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レコード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/05/29 19:34 UTC 版)

(アナログ・レコード から転送)

シングルレコード盤(ドーナツ盤ともいわれる)

レコード (record) とは、円盤状の樹脂等に振幅を刻むことで音楽などの音響情報を記録したメディアの一種であり、また実際に音の情報が収録された物を指す。音盤と呼ばれることもある。

音の再生の方法は信号としての振幅の情報の読み取り方と情報の増幅により異なる。針で読み取った振幅の情報を機械的に増幅する蓄音機の時代、電気信号に変えて増幅するレコードプレーヤーの時代、そして針を使わずにレーザーで読み取る時代(レコード末期以降の特殊な時代)に大まかに分類することができる。

近年では、針ではなくレーザーを用いて非接触再生するプレーヤー(レーザーターンテーブル)が株式会社エルプより製造販売されており、これを利用すると傷や割れ、歪んだ盤すらも再生できるが赤盤に限り再生不可能である。

目次

呼称

語源は「記録」という意味の英語"record"である。「記録」の意味と混同されないよう、アナログレコードアナログディスクなどとも呼ぶ。また、SPSPレコード、SP盤とも。以下同様)・LPEPと規格で呼んだり、シェラックバイナルビニール、vinyl)と材料で呼んだり、rpm(回転数)によって78回転45回転33回転16回転と呼んだり、7インチ10インチ12インチと盤の大きさで呼ぶこともある。なお、1950年代以降バイナルがレコードの材料の主力となったが、ボイジャーに搭載されたレコード(銅製)に代表されるように、レコード全てがバイナルではない。

略史

世界初のレコード(音声記録)システムは、1857年フランスのレオン・スコットが発明した「フォノトグラフ」である。スコットは、振動板にの毛をつけ煤を塗り、音声を紙の上に記録させた。再生装置が無かったため、フォノトグラフは実用にはつながらなかったが、1876年グレアム・ベル電話機を発明したことにより再生の目処がつき、複数の研究者が再生可能なレコードの発明に取り掛かった。

初期のレコード

世界で初めて実際に稼動した、再生可能なレコードは、エジソン1877年12月6日(のちの「音の日」)に発明した「フォノグラフ」である。直径8cmの、箔を貼った真鍮円筒に針で音溝を記録するという、基本原理は後のレコードと同じものである。フォノグラフは、日本では蘇言機、蓄音機と訳された。ただしこの当時はまだ、音楽用途はほとんど想定されておらず、エジソンも盲人を補助するための機器として考案している。

これに対し 1887年には、エミール・ベルリナーが「グラモフォン」を発明した。最大の特徴は水平なターンテーブルに載せて再生する円盤式であることで、発端はエジソンの円筒式レコード特許の回避のためだったが、結果として、円筒式より収納しやすく、原盤を用いた複製も容易になった。中央の部分にレーベルを貼付できることも、円筒式にない特長だった。CDやDVDにつながる円盤型メディアの歴史は、このとき始まったと言える。さらにベルリナーは、記録面に対し針が振動する向きを、従来の垂直から水平に変更した。これにより音溝の深さが一定になり、音質が向上した。

エジソンもこれに対抗し、円筒の素材を蝋でコーティングした蝋管に変更し音質を向上させた。蝋が固まるときに収縮することを利用した、鋳造による複製方法も発明したが、量産性は円盤式には及ばなかった。

当初、アメリカではエジソンが、ヨーロッパではベルリナーが市場を支配した。しかし、円盤式は同一音源の大量複製生産に適していたうえ、両面レコードの発明などもあり、最終的にベルリナーの円盤式レコードが市場を制した。なお、円筒式の記録媒体は音楽レコードとしては姿を消したが、後に、初期のコンピュータの補助記憶装置磁気ドラム)に使われたことがある。

円盤式レコードの発達

初期の円盤式レコードは回転数が製品により異なったが、電気式蓄音機の発明により、後にSPレコードと呼ばれる78回転盤(毎分78回転)がデファクトスタンダードとなった。

また、初期の円盤式レコードは、ゴムエボナイトなどが原料といわれているが、やがて酸化アルミニウム硫酸バリウムなどの粉末をシェラックカイガラムシの分泌する天然樹脂)で固めた混合物がレコードの主原料となり、シェラック盤と呼ばれた。しかしこの混合物はもろい材質で、そのためSPレコードは摩耗しやすく割れやすかった。瓦のように落とすと割れやすいことから、俗に「瓦盤」と呼ばれたほどである[1]

また、収録時間が直径10インチ (25cm) で3分、12インチ (30cm) で5分と、サイズの割には短かったために、作品の規模の大きいクラシック音楽などでは、1曲でも多くの枚数が必要となり、レコード再生の途中で幾度となくレコードを掛け替えねばならなかった。

