コンパクト‐カセット【compact cassette】
読み方:こんぱくとかせっと
コンパクトカセット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/03 07:12 UTC 版)
コンパクトカセットは、オランダの電機メーカーであるフィリップス社が1962年に開発した[1]、フェライトを素としたオーディオ用磁気記録テープ媒体の規格である。小型かつ安価である事から民生用記録メディアの事実上の標準となり、20世紀後半の音楽市場を支えた。「カセットテープ」、「アナログカセット」、「フィリップスカセット」などとも呼ばれる。また1990年代初頭に登場したDCC(デジタルコンパクトカセット)に対するレトロニムとして、ACC(アナログコンパクトカセット)と表記することもある。
注釈
- ^ 近年の日本の音楽消費形態は外国に比べて非常に稀である。2018年のCD・DVDの販売比率は日本は約75%であるが、米国はCD・LPなどの物理媒体は約12%で75%がストリーミングであった。
- ^ ソニーのカセットテープは1970年頃、厚みを工程上識別するためリーダーテープそのものにも色がついていた。
- ^ 主にOEMを含む2011年以前に製造されたマクセル製、およびOEMやイメーション移管後の製品を含むTDK製、OEMやAXIAブランドを含む富士フイルム製のカセットテープ
- ^ ただし近年ではオートリバースラジカセを利用したりSDメモリーカードやUSBメモリ、CD等の各種代替メディアをリピート再生する場合が多くなった。
- ^ 10秒 - 6分程度(例:TDK「EC」など)。同社海外市場向けは12分の製品が存在する。
- ^ これはカセットの位置決めが見えない側を基準に行われるためである。
- ^ オープンリールテープレコーダーでは性能を優先してモノラル記録とステレオ記録でトラック配置が異なっており、一般には互換性がない。ただしコンパクトカセットのようなスペースの制約がないので、モノラル用とステレオ用に別々のヘッドを備えたり、あるいは多トラックのヘッドを備えて、モノラルでもステレオでも使えるようにしたレコーダーもある。
- ^ これは表記上の値で、正確な値は 15/8 in/s つまり 4.7625 cm/s だが、実際にはそれだけの精度はない。この速度は当初から変わっておらず、かつて 4.75 cm/s とか 4.8 cm/s と表記された製品があったが、表記だけの違いである。
- ^ 正確には 15/4 in/s つまり 9.525 cm/s。
- ^ 問題はテープ速度であってキャプスタンの回転速度ではなく、テープ速度にはキャプスタン径の精度やピンチローラーの変形具合などが影響するので、キャプスタンの回転速度を水晶制御してもテープ速度は水晶精度にはならない。
- ^ 当初の低域時定数は 1590 µs だったが、 1976年頃に 3180 µs に改正された。
- ^ この IEC キャリブレーションテープに高域の記録レベルが高すぎるという疑義が生じ、 1981 年の IEC プラハ会議において改正されたものが現在有効である。このキャリブレーションテープには "IEC (Prague) 1981" の表示がある。
- ^ あくまで学習方式の名称であり、テープや録音方式の名称ではない。
- ^ ソニー案としてType IVの検出孔(ハーフ中央部)1カ所のみが開口していれば他のTypeと独立して明確な検出が行える案を確認できる(Type Iは検出孔なし、Type IIの検出孔は外側1カ所、Type IIIの検出孔は中央1カ所、Type IVは外側と中央の合計2カ所に検出孔を開けた図示が見られる)[7]
- ^ ただしソニーの場合は自社製のK・HF・CHF・BHF・HF-S・CDixI等が、日本コロムビア(DENON)の場合は自社製のMS・1H・3H・DX1・DX3・RE・RD等がそれぞれ用いられた。
- ^ このことが契機となって、上級機種向けとして特別に耐摩耗性に優れたフェライトヘッドのほか、普及・廉価機種向けとして従来のパーマロイヘッドに対し耐摩耗性をより一層向上させたハードパーマロイヘッド、後述するメタルテープ登場直前にはセンダストヘッドなどが開発された。
- ^ ただし1990年代前半まではラジカセなどの取り扱い説明書や本体にはCrO2と記載されており2014年時点でもティアックのカセットデッキの説明書にはクローム(クロム)という名称が用いられている。
- ^ 実際、 IEC Type IV テープの登場によりレコーダーのヘッドや回路が一新されることになった。
- ^ 東芝(東芝エルイートレーディング)のCUTE BEAT、およびハイレゾ対応機種の「Aurex TY-AK1」などの各種CDラジカセのフルロジック機ではカセットテープ判別リーフスイッチをメタル孔に設置しているためメタルテープ再生は不可となる。理由としては録再ヘッド保護と思われる。やむをえず再生する場合自己責任にてセロハンテープなどでメタル孔を塞ぐことで再生できる。
- ^ ノーマル・ハイポジが100分、メタルが110分。メタルテープの方が録音時間が10分長いのは磁性層の厚さの違いによるもので、ベースの厚さはC-100もC-110も変わらない。
- ^ AXIAのPS-S、FUJI/AXIAのGTなど耐熱性を有する製品も存在する。
