ゾロアスター教徒とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ゾロアスター教徒の意味・解説 

ゾロアスター教

(ゾロアスター教徒 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/05 03:31 UTC 版)

ゾロアスター教
ズルワーン教


注釈

  1. ^ なお、ゾロアスター教の影響を受けたマニ教も徹底した二元論的教義を有し、宇宙は光・善・精神と闇・悪・肉体の2つの原理の対立に基づき、それぞれ画然と分けられていた始原の宇宙への回帰と、マニ教独自の救済とを教義の核心とする[10][11]
  2. ^ アエーシュマは、『旧約聖書』に登場するアスモデウスの前身とも考えられる[要出典]
  3. ^ イスラム統治時代初期のホラーサーンでは、イスラム教との比較で「我々には理性的に語る啓典も神から遣わされた預者者もない」と語るゾロアスター教徒のヘラート貴族の発言が残されている(パフレヴィー語文献ではザラスシュトラが預言者とされている)。そしてホラーサーンから原ゾロアスター教とマゴス神官団の教えを峻別し、後者を禁じたベフ・アーフリードが登場する。さらに彼は『アヴェスター』の存在を無視して、それとは別の聖典を独自に書こうとしていた。これらのことから、『アヴェスター』を軸とした国教たるペルシア的ゾロアスター教はイラン高原南部でのみでしか浸透しておらず、ホラーサーンには独自の「ホラーサーン的ゾロアスター教」が存在していた可能性が指摘されている。[21]
  4. ^ ゾロアスター教の至高神アフラ・マズダーは、バラモン教の聖典『リグ・ヴェーダ』で「アスラ(Asura)=主」と記された神で、『リグ・ヴェーダ』の詩句では、このミスラとヴァルナの下位の「主」は、次のような言葉で語りかけている。「あなたたち二神は、アスラの超自然的力を通して空に雨を降らせる。…あなたたち二神は、アスラの超自然的力を通して、あなたたちの法を守る。リタ(=自然の法則)を通して宇宙を支配する」(『リグ・ヴェーダ』5:6,3:7)
  5. ^ 青木健は、アフラ・マズダーをザラスシュトラが創案した神格であると述べている[23]
  6. ^ ヤスナに記されたフラワラーネは「私は自ら、マズダーの礼拝者であり、ゾロアスターの信奉者であり、ダエーワを拒否し、アフラの教義を受け入れることを告白します。アムシャ・スプンタを礼拝します。善にして宝にみちたアフラ・マズダーに、すべての良きものを帰させます」というものである[25]
  7. ^ ボイスによれば、ゾロアスター教信仰告白において、アフラ・マズダーは創造主として尊ばれているが、異教時代のイラン人にとって創造主とみなされていたとは考えられない、という。もし異教時代のイラン人が、どれか1つの神に創造的な活動を担わせようとするならば、その神は三大アフラのなかでおそらくは最も遠く離れてある「叡智の主」の命令を実行する神ヴァルナであったろうというのがボイスの見解である。さらに、このことがゾロアスターの教義のなかでも際立った特徴のひとつであったとも指摘している[26]
  8. ^ ボイスによれば、キュロスの宗教的寛容策により、「ユダヤ人はこの後もペルシア人に好感を持ち続け、ゾロアスター教の影響を一層受容しやすくなった」という[35]。ただし、ボイスが自著でその前提条件に次の点を挙げた。ザラスシュトラ出生が紀元前1500年~1200年であること、キュロスがゾロアスター教徒であったこと、そしてこの時既にゾロアスター教救済主思想が成立していたことである[36]。ただし、こうした前提条件は、見解の相違するところでもある。
  9. ^ こうした影響に関する最新の論文として Werner Sundermann, 2008, Zoroastrian Motifs in Non-Zoroastrian Traditions, Journal of the Royal Asiatic Society vol.18, Iss.2, pp. 155-165を参照。
  10. ^ ゾロアスター教徒の信仰告白の一節に「マズダー教徒でありゾロアスター教徒である私は」という言い回しがある[26]。マズダーはザラスシュトラ以前からアーリア人に信仰されており、マズダー崇拝だけではゾロアスター教徒と断定できない。またP・R.ハーツは、著書『ゾロアスター教』で、ダレイオス1世をゾロアスター教徒とみなしている。しかし、訳者の奥西俊介は「訳者あとがき」で次のように指摘している。現ゾロアスター教徒が自分たちの守護霊フラワシの像とみなしている有翼円盤人物像は、アケメネス朝の遺跡で多く確認される。しかし、多くの研究者は有翼円盤人物像をアフラ・マズダー像とみなしており、ダレイオス1世がマズダー信者だったとしても、ゾロアスター教徒であったかどうかは明白ではない[40]
  11. ^ ボイスは、ザラスシュトラ以前よりイラン人祭司は神々に対して礼拝式を捧げたが、火と水に対し決まった供物を捧げる儀礼自体は変わらなかったのではないかとしている[41]
  12. ^ 19世紀から続く神官一族ジャーマースプ・アーサー家の第6代カイ・ホスロウによる入信式[83]

