南極海捕鯨事件とは? わかりやすく解説

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南極海捕鯨事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/14 07:59 UTC 版)

南極海捕鯨事件(なんきょくかいほげいじけん、英語:Case concerning Whaling in the Antarctic、フランス語:Affaire du Chasse à la baleine dans l'Antarctique)とは、日本による第二期南極海鯨類捕獲調査(以下JARPA II)の国際法上の是非を巡って、2010年5月31日にオーストラリアが日本を国際司法裁判所提訴した国際紛争である[1][2]。日本が国際司法裁判所の紛争当事国となる初めてのケースであり、3年間におよぶ提訴内容の調整を経て、2013年6月に口頭弁論が開始された[3]。2014年3月31日に本案判決が下され裁判は終了した[4][5]。その内容は日本にとって全面敗訴に等しいものとなった[6]


  1. ^
    この条約の規定にかかわらず、締約政府は、同政府が適当と認める数の制限及び他の条件に従って自国民のいずれかが科学的研究のために鯨を捕獲し、殺し、及び処理することを認可する特別許可書をこれに与えることができる。また、この条の規定による鯨の捕獲、殺害及び処理は、この条約の適用から除外する。各締約政府は、その与えたすべての前記の認可を直ちに委員会に報告しなければならない。各締約政府は、その与えた前記の特別許可書をいつでも取り消すことができる。 — 国際捕鯨取締条約第8条第1項日本語訳[28]
  2. ^
    この10の規定にかかわらず、あらゆる資源についての商業目的のための鯨の捕獲頭数は、1986年の鯨体処理場による捕鯨の解禁期及び1985年から1986年までの母船による捕鯨の解禁期において並びにそれ以降の解禁期において零とする。この(e) の規定は、最良の科学的助言に基づいて検討されるものとし、委員会は、遅くとも1990年までに、同規定の鯨資源に与える影響につき包括的評価を行うとともに(e)の規定の修正及び他の捕獲頭数の設定につき検討する。 — 国際捕鯨取締条約附表第10項(e)日本語訳[28]
  3. ^
    この10の他の規定にかかわらず、母船又はこれに附属する捕鯨船によりミンク鯨を除く鯨を捕獲し、殺し又は処理することは、停止する。この停止は、まっこう鯨及びしゃち並びにミンク鯨を除くひげ鯨に適用する。 — 国際捕鯨取締条約附表第10項(d)日本語訳[28]
  4. ^
    条約第5条1(c)の規定により、南大洋保護区と指定された区域において、母船式操業によるか鯨体処理場によるかを問わず、商業的捕鯨を禁止する。この保護区は、南半球の南緯40度、西経50度を始点とし、そこから真東に東経20度まで、そこから真南に南緯55度まで、そこから真東に東経130度まで、そこから真北に南緯40度まで、そこから真東に西経130度まで、そこから真南に南緯60度まで、そこから真東に西経50度まで、そこから真北に始点までの線の南側の水域から成る。この禁止は、委員会によって随時決定される保護区内のひげ鯨及び歯鯨資源の保存状態にかかわりなく適用する。ただし、この禁止は、最初の採択から10年後に、また、その後10年ごとに再検討するものとし、委員会は、再検討の時にこの禁止を修正することができる。この(b)の規定は、南極地域の特別の法的及び政治的地位を害することを意図するものではない。 — 国際捕鯨取締条約附表第7項(b)日本語訳[28]
  5. ^
    締約国政府は科学調査の許可申請について許可を発給する前に国際捕鯨委員会事務局長に対し通知し、それに対し査読と論評をするための十分な時間を科学委員会に与えなければならない。ここでいう許可申請とは以下のものが明記されていなければならない。
    (a)調査の目的
    (b)捕獲予定の動物の数、性別、保存状況
    (c)他国の科学者の調査活動参加機会
    (d)予見される保存状況への影響
    可能であれば年次総会で科学委員会が許可申請について査読し論評する。年次総会開催前に許可された場合には、科学委員会委員に許可申請を郵送し査読と論評を求める。前もった許可に基づき行われたいかなる調査の結果も、次の科学委員会の年次総会で明らかにされなければならない。 — 国際捕鯨取締条約附表第30項日本語訳[29]
  1. ^ 逆に義務的管轄受諾宣言を行っていない国との関係では、国際司法裁判所の管轄を受け入れる義務は生じない。例えば、韓国は義務的管轄受諾宣言を行っていないため、仮に韓国が義務的管轄受諾宣言を行った日本を何らかの理由で一方的に国際司法裁判所に提訴をしたとしても、日本の側に裁判所の管轄を受け入れる義務は生じない[11]
  2. ^ 国際司法裁判所の裁判官団のなかに当事国の国籍を有する裁判官がいない場合、その国はその事件に出席する裁判官を1名選任することができる(ICJ規程第31条第2項、第3項)。これをアドホック裁判官または臨時裁判官といい、選任する国の国籍を有する者でなくても構わない[26]。本件ではオーストラリア国籍の裁判官がいなかったため、オーストラリアはオーストラリア国籍のヒラリー・チャールズワースを選任した[27]。「アドホック」も参照。
  1. ^ a b LETTER FROM THE AMBASSADOR OF AUSTRALIA, p2.
  2. ^ a b c d e f g h Donald K. Anton (2010). “Dispute Concerning Japan's JARPA II Program of "Scientific Whaling" (Australia v. Japan)”. ASIL Insight (American Society of International Law) 14 (20). http://www.asil.org/insights/volume/14/issue/20/dispute-concerning-japan%E2%80%99s-jarpa-ii-program-%E2%80%9Cscientific-whaling%E2%80%9D 2014年4月6日閲覧。. 
  3. ^ a b 捕鯨訴訟で口頭弁論=日豪が対決-国際司法裁 時事ドットコム 2013年6月26日
  4. ^ Whaling in the Antarctic - Judgments”. International Court of Justice. 2014年4月6日閲覧。
