リフィーディング症候群とは? わかりやすく解説

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リフィーディング症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/06 07:42 UTC 版)

リフィーディング症候群(りふぃーでぃんぐしょうこうぐん)とは、英語: Refeeding syndrome; 長期慢性的な低栄養状態に対して急激な栄養補給を行った際に生じる体内での電解質の分布異常により引き起こされる様々な代謝疾患の総称[1]

戦争や紛争に伴う飢餓や重度摂食障害の後に開始される、栄養回復のための平常の食事や輸液治療が引き金となり発症し症状は急速に進行する[2]。心不全、呼吸不全、腎不全、肝機能障害、多臓器不全[3]などにより重篤で致命的な合併症を伴うことがある。

臓器発達が不十分な低出生体重児においても急激な栄養投与は、当該疾患を発症させることがある[4]

発症機序

  1. 飢餓により生命維持のためのエネルギー代謝はを主体とした状態から、体内に蓄積されているタンパク質脂質を利用する状態に変わる。これにより代謝率は20%程度低下する。この作用を利用したのが、低糖質ダイエットと云える。
  2. 飢餓が長期になると脂肪(ケトン体)をエネルギー代謝として利用する状態に変化する。(グルカゴン優位)
    • 脳と赤血球にグルコースを供給するため骨格筋のタンパク質が利用される。
  3. 食事や輸液により体内に糖(グルコース)が取り込まれ、インスリンの急激な分泌が起こる。(インスリン優位)
  4. 解糖系代謝が活発化しリン、カリウム、マグネシウム、水分などが血管内から細胞内へ移動する。
  5. 血中リン濃度の低下によりクエン酸回路(TCA回路)が機能しなくなる。

もともと飢餓のため必要な電解質とビタミン類が不足しているので、容易に低リン血症、低カリウム血症、低マグネシウム血症が生じる。

症状

日本における歴史

  • 1581年に始まった、鳥取城の戦いにおいて豊臣秀吉が行った兵糧攻めは、後に『鳥取城の渇え殺し』と言われる程凄惨なものであり、1400人以上が籠城する戦いが3ヶ月以上も続いた。最終的に、城主であった吉川経家の自害を伴う降伏によって戦いは幕を閉じたが、解放された生存者の飢餓ぶりに哀れを感じた秀吉が食事を振る舞うと、バタバタと死んでいった。この鳥取城の合戦後に起きた集団死は、日本の史実で記録された最初のリフィーディング症候群であるとする学説がある[8][9]
  • 第二次世界大戦後の日本人捕虜での研究[10]が、世界初の医学的に詳述されたリフィーディング症候群の報告であると医学トップジャーナルの一つであるブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)の論文に紹介されている[11]

出典

脚注

  1. ^ a b 清水健太郎, 小倉裕司, 高橋弘毅, 和佐勝史, 平野賢一「極度の低栄養状態における低血糖に伴うリフィーディング症候群」『学会誌JSPEN』第2巻第2号、日本臨床栄養代謝学会、2020年、95-102頁、doi:10.11244/ejspen.2.2_95 
  2. ^ 棚橋徳成, 苅部正巳, 木村裕行, 大川昭宏, 山口利昌, 守口善也, 後藤直子, 石川俊男「神経性食欲不振症の入院中における低リン血症もしくは Refeeding Syndrome」『日本心療内科学会誌』第8巻第4号、2004年11月、229-234頁、ISSN 13429558NAID 10018079850 
  3. ^ 杉村朋子, 鯵坂和彦, 大田大樹, 田中潤一, 喜多村泰輔, 石倉宏恭「Refeeding syndrome から多臓器不全を合併した1例」『日本救急医学会雑誌』第22巻第5号、日本救急医学会、2011年5月、213-218頁、doi:10.3893/jjaam.22.213ISSN 0915924XNAID 10029368471 
  4. ^ 千葉正博「早期産・低出生体重児の栄養管理」『日本静脈経腸栄養学会雑誌』第34巻第1号、日本静脈経腸栄養学会、2019年、7-10頁、doi:10.11244/jspen.34.7ISSN 2189-0161NAID 130007635451 
  5. ^ 低リン血症 - 10. 内分泌疾患と代謝性疾患 MSDマニュアル プロフェッショナル版
  6. ^ 低カリウム血症 - 10. 内分泌疾患と代謝性疾患 MSDマニュアル プロフェッショナル版
  7. ^ 低マグネシウム血症 - 10. 内分泌疾患と代謝性疾患 MSDマニュアル プロフェッショナル版
  8. ^ Kano, Yasuhiro; Aoyama, Sayaka; Yamamoto, Ryuichiro (2023-09). “Hyoro-zeme in the Battle for Tottori Castle: The first description of refeeding syndrome in Japan” (英語). The American Journal of the Medical Sciences. doi:10.1016/j.amjms.2023.08.015. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0002962923013277. 
  9. ^ 秀吉の鳥取城・兵糧攻め、「リフィーディング症候群」で大量死亡か医師らが論文 (産経新聞2023年12月2日)
  10. ^ “A CLINICAL STUDY OF MALNUTRITION IN JAPANESE PRISONERS OF WAR” (英語). Annals of Internal Medicine 35 (1): 69. (1951-07-01). doi:10.7326/0003-4819-35-1-69. ISSN 0003-4819. http://annals.org/article.aspx?doi=10.7326/0003-4819-35-1-69. 
  11. ^ Hearing, Stephen D (2004-04-17). “Refeeding syndrome” (英語). BMJ 328 (7445): 908–909. doi:10.1136/bmj.328.7445.908. ISSN 0959-8138. PMC PMC390152. PMID 15087326. https://www.bmj.com/lookup/doi/10.1136/bmj.328.7445.908. 

リフィーディング症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 01:40 UTC 版)

栄養失調」の記事における「リフィーディング症候群」の解説

長期飢餓状態から急に大量食事をした際に起きる諸症状まとめてリフィーディング症候群と呼ぶ。食料与えてから4日以内発生し痙攣心不全呼吸不全低リン血症血糖値・ビタミン・ミネラルの異常、消化器異常、意識障害などが報告され死亡例もある。 発症メカニズム以下のとおりである。まず飢餓状態では、ミネラルビタミンなどが不足しながらも、体内たんぱく質異化脂肪分解対応している。この時に大量食事をしてしまうと血糖値制御するインスリン過剰分泌され急速なATP産出タンパク質の合成が始まる。その活動によって、飢餓によって不足していたリン過剰消費され、更にリン・カリウム・マグネシウムが細胞内移動し、これらミネラル栄養素不足でリン欠乏症カリウム欠乏症マグネシウム欠乏症発症するまた、糖質代謝関わるビタミンB1欠乏起こす

※この「リフィーディング症候群」の解説は、「栄養失調」の解説の一部です。
「リフィーディング症候群」を含む「栄養失調」の記事については、「栄養失調」の概要を参照ください。

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