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三省堂 大辞林

三省堂三省堂

げんそう-きょく ―さう― 3 【幻想曲】



ピティナ・ピアノ曲事典

社団法人全日本ピアノ指導者協会社団法人全日本ピアノ指導者協会

グラズノフ : 幻想曲

【英】Fantasie Op.104

作品情報
標準演奏時間: 28m0s
  楽章曲名 演奏時間 譜例 image
1 Moderato tranquillo - Allegro 11m30s -
2 Scherzo: Allegro 5m30s -
3 Moderato - Allegro 11m0s -

出版情報作曲年: 1919-20

シューマン : 幻想曲

【英】Phantasie C-Dur Op.17

作品情報
標準演奏時間: 26m0s
  楽章曲名 演奏時間 譜例 image
1第1楽章 ハ長調 Durchaus phantastisch und leidenschaftlich vorzutragen 10m0s -
2第2楽章 変ホ長調 Massig. Durchaus energisch 7m0s -
3第3楽章 ハ長調 Langsam getragen. Durchweg leise zu halten 9m0s -
解説
シューマンピアノ曲中でも屈指の傑作で、1836年着手されている。この曲は、リスト提唱した「ベートーヴェン記念碑建立募金」に寄付するために、「ベートーヴェン記念碑のためのオボルスギリシャ貨幣寄付金の意):フロレスタンとオイゼビウスによる大ソナタ 作品12」と題して書き始められた。そして、1838年に曲は完成し、「幻想曲」という題名変更され、作品番号17として1839年出版された。
 第1楽章どこまでも幻想的かつ熱情的演奏する」ハ長調
 ベートーヴェンらしいソナタ形式書かれているが、シューマン的な手法で展開される。
 楽章終わりの方では、ベートーヴェン歌曲「遙かなる恋人に」の一部現れる。
 第2楽章中庸速さで、どこまでも精力的に」変ホ長調
 当初この楽章には「凱旋門」という標題付けられて、輝かしく壮大な行進曲となっている。
 第3楽章「ゆるやかに演奏する。どこまでも穏やかに保つ」ハ長調
 夢のように静かで、おだやかで、瞑想的な楽章ベートーヴェンピアノソナタ作品111終楽章想起させるような曲だが、シューマン風のロマンティシズム満ち溢れた曲である。

