松下修也とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 松下修也の意味・解説 

松下修也

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/12 14:42 UTC 版)

松下 修也
生誕 (1929-03-06) 1929年3月6日
出身地 日本東京府
死没 (2018-05-29) 2018年5月29日(89歳没)
学歴 東京藝術大学音楽学部
ジャンル クラシック
職業 チェロ奏者
担当楽器 チェロ

松下 修也(まつした しゅうや、1929年[1]3月6日[2] - 2018年5月29日)は、日本チェロ奏者。戦後日本チェロ界の草分け的存在とされる[3][4][5]

略歴

東京府出身、東京都国分寺市在住[6]。1946年[2]東京音楽学校(後の東京藝術大学音楽学部)を卒業[5](1945年中退とする資料もある[7])。先輩に芥川也寸志、同級生に黛敏郎がいた。チェロを平井保三、斎藤秀雄に師事[7]。当時は戦中後の食糧難の最中で、西洋音楽は非国民と非難されるためにチェロを持って外出するときは風呂敷で包んで隠すなど苦労を重ねた[5]

演奏家として

1949年、第18回日本音楽コンクールで1位となる。 1950年、東京交響楽団の定期演奏会でラロチェロ協奏曲を弾いてプロデビュー(当時20歳)[7]。1955年25歳でNHK交響楽団首席チェロ奏者に就任[2][8]、1956年日本フィルハーモニー交響楽団首席チェロ奏者[2][9]、1969年東京交響楽団首席チェロ奏者[2]を歴任する。1969年よりオランダに留学[7]

1960年、黛敏郎作曲の「独奏チェロのための“文楽”」(大原美術館30周年を記念した委嘱作[1])を大原美術館にて初演した[1]。同美術館初のギャラリーコンサートであった。また「プロムジカ弦楽四重奏団」のメンバーとして岩淵竜太郎、堀伝、江戸純子も共に演奏を行った[10]

1993年7月23日、北海道南西沖地震の被災者への募金を呼びかけるための、国分寺女性合唱団「コーロ・アマービレ」の記念コンサートに招聘され、北海道民謡「江差追分」などを演奏した[11]

1996年8月3日、宮沢賢治100周年を記念して岩手県と花巻市が企画したイベントの一環で、「賢治童話村」で岸田今日子氏の朗読を交えた演奏会を開催した[12]

2000年10月、大原美術館70周年を記念して、1960年の大原美術館30周年コンサートと同じ奏者(結成当初の「プロムジカ弦楽四重奏団」メンバー)・同じ曲目で再現された[10]。本館2階のメーンギャラリーで、ベートーヴェン弦楽四重奏曲「ラズモフスキー第1番」、黛敏郎「文楽」、矢代秋雄「ピアノ・ソナタ」が300人の聴衆を前にして演奏された[10][13][14]

2002年10月、東京・四ツ谷の紀尾井ホールにて開催された「グレート・マスターズ」コンサートに参加。日本のクラシック草創期を支え、今なお現役という70代から90代の演奏家11人の1人として選ばれ、バイオリニストの松本善三やピアノの寺西昭子と競演した[15][16]

2005年5月17日には、神戸国際会議場メインホールで開催された、インターナショナル チェロ コングレス イン 神戸 2005「グランドコンサート I 」に、倉田澄子、フィリップ・ミュレール、斎藤建寛、アルト・ノラス山崎伸子チョン・キョンファらと共に参加した。 

2006年には、国分寺市本町の早稲田実業学校に完成した「日本の宇宙開発発祥の地」の記念碑の落成式で、記念演奏会を開催した[6]。ペンシルロケットを開発した糸川英夫教授に月2回約50年間に亘ってチェロを教えたのが松下修也[17]である所以で依頼されたものであった(当時77歳)[18]。娘の松下修子もチェロ奏者であり、ときおり親子で競演している[19][20]

指導者として

1965-1969年洗足学園大学講師[7][2]に就任。1966-1969年愛知県立芸術大学[7][2]、1970年東京藝術大学講師[7][2]、1978年くらしき作陽大学教授[7][2]を務めた。1992年よりくらしき作陽大学名誉教授[2]

2003年くらしき作陽大学を退官。同年3月20日にはくらしき作陽大学聖徳殿にて退官記念コンサートが開催され、演奏の合間に同氏の業績をたどりながら戦後日本の音楽史を紹介する講義も行われた[1]。くらしき作陽大学では前身の作陽音楽大学の時期を含めより24年間教鞭を取った[1][5][8]日本音楽コンクールの審査員も務めた[21]。2006年より、笠岡チェロアンサンブルコンテストの審査委員長に就任(第2回-第6回)[8][22]。フェリース・ソニード・ストリングス(アマチュアオーケストラ)の結団時(昭和59年)より音楽監督をしている、過去には指揮者も務めた[23][24]。門下生も大西彩子、中村康乃理[25]糸川英夫、大島純[26]、井伊準[27]ら、多数存在する。2018年5月29日、心不全のために死去[28]

