しょくぶつ‐こうじょう〔‐コウヂヤウ〕【植物工場】
植物工場
植物工場とは「野菜を中心とした作物を施設内で、光、湿温度、二酸化炭素、培養液などの環境条件を多かれ少なかれ人工的に制御し、季節に関係なく自動的に連続生産するシステム」（元東海大学教授・高辻正基氏）をいいます。近年、研究や実用化が進み、カゴメやキユーピーなどの食品大手のほか、フェアリーエンジェル（福井県）、みらい（千葉県）などの中小企業も参入、全国で２０－３０の植物工場が事業展開しています。露地栽培やハウス栽培と異なる特徴点は、光や水分、栄養分などの生育条件を人工的にコントロールしながら無菌状態のなかで栽培するため、季節や天候に関係なく、安全・安心で鮮度の高い野菜を、安定的かつ計画的に消費者へ生産・供給できるところにあります。工場内の環境制御や多段栽培により、空間を有効活用して生産性を高めることもできます。リーフレタスなどの葉菜類なら２０毛作が可能です。住宅地など農地以外でも工場を設置できることから、都会でも「地産地消」の野菜が食卓に上るようになります。
植物工場の種類は「完全制御型」と「太陽光併用型」に大別できます。「完全制御型」は蛍光灯やＬＥＤ（発光ダイオード）などの人工光のみを利用するため、天候に左右されず、狭い土地での多段栽培が可能です。しかし「太陽光併用型」に比べ照明や空調などの設備投資額が大きくなり、電力使用量もかさむことからビジネスを採算に乗せるのが難しいという問題があります。「太陽光併用型」は太陽光に加え、足りない光を照明設備で補います。空調設備は必要ですが、「完全制御型」に比べると設備投資額や電力使用量を抑えられるため、参入のしやすさはあります。
植物工場は良いことずくめのようですが、課題もたくさんあります。植物工場で栽培した野菜が露地物と価格競争できるようになるには、コストダウンのための合理化が欠かせません。それには高効率・省エネ・長寿命の光源や代替建材・断熱材の開発など、技術面からのアプローチが大きなカギになります。空調や養液の管理など栽培ノウハウの確立も急務といえます。事業者の半数が栽培ノウハウの不足により、倒産を余儀なくされているからです。
栽培技術と施設管理技術を合わせ持つ専門家の育成や、コメやイチゴなど付加価値が高い作物への適用も進めていかなければなりません。また新規参入を促進するには、建築基準や都市計画、金融などの現行規制を見直したり、事業者に対する支援体制を整備したりする必要があります。
国も普及・拡大に向けて動き出しています。農林水産省と農商工連携施策を進めている経済産業省は、２００９年１月１６日に有識者や事業者、地方自治体などをメンバーとする「植物工場ワーキングループ」（座長：高辻氏）を立ち上げ、産業立地施策や研究開発、低利融資制度、人材育成など支援のあり方について検討を始めています。東京・霞が関の経済産業省別館ロビーにはＰＲ用の「植物工場」を設置し、イチゴやトマト、リーフレタスなどを生産しています。
（掲載日：2009/02/24）
植物工場
【英】： Plant Factory
環境制御や自動化などの技術を利用した植物の効率生産システムである。
温度、光、二酸化炭素、培養液（肥料）などの植物栽培の環境をコンピュータにより制御することで、天候や季節に左右されることなく、衛生的な生産ができる。また、播種や収穫などの自動化により周年生産システムを可能にし、安定生産や無農薬栽培ができるなどのメリットを持つことから、次世代の農業スタイルとして注目されている。
現在、実用化されている植物工場は、葉菜類などの野菜がほとんどである。しかし、光源と空調にかかる電気代などコストがかかるため、経済性に問題があり普及が遅れている。コストダウンなどデメリットを解決するための研究開発が進められている。
温度、光、二酸化炭素、培養液（肥料）などの植物栽培の環境をコンピュータにより制御することで、天候や季節に左右されることなく、衛生的な生産ができる。また、播種や収穫などの自動化により周年生産システムを可能にし、安定生産や無農薬栽培ができるなどのメリットを持つことから、次世代の農業スタイルとして注目されている。
現在、実用化されている植物工場は、葉菜類などの野菜がほとんどである。しかし、光源と空調にかかる電気代などコストがかかるため、経済性に問題があり普及が遅れている。コストダウンなどデメリットを解決するための研究開発が進められている。
植物工場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2023/03/29 05:06 UTC 版)
植物工場（しょくぶつこうじょう）とは、内部環境をコントロールした閉鎖的または半閉鎖的な空間で、野菜などの植物を計画的に生産するシステムである。植物工場による栽培方法を工場栽培と呼ぶ。
- ^ 森康裕, 高辻正基 & 石原隆司 2015, p. 14.
- ^ 高辻 1990, pp. 45–56
- ^ 会社概要 プライムデリカ株式会社
- ^ 安全・安心・新鮮を追求した都市型野菜工場 プライムデリカ株式会社
- ^ セブンイレブン／60億円投資、デリカ専用工場に野菜工場を併設 流通ニュース、2018年11月28日
- ^ セブンイレブン／相模原ベジタブルプラントが「ASIAGAP」取得 流通ニュース、2020年07月06日
- ^ a b 「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」倒産続出、75％が赤字、植物工場でビジネスは無理？放射能汚染地や昭和基地が適地？ 石堂徹生、Business Journal、サイゾー、
- ^ 植物工場「6割が赤字」に未来はあるか 日経ビジネス電子版、日経BP、2018年4月27日
- ^ 森康裕, 高辻正基 & 石原隆司 2015, pp. 50–69.
- ^ 植物育成システム 植物工場・補光照明 - パソナ アーバンファーム 都市型植物工場（東京都千代田区） 岩崎電気株式会社
- ^ 森康裕, 高辻正基 & 石原隆司 2015, p. 12.
[続きの解説]
「植物工場」の続きの解説一覧
- 1 植物工場とは
- 2 植物工場の概要
- 3 太陽光利用型の植物工場
- 4 外部リンク
「植物工場」の例文・使い方・用例・文例
- その植物工場は関心を集めている。
- 建設会社が植物工場に関心を持つ
- 大手建設会社が植物工場の建設を受注するために熱心な取り組みを行っている。
- 食品会社や外食産業の中にはすでに植物工場の運営を始めているところもあり，一部の建設会社は植物工場の建設に大きな将来性を見出している。
- 鹿(か)島(じま)建設はトマト工場や遺伝子組み換え植物工場など４つの植物工場を建設した。
- 大(たい)成(せい)建設は，植物工場の建設を考えている企業や自治体に対して，植物工場についての助言を行っている。
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