再会(夫婦)
『明石物語』(御伽草子) 播磨の明石三郎は悪人のために捕えられ、奥州外の浜へ流される。明石の妻は夫を尋ねて旅立ち、道中で出産するなどの苦難を経て、信夫の里に身を寄せる。5年後、明石は破牢して故郷を目指し、信夫の里に立ち寄って思いがけず妻と再会する。
『小栗(をぐり)』(説経) 小栗判官は照手姫と結婚してまもなく毒殺されるが、閻魔王の情けで、3年後に相模国上野の原の塚から蘇生する。餓鬼のごとき姿の彼は、444日かかって熊野本宮に運ばれ、湯の峰に入湯する。49日後にもとの健康体になり、やがて美濃国青墓で照手姫と再会する。
『今古奇観』第14話「宋金郎団円破氈笠」 宋金は宜春と結婚して睦まじく暮らすが、肺病になったため、舅によって荒地に捨てられる。宋金は経文の力で病気を治し、盗賊の隠した財宝を見つけて、「銭大尽」と呼ばれる富豪になる。宜春は、夫・宋金は死んだものと思い、喪に服して操を守り、3年がたつ。それを知った銭大尽は宜春に求婚し、宜春も、銭大尽=宋金と知って、2人は抱き合う。
『諏訪の本地』(御伽草子) 甲賀三郎諏方は、兄二郎の奸計により、妻春日姫と別れ地底の国々をさすらう。維縵国で9年7ヵ月を過ごす間に地上では3百年がたっていたが、三郎はついには日本へ帰りつき、春日姫と再会することができた。
『マハーバーラタ』第3巻「森の巻」 ナラ王は賭け事に負け、王国も財産も失って、妃ダマヤンティーとともに半裸姿で森をさまよい、ついにはダマヤンティーとも別れてしまう。2人はそれぞれ他国の王の御者・王女の侍女となって暮らし、4年後にようやく再会する。
*夫婦が20年ぶりに再会する→〔帰還〕1の『オデュッセイア』第23巻。
*妻が霊となって、7年ぶりに夫と再会する→〔帰還〕2の『雨月物語』「浅茅が宿」。
*妻が夫を捜して再会するが、夫は記憶喪失で、妻と会ってもわからない→〔同一人物〕3の『心の旅路』(ルロイ)。
『警世通言』第12話「范鰍児双鏡重円」 戦乱の中を逃げる途中、徐信は妻の崔氏とはぐれる。同じく夫とはぐれた女と道連れになった彼は、やがてその女と夫婦になる。3年後、茶店で偶然女は旧夫と再会し、旧夫が「自分も再婚した」というその相手を見れば、それは徐信の妻崔氏であった。2夫婦は、それぞれもとのさやにおさまった。また、范希周は、戦乱の中でめぐり会った順哥に祖先伝来の鴛鴦の2鏡を結納として贈り、結婚する。やがて、2人は鏡を1枚ずつ持ちつつ再会を期していったん別れる。12年の後、広州の指揮使となった希周が、公務でたまたま順哥の父の屋敷を訪れ、鴛鴦の2鏡が証拠となって夫婦は再会する。
『太平広記』巻166所収『本事詩』 戦乱のさ中、ふたたびめぐり会う時の目印として徐徳言は、鏡を2つに割って妻に半鏡を与え、「正月の15日に町で売れ」と言いおく。後、徳言は約束の日に市場で半鏡を見出し、妻が今は越公楊素の寵愛を受ける身であると市場の男から聞いて嘆くが、事情を知った楊素は、彼女を徳言に返す。
『太平広記』巻485所収『柳氏伝』 韓翊は、官途につくため最愛の柳氏を残して旅立つ。その間に都では戦乱が起こり、柳氏は蕃族の将軍の妾にされてしまう。都へ戻った韓翊はそれを知って絶望するが、事情を聞いた義侠の人が将軍のもとから柳氏をさらい出し、韓翊と柳氏は再会する。
