リリス
「リリス」とは、古代ユダヤの伝承に登場する、女性の姿をした悪魔もしくは悪霊の名前である。一説によれば、天地創造の際にアダムと共に土から創造され、アダムの最初の妻となった(もしくは、妻となる筈であった)が、神を呪い、楽園を飛び出して、魔女となったとされる。ただし、これは後世の解釈である。
リリスは、そもそもは古代メソポタミアの伝承に登場する悪霊的な存在とされる。これがユダヤ教に伝わり取り入れられたと考えられている。
旧約聖書の「創世記」第1章では、いわゆる「天地創造」の様子が描かれるが、そこでは創造主たる神が人間を「男と女とに創造された」と記述されている。これが第2章の「アダムの肋骨からイブがつくられた」という記述と食い違う。「リリス」は、この矛盾を埋める存在と位置づけられたわけである。
とはいえ、「創世記」に「リリス」の名が登場するわけではない。聖書(旧約聖書)では、預言書「イザヤ書」に「リリス」の名に言及している箇所があるのみである。もっとも、翻訳次第で「リリス(Lilith)」の名は登場したりしなかったりする。
「詳訳聖書(Amplified Bible)」と呼ばれる英語訳聖書では「Lilith (night demon)」という記述が登場する。つまりリリスは「夜の魔女」として言及されている。
リリスは天地創造の際にアダムと同事に神によって創造された女性であり、その意味では男性と対等な存在である。また、リリスが楽園を出たのはアダムと対等に扱われなかったことへの不満によるものと解釈されることがあり、その解釈においてリリスは「男女平等が叶わないと知って自立の道を選んだ」キャラクターである。こうした点を踏まえてリリスはフェミニズムのシンボルとして扱われることがある。
「リリン」とは
「リリン」とは、リリスの子孫である女性の魔物、あるいは、リリスを含む女性の魔物の総称である。中東の神話や伝説においては、邪悪な力を持つ存在として描かれることが多い。今日のファンタジー系創作(とりわけ日本における西洋風ファンタジー作品)に登場する「リリン」は、悪魔的な力を持つ女性型のモンスターであったり、妖艶で美しい女性型の悪魔や魔女であったりする。作品によっては、魔法力を持ち邪悪な力を行使する小型の悪魔だったり、時には魔界を統べる女王だったりする。他方、作品によっては、リリンは人間よりも小柄で、耳や翼に特徴のある、美しく善良なキャラクターとして描かれることもある。
「リリス」の語源・由来
「リリス」という言葉の語源や由来には、複数の説がある。たとえば、古代メソポタミア神話に登場する女神「リリトゥ」が、この言葉の由来ではないかとされる説がある。リリトゥは、空と大地をつなぐ神聖な木の下に宿る鳥の女神であり、性愛・誘惑・出産・疫病などの女性的な領域を司るとされている。また、「リリス」という言葉は、ラテン語の「lilium(ユリ)」に由来するという説もある。ユリは高貴さや純粋さを象徴する花として知られ、女性性の象徴として扱われることが多々ある。
リリス
「リリス」とは・「リリス」の詳しい解説
旧約聖書「イザヤ書」の34章14節では、妖怪や動物の一種として「夜の魔女」と言及されているが、聖書「創世記」1章27節の伝承の解釈によればリリスはアダムの最初の妻とされている。ヘブライ語でリリトと表記されることもある。イブがアダムと結ばれたことでリリスは男性を憎み、アダムと別れた後も悪霊(ヘブライ語でリリン)を生み出し続けたとされている。古くはバビロニア(現代のイラク南部を領域とした世界最古の文明の発祥地。古代においてはさらにシュメール地方とアッカド地方に大別)からリリスの名は登場する。ユダヤ教典「タルムード」によれば、リリスはアダムと同時に神より土から作られ、アダムの妻として生活していた。しかしアダムとの生活への不満や、男性であるアダムが自分よりも上位である事に耐えられず、リリスからアダムの元を去ったとされている。
神により3体の天使が遣わされたもののアダムとリリスの関係は修復されず、アダムはイブと結ばれた。神は、アダムの元を去ったリリスに対し、毎日大勢の子供を産み続け、そのうちの100人を毎日失う罰を与えた。ショックを受けたリリスは紅海沿岸で自ら生命を断ったが、遣わされた3体の天使により哀れみを受けリリスは蘇った。さらに今後生まれてくる子供の運命を(男児であれば8日間、女児であれば20日間、私生児であれば一生)自由に左右出来る力を天使たちより与えられた。天使たちはリリスの気まぐれから子供たちを守るため、彼女の力を免れる事が出来るように、自分たち3人の名前(セノイ、サマンゲロフ、サンセノイ)を書いた護符を人間たちに授けたとされている。
