金星 (エンジン)
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金星(きんせい)は、第二次世界大戦期に三菱重工業が名古屋航空機製作所発動機部門の深尾淳二技師を中心に開発・製造した航空機用空冷星型エンジンである。社内呼称はA8(AはAir cool の意味)。
注釈
- ^ ル2排気タービン過給機要目[8]
公称回転数:20,000 rpm
外径×全長:670×483 mm
重量:54 kg
過給機形式:直線翼型遠心式
過給機インペラ径:300 mm
過給機空気流量:1.2 kg/s
過給機圧力比:2.38(高度10,000 m、回転数20,000 rpm)
タービン形式:単段インパルス式
タービン翼部平均直径:276 mm
タービン翼長:43 mm
タービン翼数:80枚
タービン入口ガス温度:700度(最高750度)
タービン最大ガス流量:0.7 kg/s
油ポンプ潤滑油:航空鉱油
油ポンプ潤滑油圧力:0.2~0.6 kg/cm2
油ポンプ潤滑油入口温度:50~60度
給油ポンプ:歯車式
排油ポンプ:歯車式
注油ポンプ:往復式
出典
- ^ a b c 松岡 1996, pp. 41–43.
- ^ a b c 坂上 2021, pp. 238–241.
- ^ 松岡 1996, pp. 56–63.
- ^ a b 松岡 1996, pp. 63–69.
- ^ a b c d e f g h i j k l 秋元 2002, pp. 18–19.
- ^ 坂上 2021, pp. 415–420.
- ^ a b 松岡 1996, pp. 110–121.
- ^ 松岡 1996, pp. 113–116.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd 『日本機械工業五十年』日本機械学会、1949年、1006~1009頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az 松岡 1996, pp. 325–327.
- ^ a b c d e 坂上 2021, p. 419.
- ^ 坂上 2021, p. 428.
- 1 金星 (エンジン)とは
- 2 金星 (エンジン)の概要
- 3 開発経緯
- 4 特徴
- 5 諸元
- 6 脚注
ハ112-II
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 05:38 UTC 版)
詳細は「金星 (エンジン)」を参照 「水メタノール噴射装置」および「MW50」も参照 五式戦闘機に搭載されたハ112-IIは元もとは海軍で採用されていた三菱製の航空用発動機であり、海軍名称を「金星62型」と言う。空冷二重星型14気筒(7気筒複列)で燃料噴射式、ボア140 mm×ストローク150 mm、シリンダー当たりの排気量2.31リットル、総排気量32.34リットル。圧縮比7.0、回転数は2,600 rpm(最大許容回転数2,680 rpm)で、直径320 mmの遠心式2速過給器を備えている。なお増速比は一速が7.0、二速が9.2。離昇出力は+500 mmHgで1,500馬力であるが、公称出力は+300 mmHgで1速1,350馬力(2,000 m)、2速1,250馬力(5,800 m)。重量は675 kg + 補機19 kg、寸法はおおよそ全長1,660 mm、全幅1,280 mm、水メタノール噴射機構付きである (強度の過給を行うと吸気温度が上昇しノッキング・異常燃焼の原因となる;このためこのような装置で冷却するか高オクタン燃料の利用が必用となる)。この装置は吸気圧を自動的に感知し、必要な時に必要なだけの冷却を行い、さらにガソリンの量を制限して代わりに水で出力を得るといった機構を持つ。高度・空気温度・吸気圧・加速レバーと連動して自動的に適切な量が噴射されるが、手動での調整も可能であった。噴射はシリンダーに直接行われるものではなくその直前の吸気管(ポート)内で行われる。 ハ112-IIは陸軍でも1943年(昭和18年)3月より一〇〇式司偵III型で運用されており、五式戦闘機が実際に計画に移された1944年(昭和19年)10月頃にはすでに十分な運用実績が有った。なお百式司偵III型については、高度8,000 m - 10,000 mで、優れた性能を発揮したという。 ハ112-IIの信頼性と整備の難易に関し、一部兵員からは「燃料と潤滑油を入れれば、いつでも飛ぶ」といった評価があったとされる。さらに三式戦闘機二型(および一型)が搭載した水冷式エンジンの惨たる稼働率の反動もあり、信頼性の高さは大歓迎された。ただし「金星」自体は1936年(昭和11年)以来永く実績のある、実によく回るとされるエンジンながら、金星「62型」自体は採用されて数年の新型エンジンであることは確かであり、また水メタノール噴射装置、燃料噴射ポンプと言う新機構も用いられている。ハ112-IIはハ140とは比較にならない信頼性を持っていたにしても、絶対的な信頼性があったとまでするには至っていなかったともされ、飛行第244戦隊では、内地での基地移動時に多数の脱落機を出したエピソードが存在する。 ちなみにハ112-IIルは、エンジン本体は同じもので、排気タービン「ル2」を増設しただけのもの。これは重量54 kg、ブレード平均直径276 mm、同長さ43 mm、同数80枚の単段式のもので、回転許容は20,000rpm、タービン入り口の排気ガス温度は700度であったという。ハ112-II自体は1段2速過給器であるので、排気タービンを加えると2段2速式となる。なおエンジン側に元々水エタノール噴射装置があるため、新たな冷却装置(インタークーラー)は装備されていない。ただしこの要目はあくまで一〇〇式司偵の文献を参照し紹介しているもので、五式戦闘機II型に装備されたものと全く同じ要目であるとも限らないため、参考にとどめて頂きたい。 一〇〇式司偵の場合、この過給器の有無で、高度10,000 mにおいて50 km/hの差を生じたという。当時三菱の航空機発動部に所属していた曾我部正幸は、五式戦闘機II型とほぼ同様に試作機4機のみの完成で終戦を迎えたものの、少なからざる問題があったにせよ、実用化の見通しはついていたと回想している。曾我部の提示する性能曲線グラフによれば、ハ112-IIルは高度10,000 m以上でも1,200馬力以上を発揮でき、これは高度5,800 mでのハ112-IIの出力とほぼ同等である。
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