屠蘇

デジタル大辞泉

とう‐そ【^×屠^×蘇】

読み方：とうそ

「とそ」の音変化。

「医師(くすし)ふりはへて—、白散(びゃくさん)、酒加へて持て来たり」〈土佐〉

と‐そ【^×屠^×蘇】

読み方：とそ

１ 「屠蘇散」の略。

２ 屠蘇散を浸したみりんや酒。延命長寿を祝って年頭に飲む。また、年頭に飲む祝い酒。「—を祝う」《季 新年》「甘からぬ—や旅なる酔心地／漱石」

難読語辞典

屠蘇

読み方：トソ（ｔｏｓｏ）

元旦に、一年の邪気を払い延命を願って飲む薬酒

季語・季題辞典

屠蘇

読み方：トソ（ｔｏｓｏ）

酒に浸して新年に飲む薬。サンショウ、ボウフウ、ニッケイ、キキョウ、ビャクジュツ、ミカンの皮、赤アズキなど調合したもの

季節 新年

分類 人事

ウィキペディア

屠蘇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2024/02/18 02:04 UTC 版)

屠蘇器（漆器製）。左が盃台に載せられた盃、右が銚子。

屠蘇（とそ）または、お屠蘇（おとそ）とは、一年間の邪気を払い長寿を願って正月に呑む縁起物の酒であり風習である。

概要

「屠蘇」とは、「蘇」という悪鬼を屠（ほふ）るという説や、悪鬼を屠り魂を蘇生させるという説など、僅かに異なる解釈がいくつかある。中国の後漢の時代に華佗が発明した薬酒であり、平安時代初期の嵯峨天皇の時代に日本に伝来したとされる^[1]。また、唐時代の名医である孫思邈（孫思獏）が考えたという説があり、孫思邈が住んでいた草庵「屠蘇庵」でふるまい定着したとされる^[2]。

数種の薬草を組み合わせた屠蘇散（とそさん）を赤酒・日本酒・みりんなどに浸して作る。

屠蘇は、通常、屠蘇器（とそき）と呼ばれる酒器揃えによって供される。屠蘇器は、屠蘇散と日本酒・味醂を入れる銚子（ちょうし）、屠蘇を注ぐ盃、重ねた盃をのせる盃台、これらを載せる盆からなる。屠蘇器には、漆器製、陶磁器製、ガラス製など様々な種類がある。

小・中・大の三種の盃を用いて飲むが、「一人これを呑めば一家疾無く、一家これを呑めば一里病無し」と言われ、日本の正月の膳などに呑まれる。

元日の朝、年少の者から年長の者への順に飲む^[3]。

屠蘇散

屠蘇散の一例

日本酒に溶け込んだ屠蘇散

屠蘇散の処方は『本草綱目』では赤朮・桂心・防風・菝葜・大黄・烏頭・赤小豆を挙げている。現在では山椒・細辛・防風・肉桂・乾姜・白朮・桔梗を用いるのが一般的である。人により、健胃の効能があり、初期の風邪にも効くという。時代、地域などによって処方は異なる。

漢方薬と同様、ある人物の胃弱や風邪に効いたからといっても、他者にあてはめるのは危険である。白朮ひとつとっても、むくむほど水分滞留体質の人にはよいが、水分不足体質や水分代謝機能の高い体質の人が飲むと、炎症悪化や血行不良等につながる恐れがある。生薬や屠蘇散の処方に関する専門知識を有する者に、飲用の是非を尋ねることが望まれる。もしくは食用レベルにまで処方量を減らし、薄めることが無難である（疾病に対し医師より処方される医薬品漢方は、煎じ薬換算で＝一日分量20g程度。これに対し市販の屠蘇散の一回量は1割程度の2g程度であるため、食用範囲であり、かつ医薬効能は見込めない“気休め”程度である）。

風習

正月に屠蘇を呑む習慣は、中国では唐の時代から確認できるが^[4]、現在の中国には見当たらない^[5]。 日本では平安時代から確認できる。

廿九日、大湊にとまれり。くす師ふりはへて屠蘇白散酒加へてもて來たり。志あるに似たり。元日、なほ同じとまりなり。白散をあるもの夜のまとてふなやかたにさしはさめりければ、風に吹きならさせて海に入れてえ飮まずなりぬ。芋し（もカ）あらめも齒固めもなし。かやうの物もなき國なり。求めもおかず。唯おしあゆの口をのみぞ吸ふ。このすふ人々の口を押年魚もし思ふやうあらむや。今日は都のみぞ思ひやらるゝ。「九重の門のしりくめ繩のなよしの頭ひゝら木らいかに」とぞいひあへる。 —  紀貫之「土佐日記」

