ロサンゼルス級原子力潜水艦とは?

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ロサンゼルス級原子力潜水艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2009/12/19 11:09 UTC 版)

ロサンゼルス級原子力潜水艦
水上航走中のロサンゼルス級ノーフォーク(SSN-714 Norfolk)
艦級概観
艦種 攻撃型原子力潜水艦
計画番号 SCB303
建造 エレクトリック・ボート社および
ニューポート・ニューズ造船所
艦名 都市名
建造期間 1972年 - 1995年
就役期間 1976年 - 就役中
前級 スタージョン級原子力潜水艦
次級 シーウルフ級原子力潜水艦
性能諸元
排水量 6,927トン(水中)
全長 109.73m
全幅 10.1m
吃水
予備浮力
機関 原子力蒸気タービン推進(30,000 shp),
7翼ハイスキュード・スクリュー×1軸推進[1]
S6G加圧水型原子炉 1基
2次推進モーター(325HP) 1基
電池 ガピーIE型126個×1群
最大速力 (水上/水中):不明/31ノット
潜航深度 457m
航続力 無限
乗員 127~133名(士官12~13名、
下士官兵115~120名)
兵装 Mk 67 533mm水圧式魚雷発射管
Mk 48魚雷
サブロックUUM[2]
ハープーンUSM[3]
トマホークSLCM[4]
• 各種機雷
弾庫容量: 22基分
(+発射管装填分)
4基
トマホークSLCM用VLS
(フライトII / III)
12基
C4I GCCS-M+NTDS mod 5 (リンク 11 + リンク 16)
BQQ-5統合ソナー+BSY-1 ASWCS (CCS Mk 1/2+Mk 36 TWS)[5]
ソナー BQQ-5D/E 艦首ソナー
BQS-15 近距離ソナー(氷塊探知用)
BQG-5D フランク・アレイ・ソナー
TB-16D 曳航ソナー
TB-23 曳航ソナー

ロサンゼルス級原子力潜水艦(ロサンゼルスきゅうげんしりょくせんすいかん、Los Angeles class submarine)は、アメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦1976年より配備が進められ、改同型艦を含めると62隻が建造された。これは、原潜史上、単一のクラスとして最大の配備数および最長の建造期間の記録である。

目次

概要

ロサンゼルス級潜水艦は、優秀な性能と優れた量産性を両立させることで、1970年代以降のアメリカ海軍 攻撃型原子力潜水艦戦力の基幹を構成した。また、トマホーク武器システムおよびVLSの装備により、潜水艦に対地火力投射(シー・ストライク)という新しい任務を付与したことで、潜水艦戦略に新しい側面を切り開くことにもなった。

本級は、新世代のソ連原子力潜水艦に対抗するため、従来よりアメリカ海軍が整備してきた攻撃型原子力潜水艦に拘泥せず、意欲的な設計を採用している。適切なトレードオフにより、従来よりもはるかに優れた静粛性と速力[6]を実現し、これに統合ソナー・システムとデジタル化された水中攻撃指揮装置、そして新型のMk 48魚雷およびサブ・ハープーン対艦ミサイルを組み合わせることにより、本級は、極めて卓越した戦闘能力を有するようになっている。その一方で、潜行可能深度は前任者の3/4程度となり、氷海での活動能力は大幅に制限され、居住性は低く、また、将来発展余裕も限定的となった。

本級は、その優れた性能を買われて、当時進められていたソ連海軍潜水艦戦力の増強に対抗するため、1972年から1995年の23年間にわたって、実に62隻もの多数が建造された。このように、建造が長期にわたったことから、本級は、段階的な改良を施されつつ建造されている。公式には、SSN-688~718のフライトI、719~725、750のフライトII、751~773のフライトIII の3ブロックに分けられる。識別点としては、フライトIIについてはトマホーク巡航ミサイル用VLSの追加、フライトIIIについては潜舵の移設(セイル側面から艦首(引込み式))がある。なお、このように大きく艦容が変化したことから、フライトIII は改ロサンゼルス級と呼ばれる。

開発

ロサンゼルス級は、空母戦闘群(現 空母打撃群)を直衛し、ソ連巡航ミサイル潜水艦への対潜戦を優先的な任務として計画・建造され、成功を収めたが、建造にいたるまでにはいくらかの紆余曲折を経ている。

1950年代のノブスカ計画以後、アメリカ海軍の原潜は、基本的に速度よりも静粛性を重視する方向で設計されてきた。事実、船体の大型化にもかかわらず出力の向上が行われなかったため、速力はスキップジャック級からスタージョン級まで、一貫して低下(29ノットから25ノット)しているのがそのあらわれであるが、これはソ連原潜の速力性能は低いものであるとの情報評価に依拠していた。したがって、SSN-637型の後継として提案されたCONFORM計画においても、「ナーワル」の運用結果に基づき、自然循環型原子炉を搭載することが想定されていた。しかし、CONFORM計画を推進する海洋システム・コマンドに対して、リッコーヴァー提督は強硬に反対を唱え、水上艦用の大出力原子炉を搭載し、30ノット超の高速を発揮しうる艦を要求したため、次期原潜の仕様をめぐって論争となっていた。

この論争に決着をつけたのは、1隻のソ連原潜であった。1968年2月ハワイ東方約450海里において、ノヴェンバー級の1隻が、ベトナムの前線に向かう原子力空母エンタープライズ」戦闘群を追跡、水中26ノットの発揮が観測されたため、ソ連原潜の速力性能の評価が誤りであったことが判明した。すでに前世代に属するものになっていたノヴェンバー級がこのような性能を発揮したことは充分に衝撃的であり、当時最新のヴィクター級や、開発の進行を示す証拠が強まりつつあった大深度潜行能力と高速力を兼備した潜水艦(アルファ級)を含めて、ソ連海軍と互角に対抗してゆく能力に大きな不安が投げかけられることになった。

リッコーヴァーは、このチャンスを逃すことなく、海軍内の支持者と議会内のコネクションを動員し、自らの推す高速潜水艦を実現させるべく運動を展開し、ついには実現させることに成功した。すなわち、COMFORT計画は放棄され、30ノット超の高速とさらなる静粛性との統合を目指して、次代の原潜、すなわちロサンゼルス級が建造されることとなったのである。 [7]

以来、ほぼ四半世紀にわたり、米原潜の主力の座にあった本級だが、さすがに旧式化が隠しえない。冷戦終結後の1993年、建造計画の完遂を待つことなくSSN-689「バトンルージュ」(Baton Rouge)が除籍され、以後、前期建造艦を中心に退役が進められている。ただし、後継のバージニア級の配備が進む2015年頃までは、主力の座を保持する予定である。

船体・装備

船体

本型の設計に当たっては、従来よりアメリカ海軍が整備してきた攻撃型原子力潜水艦の設計に拘泥せず、徹底したコンセプト開発によって、適切なトレードオフが実施された。

この結果、スキップジャック級以来の涙滴型船型は放棄され、完全な魚雷型(円筒型)を採用している。この船型は、涙滴型よりも抗力が小さいので高速を出せる一方で、操艦の面でやや問題があるとも言われている。

構造強度はパーミット級やスタージョン級に比べていくらか削減され、セイルや潜舵も耐氷能力がない。この結果、潜入深度が減少したほか、氷海行動能力を含めた情報収集任務に対する適合性が損なわれることとなった。これを改善するため、フライトIIIでは氷を割って浮上できるように潜舵をセイル側面から艦首(引込み式)に移設し、氷海下でのオペレーション能力が追加された。

水上艦用原子炉を改良したゼネラル・エレクトリック社製S6G原子炉は、ナーワルにおける自然循環型原子炉の成果を一部採用し、低出力運転時にはポンプを停止したままでも運転可能である。

これらの設計上の努力により、放射雑音レヴェルは、ほぼベンジャミン・フランクリン級弾道ミサイル潜水艦あるいは通常型のバーベル級にほぼ等しく、静粛性でスタージョン級を上回る(-15db)と同時に、スキップジャック級を上回る速度性能(+2kt)を手に入れた。その一方、従来の原子炉よりも大型のS6G型の採用により、予備浮力は非常に少ないものとなり、発展性は非常に限られたものとなった。それでも本級は、増大する任務と進歩する技術に対応して、装備の改修を進めてきたが、最終3艦においては、ついに設計上のマージンを完全に食い潰してしまったと言われている。

センサー+C4Iシステム

本級は、統合ソナー・システムを装備した最初の攻撃型原子力潜水艦である。その機種はBQQ-5Dであるが、フライトIIIにおいては、TEWA機能およびUBFCSをも統合したBSY-1統合戦闘システムのサブシステムとなっている。BQQ-5Dは、下記のようなソナーの集合体である。

  • 艦首装備ソナー
直径15フィートの球形アレイを採用し、アクティヴとパッシヴの両用である。出力は75,000ワット。
  • BQG-5D フランク・アレイ・ソナー
長波のパッシヴ・ソナー。
  • BQS-15 近距離短波ソナー(氷塊・機雷探知用)
  • TB-16D 曳航ソナー
通常の曳航ソナーで、直径89ミリ、全長792.5メートルのケーブルと、これによって曳航される73.15メートルのソナー・アレイによって構成される。
  • TB-23 曳航ソナー
新型の「薄線」型曳航ソナーで、より長距離の探知に使用される。実際にはBQQ-5のサブシステムではなく、BSY-1に直結されている。