出版情報作曲年: 1836-1838 出版年: 1839 初版出版地/出版社: Breitkopf & Härtel

幻想曲

英語表記/番号作品情報出版情報
バックス幻想曲 イ短調Fantasia in A minor作曲年: 1900
ベートーヴェン : 幻想曲Fantaisie Op.77標準演奏時間: 10m0s作曲年: 1809 出版年: 1810 初版出版地/出版社Clementi
ベネット幻想曲 イ長調Fantaisie in A major op.16作曲年: 1837 出版年: 1837 初版出版地/出版社: Breitkopf & Härtel
ブルッフ : 幻想曲Fantasie Op.11作曲年: 1861刊
ブルックナー : 幻想曲Fantasie WAB.118作曲年: 1868
チェルニーツェルニー) : 幻想曲Fantasie Op.27初版出版地/出版社: Schlesinger
チェルニーツェルニー) : 幻想曲Fantasie Op.226初版出版地/出版社: Kistner
ドライショック(ドライショク) : 幻想曲Fantaisie Op.12初版出版地/出版社: Costallat
ドライショック(ドライショク) : 幻想曲Fantaisie Op.55初版出版地/出版社: Schott
フリードマン : 幻想曲Fantasiestücke Op.45
フルトヴェングラー : 幻想曲Fantasia作曲年: 1898?
フルトヴェングラー : 幻想曲Phantasie作曲年: 1900
グラズノフ : 幻想曲Fantasy作曲年: 1929-30
ゲッツ幻想曲 ニ短調Fantasie, d-moll作曲年: 1860
ギロー : 幻想曲Fantaisie初版出版地/出版社: Durand
ヘンデル幻想曲 ハ長調Fantasie C-Dur HWV 490作曲年: before 1706?
ハリス : 幻想曲Fantasy作曲年: 1954
ヒラー : 幻想曲Fantasie Op.110標準演奏時間: 12m30s初版出版地/出版社: Rieter
平井 京子 : 幻想曲Fantasy for violin and piano作曲年: 1999
カプースチン : 幻想曲Fantasia Op.115作曲年: 2003
木下 牧子 : 幻想曲作曲年: 1979
リスト : 幻想曲(ワーグナーの「リエンツィ最後護民官」からの主題による)Phantasiestück (Rienzi, der Letzte der Tribunen) S.439 ワーグナー歌劇リエンツィ』からの編曲パラフレーズ作曲年: 1859
マルティヌー : 幻想曲Fantaisie作曲年: 1929
マルトゥッチ : 幻想曲Fantaisie op.51作曲年: 1880
メンデルスゾーン幻想曲 ニ短調Fantasia d-Moll T 1作曲年: 1824 出版年: 2009 初版出版地/出版社Rom
モッテンセン : 幻想曲Phantasy op.27作曲年: 1965-66
モーツァルト幻想曲 ハ短調未完Fantasie c-Moll(unvollendet) K.396 マクシミリアン・シュタードラーによって完成させられた。モーツァルト実際に書いたのは提示部のみとされる作曲年: 1782
ラフ : 幻想曲Fantasie op.119作曲年: 1864 出版年: 1865
ラフ : 幻想曲Fantaisie op.142作曲年: 1867 出版年: 1869
ラフ幻想曲 ト短調Fantasie op.207作曲年: 1877 出版年: 1878
ライヒャ幻想曲 ホ短調Fantasia in E minor op.61作曲年: 1807 出版年: 1807 初版出版地/出版社: Kühnel, Leipzig
リース : 幻想曲Fantasia op.85-1
リース : 幻想曲Fantasia WoO.87
ルビンシテイン, アントン幻想曲 ホ短調Fantaisie, e-moll Op.77作曲年: 1866 初版出版地/出版社: Senff, Heugel
ルビンシテイン, アントン幻想曲 ヘ短調Fantaisie , f-moll Op.73作曲年: 1864 初版出版地/出版社: Senff, Hamelle
シューベルト幻想曲 ト長調Fantasie D 1標準演奏時間: 24m0s作曲年: 1810 出版年: 1888
シューベルト幻想曲 ト短調Fantasie D 9標準演奏時間: 6m30s作曲年: 1810 出版年: 1888
シューベルト幻想曲 ハ短調Fantasie D 48標準演奏時間: 15m30s作曲年: 1813 出版年: 1871
シューベルト幻想曲 ト長調Fantasie D 1B作曲年: 1810/11?
シューベルト幻想曲 ハ短調Fantasie D 2E(993)作曲年: 1811
ステンハンマル幻想曲 イ短調Fantasie標準演奏時間: 6m0s
シマノフスカ: 幻想曲 ヘ長調Fantaisie出版年: 1820 初版出版地/出版社Leipzig
シマノフスキ幻想曲 ヘ短調Fantazja Op.14作曲年: 1905 出版年: 1911 初版出版地/出版社: Piwarski
トーニ : 幻想曲Fantasia op.25作曲年: 1944
トマーシェク(トマシェク) : 幻想曲Fantasia op.32
外山 雄三 : 幻想曲作曲年: 1981
ヴォルフ, エドゥアール : 幻想曲(ドニゼッティのドン・セバスティアン)Phantasie (Don Sebastian von Donizetti) Op.98初版出版地/出版社: Breitkopf
ヴォルジーシェク幻想曲 ハ長調Fantasie Op.12出版年: 1822 初版出版地/出版社: Artaria, Vienne

バッハ : 幻想曲 ト短調

英語表記/番号作品情報出版情報
バッハ : 幻想曲 ト短調Fantasie g-Moll BWV 920
解説
 6部分から成る長大作品長いということそれ自体がこの曲の特徴であり、また欠陥でもあろう。ドイツ伝統的トッカータファンタジーに明確なT-F-T-F-Tの構造をとらないが、第2・4・5セクション両手模倣で始まる。いっぽうセクション切れ目など随所分散和音2分音符で示され、即興風の処理が求められている。鍵盤の幅をいっぱいに使う両手分散和音や摸続進行による無窮動パッセージなど、常套句多用され、並列されている。いささか冗長の感も否めない