出典

  1. ^ a b c d e f 原イラン多神教と嘴形注口土器
  2. ^ 青木(2008)p.30-36
  3. ^ 青木(2008)p.31-38
  4. ^ a b c 山本(2004)[要ページ番号]
  5. ^ a b c 青木(2008)p.70-76
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj 渡辺(2005)pp.188-193
  7. ^ 田中真知『決定版 世界の聖地FILE』学研パブリッシング、2010年、105頁。ISBN 9784054046702 
  8. ^ a b c d e f g h i 川瀬(2002)pp.58-59
  9. ^ 岡田(1988)p.93
  10. ^ 上岡(1988)pp.140-141
  11. ^ 加藤(2004)[要ページ番号]
  12. ^ a b c d e 山本(2006) [要ページ番号]
  13. ^ ボイス(1983)p.40
  14. ^ a b c d e f g 岩村(1975)pp.131-1357
  15. ^ a b 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)44-54ページ
  16. ^ a b 青木(2008)p.44-46
  17. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)185-220ページ
  18. ^ 青木健マニ教』(講談社、2010年)158-163ページ。
  19. ^ a b c 青木健『ゾロアスター教』講談社〈講談社選書メチエ〉、2008年3月。ISBN 4062584085 
  20. ^ a b c 青木健「ゾロアスター教ズルヴァーン主義研究1 : 『ウラマー・イェ・イスラーム』の写本蒐集と校訂翻訳」『東洋文化研究所紀要』第158巻、東京大学東洋文化研究所、2010年12月、166-78頁、doi:10.15083/00026906ISSN 05638089NAID 120002709997 
  21. ^ a b c 青木健、「イスラーム文献が伝える多様なゾロアスター教像: 六-八世紀のアラビア語資料のゾロアスター教研究への応用」『宗教研究』 2007年 81巻 3号 p.653-674 , doi:10.20716/rsjars.81.3_653 ,日本宗教学会
  22. ^ a b 青木(2008)p.76-80
  23. ^ 青木(2008)p.41
  24. ^ ボイス(1983)pp.14-15
  25. ^ ボイス(1983)pp.50-52。原出典は『アヴェスター』「ヤスナ」12:1
  26. ^ a b ボイス(1983)p.52
  27. ^ a b c 青木健「ゾロアスター教ズルヴァーン主義研究3 : 『ウラマー・イェ・イスラーム』の写本蒐集と校訂翻訳」『東洋文化研究所紀要』第160巻、東京大学東洋文化研究所、2011年12月、224-127頁、doi:10.15083/00026882ISSN 0563-8089NAID 40019157018 
  28. ^ a b 青木(2008)p.38-40
  29. ^ 青木(2020)170-173p
  30. ^ 青木(2008)p.102
  31. ^ 青木(2008)pp.104-105
  32. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)44-47ページ
  33. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)61-63ページ
  34. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)63ページ
  35. ^ ボイス(1983)p.74
  36. ^ ボイス(1983)p.4およびpp.72-76
  37. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)56‐63ページ
  38. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)66-69ページ
  39. ^ a b P・R.ハーツ(2004)p.59
  40. ^ P・R.ハーツ(2004)pp.171-172
  41. ^ ボイス(1983)p.18
  42. ^ P・R.ハーツ、奥西訳(2004)「訳者あとがき」pp.171-172
  43. ^ 青木健『ペルシア帝国』(講談社、2020年)76-77ページ。
  44. ^ 前掲『ペルシア帝国』93ページ
  45. ^ 前掲『ペルシア帝国』98ページ。
  46. ^ a b 山下(2007) [要ページ番号]
  47. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)74-80ページ。
  48. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)76-84ページ。
  49. ^ a b c d e 青木(2008)pp.88-93
  50. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)85-87ページ。
  51. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)92-95ページ。
