桃園文庫
桃園文庫
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「桃園」とは池田亀鑑の雅号であり、「桃園文庫」とは本書を作る過程で池田亀鑑が購入した源氏物語の写本をはじめとする『伊勢物語』、『土佐日記』等の王朝文学に関する様々な資料を含む池田亀鑑のコレクションの総称である。これらは、1956年(昭和31年)12月の同人の没後もしばらくの間同人の私邸において亀鑑の次男である池田研二らによって生前に利用されていたほぼそのままの状態で保存管理されていた(同人の住居に付随してコンクリート二階建の書庫があり、そこで整然と保存されていたとされている)が、東海大学附属図書館館長であった原田敏明が池田亀鑑の妻の兄であった関係等からその管理を任されるようになった。その後1972年(昭和47年)に、東海大学の建学三十周年事業の一環として同大学が一括して購入することが正式に決まり、1973年(昭和48年)11月、ほぼ1年に及ぶ調査・目録作成作業の後、保管場所も東海大学に移され、同大学の附属図書館において「桃園文庫」としてまとめて保管されることとなった。 東海大学では、1976年(昭和51年)5月に「桃園文庫整理準備委員会」が、さらに1983年(昭和58年)4月には「桃園文庫整理委員会」が設立され、1986年(昭和61年)3月に物語文学を中心とした目録『桃園文庫目録 上巻』が、1988年(昭和63年)3月に物語文学以外についての目録『桃園文庫目録 中巻』が出版されている。また「東海大学桃園文庫影印刊行委員会」が設立され、1990年(平成2年)から1996年(平成8年)にかけて、源氏物語大成において校異に採用された明融本のほか源氏物語古系図・梗概書の源氏小鏡や源氏抄さらには伊勢物語・土佐日記・古今和歌集・堤中納言集・紀貫之集・徒然草等を内容とする『東海大学蔵桃園文庫影印叢書』(全13巻)が刊行されているほか、貴重な写本類の展示もしばしば行われている。 なお、阿里莫本、池田本、国冬本、麦生本、肖柏本、天理河内本といった校異源氏物語及び源氏物語大成にその校異を採録されているような桃園文庫旧蔵とされる貴重な写本の少なくないものが現在天理大学天理図書館の所蔵になっている。このうち池田本・麦生本・阿里莫本については『源氏物語大成大成 研究編』の「現存重要写本の解説」のそれぞれの項目において「戦時中行方不明になった」との記述が存在する。これらは古書籍商である弘文荘反町茂雄の手を経て天理図書館に入り現在も天理図書館の所蔵となっているものである。この間の事情について、弘文荘反町茂雄はまだ池田亀鑑が存命中であった1950年(昭和25年)に池田亀鑑の有力なスポンサーの一人であった前田善子のコレクションであった「紅梅文庫」の蔵書が大量に売りに出されたが、その中に「桃園文庫」の蔵書印が押されている重要な源氏物語の古写本がいくつも含まれていたことを知り、これらが散逸したり非公開の個人所蔵となることを恐れて天理教真柱の中山正善に一括して買い取ってもらい、天理図書館でまとめて管理してもらうことになったと識している。なお、桃園文庫の蔵書が紅梅文庫の中にあった事情については反町茂雄は「戦時中に池田亀鑑が何らかの理由で物入りが生じたため、校異源氏物語が完成したことにより手元に置く必要が無くなりかつ多くの巻が揃っているため価値が高いと見られた写本を預けるような形で親しい前田善子に買い取ってもらったのが戦後の混乱の中で売りに出されてしまったのではないか」と推測している。
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