ストーカー規制法
別名:ストーカー行為等の規制等に関する法律
いわゆるストーカー行為を規制し、ストーカー行為の被害者を援助することを主な目的として制定された法律。2000年内に成立および施行された。
ストーカー規制法では、一方的な恋慕や怨恨などから付きまとうことを「つきまとい行為」、同一人物に対しつきまとい行為を繰り返すことを「ストーカー行為」と規定し、つきまとい行為とストーカー行為の両方を禁じている。
ストーカー規制法の適用は原則として被害者からの通報により行われる。該当行為がストーカー規制法に抵触していると判断された場合、警察は加害者に対して警告をする。警告後もつきまとい行為・ストーカー行為が続けられた場合は禁止命令が下される。禁止命令に背くと処罰の対象となり、罰金または懲役刑が科される。
2013年6月にはストーカー規正法が一部改正され、電子メールを送信する行為を規制する規定が新たに盛り込まれた。嫌がる相手にメールを連続で送信することなどが規制の対象となる。
関連サイト:
ストーカー行為等の規制等に関する法律 - e-Gov
ストーカー規制法 - 警視庁
ストーカー行為等の規制等に関する法律
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/26 00:51 UTC 版)
ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカーこういとうのきせいとうにかんするほうりつ、平成12年法律第81号)は、2000年(平成12年)5月24日に制定され、11月24日に施行された日本の法律[1]。通称はストーカー規制法[1]。ストーカー事件から発生しうる、殺人や傷害などの凶悪犯罪を防止する目的で制定された[2]。
注釈
- ^ 「その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせ」る行為。
- ^ 都道府県公安委員会(道は方面公安委員会)。以下同じ。
- ^ 警視総監若しくは道府県警察本部長(道は方面本部長)又は警察署長名義。以下同じ。
- ^ 「ストーカー行為等の規制等に関する法律等の解釈および運用上の留意事項について(通達)」(平成28年12月14日警察庁丙生企発第131号)【以下、本文中等において単に「通達」とする】によると、「好意の感情」とは、「女優等に対する憧れの感情等が含まれるものと解される」としている。また、好意等、怨恨等の感情について、「男女間に限って抱かれるものではないが、不特定の者の中の一人に対して向けられた感情ではなく、特定の者に向けられた特別な感情を抱いている必要がある。」としている。
- ^ 通達では、「具体的には、その恋人、友人、職場の上司等が考えられる」としている。
- ^ ただし、以下の1から4と、5のうち拒絶後の連続した電子メール・インスタントメッセージ・SNS等の送信やブログ等への返信等については、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る」(2条2項、2016年改正同3項)。なお、5のうち無言電話、拒否後の連続した架電またはファックスの送信については、この限定はない。
- ^ 2013年10月2日の警察庁生活安全局長の通達では、「見張り」を「一定時間継続的に動静を見守ること」としている。
- ^ 2013年10月2日の警察庁生活安全局長の通達では、「押しかけ」を「被害者が在宅の有無を問わず、住居等の平穏が害されるような態様で行われる訪問であって、社会通念上容認されないもの」としている。また、目的の相手が在宅している必要もないとしている。
- ^ 「周辺をみだりにうろつく」については2016年改正より適用。通達によると具体的には、「社会的相当性がないような態様」(要するに不審者)によって「あてもなく移動」する事、としている。
- ^ 行動調査(の告知等)などが考えられるが、通達によると、「相手方の行動を監視していると思わせるような程度に至る」ようなあらゆる事項(の告知等)が対象となるとしている。
- ^ なお、「通達」の「電子メールの送信等」は、改正法2条2項1号および2号の「電子メールの送信等」、すなわち「電子メール・インスタントメッセージ・SNS等の送信やブログ等への返信等」と解釈される。
- ^ 2013年10月2日の警察庁生活安全局長の通達では、「義務のないこと」を「およそ問題となっているような要求をすることが第三者から見て不当であると評価できるもの」と定義している。また通達では「基本的に真に「義務のないこと」といえるのかどうかについて慎重に検討する必要がある」とし、要求することについて正当な権利を有している場合であっても当該権利の乱用にあたる場合は「義務のないこと」に該当すると定義している。
- ^ 通達では、「要求」の手段について「口頭又は文書(手紙、張り紙等)による伝達のほか、電子メールの送信等を含む」としている。
- ^ 2013年10月2日の警察庁生活安全局長の通達では、「著しく粗野な言動」を「手段を問わず、一般人から見て放置できない程度に強度な場合であり、場所柄をわきまえない、相当の礼儀を守らないぶしつけな言動または動作」と定義している。