  52. ^ a b c d 青木健「サーサーン王朝の皇帝イデオロギーとゾロアスター敎--アードゥル・グシュナスプ聖火とタフテ・タクディース玉座の檢討から (特集 宗敎と權力)」『東洋史研究』第65巻第3号、東洋史研究会、2006年12月、614-583頁、doi:10.14989/138201ISSN 03869059NAID 120002871249 
  53. ^ 前掲『ペルシア帝国』151-155ページ。
  54. ^ a b 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)142-144ページ。
  55. ^ 前掲『ペルシア帝国』129-134ページ。
  56. ^ 前掲『ペルシア帝国』241ページ。
  57. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)150-153ページ。
  58. ^ 前掲『ペルシア帝国』158-161ページ。
  59. ^ 前掲『ペルシア帝国』162ページ。
  60. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)179ページ。
  61. ^ 前掲『ペルシア帝国』178-181ページ。
  62. ^ a b 前掲『ペルシア帝国』203-206ページ。
  63. ^ a b 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)157-168ページ。
  64. ^ 青木(2020)179-181p
  65. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)220-235ページ。
  66. ^ a b c d e f 岩村(1975)pp.171-174
  67. ^ 伊藤(1980) [要ページ番号]
  68. ^ 前掲『ペルシア帝国』285-286ページ。
  69. ^ 青木(2008)p.149-150
  70. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)205-213ページ。
  71. ^ 青木(2008)p.154-157
  72. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)213-218ページ。
  73. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)143-144ページ。
  74. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)218-220ページ。
  75. ^ 青木(2008)p.157-163
  76. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)240-245ページ。
  77. ^ 青木(2008)p.163-171
  78. ^ 青木(2008)p.224
  79. ^ a b c 青木(2008)p.180-186
  80. ^ 青木(2008)p.93-99
  81. ^ a b c d e f g h 青木(2008)p.248
  82. ^ 厳格さがあだとなり信者減? イランのイスラム教シーア派(2021年5月7日閲覧)
  83. ^ 青木(2008)p.253
  84. ^ 青木(2008)pp.253-254
  85. ^ 電話占い幹野秀樹(@uranaisi77)さん”. Twitter. 2019年6月29日閲覧。
  86. ^ Japanese Zoroastrians Home Page”. 1999年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月29日閲覧。
  87. ^ Jafarey, Dr. Ali Akbar”. Zoroastrian Educational Institute. 2019年6月29日閲覧。
  88. ^ About the Assembly”. The Zarathushtrian Assembly. 2019年6月29日閲覧。
  89. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)176-177ページ。
  90. ^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)214-218ページ。
  91. ^ 大原まり子. “ゑれきてる~大原まり子のテクノロジー・レビュウ 心地よい照明を求めて(2)”. 東芝. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月10日閲覧。
  92. ^ Mazda Sustainability Report 2015” (PDF). p. 2. 2021年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月13日閲覧。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ゾロアスター教徒」の関連用語

ゾロアスター教徒のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ゾロアスター教徒のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのゾロアスター教 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS