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コゼット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2011/08/28 05:48 UTC 版)
(アルセーヌ・ユヴェ から転送)
『コゼット』(Cosette:The Sequel to Les Miserables)は、アメリカ人女流作家ローラ・カルパキアンによって書かれ、1995年に出版された、ロマン主義フランス文学の大河小説『レ・ミゼラブル』をモチーフにした小説である。日本語版は光野多恵子の訳で1996年に三天書房から出版された。ジャン・ヴァルジャンの養女コゼットを主人公にしている。
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。
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作品概要
晴れてマリユスと結婚し、二児の母となった男爵夫人コゼットが、7月革命の混沌にある1833年からフランス第二帝政があと3年で終わりを告げる1867年までのフランスで、職業婦人として生きていく物語である。夫とともに、養父ジャン・ヴァルジャンから相続した60万フラン[1]を使って新聞社『ラ・リュミエール』(La lumière)を興した彼女は、その美貌と聡明さと意志の強さ、そしてマリユスとの深い愛情で様々な困難を乗り越えていく。
ジャン・ヴァルジャンはもちろん、幼少時代のコゼットを虐待していた宿屋『ワーテルローの軍曹』の店主テナルディエと娘のゼルマ(=『レ・ミゼラブル』ではアゼルマ)、マリユスの祖父ジルノルマン氏やその娘のジルノルマン嬢、またいとこのテオデュールといった『レ・ミゼラブル』に登場した面々はもちろん、《ムクドリ》ことガブリエル・ラスコーや1832年6月の暴動で生き延びたクレロン、パジョル、ポンメルシー家専属料理人のマダム・カレームといった新しい面々も登場して、コゼットの《女の戦い》を盛り上げていく。
要所要所に、当時のフランスで社会問題になっていた女性参政権の問題や、女性がジャーナリズムに関与することなど、フェミニズムの要素が盛り込まれている。
幾度どん底に突き落とされても、彼女は《光》を求め、与え続ける。これは、そんな彼女の物語。
評価
この作品はアメリカや日本をはじめ、フランスやイギリスなど11カ国で翻訳されている。この作品が完成するや否や、映画化の話も持ち上がり、当時のアメリカ出版界では大変話題になった。海外では結構売れ行きが良かったが、日本ではマイナーな作品である。
タイトル
※作品は上巻(ISBN 4-88346-010-X)と下巻(ISBN 4-88346-011-8)に分かれている。
- 上巻
- プロローグ
- ワーテルローの落とし子たち
- 愛のオペラ ~一八三三年 幸せから始まる物語~
- 革命前夜 ~一八四八年 ヒバリに救われたムクドリ~
- 革命の嵐
- 二月革命 ~一八四八年 自由・平等・友愛を求めて~
- 六月の大虐殺 ~一八四八年 パンか、それとも銃弾か~
- 復讐劇の幕開け ~一八五一年 夜会服をまとったドブネズミ~
- 下巻
- 第二帝政
- 皇帝のクーデター ~一八五一年 マリユスとの別れ、生まれ変わるヒバリ~
- コゼットの闘い ~蛙のナポレオン、誕生する~
- 死者からの伝言 ~ふたたび絶望からの脱出~
- パリの生活
- 享楽の生活 ~偽の自由に酔いしれる時代~
- 堕落と裏切り ~金を持つ者と愛を持つ者~
- 高くついたオムレツ
- 虚飾の幕切れ ~真実を知る人々を乗せて舞台はまわる~
- エピローグ
- 第二帝政
あらすじ
1833年2月16日、マルディグラにコゼットとマリユスは結婚した。幸せな毎日を送る二人だったが、コゼットは父ジャン・ヴァルジャンが遠ざかっていくのを不安に感じ、マリユスは弁護士として法廷に立つ一方で現行の法律に矛盾を感じていた。そんなふたりを支えていたのは、お互いの存在とお互いへの愛情だった。自邸のベッドで、旅先のブーローニュの宿屋で、ふたりは互いの愛を確かめ合っていた。
