ホテル
*関連項目→〔宿〕
『グランド・ホテル』(グールディング) ベルリンのグランド・ホテルに滞在する客たちの人生模様。経営危機の会社の社長が、速記係の女を愛人にしようとする。「男爵」と自称する泥棒が、バレリーナと恋仲になる。病気で余命僅かの会社員が、最後の贅沢をしようと連泊する。「男爵」は社長の部屋へ盗みに入り、殴り殺される。社長は逮捕され、バレリーナには「男爵」の死は知らされない。会社員は、残りの人生を速記係の女と過ごそうと考え、2人でパリへ旅立つ。
*高級ホテルに滞在して休暇を楽しむ人々→〔同性愛〕1の『ヴェニスに死す』(マン)・〔二者同想〕4の『桃源境の短期滞在客』(O・ヘンリー)。
『雪』(川端康成) ここ4~5年、野田三吉は正月元日の夕方から3日の朝まで、家族と離れ、東京高台のホテルに1人隠れて過ごす。彼はホテルを「幻ホテル」、部屋を「雪の間」と呼んでいる。今年54歳の三吉は、ベッドに入って目を閉じ、幻の雪が舞い始めるのを待つ。しばらくして目を開けると、部屋の壁が雪景色になっている。雪の中に父が現れ、三吉を愛してくれた女たちが現れる。三吉は自由に彼らを呼び出し、会うことができるのだ。
『どん底』(ゴーリキー) 底辺の労働者、犯罪者、売春婦、病人などが暮らす木賃宿の地下室。巡礼ルカがやって来て、アル中の役者に無料の病院を教え、肺病の人妻に死後の平安を説く。木賃宿の亭主の妻ワシリーサは、泥棒ペーペルを愛人とする。しかしペーペルは、ワシリーサの妹ナターシャを口説いている。ワシリーサがナターシャを折檻し、騒ぎの中でペーペルは木賃宿の亭主を殴り殺す。前科者サーチンが酔って「人間は尊敬すべきものだ」と叫ぶ。その頃、外ではアル中の役者が首を吊っている。
★3.性交のためのホテル。
『ここより他の場所』(大江健三郎) 夏の真昼。情人を連れてホテルへ入ろうとする青年に、老人が話しかけてくる。「いい船がある。それに乗って、ここより他の場所へ行かないかね?」。青年は老人を無視してホテルへ入る。青年と情人は、避妊について口論した末に、避妊具なしで交わり、婚約する。ホテルを出る時、老人の姿はなかった。青年は思う。「あの老人と仲間になっていたら、どこか遠い所へ行けたのだ。おれは一生、ここより他の場所へは行けない」。
★4a.人を狂わせ、殺すホテル。
『シャイニング』(キューブリック) 冬季は雪のため閉鎖され、無人になる山上のホテル。ジャックは、妻ウェンディ・息子ダニーとともに、一冬の管理人として住み込む。このホテルは、インディアンの墓地跡に建てられており、訪れる人を狂気に追いやるのだった。以前の管理人は、妻と2人の娘を斧で惨殺し、猟銃自殺した。ジャックも斧をふりかざしてウェンディとダニーに襲いかかるが、2人は雪上車でホテルから脱出する。ジャックは雪に埋もれて凍死する。
『誤解』(カミュ) 小さなホテルを経営する母と娘が、客の男を眠らせて殺し所持金を奪う。ところがその客は、かつて家出したこの家の息子であった。彼は20年ぶりに母と妹に会うために、客をよそおってこのホテルへ来たのだった〔*『異邦人』第2部の2に、ムルソーが独房内で繰り返し読んだ古新聞の記事として、同様の物語が記される〕。
*イギリスにも同様の物語がある→〔宿〕6の『霊を鎮める』(イギリスの民話)。
『影男』(江戸川乱歩)「断末魔の牡獅子」~「隠形術者」 四方の壁と天井が鏡張りのホテルの一室で、全裸の五十男が四つん這いになり、そこに美女が馬乗りになって、男を鞭打つ。隣室のマジック・ミラーから、速水荘吉(=影男)が男の狂態をのぞき見、写真を撮影する。五十男はS県の大富豪であり、速水は彼に写真を送りつけ、大金をゆすり取るのだった。
『ロシアより愛をこめて』(ヤング) イスタンブールのホテル。夜、ジェイムズ・ボンドが部屋に戻ると、裸の美女がベッドで待っていた。女はソ連領事館職員タチアナで、これはボンドを陥れる罠であった。壁にはめこまれた大きな鏡はマジック・ミラーであり、隣室から2人の男が、ボンドとタチアナの情事を撮影していた→〔心中〕7c。
*ホテルの部屋の盗聴器→〔立ち聞き(盗み聞き)〕4bのシャンデリア(ブレードニヒ『ヨーロッパの現代伝説 ジャンボジェットのねずみ』)。
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