 しかし、用いられる和音和声進行には――バッハ典型呼びがたいものが多いにせよ――色彩感ある大胆響きときおり射すように顕れる真作であるかどうかはともかく、演奏効果充分期待できる作品である。

モーツァルト : 幻想曲 ニ短調(未完)

英語表記/番号作品情報出版情報
モーツァルト : 幻想曲 ニ短調(未完Fantasie d-Moll K.397標準演奏時間: 6m30s作曲年: 1782
解説
 「幻想曲 ニ短調」は、ウィーン滞在中の1781年作曲された。曲は「幻想曲」というタイトル通り自由な形式で書かれ、冒頭序奏のような役割を果たす分散和音部分や、哀感満ち美し主題など、まさに天才的霊感遺憾なく発揮された名曲である。しかしこの曲は未完で、現在演奏される形の最後10小節は、モーツァルト死後他人の手によって補筆されたものである。その補筆当時指揮者アウグスト・ミュラーによると言われているが、正確には判っていない

バッハ : 幻想曲 ハ短調(ロンドによる)

英語表記/番号作品情報出版情報
バッハ : 幻想曲 ハ短調(ロンドによる)Fantasie über ein Rondo c-Moll BWV 918標準演奏時間: 4m0s
解説
 4小節あまりの短いロンド主題簡明な2声のテクスチュアながら、130小節超える比較長い作品である。「幻想曲」というタイトルは、当時慣例では対位法内容を指すが、ここではさらに、意表をつく組合せを生んだ想像の力をも意味するようにみえる。この中でバッハ試みたのは、ロンド形式対位法書法結合だった。この組合せに生じる原理的な困難とは、対等力関係平方向に続いていくはずの諸声部が、回帰する主題によっていわば寸断されること、また、ロンド主題エピソード部分対位法主題競合し、互いの力を殺いでしまうことにある。

 率直に言って、これらの課題作品の中で完全に解決されているとは言いがたい。各セクション確かにの上もなく滑らかに連続しているが、それは主題回帰緊張感を持った準備がなされないということである。エピソード部は模倣で始まるが、やがてロンド主題素材用いて展開するため、クプレ回帰部分)とエピソード対比曖昧になる。音域テンポ感の変化にも乏しく、楽曲全体山場とっさにはみいだせない。弾き手聴き手も愉しむためには、細かい分析が必要だろう。

 ロンド主題は曲頭のほか、第29小節、第80小節、第120小節に3回ほど登場する。このロンド主題には、更に8小節続きがある。最初エピソード(第13-27小節)ではロンド主題後半はほとんどまったく現れない。また、2回目のエピソード(第33小節以降)もいっけん関係のなさそう動機転回対位法開始する。が、この部分大半支配する四分音符シンコペーション動機は、ロンド主題後半から得られたものである。第80小節の3回目のクプレは、ロンド主題最初の2小節転回声部の上下を入れ替える対位法技法)によって拡大されている。これに続くエピソードも、クプレで用いた2小節単位転回繰り返すが、その内容ロンド主題後半および2回目のエピソードから導き出された動機である。厳格な転回は第99小節でいったん収束するが、これ以降も1小節ごとの短い転回やそれに類するパラフレーズ散りばめられている。そして、第116小節からはロンド主題前半の結びにのみわずかに聴かれた付点リズムが2小節渡って左手登場し、楽曲終わりに近いことを暗示する。左右の手の音域広がり左手長いトリルが置かれ、ロンド主題最後提示準備される。これはロンド主題後半完備し、冒頭提示と完全に一致している。

 このようにみると、バッハクプレエピソード交代するロンド形式の陰で、主題提示と展開を緻密に進めているのがわかる。

 また、よどみなく流れる2つのパートは、当時最新スタイルであるギャラント様式意識したものである。この作品は、バッハが自らの得意とする分野新し形式様式意欲的取り込んで生まれということができる。

