モータウン‐サウンド【Motown sound】
モータウン・サウンド[Motown sound]
モータウン・サウンド
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 04:40 UTC 版)
モータウンの独特なソウルミュージックは「モータウン・サウンド」(Motown sound)と呼ばれている。 ポップにアピールするため、モータウン・サウンドはバックビートにタンバリンのアクセント、時に派手で時に流れるようなエレクトリック・ギターの旋律、独特のメロディとコード構成、ゴスペルを起源とするコールアンドレスポンスが通常使用されている。オーケストラの弦楽器、管楽器、念入りにアレンジされたバックグラウンド・ヴォーカルを使用するなどポップの技術が取り入れられている。複雑なアレンジやメリスマ的ヴォーカルは避けられる。モータウンのプロデューサーたちは「KISSの原則」(keep it simple, stupid、簡潔に、の意)を確信している。ポピュラー音楽において黒人アーティストの作曲や演奏がよく行われるようになったにも関わらず、白人演奏者に演奏されない限り人気が出たり認知されたりすることはなかった。しかしモータウン・サウンドは明らかに独特で、白人演奏者がそのサウンドを再現することは不可能である。実際のモータウン・サウンドはそれをアレンジされたものより好まれるようになった。 モータウンの製作過程は工場に例えられる。ヒッツヴィルのスタジオは開放され、22時間操業し、アーティストはしばしば数週間ツアー公演に行き、できるだけ多くの曲をレコーディングするためにデトロイトに戻り、またすぐツアー公演に行く。ベリー・ゴーディは毎週金曜朝に品質管理会議を行ない、最高品質のもの以外はリリースを拒否した。週間ポップ・チャート第5位以内を目指して、新曲リリースのたびに毎回この審査が行われた。ゴーディに拒否されたが、のちに批評的、商業的に成功した作品もいくつかある。最も有名なものはマーヴィン・ゲイの「悲しいうわさ」と「ホワッツ・ゴーイン・オン」の2曲である。いくつかのケースではプロデューサーたちが最終的にのちの金曜朝の会議で認めてもらうために作り直すこともあった。プロデューサーのノーマン・ホィットフィールドは「悲しいうわさ」とテンプテーションズの「エイント・トゥー・プラウド・トゥ・ベッグ」を作り直した。 スプリームスの初期のヒット曲などモータウンの有名な曲の多くはラモント・ドジャー、ブライアン&エディのホランド兄弟によるホランド=ドジャー=ホランドによる作曲トリオにより作曲されたものである。モータウンで重要なプロデューサーおよび作曲家は他にノーマン・ホィットフィールド、ウィリアム"ミッキー"スティーヴンソン、スモーキー・ロビンソン、バレット・ストロング、アシュフォード&シンプソン、フランク・ウィルソン、パメラ・ソウヤー&グロリア・ジョーンズ、ジェイムス・ディーン&ウィリアム・ウエザースプーン、ジョニー・ブリストル、ハーヴィー・フークワ、ギル・アスキー、スティーヴィー・ワンダー、そしてゴーディ自身である。 モータウンのミュージシャンにより作り出されたスタイルはダスティ・スプリングフィールド、ファンデーションズなど1960年代中期のモータウン外のアーティストにも多大な影響を与えた。イギリスではモータウン・サウンドはノーザン・ソウルの基礎となった。スモーキー・ロビンソンはモータウン・サウンドはデトロイトとの関連性は少ないと語った: モータウンの曲を聴いた人達は「ああ、ベースをもっと使うんだね、とか、ドラムをもっと使うんだね」などといい加減なたわ事を言う。我々が初めて成功をおさめた時、ドイツやらフランスやらイタリアやらアラバマ州のモービルから人が集まって来た。ニューヨーク、シカゴ、カリフォルニアからもね。本当にあちこちから。レコーディングするためだけにわざわざデトロイトにやってくるんだ。デトロイトの空気があの音を作っているんだ、デトロイトに来さえすれば、たとえフリーウェイ上でレコーディングしようともモータウン・サウンドをモノに出来るんだ、とでも思っていたんだろう。よく聞いてくれ。自分にとってのモータウン・サウンドは表面上の耳に聞こえる音ではない。それはスピリチュアルなものであり、それを演奏する人々の中から生み出されるものなんだ。デトロイトに集まってきた連中が分かってなかったのは、我々はデトロイトにたまたまスタジオを持っていたというだけで、実際にはシカゴ、ナッシュビル、ニューヨーク、ロサンゼルス、ほとんどの大都市でもレコーディングを行なっている。そういう所で録音してもモータウン・サウンドを再現することはできるんだ。
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