日本国政府専用機
別名:政府専用機、特別輸送機
英語:Japanese Air Force
日本国において、主に政府関係者や皇族などの要人を輸送する目的で運用される、専用の航空機のこと。日本国政府が所有し、航空自衛隊が維持管理を行っている。
日本国政府専用機は、主に首相など要人の外遊にあたって用いられており、国内での移動に用いられることはほとんどない。日本国政府専用機の機内には「事務作業室」や「会議室」などが設けられており、地上と同様に執務を行うことができる環境が整えられている。また、機内で記者会見を行うこともでき、記者団が政府専用機に同乗することもある。2014年3月現在、政府は2機の政府専用機を保有しており、両機の同時飛行により、片方が故障した場合にも外交日程に支障が生じないような仕組みがとられている。
政府専用機は、要人の外遊以外の用途で運用されることもあり、2004年には北朝鮮による拉致被害者が政府専用機で帰国した出来事があった。また、政府専用機は、自衛隊法第84条に規定される「在外邦人の緊急輸送」の手段として利用されることも想定されている。2013年1月に発生したアルジェリア人質拘束事件に際して、初めてこの目的で政府専用機の派遣が行われ、事件被害者が政府専用機に乗って帰国した。
日本国政府専用機の機体としては、1991年の導入当初から、米国ボーイング社の747-400が長らく用いられてきた。2014年3月現在、この機体は、燃料効率の悪さなどを理由に退役が予定されており、後継機としてはボーイング777-300あるいはエアバスA350が選ばれる可能性が高いといわれている。
関連サイト:
政府専用機について - 防衛省・自衛隊
日本国政府専用機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/22 01:02 UTC 版)
日本国政府専用機(にほんこく/にっぽんこくせいふせんようき)は、日本国政府が所有・運航を行い、皇族や政府要人の輸送、在外の自国民保護などのために使用される航空機(政府専用機)である。防衛省の航空自衛隊が管理および運用している。
注釈
- ^ なお、この英国訪問に際しては主務機はロンドン・スタンステッド空港を、副務機はベルギー・ブリュッセル国際空港を利用した。
- ^ 自衛隊機は日本の航空法の適用を受けず(自衛隊法第107条)、パイロットの養成は自衛隊が国土交通省の指定養成所となっているため教育訓練において、航空法での航空従事者技能証明である事業用操縦士の国家試験を受験して事業用操縦士免許を取得する。本機パイロットはさらに1年に及ぶ部外委託教育により、航空法での航空従事者技能証明である事業用操縦士免許(ボーイング777-300ER型限定)を取得している。
- ^ 自衛隊機は、検査(点検・整備)の場合も航空法の適用を受けず、自衛隊独自の検査の体制があるため、航空法での航空従事者技能証明である航空整備士免許を取得しなくても検査できるが、ここでの航空機整備幹部は2年半に及ぶ部外委託教育により、航空法での航空従事者技能証明である一等航空整備士を取得しており、航空整備員は部隊配属後に部外委託による教育を受ける。また資格者を技術曹として受け入れる制度もある。
- ^ 部外委託も含む10カ月の訓練により、国家資格である運航管理者を取得している
- ^ 部外委託も含む10カ月の訓練により、無線従事者である航空無線通信士を取得している。当機の航空機局を含む自衛隊のレーダーおよび移動体の無線設備は電波法の適用を受けない(自衛隊法第112条)ため、本来は航空通信士の搭乗を要しないが、必ず有資格者が搭乗している。資格者を技術曹として受け入れる制度もある。
- ^ 部外委託も含む10カ月の訓練により、国家資格である運航管理者を取得している。
- ^ 航空自衛隊に客室乗務員業務のノウハウはなかったので、担当の自衛官は運航ハンドリングを委託している日本航空(JAL)に約3カ月間出向してサービス技能の研修を受けていた。
- ^ 往路はお召し列車と青函連絡船の洞爺丸を用いた。
- ^ 全日本空輸(ANA)の国際線運行開始は1986年。
- ^ 2007年5月8日、麻生外相が閣僚懇談会で、緊急時の機動性などを理由に小型の政府専用機導入を提案したことが報じられた。ロシアのエリツィン前大統領の葬儀に日本の首脳特使が派遣できなかった事態を踏まえたもの。小型の政府専用機候補としてボーイング C-40 (737-700)、エアバスA320、ガルフストリーム IVなどが候補としてあげられている