『無双伝』(唐・薛調) 戦乱のため、王仙客と許婚の無双とは離ればなれになる。戦乱がおさまり、仙客が無双を捜すと、彼女は天子の後宮に入れられていることがわかる。義侠の人が、飲めば3日間死んだようになる薬を無双に与え、彼女の身体を死骸として後宮から運び出し、仙客のもとへ送り届ける。
『十三夜』(樋口一葉) 録之助とお関は下町育ちで相愛の仲だったが、お関は奏任官原田勇に見そめられて、その妻となる。お関を失った録之助は放蕩のあげく、身をもちくずしてその日暮らしの人力車夫に落ちぶれる。お関が結婚して7年。陰暦9月13夜の深更、録之助とお関は、車夫とその客として再会する。2人はいくらか言葉を交わしただけで、そのまま別れるほかなかった〔*お関の結婚生活も幸福なものではなかった〕→〔離縁・離婚〕5b。
*結婚できなかった男女が、病気療養者と看護婦として再会する→〔心中〕11の『二階』(松本清張)。
*泉鏡花の『義血侠血』(*→〔裁判〕2)では男女が検事代理と殺人犯、『外科室』(*→〔心中〕6)では外科医と患者となって、再会する。どちらも男女は死んでしまう。
*死んだ妻が生まれ変わって夫と再会する→〔転生する男女〕1に記事。
*→〔裁判〕2の『復活』(トルストイ)・『ブラック・ジャック』(手塚治虫)「再会」。
『神道集』巻8-46「釜神の事」 貧運の夫が女遊びに心を狂わせ、福運の妻を離縁する。妻は別の男と再婚して、裕福に暮らす。そこへ、箕(み)作りに落ちぶれた旧夫(*→〔掌〕2a)が、もとの妻の住む家とは知らず、「箕を買って下さい」と言ってやって来る。妻は旧夫を憐れみ、多くの物を与える。旧夫は、目前にいるのがもとの妻と知り、恥ずかしさの余り倒れて死ぬ。妻は旧夫を釜屋の後ろに葬り、釜神として祀る。
『炭焼き長者』(昔話)「再婚型」 福運の妻が貧運の夫の家を出て、炭焼き五郎と再婚する。夫婦で炭竈を見て廻ると、どの竈にも黄金があり、2人は長者になる。貧運の旧夫は落ちぶれて、もとの妻の住む家とは知らず、炭焼き五郎の屋敷へ竹細工を売りに来る。妻が対面して、自分が誰であるかを知らせると、旧夫は恥じて舌を噛んで死ぬ(鹿児島県大島郡)。
『大和物語』第148段 難波に住む貧しい夫婦が、「しばらく2人別々に働いて、生計を立てよう」と考え、いったん別れる。女は京へ宮仕えに出て、やがて身分高い人の妻となる。しかし夫はさらに貧しくなり、葦を刈って売り歩く乞食同然の境遇に落ちぶれる。後に夫婦は再会し、夫は自分の身の上を恥じて逃げ去る〔*『今昔物語集』巻30-5に類話。『神道集』巻7-43「葦苅明神の事」では、夫は恥じて海へ身を投げる。妻も後を追って投身する。死後2人は神(=難波の浦の葦苅明神)となった〕。
『李娃伝』(唐代伝奇) 受験のため長安へ来た男が、娼妓の李娃と親しくなり1年ほどで所持金を使いはたす。李娃は養母らとはかって男を捨てる。男は病み、葬式人夫に身を落とし、ついには乞食になる。雪の日、男が物乞いに訪れた家は李娃の家で、彼女は変わりはてた男を見て前非を悔い、真心こめて男の世話をする。
『伊勢物語』第60段 宇佐の使いとなった男が、かつて自分を捨てた妻が祇承の官人の妻となっているのを知り、宴席でかわらけを取らせ「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」の歌を詠みかける。女は恥じて尼になる。
