パワハラとは? わかりやすく解説

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パワーハラスメント

別名:パワハラ

パワーハラスメントとは

パワーハラスメント(略称:パワハラ)とは、職場自分立場優位であることを利用して社内人間精神的身体的に嫌がらせをしたり、過剰な叱り方をしたりして職場環境悪くするような行為のこと。

パワーハラスメント(パワハラ)は、和製英語である。英語では一般的にはpower harassment」などとは言わずabuse of authority職権乱用)、あるいはworkplace bullying職場でのいじめ)といった表現用いられ日本語のパワーハラスメントに対応する意味で使われている。欧米諸国では、単にbullying(いじめ行為)と呼ぶこともある。bullyingは、元々は子どもの間で行われる弱い者いじめを指す語であったが、昨今職場におけるいじめ行為(すなわちパワハラ行為)を指す意味でbullyingの語が用いられることがある

2019年5月参議院本会議可決成立した改正労働施策総合推進法通称パワハラ防止法」)は、パワーハラスメントを職場における「優越的な関係に乗じ」、「業務上あってしかるべき範囲逸脱した過剰な言動により」、「心身苦痛与えて就業環境害する」、という3要素全て該当する行為のことであるとしている。

パワーハラスメントは、必ずしも「上司部下に対して行う」ものとは限らず、「部下から上司へ」、あるいは同僚の関係においても行われる場合もある。パワーハラスメントの要件含まれる優越的な関係」は、役職の上下関係だけでなく、経験知識豊富さ、あるいは職場人間関係良好さといった、優劣関係によっても生じる。そしてその優位にある者からから受ける行為不適切なほど過剰であり、その過剰な行為受けた当事者精神的身体的に苦痛感じた場合、その行為はパワーハラスメントに該当する

パワーハラスメントの種類

パワーハラスメント(パワハラ)は、その言動内容に応じて、6種の類型区分される

殴る・蹴る・物を投げつけるといった直接的な攻撃行為は「身体的な攻撃」と呼ばれる人前必要以上に叱責したり、人格否定するようなことを言ったりして相手の心を傷つける行為は「精神的な攻撃」と呼ばれる無視したり、別室になどにおいて隔離したりして、社内あるいは部署から孤立した状態に置く行為は「人間関係からの切り離し」に該当する

遂行達成不可能ほど過大なノルマ与え、しかも達成できなかったことを叱責する行為を「過大要求」という。立場職能に全く釣り合わない低レベル仕事しか与えなかったり、あるいは仕事を全く与えなかったりする行為を「過小要求」という。そして、相手私生活過度に踏み込みプライバシー侵害される苦痛与え行為が「個の侵害」と呼ばれる

パワーハラスメントの事例

日本では近年パワハラ問題深刻な社会問題となっており、法廷でパワーハラスメントの有無問われ事例増えつつある。

亀戸労基署長事件

亀戸労基署長事件は、ある会社社員会社での業務原因出血性脳梗塞発症した当該社員の妻が亀戸労基署長に労災保険給付求めた事件である。

脳梗塞発症した社員時間外労働時間は、発症前の1ヶ月間では80時間近く達していたという。また、部長社員を立たせたまま叱ることが1月に2回以上あった。時間外労働多さ叱責多さ大きなストレスとなり、脳梗塞起因になった認められ、パワーハラスメントがあったと認め判決下された

松蔭学園事件

高校女性教論担当担任といった教員としての仕事与えられず、隔離され環境置かれるなどして、女性教員精神的苦痛受けたとして慰謝料請求した事案である、高裁控訴審)では職場においてパワーハラスメントがあったと認められ被告である学校法人損害賠償支払い命じた

訴訟して法廷争われ結果、パワーハラスメントがあっとは認められず、原告敗訴した事例もある。

損保ジャパン調査サービス事件

同事件は、対人トラブルが多い傾向にあった社員上司から退職強要されたり威圧的脅迫的な言葉浴びせられたりし、さらに不当な移動命じられたと主張し損害賠償求め提訴した事件である。原告は、上司から受けたストレスによってPTSD心的外傷後ストレス障害)になり、休職せざるを得なくなった主張し不法な嫌がらせ等の行為有無巡って争われた。

判決では、上司言動には正当性がありパワーハラスメントとは認められず、パワーハラスメントには該当しないとされ、最終的にパワーハラスメントは認められないとする判決下った