特にオペラなどの全曲盤では、数十枚組にもなるものまであり、大きな組み物はほとんどの場合、文字通りの分厚いアルバム状ケースに収納されていた。今でもディスクのことを「アルバム」と呼ぶことがあるのは、それに由来している。

また、ポピュラー曲に関しては、面ごとに違う演奏家によるレコードを複数枚集めたアルバムが作られる場合もあり、これを乗合馬車(ラテン語でomnibus)に見立てて、「オムニバス」と呼ぶようになった。現在「コンピレーション・アルバム」と言われるものがかつては「オムニバス・アルバム」と言われたのはこれが由来である。

長時間対策として、放送録音用としては通常より径の大きなディスクが用いられることもあったが、これは大きすぎて扱いにくく、また溝を細くすることや回転数を落とすことで録音時間を伸ばす試みもあったが、初期のレコード盤材質でそのような特殊措置を採ると、再生による劣化や破損が起きやすいために、実用的ではなかった。

ビニール盤(バイナル)の出現

その後の化学技術の進歩により、ポリ塩化ビニルを用いることによって細密な記録が可能となり、長時間再生・音質向上が実現された。さらに、取り扱いの面でも割れにくく丈夫で、軽く扱いやすいものとなった。

これらがLPレコードやEPレコードで、1940年代に実用化、1950年代後半までに市場の主流となった。これらを総称して、ビニール盤、バイナルなどと呼ぶ。

LPレコード

アメリカ人ピーター・ゴールドマーク (Peter Goldmark) が開発、1948年6月21日にコロムビア社から最初に発売された。直径12インチ (30cm) で収録時間30分。それ以前のレコード同等のサイズで格段に長時間再生できるので、LP (long play) と呼ばれ、在来レコードより音溝(グルーヴ)が細いことから、マイクログルーヴ (microgroove) とも呼ばれた。また、回転数から33回転盤とも呼ばれる(実際には3分100回転、1分33 1/3回転)。これ以降、従来のシェラック製78回転盤は(主に日本で)SP (standard play) と呼ばれるようになった。

シングル・レコード

LPと同じ材質・音溝で、RCAビクター社が1949年に発売した。直径17cmで収録時間は溝の加工によって違うが、5分から8分程度。回転数から45回転盤とも言う。オートチェンジャーで1曲ずつ連続演奏する用途が想定された。オートチェンジャー対応を容易とするため保持部となる中心穴の径が大きく、ドーナツを想起させるため、ドーナツ盤とも呼ばれた。

LPとシングル盤の共存

LPとシングル盤は初期の一時こそ競合関係にあったが、長時間連続再生可能でクラシック音楽の全曲収録や短い曲の多数収録が可能なLPと、SP盤並の収録力(片面あたりポピュラー音楽1曲程度)のままでディスク小型化とオートチェンジャー適合化を指向したシングル盤は実用上の性格の相違から棲み分けが容易で、基礎技術自体はほとんど同一のためレコード針も共用できたことから、ほどなく双方の陣営が相手方の規格も発売し、双方がスタンダードとなるという形で決着がついた。

この際、ビクターで多くのクラシック音楽レコードを録音していた当時の世界的著名指揮者のアルトゥーロ・トスカニーニが、曲を分割せずにすむLPを強く推したことが影響したといわれる。音響機器メーカーからは33回転と45回転の切り替え可能なターンテーブルも発売され、バイナル盤への規格移行が促された。

LPレコードの実用化では、同時期に民生用に用いられ始めたテープレコーダーの普及が一役買った。特に長時間の曲が多いクラシック音楽等でミスなく長時間の演奏を行うことは難しく、リテイクと編集を可能にするテープレコーダーが役立てられた。逆に、LPレコードとテープレコーダーがSPレコード時代の1曲5分未満という制約を取り払い、長時間即興演奏を連続収録した商業レコード発売を可能としたことで、結果的に音楽ジャンル自体の発展をも促したモダン・ジャズのような事例もある。

また更にマスターテープの再生時、再生ヘッドの前にモニタヘッドを取り付けることにより、音量に合わせて予めカッタの送り速度を調整すること(可変ピッチカッティング)が可能になり、ダイナミックレンジの確保と録音時間を両立できるようになった。

メディア媒体としての衰退・転化

45やLPレコードは、音質や収録時間では大きな進歩を遂げたものの、通常レコード針の機械的な接触によって再生される基本原理はSPレコードと変わらなかった。この方式は埃や振動に影響されやすく、メディア個体の再生回数が重なると、音溝の磨耗により高域が減衰していく問題があった。また45-45方式のチャネルセパレーションにも限界があった。

そのため、1980年代に入ってからは、扱いやすく消耗しにくいコンパクトディスク (CD) の開発・普及により、一般向け市場ではメディア、ハードとも著しく衰退したが、在来システムへの愛着からアナログレコードを好む層が存在し、その中にはデジタルメディアに比してアナログレコードに音質面の優位があると主張する愛好家もいて、2010年代でも市場から絶滅するまでには至っていない。

