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木賊刈図鐔

とくさがりずつば
木賊刈図鐔


江戸時代中期鉄槌目地丸形出高
色絵象嵌小透鋤残耳重要刀装
右に木賊を刈る鎌を、左にこれを束ねる藁縄を手にした老翁感慨深げに雲間にのぞく月を眺めている。仕事帰り道すがら、ふと月を仰ぎ見た風ではなく、歩こうにも足が前に出ず、茫然としてそこに立ち竦んでいる様子である。手に持つ鎌は力が抜けてだらりと足先にたれ下がり、膝を浅く曲げ踵を上げている歩行姿勢をとりながら身体は決して動いてはおらず、深いため息だけが聞こえてくる。信濃国小県郡小諸近く木賊を刈ることを業として独りさびしく住むこの老翁の、脳裏片時も離れないのは幼い日に別れ我が子のこと。かつての同じ秋の日夕暮何者とも知れぬ旅の男に連れ去られた一子松若想い往来旅人にその消息尋ね続け毎日を過しているのである。……ああ今日一日暮れる、我が子のたよりも知れぬままに……。享保年間観世大夫の舞った謡曲木賊』から取材したこの図は、妻子を残して草深いはるか庄内から単身江戸に上った安親にとって、自身の姿の回顧詩でもあろうか、悲嘆涙に暮れる老翁の姿が暗示深く、かつ情緒的に描かれており、鑑る者に深い感銘与えずにはいられない名作となっている。





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