判決上司指導注意が(受けた当人には不満に感じられたとしても)職務適切な範囲内であった判断したわけである。

パワーハラスメントに関する日本における法整備、欧米諸国の事例

日本におけるパワーハラスメント対策は、通称パワハラ防止法」の成立により法的に整備されつつある。「パワハラ防止法」の正式名称は、「改正労働施策総合推進法」という。パワハラ防止法により企業事業者はパワーハラスメントを防止するために必要な措置をとることが必須となり、適切な措置が行われていない場合は、指導対象となる。

企業には、職場のパワハラ防止に関する方針明確化周知、パワーハラスメントの要因なり得る就業規則就業規則見直し是正職務として適正な言動とパワーハラスメントに該当する行動線引きに関する教育・啓発、あるいは相談窓口の設置など、おのおの必要な対策を講じることが義務けられる

ルール指針決めるだけでなく、社員に対してケアも必要である。パワーハラスメントの実態調査アンケート、パワーハラスメントについての社員研修、パワーハラスメントを受けた労働者心のケア再発防止策などの対策をしなければいけない。

パワハラ防止法大企業では2020年6月施行される。ただし施行当初大企業に対して飲み設置義務生じる。いわゆる中小企業2022年4月からまでは努力義務位置付けられ猶予設けられる

欧米をはじめ諸外国でもパワハラを防止するための法整備進んでいる。例えば、イギリスでは「ハラスメントからの保護法」(Protection from Harassment Act 1997)がハラスメント行為全般禁じており、ハラスメント行為対す損害賠償請求可能としている他、ハラスメント行った加害者刑事罰科することができるようになっている


パワ‐ハラ


パワハラ

パワハラとは、「パワーハラスメント」の略称であり、職場での優越的立場利用した嫌がらせのことです。2020年6月1日企業にパワハラ防止義務付ける改正労働施策総合推進法パワハラ防止法)」が施行されたことで、近年さらに注目集めてます。閉じた環境の中で起こりやすい「いじめ」や「嫌がらせ」は、職場でも注意すべき問題一つです。 パワハラは法令において詳細な定義がされており、判例蓄積されています。具体的にどんな例がパワハラに該当するのか、「6類型」に基づいて理解するわかりやすくなります

パワーハラスメント

(パワハラ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 17:02 UTC 版)

パワーハラスメント和製英語Power Harassment: Harassment、Workplace Bullying)とは、組織内虐待の1つであり、主に社会的な地位の強い者(政治家上司役員大学教授など)による、自らの権力や組織内の優位性を利用したいじめ嫌がらせのことである[1]。略称はパワハラ。近年ではパワハラの定義が広義となっており、上司からのいじめや、学校でのいじめ(スクール・セクシュアル・ハラスメントアカデミックハラスメント)も対象となることがある[2][3][4][5][6][7][8][9][10]


注釈

  1. ^ 夕刊フジ2012年(平成24年)2月24日の記事「パワハラか否かの線引きはドコ?」によれば、パワハラか否かの線引きはその行為の「目的」にあり、職務上必要な教育や指導を目的とした言動ではなく、人格を傷つけること、嫌がらせを目的とした言動が「ハラスメント」にあたる。その行為は人格権の侵害とされる。