一方では1970年代以降、磨耗したレコードを通常の再生とは違った形でターンテーブルに載せて手動で回転させるという表現技法が現れ、そこから発達する形でクラブDJ の演奏にも利用されるようになった。

近年ではCDを利用してDJプレイができるような機器が普及してきているが、未だにレコード(アナログレコード、または単にアナログと呼ばれる)はその直感的な操作性とレンジの広い音質、特有のスクラッチノイズ、そしてアナログレコードという形式そのものへの愛着などから根強い人気があり、DJプレイ用に発売されるシングルの主流を占めている(12インチシングル)。これはアナログレコード再生用ターンテーブルへの一定需要にもなり、その生産存続を支える一助ともなっている。 また、アーティストがCDシングルと並行してCDシングルと同じ内容(カラオケバージョンを除く。)の限定版のシングルレコードを出したり、「ハレ晴レユカイ」の様にあるライブ会場や一部のショップのみで販売されたり、過去のシングル盤を復刻して出す事もある。これも生産存続を支える一助ともなっていると言える。

「レコードの優位性」説

近年、アナログレコードは原理的にはコンパクトディスクで欠落する20kHz以上の周波数帯域を損なわない特徴があるとされ再注目されている。

しかし実際に「レコードは高周波が記録されている・再生できる」かどうかには疑問がある。再生用のカートリッジは30kHz以上も再生可能と謳っている製品も珍しくないが、再生に使われるRIAAイコライザーは20kHzを20Hzの超低音域に比べ約40dB低減するため、カッティング時に逆の特性で持ち上げてあるとはいえ再生音の高周波成分は少なく、理論的な特性はCDと大きく違わないはずであるが、現実にはそのようになることはない。

レコード再生では高調波=歪みがデジタルに比べて非常に多く、微弱な電流を増幅するために増幅率の大きいアンプを使用するので、トランジスタ、FET、ICといった増幅素子から発生する雑音や機械的振動による雑音の影響も大きくなる。20kHz程度、好条件でも24kHz程度より高い周波数が原理的に含まれないデジタル録音のレコード盤と同音源によるCDとの周波数分布を比べてみると、レコードの再生音には再生系統で発生する歪みやアンプノイズが多く含まれていることが判明する。実は「レコードの高周波成分」は原音に入っているものではなく再生時に付け加えられたもの、とみなすこともできる。(cf. サンプリング周波数)。

レコードの生産

レコードはビニライトの原材料を裏表の金型(スタンパ)の間に入れ、熱と圧力を加えてプレスすることで作られる。プレス装置と型さえ数をそろえれば量産が容易である。このプレス型はスタンパと呼ばれ、オリジナルの原版から複数の工程をへて複製されたものである。

  1. 音を「ラッカー」(lacquer) とよばれる原盤にカッティング。これは表面が柔らかい原版に凹型の溝を切る工程。
  2. 「ラッカー」は耐久性に乏しいので、表面に銀メッキを施してからニッケルメッキを施す。厚くメッキをして剥離した凸型の盤を「メタルマスタ」(metal master) と呼ぶ。これが保存用のマスターディスクになる。
  3. 「メタルマスタ」に銅でメッキを行ってはがすと凹型の「マザー」(mother) ができる。これは生産用のマスターディスクになる。
  4. 「マザー」にニッケルやクロムでメッキを行い凸型の「スタンパ」(stamper) を作る。
  5. 「スタンパ」を用いて上記のプレスを行うことでレコード(凹型の溝)が完成する。スタンパは消耗品で、潰れたら新しいスタンパを製造するため4.の工程が行なわれる。
  6. 熱した塩ビをプレスする。そのままでははみ出た塩ビで円にならないので周囲を切断する。

このメタルマスタ作成が音質の要になるという事で、レコード全盛期にはさまざまな試みが行われた。ダイレクトカッティングの他に高音域をイコライザーで強調して周波数特性を伸ばした盤、通常より重たいディスクを使用した盤、33 1/3の半分のスピードでカッティングした盤がある。

テルデック社が1982年に開発したダイレクト・メタル・マスタリング (Direct Metal Mastering, DMM) もそうした音質向上技術のひとつ。超音波を当てながらカッティングを施した銅円盤をそのままマザーとして用いる方式で、ノイズ低減や収録時間10%増加などのメリットがある。ただし収録内容によってはダイナミックレンジが狭くなる物もあった。このDMMはCDの急速な普及に押され、登場から数年のみ使用された。




[ヘルプ]
  1. ^ アナログレコードの音楽を手軽にデジタル録音できるプレーヤー - 日経BP セカンドステージ
  2. ^ 菅野沖彦「私のアナログ感覚」季刊analog、17号・18号
  3. ^ 「8盤レコード」シリーズを2004年2月中旬に発売、バンダイ、2003年9月1日。


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