そんな日々を送っていた1833年の晩夏、政治家とその娘らしい男女が現れる。娘らしい女はコゼットのもとに近づき、彼女が思い出したくもない陰惨な幼少時代の記憶をまくし立てる。その女の正体は、幼少時代のコゼットを虐待し続けたテナルディエの娘ゼルマだった。コゼットはゼルマから罵詈雑言を浴び、真実を聞かされる――コゼットとマリユス、それにジャン・ヴァルジャンのせいで父テナルディエは死刑を宣告され、アメリカに渡航するしか助かる道はないこと、父ジャン・ヴァルジャンは囚人24601号であり、コゼットの母は娼婦だったこと、姉エポニーヌがマリユスを愛していたこと、マリユスを愛したがゆえに1832年6月の暴動で革命家と一緒に命を落としたこと。コゼットは絶望の淵に追い込まれるも、マリユスに救われる。
ロマルメ通りのアパルトメンでジャン・ヴァルジャンの臨終を看取ったコゼットは葛藤する。自分が囚人と娼婦の間に生まれた子供だと知ったら夫はどんな反応をするだろう? そもそも、ジャン・ヴァルジャンは実の父親だったのか……? しかし、夫マリユスの悩みのほうが深くなっていくのに気づいたコゼットは、彼を心配するようになる。バリケードで散っていった仲間のことを想い、自身の命を救ってくれたヴァルジャンを囚人という理由で敬遠してきたことを後悔する夫を。
しかし、その不安もコゼットの妊娠で解消される。弁護士という仕事に疑念を抱くなら、父が残してくれた60万フランを元手に新聞を出そう――それが暴動を生き延びたマリユスにできること。コゼットはそう言って夫を説得する。新聞の名前は『ラ・リュミエール』(La lumière)。言葉の意味は《光》。
幾度にもわたるマリユスの逮捕、二月革命、信頼していた人物の裏切り、息子の放蕩と堕落、バリケードでの戦い、フランス第二帝政、ゼルマの復讐……運命に翻弄され、苦しみながらもコゼットは運命に立ち向かう。金という財産を失っても、愛という財産を抱き、人のぬくもりという新しい財産を手に入れて。
- ^ 大変危険だが、現在の金額(日本円。労働賃金、1フラン=5000円)に換算すると約30億円。
- ^ 『レ・ミゼラブル』では正式な名前はユーフラジーであり、コゼットは実母であるファンティーヌが名づけた愛称であるが、本作ではコゼットが本名だということになっている。
- ^ この作品では、“地方から出てきた法学生”ということで、トロミエス自身の名前は一切明かされていない。マリユスの父ジョルジュの名前も同様である。
- ^ 文字の読み書きが出来ない人のために書類を作成する職業。
- ^ “mea culpa”。「我が喪失なり」という意味のラテン語で、贖罪の祈祷に使われる言葉。
- ^ 『レ・ミゼラブル』では1769年。
- ^ コゼットはその名をつけた際、その由来を「修道院時代に亡くなった親友の名前」とマリユスに伝えている。母が娼婦だという事実がばれるのが相当怖かったためである。のちにコゼットはこのことをマリユスに謝罪している。
- ^ ただし、ムクドリはもちろん、ファンティーヌの両親も警察から追われる身であったため、結婚式はもちろん、入籍もしていない。
- ^ 『レ・ミゼラブル』にはコゼット誘拐の記述はない。プリュメ通りの邸宅に押し込み強盗をしようとして未遂に終わった記述がある。
- ^ 危険だが、現在の価格(日本円。当時の労働賃金、1フラン=5000円)で計算すると1億円。
- ^ コゼットと同い年ということになるが、『レ・ミゼラブル』では姉エポニーヌがコゼットと同い年だった。
- ^ Prince-Presidentは大統領時代のナポレオン3世の異名。
- ^ トゥルスボワ伯爵は、断頭台で命を落とした貴族。以前失われた貴族の名前や爵位を貰ったり、金で買うこともあったからできることであろう。