ボクサーエンジンとは? わかりやすく解説

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水平対向エンジン

(ボクサーエンジン から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/26 15:58 UTC 版)

水平対向エンジン(すいへいたいこうエンジン、: Horizontally-opposed cylinder engine)または水平対向機関は、レシプロエンジンの形式の一つで、1本のクランクシャフトをはさんでシリンダー(気筒)を左右に水平に配置し、対になるピストン同士が必ず向かい合うように下降または上昇するエンジンである[1]ボクサーエンジン(boxer engine)やフラットエンジン[注釈 1](flat engine、平たいエンジン)とも呼ばれる。


注釈

  1. ^ 直列エンジンを横に寝かせて設置したものをフラットエンジンと呼んでいることがあるので注意を要する。
  2. ^ SUBARUの登録商標であるが、それ以前にマツダが「MAZDA BOXER」の商標を所有していたため、SUBARUが特許庁に対して「MAZDA BOXER」の商標取り消しを求めた結果SUBARUが「BOXER」を使用できるようになったのは2004年2月以降である[12]
  3. ^ 航空用エンジンでは特に欠点とはならない。
  4. ^ 両方のバンクが直列6気筒と同等の構成となるため。
  5. ^ 左右のシリンダ列の軸方向のズレ量が、180度V型(共有したクランクピン内のコンロッド1本分のズレ)はボクサー型(共有できないクランクピン間のクランクウェブ等の厚みがコンロッド1本分に加わったズレ)よりも小さいことを外観で識別できれば、不可能ではない。
  6. ^ 4個のピストンが同時に上死点に達するため。ちなみに90度V型8気筒では、クランクシャフトがフラットプレーンでもクロスプレーンでも90°の等間隔燃焼にできる。
  7. ^ ただし全幅を抑える等の目的でショートストローク型とする場合には、ボア径の増大によりシリンダーピッチ(気筒間隔)が長くなり、180度V型でもクランクシャフトは短くできずに重量軽減のみとなることもありうる。
  8. ^ 365GT4BBからF512Mまで。
  9. ^ 直列2気筒4ストロークエンジンにおいて、360°クランク(2つの気筒のクランクピンの位相が同じ)では等間隔燃焼になるが1次振動が発生し、180°クランク(2つの気筒のクランクピンが軸対称位置)では1次振動は打ち消せるが不等間隔燃焼となり偶力も大きい。水平対向2気筒では、直列2気筒中の1気筒をクランクシャフト中心で180° 移動させて180° クランクを使用する形であり、等間隔燃焼と振動の相殺が両立される。この考え方はそのまま任意の気筒数の水平対向エンジンに拡張できる。
  10. ^ 気筒数やバンク角によっては、クランクピンを両バンクで共有したままでは不等間隔燃焼となり、位相クランクを用いて等間隔燃焼とすると振動特性が悪化する場合がある。
  11. ^ 多くの量産エンジンにDOHC化やマルチバルブ化、可変バルブタイミング化、直噴化など、シリンダーヘッド周辺の重量を増加する機構が採用されるようになってきたため、直列型やV型エンジンの重心は高くなっている。これに対し水平対向エンジンでは、クランクシャフトとほぼ同じ高さにシリンダーヘッドがあり、これらの機構を採用しても静的な重心が高くならない。
  12. ^ 筒内圧解析、ボアに対するピストンピンオフセット、ピストンスカートプロフィールの最適形状化など動的なシミュレーション技術の利用など
  13. ^ 国鉄がディーゼル機関車に使用していた縦型のDMF31系エンジンを気動車用に水平シリンダー化したエンジンの開発を進めたが、大径シリンダーの水平配置という特殊な構造のために潤滑系の問題が発生したことなどで開発が難航して、結局実用化されなかった[20]。なおこの経験は、その後に開発・実用化された180°V型エンジンの潤滑設計などに生かされている。
  14. ^ なおボクサーエンジンであっても6気筒エンジンの場合は、片バンク3気筒がクランク角240°ごとの等間隔燃焼であり、片バンクごとに排気管を集合しても干渉しない。
  15. ^ "Quad"(四-)+ "hydro"(水-)+ "horizontal"(水平の)のかばん語
  16. ^ a b 同社の2017年3月31日までの正式社名は富士重工業だった。
  17. ^ 前者ジェミネットIIアスカ2代目)、後者9-2Xが該当する。
  18. ^ トヨタ自動車との共同開発車としてはスバルのBRZと、その姉妹車であるトヨタ・86が該当する。
  19. ^ 速く走るためにタイヤを路面に押しつけることに利用する、車体周囲を流れる空気による下向きの力。この時代の当初は飛行機の翼を裏返したような断面のサイドポンツーンで下向きの揚力を発生させているようにもみられたが、実際には車体底面と路面との間で構成されたベンチュリ内の高速気流によって負圧を生じさせて、車体を路面に吸い付かせていた。
  20. ^ 鉄道車両むけ直列エンジンでも床上搭載が可能な機関車においては潤滑に有利な縦型が主流である。気動車でも技術的観点から黎明期には縦型エンジンの採用例があったように、横型だけで縦型のものが皆無という訳ではないが、近年は低重心化・低床化のニーズが高まっているため、横型化への要求は強い。
  21. ^ 当初は新開発のDMF31HS(直列6気筒横型)搭載が目論まれていたが、不具合が多く解決まで時間がかかるとして変更された。
  22. ^ 同時期にDML30HS系の片バンク6気筒分をなくした直列6気筒の派生エンジンDMF15系が並行開発されており、キハ90形には300馬力のインタークーラーターボ仕様が搭載された。DMF15系は次世代特急形気動車用エンジンにはならなかったものの、車載発電機用や、デチューンされた上でキハ40系気動車の駆動用として車両に搭載される事となった。
  23. ^ 新しい直列6気筒エンジンは、特急形気動車ではキハ185系以降の新型車から採用。直接噴射式のインタークーラーターボ付きで排気量11 - 15リットル級、330 - 460馬力程度で、1両あたり2基搭載した車両も多い。なお大柄な180°V型12気筒のDML30系エンジンでは、2基搭載はほぼ不可能である。