受賞歴

  • 1949年 第18回日本音楽コンクールチェロ部門第1位[2]
  • 1954年 毎日音楽賞受賞[2]
  • 1962年 第13回芸術奨励文部大臣賞[2] [29]
  • 1964年 毎日芸術賞受賞(プロムジカ弦楽四重奏団)[2][30]
  • 1964年 文化庁芸術選奨受賞(プロムジカ弦楽四重奏団)[2][30]

プロムジカ弦楽四重奏団について

1953年に当時のNHK交響楽団コンサートマスターである岩淵竜太郎の主宰で結成された室内合奏団[30]。岩淵竜太郎(第1バイオリン)、武内智子(第2バイオリン)、小橋行雄(ビオラ)、松下修也(チェロ)が初期メンバー。3年後に桐朋学園大学を卒業したばかりの堀伝(第2バイオリン)、江戸純子(ビオラ)が加入した[30]。1963年、「プロムジカ弦楽四重奏団」の設立10周年を迎えてベートーベンの弦楽四重奏曲全曲演奏を行い[30]、1964年に毎日芸術賞芸術選奨を受賞した[30]

特記事項

  • シューベルトの「死と乙女」(マーラー編曲)を日本初演で指揮した。
  • 熊本県八代市に長年月1回レッスンのために通っており、13年目となる2005年8月7日には同市の教え子でつくる「松下修也八代後援会」(野崎陽子代表)が喜寿を記念して、八代ロイヤルホテルにて記念演奏会を開催した[9][31]
  • 還暦を迎えたのを機に、老人施設などでのボランティアコンサートも始めている[5]
  • 趣味は易学 絵画鑑賞[2]
  • 自身が初演した黛敏郎氏の独奏チェロのための「文楽」は、たびたび同氏のコンサートで演奏されるが、その他にも現代曲から日本の民謡集まで、さまざまなジャンルの作品をレパートリーとした[32]
  • 2019年6月12日、大分県大分市のアートプラザにて、「松下修也先生を偲んで」という追悼コンサートが開催された。NHK交響楽団首席チェロ奏者の藤森亮一が招かれ、かつての門下生が集った[33]

ディスコグラフィ

  • 宗像和:セロ弾きのゴーシュ / 蜘蛛の糸 岸田今日子(語り) レコード・カセット[2]
  • 宗像和:セロ弾きのゴーシュ / 蜘蛛の糸 岸田今日子(語り) CD(新規録音)[34]
  • ふるさとの調べ「チェロがうたう日本の民謡」[2](石川皓也編曲、ビクター)
  • 竹取物語[2]音楽之友社、宗像和作曲、松下チェロ、結城美栄子語り、CD 1999年)ダイキサウンド(株) ASIN: B001BBJTG8

