エルゴード理論とは? わかりやすく解説

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エルゴード理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/30 13:16 UTC 版)

エルゴード理論(エルゴードりろん、英語: ergodic theory)は、ある力学系がエルゴード的(ある物理量に対して、長時間平均とある不変測度による位相平均が等しい)であることを示す、すなわちエルゴード仮説の立証を目的とする理論。この仮説は、SinaiらのDynamical billiardsの例などで正しいという証明が与えられているが、統計力学の基礎とは無関係である。また、物理学でのエルゴード性を抽象化した、数学における保測変換の理論をそう呼ぶこともある。


  1. ^ 田崎晴明 (2009 年 9 月 11 日). “統計力学 I, II(培風館、新物理学シリーズ)”. www.gakushuin.ac.jp. 学習院大学理学部物理学教室. 2013年10月6日閲覧。 “「統計力学の基盤はマクロな経験事実である」という立場を貫き、できるかぎり見通しのよいストーリーを提示した(既習者や専門家のために、エルゴード仮説が統計力学の基礎としては的を外している理由も解説した)。”


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エルゴード理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 01:23 UTC 版)

ヒルベルト空間」の記事における「エルゴード理論」の解説

エルゴード理論の分野では、カオス力学系長期的振る舞い研究する。エルゴード理論が有効な原型的な場合というのは、熱力学における系である。この系の微視的な状態は(微粒子の間の個々衝突集まりとしては理解できないという意味で)極めて複雑であるにも拘らず、十分長期間にわたるその平均的振る舞いは素直であり、熱力学の法則主張するのはこのような平均的挙動である。特に、熱力学の第0法則は「十分長い時間スケール経れば平衡状態にある熱力学系の、その機能的に独立測度は、温度の形でのその全エネルギーのみである」などと定式化できる。 エルゴート力学系は、(ハミルトニアンで測られる)エネルギー除けば相空間上の機能的に独立保存量持たないような系である。詳しく述べれば、エネルギー E を固定して、ΩE をエネルギーが E となる状態すべてからなる相空間部分集合エネルギー面)とし、Tt相空間上の発展演算子表せば力学系がエルゴードとなるのは、ΩE 上の定数でない連続関数で、ΩE の任意の w と任意の時間 t において f ( T t w ) = f ( w ) {\displaystyle f(T_{t}w)=f(w)} を満たすものがない場合に限る。リウヴィルの定理によればエネルギー面上測度 μ で時間並進不変なものが存在する結果として時間並進は、エネルギー面 ΩE 上の自乗可積分関数内積を ⟨ f , g ⟩ L 2 ( Ω E , μ ) = ∫ E f g ¯ d μ {\displaystyle \langle f,g\rangle _{L^{2}(\Omega _{E},\mu )}=\int _{E}f{\bar {g}}\,d\mu } で入れたヒルベルト空間 L2(ΩE,μ) のユニタリ変換になる。 フォンノイマン平均エルゴード定理主張次のようなものであるUtヒルベルト空間 H 上のユニタリ作用素からなる(強連続)一径数半群で、P を Ut同時不動点全体の成す集合{x∈H | Utx = x for all t > 0} の上への直交射影とすると P x = lim T → ∞ 1 T ∫ 0 T U t x d t {\displaystyle Px=\lim _{T\to \infty }{\frac {1}{T}}\int _{0}^{T}U_{t}x\,dt} が成り立つ。 エルゴード系では、時間発展固定集合定数関数のみから成るので、先のエルゴード定理から任意の f ∈ L2(ΩE,μ) に対し L 2 - lim T → ∞ 1 T ∫ 0 T f ( T t w ) d t = ∫ Ω E f ( y ) d μ ( y ) {\displaystyle {\underset {T\to \infty }{L^{2}\!{\text{-}}\!\lim {}}}{\frac {1}{T}}\int _{0}^{T}f(T_{t}w)\,dt=\int _{\Omega _{E}}f(y)\,d\mu (y)} となることが従う。つまり、観測可能な f の長期平均は、そのエネルギー面に亘ってとった期待値等しい。

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エルゴード理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 00:00 UTC 版)

統計力学」の記事における「エルゴード理論」の解説

詳細は「エルゴード理論」を参照 充分多数の N ≫ 1 個の粒子から成る古典的な系での任意の物理量 A の時間平均値 A は A ¯ = lim T → ∞ 1 T ∫ 0 T A ( { p i } , { q i } ) d t {\displaystyle {\bar {A}}=\lim _{T\to \infty }{\frac {1}{T}}\int _{0}^{T}A(\{p_{i}\},\{q_{i}\})\mathrm {d} t} と与えられる。{qi}i = 1,..., 3N, {pi}i = 1,..., 3N は系の微視的状態を指定する正準変数である。系が熱力学的平衡状態に達するならばこの値は収束する。このとき長時間平均 A は熱力学現れる巨視的な物理量 A に一致しなければならない。系の微視的状態の(任意の分布 ρ({qi}, {pi}, N) はリウヴィルの定理により時間に関して不変である。 d ρ d t = 0 {\displaystyle {\frac {\mathrm {d} \rho }{\mathrm {d} t}}=0} このことから、時間 t に依存しない平衡状態において、{qi}, {pi} で指定される微視的状態がある確率 dP を持つ確率集団アンサンブル)を考えると物理量 A の集団平均 ⟨A⟩ は ⟨ A ⟩ = ∫ A ( { p i } , { q i } ) d P = ∫ A ( { p i } , { q i } ) ρ ( { p i } , { q i } ) d Γ ∫ ρ ( { p i } , { q i } ) d Γ {\displaystyle \left\langle A\right\rangle =\int {}A(\{p_{i}\},\{q_{i}\})\mathrm {d} P={\frac {\int {}A(\{p_{i}\},\{q_{i}\})\rho {}(\{p_{i}\},\{q_{i}\})\mathrm {d} \Gamma }{\int {}\rho {}(\{p_{i}\},\{q_{i}\})\mathrm {d} \Gamma }}} で与えられる。この集団平均 ⟨A⟩と時間平均 A が等しいと仮定することを統計力学原理とする仮説エルゴード仮説と呼ぶ。ただし、エルゴード仮説統計力学基礎付け無関係という主張専門家によってなされている。

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エルゴード理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 07:34 UTC 版)

リウヴィルの定理 (物理学)」の記事における「エルゴード理論」の解説

エルゴード理論と力学系では、与えられ物理的な考え方動機持っていたが、リウヴィルの定理としても対応する結果がある。ハミルトン力学では、相空間自然に滑らかな測度局所的には、6n-次元ルベーグ測度)を持つ微分可能多様体である。エルゴード理論の定理によると、この滑らかな測度ハミルトンフローの下に不変である。さらに一般的には滑らかな測度フローの下に不変である必要充分条件記述することができるので、ハミルトニアン場合一般的結果の系となる。

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