前腹部
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 03:59 UTC 版)
「Chasmataspidida」の記事における「前腹部」の解説
前腹部(preabdomen)は後体第1-4節(第7-10体節)を含む。その第1節(第7体節)の背板は著しく短縮した「microtergite」で、前半部は隣接した前体の背甲に覆われている。残り3節(第2-4節)は背板が発達で、「buckler」という箱型の部分を構成する。カスマタスピス科の場合、この3節は融合が進んでいるが、それでも各体節の境目は中央(軸部 axial region)で顕著に残される。 前腹部の腹面には一連の板状の付属肢がある。前腹部第1節の付属肢はウミサソリ類と同様、前体最終付属肢対の間に占め込み、左右融合した付属肢と思われる下層板(metastoma)という1枚の小さな構造体である。残り3節は蓋板(operculum)という3対の付属肢が配置され、そのうち最初の1対の間には1本の生殖肢(genital appendage)をもつ。一部の蓋板は他の節口類のように呼吸器の書鰓をもつと思われるが、それを明確に保存した化石標本は未だに知られていない(ディプロアスピスの1種 Diploaspis muelleri の化石でそれらしき不確かな痕跡のみ発見される)。 生殖肢と下層板をもつという性質はウミサソリに共通だが、ウミサソリの前2対の蓋板は前後融合するのに対して、本群の最初2対の蓋板は融合せず、前後独立したままである。 古くは前腹部腹面の大部分を覆いかぶさった1枚の広い外骨格が知られ、それが単一の大きな蓋板と考えられた。しかしこの解釈は後に前述の複数対の蓋板の発見によって否定され、その外骨格は腹板(sternum)と見直されるようになった。この腹板は普段では蓋板に覆われるが、化石化の過程で蓋板が解離することによって露出したとされる。
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