プロトン駆動力
英訳・(英)同義/類義語:pmf , proton motive force, , Proton-motive force, proton motive force
水素イオン(H+) の移動に伴って生じる水素イオン濃度差に基づく、電気化学的ポテンシャル。
プロトン駆動力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:53 UTC 版)
膜を越えたイオンの移動は、2つの因子の組み合わせに依存する。 濃度勾配による拡散力 - すべての粒子は高濃度側から低濃度側へ拡散する傾向がある。 電位勾配による静電力 - プロトン(H+)のようなカチオンは電位勾配に従って陽極側から陰極側へ拡散する傾向がある。アニオンは自発的に反対方向へ拡散する。 これらの2つの勾配はまとめて電気化学的勾配と表現される。 生体膜の脂質二重層はイオンの移動の障壁となる。そのためエネルギーは膜を挟んだ2つの勾配の組み合わせとして貯蔵される。イオンチャネルのような特別な膜タンパク質だけが、時おり膜を越えてイオンを通過させることができる(膜輸送(英語版)を参照)。化学浸透説においてATP合成酵素は極めて重要である。ATP合成酵素は、自身を通過するプロトンの自発的な流れによるエネルギーをATPの化学結合のエネルギーへと変換する。 そのため研究者らは、前述した電気化学的勾配から派生して、プロトン駆動力(proton-motive force、PMF)という用語を作り出した。プロトン駆動力は、プロトンの濃度勾配と電位勾配の組み合わせとして貯蔵されるエネルギーの尺度として説明される。電気的な勾配は膜を挟んだ電荷の分離(プロトンは塩化物イオンといった対イオン(英語版)を伴わず移動する)によって生じる。 ほとんどの場合において、プロトン駆動力はプロトンポンプとして機能する電子伝達系によって生成される。電子伝達系は酸化還元反応のギブズエネルギーを利用してプロトンを汲み出し、膜を挟んで電荷を分離する。ミトコンドリアでは、電子伝達系によって放出されるエネルギーがミトコンドリアマトリックス(陰極側)からミトコンドリア膜間腔(陽極側)へプロトンを移動するために利用される。ミトコンドリア外へのプロトンの移動は正に帯電したプロトンの濃度を低下させるため、膜の内側ではより多くの負電荷が形成される。電位勾配は約 -170 mVである。ミトコンドリアではプロトン駆動力はほぼ完全に電気的な要素で構成されるが、葉緑体におけるプロトン駆動力は、プロトンの電荷は塩化物イオンや他のアニオンの移動によって中和されるため、ほぼpH勾配によって形成されている。どちらの場合でも、ATP合成酵素がATPを合成するには約 460 mV(45 kJ/mol)以上のプロトン駆動力が必要である。
※この「プロトン駆動力」の解説は、「化学浸透」の解説の一部です。
「プロトン駆動力」を含む「化学浸透」の記事については、「化学浸透」の概要を参照ください。
プロトン駆動力と同じ種類の言葉
- プロトン駆動力のページへのリンク