スケルツォ第3番とは? わかりやすく解説

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スケルツォ第3番

英語表記/番号出版情報
バラキレフスケルツォ 第3番 嬰ヘ長調Scherzo No.3 Fis dur作曲年1901年  出版年1901年  初版出版地/出版社: Zimmermann 
ヴォルフ, エドゥアール:スケルツォ 第3番Troisième Scherzo Op.188

ショパン:スケルツォ第3番 嬰ハ短調

英語表記/番号出版情報
ショパン:スケルツォ第3番 嬰ハ短調Scherzo cis-Moll Op.39 CT199作曲年1839年  出版年1840年  初版出版地/出版社: Breitkopf & Härtel  献呈先: Adolpho Gutmann

作品解説

2008年7月 執筆者: 朝山 奈津子

 ショパンピアノ曲用いたスタイル観察する方法は幾通りもあるが、抒情的なものと物語的なもの、という分類がひとつ可能だろう前者の代表は《ノクターン》、《マズルカ》であり、後者典型が《バラード》と《スケルツォ》である。
 抒情的な構成において各フレーズや音型は羅列的で、その連結きわめて緩やかであるのに対し物語的な構成では、1曲の中にいわば起承転結感じることができる。なぜ明確なドラマ性が生じるかといえば、まず、和声進行明解で、とりわけドミナントトニック(転から結へ進む部分)の定型がよく守られるからである。また、動機変奏転回反復拡張などの手法を用いて発展することもあり、ヴィーン古典派ソナタのような労作はなされなくとも、複数主題複雑に組み合わされて曲が作られている。
 つまり、《バラード》、《スケルツォ》、《舟歌》、《ボレロ》など物語構成を持つ作品では、ダイナミックドラマティックな、始まりから終わり必然をもって突き進むような音楽的時間生み出されるのであり、こうした要素鑑賞上のポイントとなっている。(蛇足ながら抒情的な作品では、わずかずつ変容しながら留まり続け戻り進みそれほど明確でない、いわば音楽的空間中に鑑賞者の耳を遊ばせることになる。)
 さて、では、各4曲が残されている《バラード》および《スケルツォ》の違いはどこにあるのか。
 これらがジャンルとしてショパン創作の中で隣接していることは、音楽見れば何より明らかである。しかも、両ジャンル形式から明確に区別することはほとんどできないように思われる。ひとつには、これがショパン固有のジャンルであるからで、それぞれ由来する思われるジャンル伝統調べても、両者結びつけるものは出てこない。しかし、音楽外形からは区別できなくとも、それぞれの音楽内容、いわば物語の内容はやや異なっている。
スケルツォ》はイタリア語で「冗談」を意味し従来簡明な形式で明るく軽く小規模な曲を指したベートーヴェンメヌエット代えてソナタ第3楽章取り入れた時も、やはり極めて急速でユーモア富んだ性格与えられた。ショパンの《スケルツォ》は、一見するとこうした伝統にまったく反し暗く深刻なうえに大規模である。だが、《バラード》と比べてみると、《スケルツォ》がいかにユーモア内包しているかがよく判る4つの《スケルツォにはいずれも、きわめて急速でレッジェーロ動機がひとつならず登場し随所で「合いの手」を入れている。また、各部激烈なまでの音量コントラスト指定されている。
 こうした手法が《バラード》にはほとんどない。各動機、各音は前後しがらみ囚われており、逸脱許されない沈鬱主題次々と現われ、それらは鬱積し怒濤をなし、ついには破滅的な終末迎える。《スケルツォ》が軽妙な音型や滑稽なまでのコントラストでこの種のストレス解消するのとは、対照的である。
 なお、《バラード》4曲はすべて複合2拍子、《スケルツォ》は3拍子書かれており、これが唯一の外形的な特徴といえなくもない。が、《スケルツォ》は全篇通じてほとんどが2小節で1楽句作るため、やはり2拍子強烈な推進力内包している。


スケルツォ》は第4番除いてA-B-Aの形式をとる。これはハイドンベートーヴェン用いたメヌエット楽章代替としてのスケルツォ踏襲している。しかし、A部分には2つ対照的な主題現わること、A部分後半前半部分のほぼ完全な反復となっていることから、ソナタ形式志向することが見て取れる。さらに、ストレッタを含む華々しいコーダが曲の規模をさらに増し格調高めている。
 このようにみると、ショパンの《スケルツォ》は、ベートーヴェン完成させたピアノ・ソナタ第3楽章格式継ぎ、これを敷衍したもの考えることもできる一方自身の《ピアノ・ソナタ第2番および第3番においてはヴィーン古典派伝統から一歩踏み出しスケルツォ第2楽章置いた。特に第2番Op.35では、複数主題を持つ規模大きなスケルツォ用いられている。ショパンはおそらく、キャラクターピースとして《スケルツォ》を書きそのように命名したのではない。むしろ、彼自身ソナタへの布石だったのである

 もっとも第3番は、前奏コーダ、また2つ対照的な主題を持つことは自明であるが、どのようなセクション構造見出すかについて様々な可能性がある。まず一見して、A-B-A-B-Codaという2部形式考えることができる。
 しかし実際には、2つめの主題いわゆるソナタ形式提示部第2主題のような印象をあたえる。というのも、第1の主題から第2の主題への移行は、きっぱりとした終止定型作らない。第1の主題130小節程度短く対して第2の主題内部で更に3つ結尾部分けられるほどに長いからである。従って、ソナタ・アレグロ形式のような(A-B)-B'-(A-B)ーCodaとみるならば、展開部は第236小節以降となる。ここから次々と調が変わり、第327小節からは提示部に戻るためのブリッジのように、最初主題顔を出し、テンポアップしていく。
 とはいえこのような図式に無理が感じられるとすれば、それはこの曲の基本的な構想もっぱらコントラスト」にあるからだろう。ごく小さなレベルでは、最初主題中でも音量対照効果的に用いられている。また、2番目の主題低音からゆっくりと上行する動機と、最高音域から急速に下行する動機組み合わせて作られている。また、大きなレベルでは、2つ主題あらゆる点で対照的であり、また調も、第155小節以降変ニ長調(即ち嬰ハ長調異名同音長調)、2回目登場となる第448小節からはホ長調平行調)と、関連の深い近親長調選ばれている。
 このようにみると、A-B-A+BCoda、という図式が最も自然であるよう思われる。つまり、いわゆる2回目のB部分(第448小節以降)は、A-B-Aの基本的な図式Codaを結ぶとき、Codaをいっそう引き立たせるために取り入れられた。ここでは、スケルツォ原形であるメヌエットトリオにおけるコントラスト原理生きている。それは、反復確保旨とする2部形式ではなく、また闘争克服命題とするソナタ形式ともやや異なっている。そして、他の3曲をみても判る通り、「コントラスト」こそがショパンスケルツォにおける基本原理のであるこうした意味で、第3番きわめて典型的なショパンの《スケルツォ》であるといえよう




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