  5. ^ a b アンドレイ・ポスカクキン; ボリス・ハイム;ジョアンヌ・ムーア;ゲノフェーファ・マドゥルガ (2014年3月31日). “Press Release - Unofficial - Whaling in the Antarctic (Australia v. Japan: New Zealand intervening)” (PDF) (英語). 情報部. 国際司法裁判所. p. 1. 2014年4月1日閲覧。 “In that Judgment, which is final, without appeal and binding on the Parties ...”
  6. ^ 宮下日出男 (2014年4月1日). “日本捕鯨「科学」認めず 南極海敗訴 支持国中露も「中止」”. MSN産経ニュース. 産経デジタル. 2014年4月1日閲覧。
  7. ^ a b 鯨類捕獲調査における現状について、水産庁、2011年5月
  8. ^ RESOLUTION ON JARPA” (PDF) (英語). 国際捕鯨委員会 (2007年1月). 2012年1月14日閲覧。
  9. ^ JARPA/JARPAIIからどんな結果が得られている?”. 日本鯨類研究所. 2012年1月12日閲覧。
  10. ^ LETTER FROM THE AMBASSADOR OF AUSTRALIA, p4.
  11. ^ a b c d Declarations Recognizing the Jurisdiction of the Court as Compulsory” (英語). 国際司法裁判所. 2012年1月14日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g "Memorial of Australia, Vol. 1"[要ページ番号]
  13. ^ CR 2013/15, p. 63, para. 69 (Boyle).
  14. ^ "Counter-Memorial of Japan, Vol. 1", pp. 27-38.
  15. ^ a b c d "Counter-Memorial of Japan, Vol. 1"[要ページ番号]
  16. ^ a b ICJ Hears Case of Whaling in Antarctic: Australia vs. Japan”. United Nations Information Centre. 2014年3月10日閲覧。
  17. ^ Government of Australia, 31 May, 2010 "APPLICATION INSTITUTING PROCEEDINGS filed in the Registry of the Court on 31 May 2010: WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN)" Archived 2013年3月9日, at the Wayback Machine.
  18. ^ INTERNATIONAL COURT OF JUSTICE, "ORDER OF 13 JULY 2010"
  19. ^ Government of Australia, 9 March, 2011 "Memorial of Australia" Archived 2013年3月9日, at the Wayback Machine.
  20. ^ Government of Japan, 9 March, 2012 "Counter-Memorial of Japan"
  21. ^ Press release, 21 November 2012” (PDF) (英語). 国際司法裁判所 (2012年11月21日). 2012年12月15日閲覧。
  22. ^ http://www.icj-cij.org/presscom/multimedia.php?p1=6
  23. ^ http://www.icj-cij.org/presscom/gallery.php?p1=6&event=20140331_aj
  24. ^ a b c d e f g 真田康弘「南極海捕鯨事件:暫定的解題」
  25. ^ Judgment, pp.71-72, para.247.
  26. ^ 「アドホック裁判官」、『国際法辞典』、2頁。
  27. ^ All Judges ad hoc”. International Court of Justice. 2014年4月1日閲覧。
  28. ^ a b c d 国際捕鯨取締条約”. 日本捕鯨協会. 2014年4月1日閲覧。
  29. ^ International Convention for the Regulation of Whaling, Schedule”. International Whaling Commission. 2014年4月1日閲覧。
  30. ^ 鶴岡公二 (2014年3月31日). “国際司法裁判所(ICJ)「南極における捕鯨」訴訟(判決を受けた鶴岡公二日本政府代理人のコメント)”. 外務省. 2014年4月1日閲覧。
  31. ^ 菅義偉 (2014年3月31日). “国際司法裁判所「南極における捕鯨」訴訟 判決についての内閣官房長官談話”. 外務省. 2014年4月1日閲覧。
  32. ^ 岸田文雄 (2014年4月1日). “岸田外務大臣会見記録(平成26年4月1日(火曜日)8時39分~ 於:官邸エントランスホール)”. 外務省. 2014年4月1日閲覧。
  33. ^ 共同通信2014年4月3日配信「首相「判決には従う」 調査捕鯨で鶴岡氏を叱責」”. 2014年4月3日閲覧。
  34. ^ 国際司法裁判所(ICJ)について 外務省国際法局国際法課 2021年1月
  35. ^ “政府、IWC脱退を閣議決定 正式発表は26日”. 産経新聞. (2018年12月26日). https://www.sankei.com/article/20181226-U55FAL22CBLYFKJA63ZDO75FAY/ 2023年3月12日閲覧。 
  36. ^ “国際捕鯨取締条約及び同条約の議定書からの脱退についての通告”. 外務省. (2018年12月26日). https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_006938.html 2019年1月3日閲覧。 
  37. ^ “商業捕鯨の再開について”. 水産庁. (2019年7月1日). https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kokusai/190701.html 2023年3月12日閲覧。 





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