小さい手のためのピアノ曲集とは? わかりやすく解説

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中田 喜直:小さい手のためのピアノ曲集

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
前奏曲 No Data No Image
うれいと悲しみと No Data No Image
チェルニー1番 No Data No Image
走れ・ホ調 No Data No Image
お人形の子守歌 No Data No Image
3度練習曲 No Data No Image
変奏練習曲 No Data No Image

作品解説

2007年8月 執筆者: 齊藤 紀子

前奏曲
 変イ長調書かれこの前奏曲について、作曲者自身が、本当に一番初めに弾く準備運動のような前奏曲述べている。そして、いきなりその曲のテンポ弾かずに、まずはゆっくりと美しい音で、それから次第速くしていくようにと付している。実際、曲の冒頭には「アダージョからアレグレットまで」と記されている。更に、準備運動ふさわしく、4分の4拍子のこの曲は、右手8分音符左手全音符開始し途中で両手8分音符になった後、再び、左右何れかの手長い音価奏する形に戻って曲を閉じる。従って、この作品には教育目的もあると言えるであろう

うれいと悲しみ
 タイトルには示されていないが、作曲家自身により、ノクターン作品とされている。そして、冒頭には「アダージェット 静かに 落ち着いて」と記されている。嬰ハ短調のこの作品は、左右の手が同じ音を時差で弾く箇所があり、その際右手メロディーライン途切れないようにすることが求められている。また、途中で自由な速さで」と記され、広い音域下降した上昇したりする音階挿入されている。この音階一息でないこともあり、タイトルから思い浮かべるイメージ通じるものがある。更に、このように挿入される部分概してfであり、その他の部分はpを中心としている。従って、この2種類パッセージは、「性格」の異なるもの、即ち、「うれい」と「悲しみ」と捉えることができるであろう。

チェルニー1番
 チェルニー30番の1番の右手半音上げたものに、作曲者による左が添えられ一種編曲である。その際原曲のような完全な練習曲ではなくメロディー美しさ楽しさ生み出すよう心がけたそうである。実際に、曲の終わりには、9小節から成るコーダ付け足されており、原曲より更に、作品としての「曲」に近づこうとしていることがわかる。 

走れ・ホ調
 副題にあるとおり、4分の3拍子、8分の6拍子、8分の9拍子絶え間なく入れ替わるアッレグレットの作品である。また、作曲者自身により、「演奏会用練習曲」とされている。タイトルに「ホ調」とあるのは、ホ短調始まりホ短調で曲を閉じるが、中間ホ長調部分を持つためであろうまた、カンタービレ記され部分が2回挿入されている。そのような部分では、拍子変化による拍の多様なカウントで「走る」その他の部分との対比を築くことが求められるであろうまた、左右の手で拍のカウント異な部分もあり、へミオラやポリ・リズム練習適していると言える。しかし、特筆すべきことは、そのような事柄が、リズム練習適した簡素な音形によりながら、音楽的なおもしろみ兼ね備え、「演奏会練習曲」として完成されていることであろう

お人形の子守歌
 この作品では、メロディー伴奏明確に分けられているため、メロディー際立たせるための曲であると言えるとりわけメロディーは必ずしも最上声にあるとは限らないまた、伴奏といえども時折半音階的進行対旋律隠されているため、メロディー際立たせつつ、そればかりに気をとらわれないようにすることも大切である。冒頭には、「ラルゴ ゆっくり おちついて 美しく」と記されており、小さな子供にこれらのことを伝えようとする作曲者意図うかがえる

変奏練習曲
 1966年に、桐朋学園大学音楽学部付属子供のための音楽教室」のために作曲された。主題9つ変奏から成る初め8つ変奏であったが、後に1つ付け加えられた)。イ短調書かれているが、日本の音階に基づくメロディーイ短調和声づけしているといったほうがふさわしいであろう

 主題は4分の4拍子で、「ソステヌート 堂々と」と記されている。13小節と短いながらに、3部形式書かれている
 続く第1練習変奏)曲は、同じく4分の4拍子で、メロディー左手見られる再現では、右手メロディーが戻る。
 第2練習変奏)曲は、4分の4拍子、4分の3拍子、4分の5拍子混在している。そして、片手音階両手音階両手の反行する音階中心としている。
 第3練習変奏)曲は、4分の3拍子であるが、左右共にヘミオラポリ・リズム見られ規模もやや大きくなる。この変奏終結音にはフェルマータ付されている。
 第4練習変奏)曲では、イ長調和声づけされている。拍子も2分の3拍子となり、冒頭に「美しく、うたうように」と記されている。また、用いられるディナーミクの幅がp-ff幅広くなる。この変奏終結音にもフェルマータ付されている。
 第5練習変奏)曲では、アレグロとなり、イ短調による和声づけに戻る。拍子は4分の4拍子で、推進力のある変奏となっているが、4拍目に4分音符置かれることが多くせき止められながら進む感じ醸し出されている。
 第6練習変奏)曲は、ff開始し、7連音符によるユニゾン音階特徴的である。また、8小節目の最後の音にフェルマータ付されその後ダブル・バーを挟んで、リタルダントの指示された3小節が続くことも興味深い
 第7練習変奏)曲では、一転して、「アダージョ・エスプレッシーヴォ ゆっくり落着いて 充分に表情をこめて」となる。拍子も4分の3拍子となり、この変奏終結させる音にはフェルマータ付されている。全体的に多声的に書かれているまた、上行音形で終結することが非常に印象深い
 第8練習変奏)曲では、一転して、「プレスト 非常に速く」となる。主題様々な音高分割されていることが特徴的である。2分の2拍子8分音符による3連音符中心としているが、この変奏最後は、上行形の5連音符積み重ね上昇していく。また、この変奏終結音にはフェルマータ付されている。
 第9練習変奏)曲は、この作品全体フィナーレで、一転して、「マエストーソ」となる。実際に重厚な和音書かれており、幅広い音域の間を跳躍するまた、第6練習変奏)と同様にff開始するイ短調による和声づけが支配的であったこの作品全体は、この変奏最後ハ長調主和音閉じる。

 以上のように、曲全体終わり近づくにつれて、各変奏間の性格の変化がより色濃く強調されていく構成になっている

中田喜直 『小さい手のためのピアノ曲集』 音楽之友社 1991年




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