- ^ 日本製のカセットデッキの中にはパイオニア(現・オンキヨー&パイオニア)製の「T-1100S」(1992年9月発売、1996年8月販売終了)のようにメタルテープを使用した場合に限り、高域の周波数特性が最高で30kHzと、テープ速度が2トラック・38cm/s級のオープンリールテープデッキに匹敵する周波数特性を持った機種も存在した。
- ^ ヘッドの汚れのほか、長期的な経年変化によるヘッドの摩耗や僅かなヘッドのアジマスのずれとテープパスのずれに起因する。
- ^ テープカウンターは単純にリール軸と連動したものが多く、それも巻取り側のリール軸に連動したものと供給側のリール軸に連動したものとがあった。テープの巻き径が変わるため進む速さは一定でなく、早巻きすると巻きが乱れるためカウンターがずれてしまう。
- ^ 「UD デザイン復刻版」の実際の組み立ては日本国内で行われており、実質的に後述するナガオカ CT、およびその先代品となるCC同様、アイディーマグネテックのOEMだった。
- ^ 店舗によっては改良前(在庫分)と改良後が混在している場合があるので購入時には注意が必要。改良前の末期は、パッケージに「このテープは高密度磁性体を使用した高性能高音域 (10kHz) ハイグレード製品ですが、ノーマル用ケースを使用しておりオーディオデッキの機種によりノーマルポジションと認識されます。ご了承の上お買い求めください」と書かれた注意書きのシールが貼られている。
出典
- ^ a b 四本淑三 (2014年9月21日). “:新ダブルカセットでテープ聴き比べ アナログは本当にいい? (5/5)”. ASCII.jp. 角川アスキー総合研究所. 2023年7月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g “第5章 コンパクトカセットの世界普及”. ソニー. 2023年7月27日閲覧。
- ^ 音楽遺産~ネットワーク社会の音楽革命~ 太下義之 『Arts Policy & Management』No.20 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 2003 p. 17 - ウェイバックマシン(2016年12月20日アーカイブ分)
- ^ a b c d “カセットテープ、絶滅するにはまだ早い?マクセルに聞いてみた”. withnews. 朝日新聞 (2019年4月10日). 2023年7月26日閲覧。
- ^ a b c 古田島大介 (2022年3月6日). “90分でも60分でもなく…「10分間のカセットテープ」が今一番売れているワケ "ある趣味"で重宝されている (2ページ目)”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン). プレジデント社. 2023年7月26日閲覧。
- ^ a b c “カセットテープの取り扱いについて”. オンキヨー. オンキヨー&パイオニア. 2021年3月21日閲覧。
- ^ 阿部美春『カセットデッキ』日本放送協会出版、1980年、126頁。
- ^ 福多利夫 (2018年11月14日). “【カセットテープの基礎知識】ノーマル・ハイポジの違いは?録音方法は?”. 特選街WEB. マキノ出版. 2021年3月21日閲覧。
- ^ 川村俊明 (2001年3月). “VTR産業技術史の考察と現存資料の状況” (PDF). 産業技術史資料情報センター. 国立科学博物館. p. 19. 2021年3月21日閲覧。
- ^ “カセットテープ「UR」”. マクセル. 2023年11月6日閲覧。
- ^ a b “音楽用カセットテープ「UD」デザイン復刻版を限定発売 カセットテープ発売50周年記念の数量限定品” (PDF). 日立マクセル (2016年10月6日). 2021年2月5日閲覧。
- ^ “カセットテープ50周年記念 マクセル、カセットテープ「UD」の復刻版を6万巻限定で販売”. Phile-web. 音元出版 (2016年10月6日). 2021年2月5日閲覧。
- ^ カセットテープノーマルポジション120分をリリース致します。 - ウェイバックマシン(2016年10月3日アーカイブ分)
- ^ 四本淑三 (2014年9月21日). “:新ダブルカセットでテープ聴き比べ アナログは本当にいい? (2/5)”. ASCII.jp. 角川アスキー総合研究所. 2023年7月26日閲覧。
- ^ マクセル - Within, the Future [@maxcellJP] (2013年3月17日). "【史】昭和41年7月「C-60(60分用)」の生産販売を開始。". X(旧Twitter)より2021年3月10日閲覧。
- ^ 懐かしのカセットテープ博物館. “人気が再燃中のカセットテープの歴史を振り返る”. ラジオライフ.com. 知っ得ネタ. ラジオライフ. 2021年3月21日閲覧。
- ^ テープ録音機物語 その63 カセット(1)阿部美春 JASジャーナル 2012 Vol. 52 No. 3 5月号 p. 21 日本オーディオ協会 - ウェイバックマシン(2016年3月27日アーカイブ分)
コンパクトカセット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/20 07:19 UTC 版)