- ^ 2013年10月2日の警察庁生活安全局長の通達では、「著しく乱暴な言動」を「手段を問わず、刑法のいう暴行脅迫には当たらないものを含め、不当に荒々しい言語動作」と定義している。
- ^ 通達ではこれら「言動」の手段に「特に限定はない」としており、「言動」でありさえすれば、直接だけでなく電話等やボイスメッセージ、音声データを電子メールにより送信等する事を含むと解される。なお、文書等の伝達等が含まれるかは不明。
- ^ 2013年10月2日の警察庁生活安全局長の通達では、「電話をかけて何も告げず」を「行為の相手方に電話をかけ、その相手方が電話に出るという形で電話がつながるという状況が確保された後に、「何も言わないで沈黙を保つ」や「何も言わないで電話を切る」により電話相手方に何も言わないこと」と定義している。
- ^ 通達によると、「相手方が(電話をかけられることなどを)拒絶していることが必要」としている。さらに、この「拒絶」には、「黙示のものも含まれるが、行為者が拒絶を認識していることが必要である。」としている。さらに通達では、警察など信頼のおける第三者から間接的に拒絶を伝達された場合も含むとしている。(なお、「拒絶を認識」とは、例えば「拒絶されているとは思わなかった」等と言う行為者の解釈基準によるのではなく、客観的に、行為者が拒絶されている事の(黙示=無視を含めて)認識可能性があれば足りる。)
- ^ 通達によると、「連続して(した)」とは、「短期間や短時間に何度も行う」意味としている。また、電話、ファックス、電子メール・インスタントメッセージ・SNS等の送信やブログ等への返信等の各手段が個別に連続していなければならない訳ではなく、これらの複数の手段による架電や送信等が連続していれば足りるとしている。
- ^ 通達では、「電話をかけ」は「通話状態となる必要はなく、着信拒否設定により音が鳴らない場合においても、着信履歴から連続して電話をかけることが認められた場合」も該当するとしている。
- ^ 通達では、「電子メール」の例示として、パソコン・携帯電話によるEメール、Yahoo!メール、Gmail、(携帯電話の)SMS(ショート・メッセージ・サービスを挙げている。(単なる例示であり、これらに限定されない)
- ^ インスタントメッセージ、SNS等については2016年改正より適用(改正1条2項1号)。「送信」については、「その受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」と規定されており、これは電子メール・インスタントメッセージ・SNSに限定されず、あらゆるアプリケーションについて適用される。特定相手への意思表示として認められるのであればパケットですら該当しうる。また、インターネットを用いたものに限定されず、SMS、ポケットベル、第三者無線、アマチュア無線、パソコン通信、UUCPなどあらゆる電気通信に適用される。通達でも「LINEやFacebook等のSNSメッセージ機能等」を例示している(単なる例示であり、これらに限定されない)。
- ^ さらに、小金井市女子大生ストーカー刺傷事件その他のストーカー事件の態様を受けて、「特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、その第三者が当該個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものの当該機能を利用する行為をすること。」(改正1条2項2号)の規定を加えた。これにより、例としてブログへのコメントや、TwitterやFacebook等のSNS等(注:アプリケーションに限定はない)でのツイート等に対するリプライ等(メンション、返信等)に対しても適用される事が明記された。なお、本号は適用対象を明確化したに過ぎず、SNSアカウントに対するメンションやダイレクトメッセージ等は改正1条2項1号に該当する。通達では「被害者が開設しているブログ、ホームページ等への書き込みや、SNSの被害者のマイページにコメントを書き込む行為」を例示している(単なる例示であり、これらに限定されない)。
- ^ さらに通達では、「電子メールの送信等」(すなわち、電子メール・インスタントメッセージ・SNS等の送信やブログ等への返信等)について、「受信拒否設定をしていたり、電子メール等の着信音が鳴らない設定にしたりしているなどのために、個々の電子メール等の着信の時点で、相手方受信者がそのことを認識し得ない状態であっても、受信履歴等から電子メール等の送信が行われたことを受信者が認識し得る」ものも含むとしている。よって、改正法では「電子メールの送信等」がインスタントメッセージ・SNS等の送信やブログ等への返信等に拡大されているため、例えばインスタントメッセージ・SNS等やブログコメントのフィルタ等の機能によりメッセージ等の受信拒否をしていてメッセージ等の内容は伝わらないが、行為者からメッセージが有った事が受信者に伝わる場合には、含まれると解される。また、Twitterのブロックについては受信者に伝わらないため、含まれないと解される。(いずれも例示にすぎない)