BQQ-5によって目標を探知した後の処理、つまり脅威度判定から攻撃指令、攻撃の実行については、フライトIではその大部分がオペレーターに任されていた。ただし、水中攻撃指揮装置(UBFCS)としては、はじめて完全に自動化されたMk 117を使用しており、従来使用されてきたアナログ式のものよりも大幅に効率化されていた。

その後、Mk 36 TWS (トマホーク武器システム)の配備に伴い、Mk 117は、トマホークの射撃管制能力を付加されたCCS Mk 1 (Combat Control System)に発展した。また、フライトIIIより、BSY-1統合戦闘システムのサブシステムとしてのCCS Mk 2が搭載されるようになっている。

魚雷発射管

パサデナ(Pasadena、SSN-752)の魚雷発射管室。右手上段および下段にMk 48魚雷が配置されている。

本級は、従来のアメリカ海軍攻撃潜水艦と同様、4門のMk 67 533mm水圧式魚雷発射管を備えている。これらは、Mk 48 ADCAP魚雷サブロック対潜ミサイルサブ・ハープーン対艦ミサイルトマホーク巡航ミサイル、各種機雷を射出することができる。弾庫の容量は、533mm魚雷に換算して22基分であり、また、発射管内に4基を搭載できることから、合計兵装搭載数は26基となる。なお、機雷は、533mm魚雷 1基分のスペースに2基を収容することができる。

魚雷発射管 4門という搭載数は、アメリカ海軍の攻撃潜水艦としては標準的な搭載数であるが、特に対艦・対地ミサイルを使用するとき、同時に投射できる火力が少ないことが問題視された。このことから、本級は、のちにミサイル専用の垂直発射装置を搭載することとなった。

ミサイル垂直発射装置

VLS、上部ハッチを開口した状態。

ロサンゼルス級のフライトII以降は、ミサイル発射用の垂直発射装置 (VLS) 12セル[8]を搭載しており、これにより、対水上・対地火力投射能力は大幅に強化されることとなった。

この垂直発射装置からは、TLAM(トマホーク対地ミサイル)、TASM(トマホーク対艦ミサイル)、サブ・ハープーンを運用することができるが、対水上火力としてはMk 48 ADCAP魚雷が主用されており、また、TASMとサブ・ハープーンの搭載が中止された現在、これは事実上TLAM専用の発射装置となっている。

同型艦

いずれのフライトであるかにかかわらず共通の要目は一括して記し、変更点はそれぞれのフライトにそのつど記す。また、以下次の略号を用いる。

造船所

フライトI / II

要目

ドライデッキシェルター運用訓練中のロサンゼルス級原潜ダラス(SSN-700 Dallas
喫水:9.8m
排水量(水上/水中/予備浮力)
SSN-688~699 6080t / 6927t / 13.9%
SSN-700~714 6130t / 6977t / 13.8%
SSN-716~718 6165t / 7012t / 13.7%
SSN-719~750 6255t / 7102t / 13.5%
兵装:トマホークVLS×12基(SSN-719以降)

フライトII

マレーシア沖で潜望鏡深度を航走中のロサンゼルス級シカゴ(SSN-721 Chicago
(VLS装備型)

フライトIII

(改ロサンゼルス級、688I)
えひめ丸と衝突事故を起こし、2001年2月21日に真珠湾の海軍工廠で1番ドックへ入渠したグリーンビル(USS Greeneville, SSN-772)。
サイパンにて繋留作業中のシャイアン (USS Cheyenne, SSN-773)。艦首トマホーク用VLSのハッチ、セイルに潜舵がないことなどに注意。いずれもロサンゼルス級フライト III の特徴である。2005年3月撮影。

要目

吃水:9.75m
排水量(水上/水中/予備浮力)
SSN-751~770 6300t / 7147t / 13.4%
SSN-751~770 6330t / 7177t / 13.3%
兵装:トマホークVLS×12基

注釈

  1. ^ SSN-773のみポンプジェット方式
  2. ^ サブロック対潜ミサイルは、1992年までに全弾が退役した。
  3. ^ サブ・ハープーンの搭載は1978年より1997年まで。
  4. ^ トマホークは1983年より搭載開始。
  5. ^ 初期建造艦ではMk 117 UBFCS。
  6. ^ 前任のSSN-637級と比べて、本級においては、放射雑音は15 db削減され、速力は5ノット増加した。
  7. ^ こうした経緯から、ロサンゼルス級は長年にわたる慣例に反する命名基準が定められた。すなわち、下院において、当初反対しながらも賛成に転じた議員の地元都市名が最初の12隻へ与えられることになり、以後も都市名から命名されるようになったのである。
  8. ^ 本級搭載の垂直発射装置の形式名については正式発表がなく、Mk 32、Mk 36、Mk 44など諸説がある。
  9. ^ 1992年2月11日コラ半島沖でロシア攻撃原潜・シエラ級K-276と衝突。修復工事を断念し、除籍。

関連項目

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