宮中では、一献目に屠蘇、二献目に白散、三献目は度嶂散を一献ずつ呑むのが決まりであった。貴族は屠蘇か白散のいずれかを用いており、後の室町幕府は白散を、江戸幕府は屠蘇を用いていた^[6]。この儀礼はやがて庶民の間にも伝わるようになり、医者が薬代の返礼にと屠蘇散を配るようになった。現在でも、薬店が年末の景品に屠蘇散を配る習慣として残っている^[6]。

年末が近くになると一部の薬局・薬店でティーバッグタイプの屠蘇散が販売・もしくは味醂に添付されている場合がある。日本酒・味醂などをコップなどの容器に注ぎ、袋に入った屠蘇散を大晦日の夜に浸けて元旦に頂く（生薬が原料で独特の香りと味がする。好みによって酒類や砂糖などの甘味を調製する）。

その他

• 小笠原流の伝書に調合法が記されており、一日目を「屠蘇散」、二日目は「白散（びゃくさん）」、三日目を「度嶂散（どしょうさん）」と呼び、それぞれ生薬の調合が異なり、微妙に味も違うとされる^[7]。

画像一覧

• 
  神社で振る舞われるお屠蘇
• 
  屠蘇を作るための屠蘇散のティーバッグ
• 
  屠蘇散
• 
  屠蘇器（漆器製）

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、屠蘇に関連するカテゴリがあります。

• 正月
• 御節料理
• 灰持酒 - 製法や味わいがみりんに似る^[8]。産地周辺で屠蘇用の酒として使われている。
• 福茶
• グリューワイン - 香辛料入りのワイン。クリスマスの時期に賞味する。

脚注

1. ^ 国税庁　その他のお酒に関するもの
2. ^ 生薬ものしり事典【2018年1月号】1年の邪気を払う「屠蘇」 出典：牧幸男『植物楽趣』 サイト：養命酒製造株式会社
3. ^ お屠蘇
4. ^ 「中国古代の年中行事　第一冊　春」p94　2009年　中村裕一著　汲古書院　なお、同書では、梁の「荊楚歳時記」における屠蘇酒への言及は、青木正児・中村喬らが既に指摘するように、後代のものの混入であり、恐らく隋の杜公瞻の注に基くのではないかとしている。（そうであれば屠蘇酒の習慣は隋に遡ることができる。）
5. ^ 「中国古代の年中行事　第一冊　春」p90
6. ^ ^{a b} 「年中行事事典」p542　1958年（昭和33年）5月23日初版発行　西角井正慶編　東京堂出版
7. ^ 小笠原敬承斎 『武家の躾 子供の礼儀作法』 光文社新書 2016年 ISBN 978-4-334-03942-4 p.156.
8. ^ 税制上も「みりんに類似する」ことになっている。

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屠蘇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2021/10/04 10:53 UTC 版)

「福岡薬工社」の記事における「屠蘇」の解説

「甘からぬ屠蘇や旅なる酔心地」夏目漱石の句にも詠まれた屠蘇。 正月に無病長寿を願って飲まれる屠蘇の由来は、「蘇」という悪鬼を屠る（屠＝ほふる。相手を倒すの意）という説や、邪を屠り生気を「蘇生」させるという説がある。現代では屠蘇を飲むというと、単に日本酒を飲むことを指す場合もあるが、本来、屠蘇とは「屠蘇散（とそさん）」または「屠蘇延命散」と呼ばれる５～１０種類の材料を配合したようなものを漬け込んだ酒のことで、唐の時代の中国より伝わり、平安貴族の正月行事にしようされていたとのこと。江戸時代には一般庶民も口にするまでに広まった。 酒、又はみりんに働きを活発にする作用や解熱発汗作用、鎮静作用のあるものが多く、これらの効能から考えると、胃腸の働きを整え、消化吸収を促進する。体を温め風邪を引かないようにする効果のある薬用酒とされている。

Weblio日本語例文用例辞書

「屠蘇」の例文・使い方・用例・文例

• 彼は屠蘇機嫌だ
• 屠蘇散をひたした酒
• 屠蘇酒で心地よく酔っている状態
• 屠蘇散という,サンショウやニッケイなどの薬草を交ぜ合わせた薬
• 屠蘇の酒に浸す屠蘇散を入れた袋
• サンショウ,キキョウ,ニッケイなどを刻んで入れた屠蘇