テープレコーダーを2基搭載し、カセットからカセットへのダビングを可能とした。高速ダビング対応機種も数多く発売された。多くの製品では録音デッキは1基のみの搭載であったが、単体デッキやステレオセットでは2基とも録音可能な機種も存在した。そうしたダブル録音できる機器の場合デッキは独立式といった大変凝った構造になるわけだが録音再生、再生と分かれる通常のラジカセでもそうした構造を持つ機種も存在していたが殆どの場合1モーターで2基を受け持つ構造が一般的である。 クラリオン(現・フォルシアクラリオン・エレクトロニクス)が1977年に発売した「MD-8080A」が初出機種とされている。1980年代以後多くのメーカーからダブルカセットデッキが発売されたほか、1990年代にかけてのカセット全盛期にはミニコンポやラジオカセットレコーダー(しばしばダブルラジカセと呼称された)にも広く搭載された。 2000年代以降は後発のMD・CD-R/RW・デジタルオーディオプレーヤーに押され、日本メーカーにおける新製品はティアックを除き、発売されなくなっている。しかし、コンパクトカセット自体は現在でも根強い需要があり、特にダブルラジカセは現在も一部販売されている。 アイワ(初代法人。現・ソニーマーケティング)からはCS-W7という機種名で、コンパクトカセットとマイクロカセットの組み合わせといった特異なダブルデッキが存在していた。 松下電器産業(以下松下電器、現・パナソニック)からはナショナルブランドで「LOVE CALL トリプルカセット RX-F333」なるプレイヤーを1基、レコーダーを2基搭載したラジカセも発売された。しかし、当然のことながらやや高額商品となってしまい、更には海賊版テープ作成が当時主流となりつつあった高速ダビングと相まって短時間で大量に出来るため、各方面からクレームが殺到して短期間で販売終了となり、後継機がリリースされることもなかった。 シャープは既に「ザ・サーチャー」というダブルラジカセをヒットさせていたが、のちに「TWINCAM W」(ツインカムダブル)も発売された。これはカセット2巻分のヘッドやキャプスタン、リール、ピンチローラーを同軸上(1台分のスペース)に収めたもので、カセットは縦に並べて挿入する。当初はフルロジック方式のみであったが、のちに廉価版としてメカニカル方式&ノーマルポジション用カセットテープ専用の機種も発売された。 ソニーからはウォークマンブランドで「ウォークマンW WM-W800」なるプレイヤーを1基、レコーダーを1基搭載したヘッドホンステレオも発売された。 日立製作所からはダブルデッキの片方を取り外してヘッドホンステレオとして使える「パディスコ W1(TRK-W1)」・「パディスコ W2(TRK-W2)」が発売された。 デジタルコンパクトカセット(DCC)ではDCCデッキでコンパクトカセットでの録音は行えなかったため、DCCデッキとコンパクトカセットデッキを1基ずつ搭載した機種もごく一部で見られた(例・松下電器〈パナソニック〉、フィリップス、日本マランツ〈現・ディーアンドエムホールディングス〉)。 東芝のダブルラジカセ シャープのダブルラジカセ
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コンパクト・カセット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/29 06:44 UTC 版)
「ルー・オッテンス」の記事における「コンパクト・カセット」の解説
EL 3585 の成功を生かすべく、フィリップス・ハッセルトはポータブル・カセットレコーダーの開発計画を始動させた。「ポケット・レコーダー」と渾名がついたこの製品の目標は、廉価かつ小ぶりで電池の持ちを良くしながら、納得のゆく音質にすることだった。当初、フィリップスは RCA と共同開発する形でRCAテープ・カートリッジ(英語版)形式のカセットを使う計画を立てたが、そのサイズとテープ送り速度が自分たちの望む製品に適合しないとオッテンスは考えた。 フィリップスは最終的に、RCA のカセットを参考にする形で、新しいカセットを開発することにした。オッテンスは自分のジャケットのポケットにちょうど収まるよう木片を切り、カセットのデザインを考え始めた。この木片は、初のポータブル・カセットレコーダー EL 3300 となる物のモデルになるものだった。 オッテンスは10人-12人からなるチームを率いたが、彼らはカセットとその装置を開発するために必要な、蓄音機やテープレコーダーの設計経験があった。カセットの開発中、開発チームはしばしば近くにあるアイントホーフェンの研究センターで情報を仕入れたりした。 1963年、フィリップスはベルリンでの国際コンシューマ・エレクトロニクス展にて、このカセットを発表した。この発表は、当初はあまり広まらず、オーディオ界の人々の興味を大して引かなかった。しかしこのシステムを撮影した写真を元にして、後に日本で模倣品が製造され、そのサイズはフィリップスのものより随分と大きなものだった。 フィリップス・ハッセルトでオッテンスの開発チームにいたオランダの土木技師・発明家である WFA Heylands がしばしば説明するところでは、フィリップスがコンパクトカセットで大きな成果を挙げた理由は、同種の機器を製造するナショナルやソニーのような他社に対してこの特許と発明品を無償で公開したためであり、それなくしてコンパクトカセットが世界標準になることは無かったであろうとのことである。
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