- ^ 通達では、(連続した)電話(架電)・ファクシミリの内容や、「電子メール等」(電子メール・インスタントメッセージ・SNS等の送信やブログ等への返信等)の内容は、「どのようなものでもよい」としている。
- ^ 「ほか」とは「その他の著しく不快または嫌悪の情を催させるような物」であり、2013年10月2日の警察庁生活安全局長の通達では、「著しく不快または嫌悪の情を催させるような物」を「ひどく快くないと感じさせ、または不快に感じさせると社会通念上客観的に評価できるもの」と定義している。
- ^ 「送付等」は、「送付し、またはその知り得る状態に置くこと」である。
- ^ 2013年10月2日の警察庁生活安全局長の通達では、「名誉を害する事項」は「対象者の社会的評価を害し、名誉感情を害する事柄を告げる等をすること」と定義している。また「事実を摘示することまでは要しない」としている。
- ^ 「告知等」は、「告げ、又はその知り得る状態に置くこと」である。通達によると、「告げる」について「方法について限定はなく、口頭又は文書(手紙、張り紙等)による伝達のほか、電子メールの送信等をする方法も含まれる」としている。さらに、「その知り得る状態に置く」について「相手方が日常生活において了知し得る範囲内に到達させること」としている。
- ^ 2013年10月2日の警察庁生活安全局長の通達では、「性的羞恥心を害する事項」は「刑法のいうわいせつには当たらないものを含め、望んでもいないのに性的に恥ずかしいと思う気持ちを起こさせて、精神の平穏を害すること」と定義している。また「行為の相手方のみの性的羞恥心を害するもの」も該当するとしている。
- ^ 、性的羞恥心を害する文書、図画、電磁気的記録の媒体ほかの送付等「電磁気的記録の媒体」、「電磁気的記録ほかの送信」については2016年改正で明記。明示したに過ぎず、改正前でもこれらの適用を妨げるものではない。
- ^ なお、「性的羞恥心を害する事項の送信」については、5.の「電子メールの送信等やブログ等への返信等」とは異なり、送信する形態の類型的な規定すらなく、さらに「拒絶後に連続して」と言う要件すらない。よって、性的羞恥心を害する文章等や画像等を、数回告知、送付または送信して相手の知りうる状態に置いた時点で、「ストーカー行為」の既遂となり、非親告罪により処罰される場合もありえる。
出典
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- ^ 秋山千明『女性に対する暴力 被害者学的視点から』(初版)尚学社、2019年1月10日、191頁。ISBN 978-4-86031-156-8。 NCID BB2764812X。OCLC 1083559981。全国書誌番号:23155583。
- ^ 大谷, ストーカー規制法研究会 & 園田 2002, p. 4.
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- ^ 守山 2019, p. 226.
- ^ a b 堂原 2020, p. 84.
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- ^ エミリー・スペンス・アルマゲヤー 著、上田勢子 訳『ストーカーから身を守るハンドブック』大月書店、2014年9月24日、37頁。ASIN 4272330845。ISBN 978-4-272-33084-3。 NCID BB16894292。OCLC 1006960805。JAN 9784272330843全国書誌番号:22473865。
- ^ a b 堂原 2020, p. 88.
- ^ 越智啓太 著「7.37 ストーカー」、越智啓太; 藤田政博; 渡邉和美 編『法と心理学の事典 犯罪・裁判・矯正』(初版)朝倉書店、2011年5月25日、268頁。ASIN 4254520166。ISBN 978-4-254-52016-3。 NCID BB05760443。OCLC 1006946157。JAN 9784254520163全国書誌番号:21933295。
- ^ 東京弁護士会両性の平等に関する委員会 編『女性のための法律相談ガイド こんなときどうする?』(新版)ぎょうせい、2009年3月31日、227頁。ISBN 978-4-324-08523-3。 NCID BA90066032。OCLC 676574348。JAN 9784324085233全国書誌番号:21592512。
- ^ a b 最高裁判所 2004, p. 1147.
固有名詞の分類
日本の法律 | 化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律 調理師法 ストーカー行為等の規制等に関する法律 土壌汚染対策法 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 |
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