) 2 R T {\displaystyle \gamma _{2}={\frac {a_{2}}{X_{2}}}={\mbox{exp}}{\frac {V_{2}\phi _{1}^{2}(\delta _{1}-\delta _{2})^{2}}{RT}}} で与えられる。 Δ G ¯ 2 = R T lnf 2 f 2 ∘ = R T lna 2R T ln ⁡ X 2 + V 2 ϕ 1 2 ( δ 1 − δ 2 ) 2 {\displaystyle \Delta {\overline {G}}_{2}=RT\ln {\frac {f_{2}}{f_{2}^{\circ }}}=RT\ln a_{2}\cong RT\ln X_{2}+V_{2}\phi _{1}^{2}(\delta _{1}-\delta _{2})^{2}}

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