出典

  1. ^ a b c d パワーハラスメント とは - コトバンク
  2. ^ a b c d e スクールハラスメントの課題と求められている対策 – 日本教育新聞電子版 NIKKYOWEB”. web.archive.org (2022年9月4日). 2022年9月9日閲覧。
  3. ^ a b c d e 自殺者も多数。大学という閉鎖的環境で起きている「アカハラ」の異常(MAG2 NEWS) - goo ニュース”. web.archive.org (2022年9月9日). 2022年9月9日閲覧。
  4. ^ a b c d 犯罪率は低くても、閉鎖性と同調圧力が引き起こす悪事は絶えない日本|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト”. web.archive.org (2022年6月20日). 2022年9月9日閲覧。
  5. ^ a b c d 犯罪率は低くても、閉鎖性と同調圧力が引き起こす悪事は絶えない日本 「うち」世界では、いじめ、虐待、セクハラ、パワハラなどが起こりやすい | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)”. web.archive.org (2022年9月3日). 2022年9月9日閲覧。
  6. ^ a b c d 「粉飾決算、パワハラ、いじめ」が横行するヤバい職場に共通する"ある雰囲気" 誰も責任を取らないまま繰り返す | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)”. web.archive.org (2021年6月30日). 2022年9月9日閲覧。
  7. ^ a b c d e パワーハラスメントの定義について”. 厚生労働省. 2022年9月9日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g 職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議 ワーキング・グループ報告 参考資料集”. 厚生労働省. 2022年9月9日閲覧。
  9. ^ a b c 太田肇『「承認欲求」の呪縛』新潮社、2019年。
  10. ^ a b c d e f 入江正洋「職場のパワーハラスメント : 現状と対応」『健康科学』第37巻、2015年、23-35頁、doi:10.15017/1515750NAID 120005607689 
  11. ^ 日経文庫「パワーハラスメント」Ⅱ-1パワハラはこうして生まれた p.40-43.
  12. ^ a b c 厚生労働省 2018, p. 4.
  13. ^ “「同僚のいじめ」も…職場のパワハラ6類型 厚労省”. 日本経済新聞 電子版 (日本経済新聞社). (2012年1月30日). http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG3003H_Q2A130C1CR8000/ 2012年2月12日閲覧。 
  14. ^ 総合労働相談コーナーのご案内
  15. ^ パワハラ相談窓口のご案内
  16. ^ STOP!パワーハラスメント 思わずやっているこんなことリンク切れ
  17. ^ a b 人権教育啓発促進センター (2010). 企業における人権研修シリーズ パワー・ハラスメント (PDF) (Report). 法務省. 2011年5月23日時点のオリジナル (pdf)よりアーカイブ。2019年1月15日閲覧
  18. ^ 佐藤律子 (2018年12月16日). “パワハラを避けるための「部下への気遣い」はなぜ逆効果なのか”. DIAMOND Online. 2019年1月15日閲覧。
  19. ^ a b 東京経協 実務シリーズ No.2010-4-003 パワーハラスメントに関わる法的注意点 (3)” (PDF). 東京経営者協会. 2012年8月25日閲覧。
  20. ^ 上司の「アウティング」はパワハラ、異例の労災認定…緊急連絡先の同居パートナーを同僚に暴露”. 読売新聞オンライン (2023年7月24日). 2023年7月27日閲覧。
  21. ^ 「東芝府中工場事件」 東京地判平成2年2月1日、昭和57年(ワ)64 労働判例558号58頁
  22. ^ 「クレジット債権管理組合退職金等請求事件」 福岡地判平成3年2月13日 福岡地裁昭和62年(ワ)3334
  23. ^ 「松蔭学園事件」 東京高判平成5年11月12日 判時1484-135
  24. ^ 「ダイエー事件」 横浜地判平成2年5月29日 労働判例451号35頁
  25. ^ 「誠昇会北本共済病院事件」さいたま地判平成16年9月24日 2003年(平成15年)(ワ)581
  26. ^ ハラスメント全面禁止 初の国際条約を採択”. NHK政治マガジン. 日本放送協会 (2019年6月22日). 2021年2月19日閲覧。
  27. ^ 東京都労働相談情報センター
  28. ^ a b 『パワーハラスメント なぜ起こる? どう防ぐ?』 pp.9-14. 取引先や顧客の自宅なども含む「仕事をする場所」における、実質的な力関係(職責、肩書き、人間関係)を背景にした、業務上の合理性や必要性がない言動によって、相手の人格や名誉を傷つける行為、仕事を続けるうえでの支障を生じさせる行為のことで、制度上の地位だけではなく、同僚であっても、力関係が存在する場合はパワーハラスメントに該当する。
  29. ^ a b 長嶋 あけみ (2010). その他のハラスメント 日本心理臨床学会(監修)日本心理臨床学会支援活動プロジェクト委員会(編)危機への心理支援学――91のキーワードでわかる緊急事態における心理社会的アプローチ―― (pp. 107-108) 遠見書房
  30. ^ 厚生労働省 2018, pp. 20–23.
  31. ^ a b c FNN (2020年6月2日). ““パワハラ防止法”スタート 悪質な場合は企業名公表も”. Yahoo!ニュース. 2020年6月3日閲覧。
  32. ^ 精神障害の労災認定基準に「パワーハラスメント」を明示します”. 厚生労働省 (2020年6月). 2022年3月3日閲覧。


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