リリスはその後、悪魔との間に大量の悪霊を生み出したとされている。アダムとイブとその子供たちへ苦しみを与えるためとも言われているが、その後リリス自身も結婚を妨げたり子供を殺す悪魔に変貌したと言われている。リリスの子供であるリリンとリリスは、しばしば混同されるが、リリンは男性をたぶらかし血や精気を吸い取ったり、子供を流産させたり、子供をさらって食べたとされている。このような説からリリスは「夜の女王」であったり、「悪魔の母」と呼ばれる。13世紀のカバラ文書の中では悪霊の君主サマエルの伴侶となった説もある(一説ではこのサマエルとの子がリリンとされている)。
キリスト教の文化圏では19世紀以降文芸作品のセリフや題材として登場するようになる(ゲーテの「ファウスト」、ロセッティの「レディ・リリス」など)。現代では「男性からの支配や社会からの抑圧からの解放」を訴える女性解放運動の象徴ともされており、その思想に共感する人々により肯定的に再評価されるようになったと言われている。
また西洋占星術によるリリスは実在する小惑星の一つ、他には月の遠地点(月の軌道上で、地球から最も遠い地点。別名ブラック・ムーン)、地球のもう一つの衛星、といったそれぞれ異なる事柄として使用されている。
「リリス」の語源・由来
リリスの語源は、「夜」を意味するヘブライ語のライラーとも結び付けられているが、古代バビロンのリリートゥ(古代メソポタミアの女性の悪霊)が語源ともされている。ヘブライ語のリーリースやアッカド語のリーリートゥは先セム語の語根LYL(夜)の女性形ニスバ形容詞(ニスバ形容詞とは、アラブ人の伝統的な名前の要素の一つであり出身地や所属部族などに形容詞系語尾「イー」をつけたもの)で、「夜の」という意味、もしくは「夜の女性的存在」といった意味で使われる。しかし何人かの学者によると上記の説は否定され、リーリートゥは「嵐の悪霊」が語源であるともされている。「リリス」の使い方・例文
・リリスはアダムの最初の妻である。リリス 【Lilith】
リリス
リリス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/17 15:53 UTC 版)
リリス (Lilith) は、ユダヤの伝承において男児を害すると信じられていた女性の悪霊である。リリトとも表記される。通俗語源説では「夜」を意味するヘブライ語のライラー(Lailah)と結びつけられる[1]が、古代バビロニアのリリートゥ(後述)が語源とも言われる。
注釈
- ^ 「夜の魔女」〔口語訳、新共同訳〕あるいは screech owl (鳴きたてるフクロウ[2])〔King James Version〕と翻訳されている
- ^ つねにイラクの人々を悩ませてきた夏の砂嵐と関係がある
- ^ 「風の女」。nin 「女性」と lil「風」より
- ^ 「彼女は『私は下に横たわりたくない』と言い、彼は『私はきみの下になりたくない、上位にしかいたくない。きみは下位にしかいてはならないが、私はきみより上位にいるべきだ』と言った」[10]。
- ^ ユダヤ人の伝統では、生後8日以内の男子と生後20日以内の女子はリリスに害されるおそれがあるとされ、妊婦と新生児を守る護符にはこの3人の天使の名が刻まれた[12]。
出典
- ^ デイヴィッド・ゴールドスタイン 『ユダヤの神話伝説』 秦剛平訳、青土社、1992年、60頁。
- ^ フレッド・ゲティングズ 『悪魔の事典』 大瀧啓裕訳、青土社、1992年、428頁。
- ^ J. B. ラッセル 『悪魔―古代から原始キリスト教まで』 野村美紀子訳、1984年、教文館、87頁。
- ^ a b エーリヒ・ビショフ 『カバラQ&A―ユダヤ神秘主義入門』 林睦子訳、三交社、1995年、88-90頁。
- ^ ゲティングズ 『悪魔の事典』 429頁。
- ^ 森瀬繚 『いちばん詳しい 「堕天使」がわかる事典』 SBクリエイティブ、2014年、71頁。
- ^ Ninlil. (2006). Encyclopædia Britannica. Retrieved February 10, 2006, from Encyclopædia Britannica Premium Service [1])