『今昔物語集』巻19-5 六の宮に住む姫君が受領の息子を夫に持つが、夫は父に従って陸奥へ行き、常陸守の婿に迎えられるなどして7~8年を過ごす。ようやく帰京して姫君を探し、零落して朱雀門前の曲殿に臥す彼女を見出すものの、姫君は夫と顔を見合わせるや、たちまち息絶える〔*『古本説話集』上-28に類話。『六の宮の姫君』(芥川龍之介)の原話〕。
『今昔物語集』巻30-4 女が、貧しさゆえ夫と別れ、近江郡司の子の妻となるが、やがて郡司の下女のごとき身分になってしまう。夫は近江国司となって赴任し、接待に出た下女をもとの妻と気づかず寝所に召す。幾夜かの後、事情を知った女は恥ずかしさに、夫の腕の中で息絶える〔*『伊勢物語』第62段に類話。『曠(あら)野』(堀辰雄)〕の原話。
『カンディード』(ヴォルテール) カンディードは諸国放浪中に、「恋人キュネゴンド姫が兵士たちに犯され、腹を裂かれて死んだ」と聞き、また、師傅パングロスが絞首刑にされるのを見る。さらにカンディードは、キュネゴンド姫の兄と争って彼を殺してしまう。ところがキュネゴンド姫もその兄もパングロスも、怪我をしただけで皆生きていた。カンディードは彼らと再会し、最後にキュネゴンド姫と結婚する。
再会(父子)
『落窪物語』 落窪の姫君は、父中納言と継母のもとでの惨めな生活から救い出され、道頼少将と結婚した。道頼は中納言家にさまざまな復讐をし、中納言は事情がわからず困惑する。しかし後に父中納言は、道頼の妻が落窪の姫君であることを知り、道頼邸に招かれて、5年ぶりに娘と再会した。
『日本霊異記』上-9 但馬の人の娘が、嬰児の時鷲にさらわれた。8年後、父親が用事で丹波へ行き、ある家に宿って、そこで養われていた我が娘と、はからずも再会した〔*『今昔物語集』巻26-1の類話では、10余年後再会した、とする〕。
『鉢かづき』(御伽草子) 備中守さねたかは、娘鉢かづきを追い出した後、妻との仲も悪くなり貧しくもなったので、修行に出て長谷観音に参詣する。折しもそこへ、今は宰相と結婚して幸福に暮らす鉢かづきが、夫や従者たちと訪れ、父と娘は再会する。
『雲雀山』(能) 横佩(よこはぎ)右大臣豊成は人の讒奏を信じ、「娘中将姫(ちゅうじょうひめ)を雲雀山で斬れ」と、家臣に命ずる。しかし家臣は姫を殺さずに、山の庵に隠す。後に中将姫の無実を知って後悔した豊成は、姫生存の噂を聞き、雲雀山へ鷹狩りに出かける。豊成は中将姫と再会し、屋敷へ連れ帰る。
『弱法師(よろぼし)』(能) 河内高安の左衛門尉通俊は人の讒言を信じて、一子俊徳丸を家から追放する。通俊はそれを悔やみ、翌年の春彼岸に天王寺で施行(せぎょう。=僧や貧民へのほどこし)をする。その中日に通俊は、「弱法師」と呼ばれる盲目の乞食を見て、それが我が子俊徳丸であると知る〔*類話である『しんとく丸』(説経)では、盲目となりながら後に開眼したしんとく丸が、安倍野が原で施行をする。そこへ盲目の乞食となった父信吉(のぶよし)長者が施行を受けに来て、父子は再会する〕→〔開眼〕6。
『かるかや』(説経) 高野山で修行する苅萱道心のもとに息子石童丸が訪ねて来るが、苅萱は父と名乗らず、さらに「北国修行」と称して石童丸と別れ、信濃の善光寺に籠もる。50年後、父は善光寺で、子は高野山で往生を遂げる→〔同日・同月〕2a。