バッハ : 幻想曲 ハ短調

英語表記/番号作品情報出版情報
バッハ : 幻想曲 ハ短調Fantasie c-Moll BWV 919標準演奏時間: 1m15s出版年: 1843 初版出版地/出版社Peters
解説
 プレラーの手稿譜に伝えられる。(ヨハン・ゴットリープ・プレラー(1727-1786)はバッハ弟子世代に当たる音楽家で、彼と兄弟弟子ヨハン・ニコラウス・メンペルが作成したオルガンクラヴィーアのための楽譜帖は、バッハ創作再構築する上で重要な資料となっている。)プレラーは作曲者を「ベルンハルト・バッハ」としており、この名に当てはまる作曲家としてはJ.S.バッハ再従兄弟アイゼナハ活動したヨハン・ベルンハルト(1676-1749)か、あるいはJ.S.バッハ夭逝した息子ヨハン・ゴットフリート・ベルンハルト(1715-1739)が考えられるアイゼナハのヨハン・ベルンハルトとする説が一般的だが、音楽内容J.S.バッハきわめて近いことから、バッハ息子の作、あるいは誤って伝えられているだけでバッハ自身作品である可能性は棄てきれない。

 全体は2声、わずか25小節簡潔作品だが、順次進行跳躍、上行下行同音反復を適度に含むバランスの取れた主題を持つ。J.S.バッハこうした可能性豊かな主題ひらめく天才だった。また、主題前半後半対位法的に組合せやりかたは、まさに「インヴェンション」と呼ぶにふさわしい。作曲者あれこれ詮議するまでもなく、短く引き締まった理知的作品である。

モーツァルト : 幻想曲 ハ短調

英語表記/番号作品情報出版情報
モーツァルト : 幻想曲 ハ短調Fantasie c-Moll K.475標準演奏時間: 12m30s作曲年: 1785 出版年: 1785 初版出版地/出版社: Artaria
解説
 ピアノ・ソナタ第14番ハ短調と共に1785年出版された。モーツァルト自作品目によればソナタ作曲84年10月14日、幻想曲は翌85年5月20日である。幻想曲は本来、導入曲としての用途があったため、この作品は、ソナタ出版に際して、その前奏のために作曲されたものと考えられる。これら2曲は現在でも1セットとして扱われることが多いが、モーツァルト自身が幻想曲のみを演奏することもあったことから、独立した2つの作品考え問題ないだろう。
 献呈はテレージア・フォン・トラットナー。当時モーツァルト借りていた家(いわゆる「フィガロ・ハウス」)の家主夫人である。彼女はまた、モーツァルトピアノ生徒でもあった。
 作品転調頻繁に繰り返し、幻想曲の名にふさわしく自由に展開してゆくが、テンポ変化によって5つの部分分けられる。すなわちアダージョアレグロアンダンティーノ、ピウ・アレグロ、アダージョである。最初アダージョはさらに、重苦しいハ短調明る響きニ長調の2つに分割できる。地から這い上がるようなこの冒頭主題最後に回帰し、ハ短調ソナタへの橋渡しとなって作品を閉じる。

ハイドン : 幻想曲(カプリッチョ) ハ長調

英語表記/番号作品情報出版情報
ハイドン : 幻想曲(カプリッチョハ長調Fantasia(Capriccio) C-Dur Hob.XVII:4作曲年: 1789 出版年: 1789 初版出版地/出版社: Artaria
解説
 1789年作曲された。冒頭モティーフを十分に用いて音楽が展開される。左右の手のユニゾンや重音、分散和音オクターヴ連続使用左右の手の間の模倣等、鍵盤楽器奏することのできる多様な音形や演奏方法散りばめられている。また、曲の全体見てみると、効果的転調が、この作品推進力推移寄与していることがわかる。


参考文献 資料
Joseph Haydn “Klavierstucke/ Klaviervariationen” ed. Sonja Gerlach, G. Henle 1997


シューベルト : 幻想曲 ハ長調(グラーツの幻想曲)

英語表記/番号作品情報出版情報
シューベルト : 幻想曲 ハ長調(グラーツの幻想曲)Fantasie(Grazer Fantasie) D 605A作曲年: 1818? 出版年: 1969 初版出版地/出版社: Bärenreiter
解説
1969年グラーツ音楽家であったルドルフ・フォン・ヴァイス=オストボルンの遺品の中から発見され、その年のうちに出版された作品(その地名に因んで《グラーツ》幻想曲と呼ばれる)。発見された譜はシューベルト自筆譜ではなかったが、彼の作品管理していたヨーゼフ・ヒュッテンブレンナーの筆跡で「フランツ・シューベルト作曲 ピアノフォルテのための幻想曲」と記されていた。作曲シューベルト21歳の1818年推定されている。