- ^ Judit M. Blair De-Demonising the Old Testament - An Investigation of Azazel, Lilith, Deber, Qeteb and Reshef in the Hebrew Bible. Forschungen zum Alten Testament 2 Reihe, Mohr Siebeck 2009 ISBN 3-16-150131-4
- ^ a b ゲルショム・ショーレム 『カバラとその象徴的表現』 小岸昭・阿部仁訳、法政大学出版局〈叢書ウニベルシタス〉、1985年、225-226頁。
- ^ この話は性行為の性交体位におけるアダムの支配的地位を拒否したものとも解釈され、フェミニストらに刺激を与えた(石堂藍・今松泰・吉田邦博 『図解雑学 世界の天使と悪魔』 藤巻一保監修、ナツメ社、2009年、196頁)
- ^ ジョルダーノ・ベルティ 『ヴィジュアル版 天国と地獄の百科』 竹山博英・桂本元彦訳、原書房、2001年、375頁。
- ^ ゴールドスタイン 『ユダヤの神話伝説』 62頁。
- ^ Drury, Nevill (2002). The Dictionary of the Esoteric. London: Watikins Publishing. p. 184
リリス(LILITH)
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「beatmania IIDXに登場するGOLIのキャラクター」の記事における「リリス(LILITH)」の解説
声:能登麻美子 初出は『beatmania IIDX 5th style』(家庭用『4th style』にもレイヤー画像があるが、これは家庭用独自の書き下ろしなので初出ではない)。もともとは単発のキャラクターだったが、名前付きのキャラクターに昇格した。また、その名前もファンからのメールにより決められている。本名は「雛月理々奈(ひなづき りりな)」で、リリスはあだ名(ただし後付設定である)。黒髪のおかっぱ頭で、目尻と口元にフェイスペイントを入れている(ただしプライズ品のフィギュアや最近の一部のイラストではフェイスペイントが省かれることがある)。無口かつ無表情なセムの妹で、17歳の高校二年生で血液型はO型。口数は少なく、話すときは「…デス」と語尾に付ける。彩葉からは「りりちん」と呼ばれている。実兄であるセムを「兄さん」と呼ぶ一方、姉貴分であるナイアは「姉様」と呼んで慕っている。彩葉とは同じクラスで、2人きりのクラブ「オカルト研究会」で日々惚れ薬を研究している。学校内では2人合わせて「白黒コンビ」と呼ばれており、密かな人気がある。 両親を交通事故で失っており、ほとんどその記憶がない。特に父親について微かに覚えていることと言えば父が蓄えていた髭であり、このことからサイレンに面影を見出し思いを寄せるようになる。しかしながら性分が災いして特に行動する訳でもなく、時よりほんの些細な物陰から見守るのが常。サイレンの後をつけていたらに幽霊と勘違いされ、ショックを受ける。故に惚れ薬の完成は、念願である。将来の夢は、ジャグジー付きのバスルームの家で大家族の一員になること。 IIDXの腕は曲を楽しむためにライトプレイヤーのままだが、『Dance Dance Revolution』の腕前はなかなかのものらしい(『6thStyle』ホームページより)。 好きなものは、7th公式サイト:占い全般・コナミワイワイワールド(FC)・髭→アルカディア第一期掲載時:占い全般・黒魔術・シロロ魔術・コナミワイワイワールド(FC)・髭・わくわくwac→IIDXバイブル掲載時:民族音楽・占い全般・黒魔術・シロロ魔術・髭。 神秘的かつダークなイメージを表現するキャラクターとして、レイヤーの登場回数も多い。『7th style』の楽曲「LOVE ME DO」ではゴスロリドレスで登場し、これ以降特殊な地位を確立する。また、『8th style』から急に胸が強調されるようになり(以降、徐々に他の女性キャラクターも追随する)いわゆる巨乳キャラのポジションでもある。 『Roots26 S[suite]』では彩葉と一緒に作った惚れ薬が原因でトラブルが起こることがあり、実際『Vol.1』のエピソードでは惚れ薬の残りを持ち帰ってしまったために何も知らないセリカがだし汁と勘違いしてたこ焼に入れてしまい、それをユーズ含む男性達が摂取してしまい男同士が愛し合うといった大惨事を招く羽目になる(その後セムのお陰で事なきを得るが)。
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リリス(声:西野陽子)