出典

  1. ^ モーターファン・イラストレーテッド, vol.20, p.52.
  2. ^ 金子浩久『自動車 カラー&図解ですぐわかる』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2010年、63頁。ISBN 9784072700822 
  3. ^ JISB0108-1:1999”. kikakurui.com. 2021年9月1日閲覧。
  4. ^ ISO 2710-1:2017(en) Reciprocating internal combustion engines — Vocabulary — Part 1: Terms for engine design and operation”. ISO (2017年). 2021年9月3日閲覧。 “3.17.10 horizontally opposed engine: engine with two cylinder banks located in the same plane on opposite sides of the crankshaft "クランクシャフトの両側の同一平面上に2つのシリンダバンクを配置したエンジン"”
  5. ^ Prinzip und Technik des Boxermotors” (ドイツ語). boxermotor.com. 2021年9月1日閲覧。
  6. ^ Don Goodsell (1989). Dictionary of Automotive Engineering. Society of Automotive Engineers. ISBN 0898837669 
  7. ^ Ferrari. “512 F1” (英語). 2021年9月1日閲覧。
  8. ^ 株式会社SUBARU 沿革”. 株式会社SUBARU. pp. 10 (2018年). 2021年9月1日閲覧。
  9. ^ AUTOCAR JAPAN. “フェラーリ初のスーパーカー、ベルリネッタボクサー その実力は”. 2022年5月13日閲覧。
  10. ^ a b c モーターファン・イラストレーテッド, vol.20, p.51.
  11. ^ モーターファン・イラストレーテッド, vol.20, p.53.
  12. ^ マツダにもボクサーがあった…スバルの「BOXER」はかつてはマツダが所有する商標。スバルが入手した経緯とは”. ドライバーWeb (2022年3月15日). 2023年11月27日閲覧。
  13. ^ Motor Fan illustrated編集部 (2020年6月1日). “内燃機関超基礎講座”. Motor-Fan TECH. 2021年8月31日閲覧。
  14. ^ a b 「“水平対向”と“180度V型”エンジンの違いは?」”. webCG (2003年11月15日). 2021年8月31日閲覧。
  15. ^ a b c Bonk, Aaron (2013年2月7日). “How Boxer Engines Work”. Super Street Magazine. Source Interlink Media. 2013年12月21日閲覧。
  16. ^ a b Hanlon, Mike (2001年2月7日). “The world’s first horizontally-opposed turbo diesel engine”. Gizmag. http://www.gizmag.com/go/6800/ 2013年12月20日閲覧。 
  17. ^ Bestandteil-Verzeichnis für die Type 57” (PDF) (ドイツ語). Tatra-Werke. 2021年9月2日閲覧。 ※4気筒であるがクランクシャフトにクランクピンが2つしかないため180度V型に分類される。
  18. ^ モーターファン・イラストレーテッド, vol.20, p.67.
  19. ^ スバル、次期水平対向エンジンに希薄燃焼 直列化案も日経XTECH 2023年8月27日閲覧
  20. ^ 『鉄道のテクノロジー Vol.4』三栄書房、051頁。ISBN 978-4-7796-0715-8 
  21. ^ Nunney, M. J. (1988). Light and Heavy Vehicle Technology. Oxford, UK: Heinemann Professional Publishing. p. 12. ISBN 0 434 91473 8. https://books.google.com/books?id=-vj8BAAAQBAJ&pg=PA12 2015年5月8日閲覧。 
  22. ^ English, Bob (2010年4月29日). “The engine that Benz built still survives”. The Globe and Mail (Canada). https://www.theglobeandmail.com/globe-drive/car-life/classic-cars/the-engine-that-benz-built-still-survives/article4317376/ 2013年12月19日閲覧。 
  23. ^ Hodzic, Muamer (2008年3月27日). “Mercedes Heritage: Four-cylinder engines from Mercedes-Benz”. Blog. BenzInsider. 2013年12月20日閲覧。
  24. ^ “The Wilson-Pilcher Petrol Cars”. The Automotor Journal. (1904-04-16). 
  25. ^ Kimes, Beverly (1996). Standard Catalog of American Cars 1805-1942. Krause Publications. p. 572. ISBN 0-87341-428-4 
  26. ^ Distinct Engineering Mounted into the Subaru 1000”. SUBARU Philosophy. Fuji Heavy Industries Ltd (2012年8月10日). 2013年12月20日閲覧。 “Source: 'Subaru' magazine – Subaru 1000 extra edition (issued 1966-05-20)”
  27. ^ 1974 SUBARU QUADROZONTAL ENGINE”. Propaganda & Advertising (2019年12月12日). 2021年8月31日閲覧。
  28. ^ Flat-6 Club: 1993 Subaru Impreza w/ Legacy 6-Cyl”. www.dailyturismo.com. 2019年9月21日閲覧。
  29. ^ Greencarcongress”. Legacy Diesel Announcement. 2008年1月23日閲覧。
  30. ^ Harwood, Allyson (2008年1月). “2008 Subaru Turbodiesel Boxer - First Drive”. MotorTrend Magazine. Source Interlink Media. 2013年12月20日閲覧。
  31. ^ A True Engineering Revolution”. SUBARU BOXER DIESEL. Fuji Heavy Industries Ltd. 2014年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月20日閲覧。
  32. ^ Flat-12 engine”. Ferrari.com. Ferrari S.p.A.. 2013年12月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月21日閲覧。
  33. ^ No.0621「ルネメッジのこと」- Organisation Voice 2004/04/01菅原さんからの手紙 2023年8月27日閲覧


