イクチとは? わかりやすく解説

い‐ぐち〔ゐ‐〕【×猪口】

読み方:いぐち

イグチ目キノコ総称。アワタケ・ヌメリイグチ・ハナイグチなどがあり、傘は肉質のまんじゅう形で、裏面にひだはなく、小さながたくさんある。食用になるものが多い。

猪口の画像
イグチなどの体

い‐ぐち【鋳口】

読み方:いぐち

溶かした金属流し込むための、鋳型の上部にあけた口。


猪口

読み方:イクチ(ikuchi

イクチタケ別称

季節

分類 植物


イクチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/28 10:10 UTC 版)

鳥山石燕今昔百鬼拾遺』の「あやかし」。イクチに同定される。

イクチは、日本に伝わる海の妖怪津村淙庵による『譚海』、根岸鎮衛による『耳袋』などの江戸時代随筆に記述がある。鳥山石燕の「あやかし」画も、この妖怪を描いたものとされる。

全長はとてつもなく長く、夜になると船を乗り越えてくるが、1、2刻(あるいは2、3日)の長時間をかけてやっと船を越えおえるという。後には大量の油を残し、汲みださないと沈没するとされる。

譚海の記述

『譚海』によれば「ゐくち」は常陸国(現・茨城県)の沖にいた全長の長い怪魚とされる。夜のみにしか見られたためしはなく、船をよじり超えて長い時間をかけて通過してゆく。体表からは粘着質の油が大量に染み出し、乗られた船はこれを汲み取らないと沈没してしまう。油は「フノリ」状で、後には甲板はヌルヌルとなり、前にも後ろにも歩きづらくなる[1][2]

太さはさほどでもないが、体長が数百(100丈=333メートル)にも及ぶため、通過するのに1、2(3時間弱[2])もかかる[注 1][1]

耳袋の記述

『耳袋』ではいくじの名で述べられており、西海や南海に時折現れ、船の舳先などに引っかかり、2,3日もそこでうごめいているとする。色がウナギのようで、体は長い[4][5]

「いくじなき」とい定句はこの「いくじ」が由来だとされている[4]

著者は、某人物からこの「いくじ」の小さい個体が、豆州八丈(現・東京都八丈島)の海にみつかり、それは「ウナギ状のものだが、目や口がなく、輪っかのように丸まる」と聞いている。そのことから(大型・成体)も船の舳先に垂れ下がるのではなく、実際は輪っかの丸くなり回転するのだ、との見解を述べている[4][5]

石燕のあやかし画

鳥山石燕は『今昔百鬼拾遺』で「あやかし」の名で巨大な海蛇を描いている。その添え書きによれば、西国の海上に現れて船に乗りあがり、この「長いもの」[注 2]が船を越えきるまで2、3日もかかる。おびただしい量の油を出し、船員がこれを汲み干せば大事に至らないが、それをせねば沈没するという[7][8]

描写が一致するので、これは実際はイクチの絵だと考察される[6][9][10]。また「あやかし」という名称は大雑把な総称にすぎなく、あらゆる海の怪異をさす言葉である[9][10]

考察

石燕による妖怪画が未確認生物(UMA)のシーサーペントと酷似していることから、イクチをシーサーペントと同一のものとする指摘もある[11]

怪魚ではなく、未確認の巨大なウミヘビ種であるとの仮説もみられる[12]

また石燕の英訳者らは「あやかし」の「長いもの」を、一本の「巻きひげ」、すなわち触手ととらえており、頭足類の化け物(巨大タコや巨大イカ)とされる、西洋のクラーケン伝説を、江戸人が知りえて取り入れたのではないかと考察する[6][注 3][注 4]

また、海で溺死した人間たち(亡霊・魂)が集まったのがイクチであり、仲間を道ずれにするのを求めるのだ、という俗信があると指摘される[15][注 5]

注釈

[脚注の使い方]
  1. ^ 原文は「一二刻」だが、"1, 2刻"と読むべきであろう。目撃されるのは"常に夜陰の事にて"とあるので夜の一刻が該当する。平均を取って "1.5刻"であれば、夏場の夜の1刻が2時間弱だから、3時間弱という概算にもなりうる。ただ夏至だと昼の一刻は最長となり(2時間40分)、夜の一刻は1時間20分しかない[3]
  2. ^ 石燕の英訳者は、「長いもの」を本体ではなく、"a tendril long enough.. ~ほど長い巻きひげ"、すなわち触手と解釈する[6]
  3. ^ ちなみに原典(Egede)は、クラーケンとは「海のあやかし」søe-trold であると解説している。 "trold"に「あやかし」を充てるのは伊藤論文にみえる[13]。 
  4. ^ またシーサーペントのごとく見えたシーモンスターは、じつは巨大イカの一部が露出したに過ぎないという説は他にも見える。前注で言及したエーイェゼ(Egede)の目撃談と、同行者(Bing)によるシーサーペントの描画が残されるが、これを巨大イカの頭部と触手の一本が露出した姿の見間違えだろう、とヘンリー・リー英語版が説いている[14]
  5. ^ 漫画『うしおととら』に登場する、胴体の長い海の「あやかし」も、そのような海での死者の魂の集合体であるという設定である。