 主題シューベルトらしい牧歌的旋律オクターヴで歌われる。その後は「ポロネーズ風に」という指示による舞曲リズムをはじめ、さまざまな調と動き幻想的に展開させるが、最終的には冒頭主題回帰し、穏やかに作品を閉じる。

ショパン : 幻想曲 ヘ短調

英語表記/番号作品情報出版情報
ショパン : 幻想曲 ヘ短調Fantasie f-Moll Op.49標準演奏時間: 13m30s作曲年: 1841 出版年: 1841 初版出版地/出版社: Schlesinger
献呈先: Princese Catherine de Souzzo
解説
1839年よりジョルジュ・サンドと過ごしたノアンの地で、ショパン数多く傑作を生み出した。1841年10月20日ショパンはノアンからパリにいる友人フォンターナ宛てて、「今日ファンタジア》が終わった」と記している。41年前後ショパンは、健康的にも、またサンドとの関係においても非常に充実した時期にあり、この《幻想曲》作品49のほか、《タランテラ作品43、《ポロネーズ 嬰ヘ短調作品44、《プレリュード作品45、《演奏会用アレグロ作品46、《バラード第3番作品47、ふたつの《ノクターン作品48といった作品を生み出している。そのため各曲は互いに影響しあい、性格的小品分類される器楽ジャンル薄めとともにそれぞれ深み自由度増している。

器楽作品に用いられるファンタジーファンタジア)という名称は古くからの歴史をもつ。19世紀においてピアノ独奏曲としての「ファンタジア」は珍しくないが、ショパンがこの言葉に明確なジャンルとしての意識を抱いていたかは疑問である。直前作曲された《ポロネーズ作品44について、ショパン当初ポロネーズ形式の《幻想曲》」あるいは「ポロネーズ一種というより、幻想曲です」ということを書いている。また晩年傑作幻想ポロネーズポロネーズ=幻想曲)》の存在からも、ショパンポロネーズと幻想曲を非常に近い存在ととらえ、「幻想曲」という形態に、即興的色彩はもちろんのこと、祖国ポーランドへの想い幻想を自由に表現するという役割を付していたようである。

結局ショパン唯一の《幻想曲》となった作品49は、へ短調始まり変イ長調で終わる。全体ソナタ形式風にとらえれば、序奏Tempo di marcia)、提示部agitato68小節~)、展開部143小節~、途中Lento sostenutoエピソードを挟む)、再現部236小節~)、コーダ309小節~)となろう。しかし幻想曲のタイトルにふさわしく、調と楽想の自由な交錯として解釈した方が自然である。「行進曲テンポTempo di marcia」と指示されたへ短調導入部は、葬送行進曲のような暗い影に覆われ、一拍ごとに和音付けられて重々しく進む。一方Assai allegro指示された変イ長調コーダ部(322小節~)は三連符アルペジオ々しく上り詰め勝利宣言であるかのように終わる。このふたつの調、ふたつの楽想ショパンポーランド対するふたつの幻想的心情としてこの作品支配しているように思える三連符の走句は即興的変化伴って楽曲構成するとなる主題支え68小節~、155小節235小節)、あるいは移行部として機能する(43小節~、143小節~、223小節~)。また和音による楽想は、行進曲風の移行部を形成するかと思えば127小節~)、「Lento sostenuto」のテンポ表示とともに抒情的な旋律切々と歌い上げる199小節~)。形式性と即興性を兼ね備え不均等対称性を保ちながらポーランドへの思いを自由に謳いあげた《幻想曲》は、ショパン独特の世界作り上げるとともに、《幻想ポロネーズ》へと連なる傑作群の中心存在位置づけられよう。


参考文献 資料
アーサー・ヘドレイ編『ショパン手紙小松雄一郎訳、白水社2003年
Jim Samson ed. Chopin Studies. Cambridge University Press, 1988.