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ボクサーエンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/02 02:06 UTC 版)

フェラーリ・312B」の記事における「ボクサーエンジン」の解説

1966年に3リットルエンジン規定導入されてからフェラーリ60V型12気筒エンジン使用していたが、4シーズン渡りタイトルから見放されていた。この間登場したフォード・コスワース・DFVエンジン対抗すべく、マウロ・フォルギエリ技術者新たに180度V型12気筒エンジン開発した。ボクサーエンジンと通称されているが、このエンジン向かい合う2つ気筒1つクランクピン共有しピストン同時に同じ方向に動くという構造V型エンジンバンク角を180度にしたものと見ることができ、このエンジン表現として「ボクサーエンジン」「水平対向12気筒」はあまり正確ではなく正確に表現しようとするなら180度V型12気筒ということになる。 12気筒エンジンではクランクピンの間に1個ずつ軸受ベアリング)を置く7ベアリング一般的だが、摩擦抵抗を減らすためベアリングクランクピン2個毎に減らし中間のベアリング廃止した4ベアリング中央2つプレーン両端ローラー)とした。テストでは振動の問題発生したため、クランクシャフトフライホイールの間にラバーダンパーを追加した312搭載されていた60度V12エンジンよりもバンク角広げたことで重心低下し車両運動性能向上した。また横幅コンパクト抑え若干重量減も果たした。ボクサーユニットは横置きトランスミッション採用した312Tシリーズにも搭載され1970年代後半4度のコンストラクターズタイトルと3度のドライバーズタイトルを獲得する名基となったF1以外ではスポーツプロトタイプの312PB (1971年-1973年) にも、耐久レース用に回転数出力落としたバージョン搭載された。量販スポーツカーでも365GT4BB(1973年)からF512M(1994年)までボクサー路線継承された。

※この「ボクサーエンジン」の解説は、「フェラーリ・312B」の解説の一部です。
「ボクサーエンジン」を含む「フェラーリ・312B」の記事については、「フェラーリ・312B」の概要を参照ください。

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