脚注

  1. ^ a b 員正恭 (えん・まさやす=津村淙庵) 著 『譚海』 巻之九、国書刊行会、1917年、285頁。doi:10.11501/945833NDLJP:945833https://dl.ndl.go.jp/pid/945833/1/164 
  2. ^ a b 津村淙庵 著「譚海」、柴田宵曲 編 『奇談異聞辞典』筑摩書房ちくま学芸文庫〉、2008年、32頁。ISBN 978-4-480-09162-8 
  3. ^ 朝日新聞社『落語文化史: 笑いの世界に遊ぶ』朝日新聞社、1986年、63頁。ISBN 9784022583697https://books.google.com/books?id=DkcyAAAAMAAJ&q=夏至+1刻 
  4. ^ a b c 根岸鎮衛 著「巻之三 海上にいくじといふものゝ事」、長谷川強校注 編 『耳嚢』 上、岩波書店岩波文庫〉、1991年、357-358頁。ISBN 978-4-00-302611-3https://books.google.com/books?id=kAA2AQAAIAAJ&q=いくじ 
  5. ^ a b 藪野, 直史 (2010年9月20日). “耳嚢 巻之三 海上にいくじといふものゝ事”. 鬼火 Le feu follet. 2023年2月27日閲覧。
  6. ^ a b c Toriyama, Sekien Hiroko Yoda訳 (2017), “Ayakashi”, Japandemonium Illustrated: The Yokai Encyclopedias of Toriyama Sekien, Courier Dover Publications, pp. 194, ISBN 9780486818757, https://books.google.com/books?id=oeTtDQAAQBAJ&pg=PA194 
  7. ^ 鳥山石燕 『百鬼夜行拾遺(今昔百鬼拾遺) 3巻』 中/霧、長野屋勘吉、1805年http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2551540/12。"あやかし 西国の海上に船のかゝり居(お)る時、ながきもの船こえて二三日もやまざる事あり。 油の出る事おびたゞし. 船人力をきはめて此油をくみほせば害なし。しかざれば船沈む。是あやかしのつきたる也。"。 
  8. ^ 鳥山石燕 著、江戸歴史ライブラリー編集部 編 『江戸妖怪画大全(鳥山石燕 全妖怪画集・解説付き特別編集版)』江戸歴史ライブラリー、2021年https://books.google.com/books?id=iPQ4EAAAQBAJ&pg=PT160 
  9. ^ a b 宮本幸枝「第四章 空と海の妖怪 §イクチ」 『日本の妖怪FILE』学研、2013年、132頁。ISBN 978-4-054056-63-3 
  10. ^ a b 村上健司編著 『日本妖怪大事典』角川書店〈Kwai books〉、2005年、25頁。ISBN 978-4-04-883926-6 
  11. ^ 山口敏太郎 『本当にいる日本の現代妖怪図鑑』笠倉出版社、2007年、134頁。ISBN 978-4-7730-0365-9 
  12. ^ 人文社編集部 『日本の謎と不思議大全 東日本編』人文社〈ものしりミニシリーズ〉、2006年、55頁。ISBN 978-4-7959-1986-0 
  13. ^ 伊藤盡「北欧語から英語への借入語としてのTroll」『人文科学論集. 文化コミュニケーション学科編』第46巻、信州大学人文学部、2012年3月、72頁、ISSN 1342-2790NAID 40019309680 
  14. ^ Lee, Henry (1884), “The Great Sea Serpent”, Sea Monsters Unmasked, The Fisheries Exhibition Literature 3 (Chapman and Hall): pp. 65–68, https://books.google.com/books?id=i3cFAAAAMAAJ&pg=PA65 
  15. ^ 人文社編集部 『諸国怪談奇談集成 江戸諸国百物語 東日本編』人文社〈ものしりシリーズ〉、2005年、45頁。ISBN 978-4-7959-1955-6 

「イクチ」の例文・使い方・用例・文例

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