- ^ アメリカ大統領が米国内の地方都市を訪れる際、VC-25は乗り入れが不可能でVC-137BやC-9を使用することも多い。日本政府がボーイング747-400の導入を閣議決定した1987年当時、日本から米国東海岸や欧州へ無寄港で飛行可能な唯一の機種で、同じ理由で日本航空(JAL)はボーイング747を世界一多く保有していた。
- ^ 2002年4月の小泉純一郎内閣総理大臣の東ティモール訪問の際、首都ディリのプレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港の滑走路が短かったため、政府専用機での直接訪問ができず、ジャカルタまでの運航となった。
- ^ 2009年2月、麻生太郎内閣総理大臣とドミートリー・メドヴェージェフロシア連邦大統領との日露首脳会談が、ロシア連邦サハリン州ユジノサハリンスクで開催された。麻生総理は、当初政府専用機で現地入りする予定であった。しかしユジノサハリンスク空港の滑走路幅が狭く、着陸が不可能であるとして、政府専用機での現地入りを取りやめた[1][リンク切れ]
- ^ 総理大臣の外遊に報道各社の同行記者が同乗し、機内で記者会見が行われることもある。
- ^ 特に、北部方面隊普通科に所属する軽武装の陸上自衛官の緊急輸送。
- ^ もし本国で緊急事態が発生した場合、迅速な情報収集に支障が出るばかりか、本国政府機関と首脳との交信が他国に筒抜けになってしまうため。
- ^ a b 納入時は政府保有民間機として機体記号 JA8091 と JA8092 で登録訓練運用されていたが、自衛隊への移管時に軍用機扱いとなり、20-1101と20-1102の機体記号識別番号が与えられた。[要出典]
- ^ 公式に「JF」をコードとして利用しているのはタイのジェットアジア・エアウェイズである。
- ^ “Cygnus”(シグナス、意味は「はくちょう座」)は特別航空輸送隊所属機のコールサイン
- ^ "planeta" スペイン語やポルトガル語で「惑星」を意味する
- ^ ボーイングのカスタマーコードは747-47Cで、末尾の「-7C」が「日本国政府」を表す。自衛隊では B-747-400で、「B-」が「ボーイング」を表す(軍用の輸送機は通常「C-」、要人輸送にも使う多用途支援機は通常「U-」ではじまる)。
- ^ 日本航空・全日空と同じ仕様
- ^ 国籍標章は左右主翼の上下と垂直尾翼の両側の計6カ所につけられており、どこから見ても日本国政府専用機だということが一目で分るよう配慮されているが、これを見た細川総理は「どこかの七つ紋みたいだね」と漏らしたという。
- ^ テレビ番組(「NEWS ZERO」など)や航空専門誌(「エアライン2014年5月号」)などで政府専用機が取材され、貴賓室などセキュリティ上重要な部分を除いて内装が度々公開されている。
出典
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- ^ 旧政府専用機B-747、2号機が離日
- ^ 旧政府専用機B-747初号機が離日 旅客型ジャンボ姿消す
- ^ 激安?! 旧政府専用機747-400が4億円で販売中
- ^ 旧747政府専用機の里帰り実現か!?ヴァージン・オービットが取得
- ^ 自衛隊法 第百条の五 (国賓等の輸送)
- ^ 自衛隊法 第八十四条の四 (在外邦人等の輸送)
- ^ 自衛隊法 第八十四条の五 (後方支援活動等)
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- ^ 貴賓室を無償貸与へ=退役の政府専用機、展示条件-空自 - 乗りものニュース
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- ^ “新政府専用機、内部を公開 来年度導入へ訓練進む”. 北海道新聞 (2018年12月7日). 2019年1月25日閲覧。
- ^ “政府機のルート筒抜け アプリに位置情報など表示”. 日本経済新聞 (2014年9月3日). 2021年4月3日閲覧。
- 1 日本国政府専用機とは
- 2 日本国政府専用機の概要
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