『三人法師』(御伽草子) 篠崎六郎左衛門は妻子を捨てて遁世し、数年ぶりに故郷へ戻った。折しも、妻が死んだ直後であり、幼い2人の子(姉と弟)が、母の骨を拾っていた。入道は「父である」と名乗ろうとするが思い返し、そのまま立ち去った。
*父が素性を隠したまま、娘と短い対面をする→〔偽死〕1の『球形の荒野』(松本清張)。
『砂の器』(映画版) もと巡査の三木謙一は、音楽家・和賀英良(本浦秀夫)に、「20年以上前に生き別れた父・千代吉に会え」と説く。和賀は「父と会えば、作曲中の交響曲『宿命』の構想が乱れてしまう」と考え、父との再会を拒否して、三木を殺す。殺人事件を捜査する今西刑事は、和賀の写真を本浦千代吉に見せる。千代吉は「癩病者の自分が父と名乗っては、息子のためにならない」と思い、「そんな人、知らねぇ」と叫んで号泣する〔*松本清張の原作では千代吉はすでに死亡しており、父子再会のテーマは見られない〕→〔写真〕2。
再会(母子)
『さんせう太夫』(説経) 丹後の国司となったつし王(厨子王)は、さんせう太夫をのこぎり引きの刑に処した後、母を捜して蝦夷が島へ渡る。母は盲目になり、畑で鳴子の手縄に取り付いて、「つし王恋しや、ほうやれ。安寿の姫恋しやな」と、鳥を追っていた。つし王は、膚守りの地蔵菩薩で、母の両眼を3度なでる。つぶれて久しい母の両眼が、ぱっと開き、母子は再会を喜び合う〔*母は安寿の死を聞いて悲しむが、「仕方ないこと」と諦めて、玉の輿に乗って国へ帰った〕。
*娘が、盲目になった母と再会する→〔母と娘〕4の『まつら長者』(説経)6段目。
『良弁杉由来』「二月堂の段」 学徳高い東大寺の良弁僧正は、2歳の時に大鷲にさらわれ、二月堂前の杉の梢まで連れて来られた所を、前僧正に救われたのだった。我が子を捜し求める母渚の方が、良弁僧正の噂を聞いて東大寺を尋ね、杉の木の前で、30年ぶりに母子は再会した〔*→〔鷲〕1bの良弁杉の伝説もほぼ同じ〕。
『国訛嫩笈摺(くになまりふたばのおいずる)』「どんどろ大師の場」 阿波の十郎兵衛・お弓夫婦は、紛失した主家の宝刀を探すうち、盗みをはたらいてしまった。ある日お弓は、どんどろ大師に参詣して、幼い巡礼娘に出会う。娘は、「3つの年に別れた父(とと)さん・母(かか)さんを捜しております。生国は阿波の徳島。父さんの名は阿波の十郎兵衛、母さんはお弓」と言う。お弓は、それが6年前に別れた娘お鶴であることを知るが、「犯罪者の自分が母であっては、娘のために良くあるまい」と考え、母と名乗らぬず別れる〔*お鶴はその後、阿波の十郎兵衛と出会う。十郎兵衛はお鶴を自分の娘とは知らず、お鶴の持つ金目当てに殺してしまう〕。
『人間の証明』(森村誠一) 終戦直後、八杉恭子は進駐軍の黒人兵ウイルシャーと愛し合い、息子ジョニーが生まれた。やがて帰国命令が下り、ウイルシャーはジョニーを連れてアメリカへ去った。その後、恭子は郡陽平と結婚する。陽平は与党の有力政治家となり、恭子自身は評論家としてマスコミに登場し、名声を得た。そこへ、20代の青年となったジョニーが、アメリカから恭子に会いに来る。恭子は「黒人の子を産んだ過去を世間に知られれば、現在の地位を失う」と考え、ジョニーを刺殺した。
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