ドライショック(ドライショク) : 幻想曲 ヘ短調

英語表記/番号作品情報出版情報
ドライショック(ドライショク) : 幻想曲 ヘ短調Fantaisie, F-dur Op.31初版出版地/出版社: Schott
解説
第1楽章Andante 2/4拍子

展開部のないソナタ形式それぞれ部分展開部を必要としないぐらいドラマティック

序奏ヘ短調):悲愴だが劇的開始を告げる。

■第1主題ヘ短調):行進曲風の荘重メロディー印象的

■第2主題ハ短調):ショパンの『革命』の左手パッセージが何と右手登場し、圧倒されるテクニカルワークを展開する。

■第1主題再現(へ短調):行進曲風のメロディが、三連符伴奏支えられながら歌われる。

■第2主題再現ヘ短調):さらにヒートアップした『革命』のパッセージ縦横無尽活躍する。

コーダヘ短調):第2主題トリルとともに頂点上り詰める最後二重オクターブの嵐と『革命』が打ち鳴らされて締めくくる



第2楽章:Veloce 6/8拍子

主部(変二長調):第1楽章とは打って変わって平和で穏やかな楽章。 さわやかなそよ風のようなテーマ軽やか登場

中間部変ホ短調):哀愁を帯びたメロディー印象的

主部再現(変二長調):主部同様のメロディーが再び歌われる。

トリオ変ロ短調):優雅オクターブ戯れる

主部再現(変二長調

■第2トリオ変ロ短調):トリオ同様オクターブ中心で踊られる。

主部中間部主部繰り返され終わる。



第3楽章Allegro spiritoso

展開部のないソナタ形式それぞれ部分展開部を必要としないぐらいドラマティック

悲しみ激情疾走

第1主題ヘ短調):疾走する左手の上に、悲しみが歌われる。しかし感傷浸るまもなく、次々と襲い掛かる心の葛藤オクターブ七変化ともいうべき、さまざまな展開が施される

第2主題変イ長調):唯一希望の光差し込んでくる。主題確保は、オクターブ朗々と奏でられる。 後半では新しい精神溢れた第3主題華やか打ち上げられる。

第1主題再現変ロ短調):再び疾走する悲しみ激情。さらにオクターブテクニカルな展開になっている。

第2主題再現変イ長調):雪崩れ込んできた第1主題牽引された第2主題は、さきほどとは打って変わってパワーアップを図る。そこでは希望の光勝者ファンファーレ昇格し、高らかに歌い上げられる。

コーダヘ短調):すべてオクターブで彩られる。二重オクターブ分散オクターブ、リスト・オクターブ。最後激情の嵐大伽藍の鐘が打ち鳴らされ見事に終結する。

リストのライヴァル、ドライショックにふさわしい技巧的であるが精神的極めて高い内容を持った曲。ロマン派の大ピアニストヴォルフヘンゼルトリストローゼンハイムデーラーショパンタールベルクらと戦うための武器倉庫となった曲でもある。

シューベルト : 幻想曲 ヘ短調

英語表記/番号作品情報出版情報
シューベルト : 幻想曲 ヘ短調Fantasie D 940標準演奏時間: 17m0s作曲年: 1828 出版年: 1829
解説
 シューベルト最期の年、1828年ピアノ連弾作品彼の数多い連弾曲の中でも、高い音楽内容をもつ傑作と称される。献呈は、出版社によって、シューベルト2度のジェリズ赴任ピアノ教えエステルハージ伯爵家の下の娘カロリーネになされた。

 作品は、切れ目なく続く3つの楽章から成るが、実質的には4部分構成いえよう。暗く陰鬱であるが魅力的な第1楽章冒頭主題が、第3楽章後半回帰し、やがてフーガを展開して作品を閉じるといった、構成的にも整った作品である。

スクリャービン(スクリアビン) : 幻想曲 ロ短調

英語表記/番号作品情報出版情報
スクリャービン(スクリアビン) : 幻想曲 ロ短調Fantaisie Op.28標準演奏時間: 8m30s作曲年: 1900 出版年: 1901 初版出版地/出版社Belaïev
解説

