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子泣き爺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/05/02 20:08 UTC 版)

(ごぎゃ啼き から転送)

境港市水木しげるロードに設置された子泣き爺のブロンズ像

子泣き爺児啼爺(こなきじじい)は、徳島県山間部の妖怪

目次

概要

民俗学者・柳田國男の著書『妖怪談義』に記述のある妖怪の一つで、本来は老人の姿だが、夜道で赤ん坊のような産声をあげるとされている[1]

一般には、泣いている子泣き爺を見つけた通行人が憐れんで抱き上げると、体重が次第に重くなり、手放そうとしてもしがみついて離れず、遂には命を奪ってしまうとされている[2]。書籍によっては、子泣き爺は石のように重くなることで抱き上げた人間を押し潰すなどと記述されている[3]。しかし柳田はこうした特徴について、おばりよん産女に近いものとして、創作と指摘している[1][4]

民間伝承の会」(現・日本民俗学会)の機関誌『民間伝承』第4巻第2号に寄せられた論文「山村語彙」には三好郡三名村字平(現・三好市)の口承として「子供の泣声を真似る怪」と記述されているのみである[5]

正体

徳島県阿南市の郷土史家・多喜田昌裕によれば、伝承地とされる徳島県地方では、実際には子泣き爺の伝説は存在しないことが判明している。一方で徳島の伝説を採取した書籍『木屋平の昔話』には、山中で不気味な赤ん坊の声で泣く妖怪[6]、人間が抱き上げると重たくなって離れない妖怪などのことが記されているため[7]、これらの妖怪譚が一体となって子泣き爺の話が生まれた可能性が示唆されている[8]

さらにその後の多喜田の調査によれば、『民間伝承』第4巻第2号の口承のあった地では、かつて赤ん坊の泣き声を真似た奇声をあげる実在の老人が徘徊しており、子供にとって非常に不気味な存在だったため、子供を親が叱る際に「(その老人の名)がやって来るよ」と使われていた[4][8]。そのため、実在の人物であるこの老人が前述のような声の妖怪と結びついたか[8]、もしくは郷土史家による採集結果が柳田國男に報告される過程で、実在の人物であることなどの多くの情報が錯綜・脱落し、さらにおばりよんや産女の伝承が混同された結果として子泣き爺の特徴が形作られた、といった推測もある[4]

これらの説に基くと、民俗学的観点から見れば子泣き爺という妖怪が存在することは疑問ということになるが、昭和平成以降では多くの書籍で妖怪として紹介されていることなどから、子泣き爺が一般的に妖怪として認められていることも事実だと、妖怪研究家・京極夏彦は述べている[4]。特に漫画『ゲゲゲの鬼太郎』で主人公・鬼太郎をサポートする名脇役として描かれて以降は、正義の妖怪として一躍有名な存在となっている[9][10]

史跡

2001年には多喜田昌裕と地元の有志団により、徳島県三好郡山城町(現・三好市)が伝承の発祥地と認定され、現地には「児啼爺」の名の石像と、京極夏彦による「児啼爺の碑」が建てられ、同年に山城町にて除幕式が行われた[11]。妖怪ファンにとっては新たな注目地となっている[10]

2010年には三好市市内の道の駅大歩危に妖怪ミュージアムとして「こなき爺の里・妖怪屋敷」がオープンし、多くの入場客を呼んでいる[12]


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  1. ^ a b c 綜合日本民俗語彙』第2巻、577頁。
  2. ^ 柳田國男「妖怪名彙」、『民間伝承』第3巻第10号、民間伝承の会、1938年6月、 12頁。
  3. ^ a b 幻想世界の住人たち』IV、101-102頁。
  4. ^ a b c d 妖怪の理 妖怪の檻』、472-475頁。
  5. ^ 武田明「山村名彙」、『民間伝承』第4巻第2号(通巻38号)、民間伝承の会、1938年11月、 8頁。
  6. ^ 芝原富士夫 『木屋平の昔話』 教育出版センター、1978年、385頁。
  7. ^ 『木屋平の昔話』、245頁。
  8. ^ a b c 妖怪伝説奇聞』、246-254頁。
  9. ^ 宮本幸江・熊谷あづさ 『日本の妖怪の謎と不思議』 学習研究社2007年、42-43頁。ISBN 978-4-056-04760-8
  10. ^ a b 津々浦々「お化け」生息マップ 雪女は東京出身? 九州の河童はちょいワル?』、87頁。
  11. ^ 小西昌幸 (2001年12月4日). “文化ジャーナル12月号 山城町に「子なきじじい」石像 建立”. 北島町HOMEPAGE. 北島町役場総務課. 2008年4月15日閲覧。
  12. ^ 平田政廣「こなき爺の里「妖怪屋敷」においでや!」、『』vol.0030、角川書店、2010年7月、 384頁、 ISBN 978-4-04-885071-1
  13. ^ 武藤致和編著 「南路志」『日本民俗文化資料集成』第8巻、谷川健一編、三一書房1988年、322頁。ISBN 978-4-380-88527-3
  14. ^ 山田野理夫 『東北怪談の旅』 自由国民社1974年、209-210頁。


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