アスピリン‐ぜんそく【アスピリン×喘息】
アスピリン喘息
アスピリン喘息
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 02:53 UTC 版)
喘息患者の何割かが獲得するアセチルサリチル酸(アスピリン)などの非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、特にシクロオキシゲナーゼ阻害薬(特にCOX1)に対する過敏体質であり、アレルギーによるものではない。NSAIDsの服用から数分から1時間後に鼻汁過多、鼻閉、喘息発作が起こる。このように症状が、上気道、下気道に及ぶことから、近年、non-steroidal anti-inflammatory drugs exacerbated respiratory disease(NERD)と呼称されるようになった。成人女性に好発し、小児では稀である。 アトピー型、非アトピー型喘息患者のいずれにおいても認められ、中等症以上の症例が多く、急性増悪時には、しばしば、重度の呼吸器症状をきたす。病歴から診断可能な例もあるが、確定診断のためにアスピリン負荷試験を要することが少なくない。成人喘息患者の約21%は誘発試験でアスピリン喘息を起こしたとの報告がある。 COX1阻害によるプロスタグランジンの阻害とそれに伴うロイコトリエン(LT)代謝経路に傾くことによる代謝異常が病態の基盤にあるため、COX2阻害薬投与においては発生率が低下する。しかし、COX2阻害薬も他のNSAIDsと同様、添付文書上、喘息患者には禁忌とされている。 病態の特徴の一つにロイコトリエンの過剰産生があり、そのためロイコトリエン拮抗薬が用いられることが多い。好酸球性副鼻腔炎の合併率が極めて高く、鼻茸や嗅覚低下を合併することが多い。他臓器の好酸球性疾患の合併もみられる。 アスピリン喘息の急性増悪ではコハク酸エステル型ステロイド(ソルコーテフ、ソル・メドロール、水溶性プレドニンなど)の急速静注は喘息の増悪を誘発することがある(ステロイド自体やコハク酸残基が誘因になった報告があり、リン酸塩は安全とされる。溶解液中安定剤パラベンはしばしば誘因になる。)。1時間以上かけて点滴を行えば比較的安全とされている。リン酸エステル型ステロイド薬(デカドロン、リンデロン、ハイドロコートンなど)を1時間以上かけて点滴投与する。 おおよそ気管支喘息の10%がアスピリン喘息(アスピリン不耐症)とも言われ、総ての酸性NSAIDsは原則禁である。アセトアミノフェンやCOX2阻害剤は比較的安心とも言うが原則禁で基本は冷罨法である。アセトアミノフェンは少量ならば使用可能とする意見もある。塩基性NSAIDs(ソランタール®等)葛根湯、地竜は使用可能とされる。症状発現の程度は様々で数分でショック状態に陥る強い発作もあれば風邪がダラダラ長引いて治らないと訴える場合もある。またその使用時に常に症状発現するとは限らないことが診断を難しくしている。NSAIDsやβブロッカーの点眼液でも発作が出現することもある。
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