演奏花田 えり佳
スクリャービン作品群は一般的に、主にショパン風のピアノ小品数多く作った初期(~1989)、リスト・ワーグナーの影響を受け調性にとどまりながらも神秘和音使い始め独自の作風試み中期(~1908)、そして自分芸術神秘主義思想を結びつけ、さらに音と色彩の合一をめざした後期(~1915)の三つ分類されるが、190001にかけて作られたこの作品初期集大成ともいえる壮大な曲想を持っている。まだショパン後期ロマン派的な濃厚感情表現随所見られるが、冒頭提示させた短二度モチーフをたった数小節の間に異常な緊張感をともなった長七度にまで発展させるところに中期後期作品みられる深い神秘性を垣間見ることができるだろう。彼自身20前半右手をこわしたせいか、特に左手連続するオクターヴ跳躍や広いアルペジオパッセージ現れ技術的に非常に困難な曲だが、それ以上に美しく流れ官能的メロディースクリャービン独特の躍動感あふれる付点を含む三連符リズムなど様々な魅力的要素がちりばめられ、さらにリストワーグナー交響楽的な重厚さ、自在に動くいくつも入り組んだ旋律線なども合わせ持った、非常に聴き応えのある作品である。

メンデルスゾーン : 幻想曲 嬰ヘ短調 (スコットランド・ソナタ)

【英】Fantasie (Sonate écossaise) fis-Moll Op.28

作品情報
標準演奏時間: 14m30s
  楽章曲名 演奏時間 譜例 image
1 第1楽章 Mov.1 Con moto agitato: Andante 5m30s -
2 第2楽章 Mov.2 Allegro con moto 2m30s -
3 第3楽章 Mov.3 Presto 6m30s -
解説
1830年ワイマール滞在中、メンデルスゾーンゲーテのもとを訪れ、そこで演奏したうち一曲が、この《幻想曲 嬰ヘ短調「スコットランド・ソナタ」》であったとされている。メンデルスゾーン1828年に《スコットランド・ソナタ》という曲の作曲をはじめ、その後5年間、これを書きなおし続けた。そして、1834年出版したものが、この《幻想曲 嬰ヘ短調「スコットランド・ソナタ」》である。

全3楽章からなり全曲通して演奏される。

第1楽章:嬰へ短調 4分の2拍子 コン・モート・アジタート―アンダンテ

冒頭小節にわたるアルぺッジョの序奏(コン・モート・アジタート)からはじまる。アンダンテ主部につづき、登場するアルぺッジョの挿句は、徐々に勢い音量増しクライマックス形成する。大きな変化加えられた再現部が奏されたのち、序奏アルペジオが再び現れ幻想的に曲をとじる。

第2楽章イ長調 2分の2拍子 アレグロ・コン・モート

およそA-B-Aの形によっており、スケルツォ的な性格をもつ。対位法的な技法が用いられた短い楽章

第3楽章:嬰へ短調 8分の6拍子 プレスト

即興的性格が強いが、およそソナタ形式によっている。第一主題は、6連音符下降音形からなりめまぐるしく動く。第2主題は、オクターブでゆったりとうたわれる。6連音符は、一曲全体を貫いており、その音形の変化によってさまざまな表情がうみだされている。情熱的終曲

出版情報作曲年: 1833 出版年: 1834 初版出版地/出版社Simrock
献呈先: Ignaz Mosheless


ウィキペディア

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幻想曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2011/09/17 12:23 UTC 版)

幻想曲(げんそうきょく)とは楽曲の名称の一つ。その様相はバロック時代以前と以後で一変する。

初期バロック時代以前に作曲された幻想曲=ファンタジア(Fantasia)は模倣様式による器楽曲形式の一つ。フーガと同様に多声部のための作品で、曲の冒頭で一つの声部に示された主題が次々と他の声部に模倣される。複数の主題を持つものも多い。リチェルカーレカンツォーナなど他の模倣楽曲と明確な区別は無かった。ルネサンス時代に多く作品が見られるが、フーガの確立とともにファンタジアの名称は用いられなくなった。

後期バロック時代及びそれ以降の幻想曲は、形式が自由ではっきりと定まっていない楽曲であり、トッカータなどと同様に即興的性格をもつ作品を指した。ロマン派からは性格的小品から実質的なソナタである大規模な作品まで多様な曲が作曲された。




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