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「BLACK/MATRIX OOの登場人物一覧」の記事における「リリス(声:西野陽子)」の解説
シリアとルカを姉のように慕っている少女。純粋なところが時にストーリーに影響を及ぼすことも。目標はルカのような「冷血な孤高の女」になること。ストーリー終盤、離脱したルカのパラメーターを全て受け継ぎ、武器もルカと同じ鞭に持ち変える。
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リリス(#1、#2)
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「ウィザードリィ エクス」の記事における「リリス(#1、#2)」の解説
人型アンドロイドの少女で外見年齢は14歳、精神はもっと幼い。アーレハインの学徒たちに夢を通じて語りかけてきた。
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リリス(LILITH)
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「使徒 (新世紀エヴァンゲリオン)」の記事における「リリス(LILITH)」の解説
第2使徒。アダムとは異なる「知恵の源」であり、アダム系使徒を除く全ての地球上の生物の始祖であり、その最終形態として人類(=第18使徒リリン)を生み出した存在。知恵の実を得た存在であるため、人類にはその力が継承されている。名前の由来は、ユダヤ人の民話に伝わる、アダムの最初の妻であるとされる「リリス」。 NERV本部の地下最深部、ターミナルドグマに磔にされている。外見は白い体色の巨人で、顔には7つの眼が描かれた面を被り、両手は楔で十字架に打ち付けられ、下半身は腫瘍のようなものに無数の小さな両脚が生えた異様な風貌をしている。さらに物語の後半からは胸に「ロンギヌスの槍」が刺さり、活動が抑制されている。その身体からは常に体液が流れ出しており、これがL.C.Lとなる。 作中でその正体は碇ゲンドウを始めとするNERV幹部を除いて秘匿されており、表向きは第1使徒アダムと偽装されていた。 漫画版や『新世紀エヴァンゲリオン2』では、ファーストインパクト(地球の衛星である月が形成される原因となった地球と小天体との衝突)は、リリスを入れた黒き月を運ぶキャリア(これも月と言う)が原因だとしている。これにより、リリスを入れた黒き月は地中深くに残り、それを運ぶキャリアは宇宙に塵となり留まり、それが地球の衛星である月となった。 EVA初号機は、EVAシリーズのうち唯一リリスから生み出されたものだとされる。リリスの魂は、魂の宿ることがなかった綾波レイの肉体に移され、その結果、レイが補完計画の要となる。 リリスの顔に貼り付けられている7つ目の面は、『ヨハネの黙示録』第5章6節の目が7つある羊(黙示録の仔羊)を描いた、スペインのサン・クレメンテ聖堂(現在はバルセロナのカタルニア美術館所蔵)の12世紀のフレスコ画から借用したもの。これはゼーレのシンボルマークにもなっている。 第2使徒がリリスであるということは、公式には長期間にわたってアナウンスがなかったが、放映後にバンダイから発売されたカードダスや、ゲーム『新世紀エヴァンゲリオン2』で、正式に発表された。これに続き、ガイナックスから使徒を擬人化したキットシリーズ『使徒XX』において「A-02 LILITH≒XX」がリリースされ、さらに『エヴァンゲリオン・クロニクル』でも、この事実が明記された。 デザインは磯光雄による。
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リリス(声:三石琴乃)
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「クリス・クロス 混沌の魔王」の記事における「リリス(声:三石琴乃)」の解説
「ダンジョントライアル」でゲイルが最初に出会った女戦士。本人は観光気分で仮想現実の世界を満喫するつもりでいたが、ゲイルとシェインに押し切られる形でパーティーのリーダーになってしまう。そういった経緯からか傍目にはリーダーに見えないものの、持ち前の責任感と女性らしい発想で上手くパーティーをまとめ上げる。
※この「リリス(声:三石琴乃)」の解説は、「クリス・クロス 混沌の魔王」の解説の一部です。
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