ルンゲ=レンツベクトルとは? わかりやすく解説

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ルンゲ=レンツベクトル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/30 13:25 UTC 版)

物理学において、ルンゲ=レンツベクトル: Runge–Lenz vector)とは、ケプラー問題、すなわち逆二乗則に従う中心力の下の運動における保存量の一つ[1][2][3]古典力学の天体運行のケプラー問題や量子力学水素原子モデルの問題などに現れる。空間的な回転対称性の下で保存量となる角運動量のように、他の多くの保存量が幾何学的な対称性から導かれるのとは異なり、ルンゲ=レンツベクトルを導く対称性は力学的性質に由来し、力学的対称性と呼ばれる[2][3]。水素原子の束縛状態においては、量子力学的な角運動量演算子とルンゲ=レンツベクトル演算子の交換関係は4次特殊直交群SO(4)に対応するリー代数をなし、固有値問題の代数的な解法を与える。


注釈

  1. ^ より厳密に2体問題から導出するならば、重心運動と相対運動を分離し、質点の質量 m の代わりに換算質量、位置座標 r の代わりに相対座標を用いればよい。
  2. ^ 原子核の周りを運動する電子が増えると遮蔽効果が顕著となる。原子番号 Z有効核電荷 Zeff = Zσ に置き換えればよい(遮蔽定数 σ)。
  3. ^ 特に断りのない限り、ベクトル a の大きさは a と表記する。
  4. ^ ここでは Goldstein, Safko & Poole Jr. (2001) の定義に従っているが、Schiff (1968)Greiner & Müller (1994) など他の文献では Am で割ったベクトルをルンゲ=レンツベクトルと定義している。
  5. ^ すべての束縛軌道が閉軌道となるのは、距離に反比例する中心力ポテンシャルと距離の二乗に比例する等方的な調和振動ポテンシャルのみであり、ベルトランの定理として知られている。
  6. ^ ここでの独立とは、ハミルトン力学系のポアソン括弧包合系をなすことを意味する。このとき、リウヴィルの意味で可積分であるといわれる。
  7. ^ たとえば (ˆp × ˆL)1 − (−ˆL × ˆp)1 = (ˆp2ˆL3ˆp3ˆL2) + (ˆL2ˆp3ˆL3ˆp2) = [ˆp2, ˆL3] − [ˆp3, ˆL2] = [ˆp2, (ˆr1ˆp2ˆr2ˆp1)] − [ˆp3, (ˆr3ˆp1ˆr1ˆp3)] = [ˆp2, −ˆr2]ˆp1 − [ˆp3, ˆr3]ˆp1 = 2ˆp1 ≠ 0
  8. ^ (ˆp × ˆL) = −(ˆL) × (ˆp) = −ˆL × ˆpˆp × ˆL

出典

  1. ^ a b Goldstein, Safko & Poole Jr. (2001), chapter 3.
  2. ^ a b c d Schiff (1968), chapter 7.
  3. ^ a b c Greiner & Müller (1994), chapter 14.
  4. ^ a b c d e Goldstein, Herbert (1975). “Prehistory of the "Runge–Lenz" vector”. Am. J. Phys. (AAPT) 43 (8): 737-738. Bibcode1975AmJPh..43..737G. doi:10.1119/1.9745. ISSN 0002-9505. LCCN 2007-233687. OCLC 1480178. 
  5. ^ a b W. Lenz (December 1924). “Über den Bewegungsverlauf und die Quantenzustände der gestörten Keplerbewegung”. Z. Physik (Springer) 24 (1): 197-207. doi:10.1007/BF01327245. ISSN 0044-3328. OCLC 630219143. 
  6. ^ a b C. Runge (1919) (PDF). Vectoranalysis. Leipzig: S. Hirzel. https://ia601601.us.archive.org/2/items/in.ernet.dli.2015.211863/2015.211863.Vector-Analysis.pdf 
  7. ^ a b P. S. de Laplace (1799) (PDF). Traité de mécanique céleste. Tome I, Livre II, CHAPITRE III. p. 165. https://ia800205.us.archive.org/19/items/traitdemcani01lapl/traitdemcani01lapl.pdf 
  8. ^ a b ピエール=シモン・ラプラス 著、竹下貞雄 訳『ラプラスの天体力学論』 第1巻、大学教育出版、2012年1月31日、第1部、第2編、第3章頁。ASIN 4864291209ISBN 978-4-86429-120-0NCID BB08125816OCLC 836362141全国書誌番号:22052401ASIN B01C7A1RM0Kindle版)http://www.kyoiku.co.jp/17rapurasu/rapurasu.html 
  9. ^ a b Goldstein, Herbert (1976). “More on the prehistory of the Laplace or Runge–Lenz vector”. Am. J. Phys. (AAPT) 44 (11): 1123-1124. Bibcode1976AmJPh..44.1123G. doi:10.1119/1.10202. ISSN 0002-9505. LCCN 2007-233687. OCLC 1480178. 
  10. ^ Pauli, W. (May 1926). “Über das Wasserstoffspektrum vom Standpunkt der neuen Quantenmechanik”. Z. Physik (Springer) 36 (5): 336-363. Bibcode1926ZPhy...36..336P. doi:10.1007/BF01450175. ISSN 0044-3328. OCLC 630219143. 
  11. ^ Hamilton, WR (1847). “Applications of Quaternions to Some Dynamical Questions” (PDF). Proc. Roy. Irish Acad. (Royal Irish Academy) 3: Appendix III. pp.xxxvi-l. http://emis.ams.org/classics/Hamilton/DynQue.pdf. 
  12. ^ Goldstein, Safko & Poole Jr. (2001), chapter 9.


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