ループもの
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ループものは、タイムトラベルを題材としたSFのサブジャンルで、物語の中で登場人物が同じ期間を何度も繰り返すような設定を持つ作品のこと[1]。いわゆる「時間もの」の一種。昔からある物語の類型のひとつだが[2][3]、日本のサブカルチャーやジュブナイルもの[4]では頻出する設定であり、半永久的に反復される時間から何らかの方法で脱出することが物語の目標となるものが多い[5]。
注釈
- ^ なお、連続した時間を繰り返すわけではないため「ループもの」とは異なるが、登場人物の意識のみが時間移動するというアイディアを用いたものとして、高畑京一郎による1995年の小説『タイム・リープ あしたはきのう』のような作品もある[11]。
- ^ 「第三者の審級」とは大澤真幸の用語で、「規範の妥当性を担保する超越的な他者」「社会(システム)の全体性を代表する超越的な他者」としている[19]。ポストモダンの到来によって失われたとされる「大きな物語」[20][21]あるいはラカンの三界でいう「象徴界」[22]のような意味で使われている。
- ^ 『新世紀エヴァンゲリオン』自体、ループものではないにもかかわらずループものとして受容された面がある[24]。TVシリーズの終盤には並行世界を思わせる描写がある。また新劇場版でもループものを匂わせる演出がなされている[25]。
- ^ 他方、人類全体が反復に気づいているという設定の作品もある[26]。
- ^ 大塚英志は、現実世界を写生して描く近代までの文学の手法を「自然主義リアリズム」、虚構を写生して描くキャラクター小説(ライトノベル)の手法を「まんが・アニメ的リアリズム」と対比した[29]。
- ^ 覚えゲーや復活 (コンピュータゲーム)も参照。
- ^ 原作小説では15,498回、テレビアニメ版では15,527回という設定。
- ^ 原題は“Triangle”。日本で劇場公開された際の日本語タイトルは『トライアングル』であったが、ビデオリリース化の際に『トライアングル 殺人ループ地獄』へと改題された。
- ^ 結末が2種類作られており、初回放送時はどちらの結末を放送するかテレゴングで決めるという趣向だった。未放送版の結末はDVDおよびVHSソフトに特典として収録されたのが初出。
出典
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ループもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 15:43 UTC 版)
物語がある一定の期間を反復するようなタイムトラベル系のSFジャンルであるが、日本のオタク文化では空気系の作風のような延々と繰り返される日常(宮台真司のいう「終わりなき日常」)の比喩として使用されている面がある。作家の桜坂洋によれば、終わりが規定された限定的な日常であるからこそ読者は安心して作品から「萌え」を享受できるのであり、この事象(作中の時間経過に対して読者が自覚的であること)自体は非萌え系作品でもみられるという。
※この「ループもの」の解説は、「空気系」の解説の一部です。
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