著書

脚注

  1. ^ a b c d e 音楽情報 ◆お話と演奏IVチェロ<典雅なる詩情>2003.02.15 文化-15版 22頁 『山陽新聞』朝刊 写有 (全376字)
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 『朝日新聞』 人物データベース
  3. ^ 室内楽の調べ 観客を魅了 久米南で演奏会 2003.04.29 美作-15版 28頁 『山陽新聞』朝刊 写有 (全332字)
  4. ^ 室内合奏団が27日に演奏会 久米南・文化センター 2003.04.13 美作-15版 32頁 『山陽新聞』朝刊 (全218字)
  5. ^ a b c d e 風音 「音に気持ち表して」 くらしき作陽大 松下名誉教授 退職演奏会 2003.03.01 文化-15版 21頁 『山陽新聞』朝刊 写有 (全598字)
  6. ^ a b 日本の宇宙開発発祥の地 国分寺で記念碑除幕 50年後へタイムカプセルも /東京都 『朝日新聞』 2006.04.02 東京地方版/東京 35頁 多摩 写図有 (全933字)
  7. ^ a b c d e f g h 内外アソシエーツ現代人物情報
  8. ^ a b c チェロアンサンブル・コンテスト 技巧、ハーモニー競う 笠岡 県内外の5団体出場 2009.05.20 笠井-16版 24頁 『山陽新聞』朝刊 写有 (全330字)
  9. ^ a b 文化圏=松下修也チェロコンサート 『熊本日日新聞』2005.08.09 朝刊 三社 (全187字)
  10. ^ a b c プレイバック1960年を懐古 初回のコンサート再現 倉敷の大原美術館=岡山 『読売新聞』 2000.10.18 大阪朝刊 28頁 写有 (全808字)
  11. ^ 江差追分で地震救援 国分寺女性合唱団「コーロ・アマービレ」/東京 『朝日新聞』 1993.07.22 東京地方版/東京 0頁 東京 (全530字)
  12. ^ 宮沢賢治生誕100年/今夏イベント続々/県と花巻市企画/7月26日から 1996.01.05 『河北新報』記事情報 写有 (全1,389字)
  13. ^ 曲も奏者も40年前と同じ 倉敷・大原美術館で記念四重奏 /岡山 『朝日新聞』 2000.10.08 大阪地方版/岡山 29頁 岡山1 (全303字)
  14. ^ 大原美術館、70周年へ催し多彩 フォーラム、研究紀要も /岡山 『毎日新聞』 2000.09.02 大阪地方版/岡山 27頁 岡山1 (全892字)
  15. ^ 「グレート・マスターズ」 大先輩の演奏、初々しく(観覧者)『朝日新聞』 2002.10.26 東京夕刊 9頁 芸能1 写図有 (全743字)
  16. ^ 大原美術館が創立70周年記念事業を発表 コンサート、30周年時を再現 /岡山 『毎日新聞』 2000.09.15 地方版/岡山 (全619字)
  17. ^ 「海の日」は音楽楽しもう 糸川博士と教え子ら丸子でコンサート 信濃毎日新聞1996.07.16 『信濃毎日新聞』朝刊 29頁 社会3 (全580字)
  18. ^ タイムカプセル:「未来のロケット」イラスト、50年後に開封--東京・早実の校庭 『毎日新聞』 2006.04.01 東京夕刊 8頁 社会 写図有 (全533字)
  19. ^ 文化圏=松下修也・修子チェロコンサート 『熊本日日新聞』 2001.09.03 朝刊 県総 (全162字)
  20. ^ 見る聴く 『中日新聞』 2000.06.15 朝刊 24頁 首都版 (全939字)
  21. ^ 声楽は「オペラ・アリア」と「歌曲」を隔年ごとに--日本音楽コンクール改革 『毎日新聞』 1991.04.17 東京夕刊 7頁 芸能 写図有 (全1,083字)
  22. ^ チェロ演奏 6団体競う 笠岡 『中国新聞』 2011.05.18 朝刊 井笠・おかやま (全304字)
  23. ^ 名曲演奏で聴衆を魅了-浜松で市民弦楽合奏団が結成記念 『静岡新聞』2003.05.12 朝刊 20頁 静岡 地方B (全374字)
  24. ^ 来月の記念演奏会、頑張ります─浜松の弦楽合奏団フェリース・ソニード・ストリングス 『静岡新聞』2003.04.20 朝刊 18頁 静岡 ワ浜1 (全431字)
  25. ^ あす地元リサイタル 笠岡 チェロの中村さん『中国新聞』2006.11.25 朝刊 井笠・おかやま (全405字)
  26. ^ 音楽情報 ◆大島純チェロリサイタル 2005.10.15 文化-15版 19頁 『山陽新聞』朝刊 (全323字) 
  27. ^ 風音 「主役の風格保ちたい」 岡山交響楽団定期演奏会 最年少ソリストの井伊さん 『山陽新聞』2004.05.22 文化-15版 21頁 『山陽新聞』朝刊 写有 (全544字)
  28. ^ 訃報 松下修也さん89歳=チェリスト 毎日新聞2018年6月5日 19時11分(最終更新 6月5日 19時11分)
  29. ^ 音楽 アート通信・13日 京都 『朝日新聞』1991.09.13 大阪地方版/京都 0頁 京都 (全457字)
  30. ^ a b c d e f [この人と]岩淵竜太郎さん<バイオリニスト>/3 日本の室内楽の状況、厳しい『毎日新聞』 1995.03.15 東京夕刊 5頁 文化 写図有 (全972字)
  31. ^ 8月のこよみ 『熊本日日新聞』 2005.07.31 朝刊 暦 (全8,024字)
  32. ^ 腕に年はとらせません 群馬室内合奏団、ソリスト迎え演奏会--25日 /群馬 『毎日新聞』1996.05.21 地方版/群馬 写図有 (全768字)
  33. ^ 「松下修也先生を偲んで」追悼コンサート
  34. ^ [ヒット・ナウ]クラシック イメージ通りの「セロ弾きゴーシュ」『毎日新聞』 1995.11.20 東京夕刊 9頁 芸能 写図有 (全405字)



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「松下修也」の関連用語

松下修也のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



松下修也のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの松下修也 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS