よもや
「よもや」とは・「よもや」の意味
「よもや」とは、「まさか・万が一にも」および「きっと・たぶん」という意味で用いられる表現である。副詞の「よも」に助詞「や」をつけて、「よも」の意味を強めた表現である。2020年頃に国民的人気を博したマンガおよびアニメ作品「鬼滅の刃」に登場するキャラクター・煉獄杏寿郎が発した「よもやよもやだ」というセリフによって一躍、広く知られる表現となった。「よもや」は現代では耳慣れない表現であるためか方言と思われがちだが、方言ではない(煉獄杏寿郎も東京出身という設定である)。
「よもや」は副詞であり、「まさか」と同様、基本的にひらがなで表記される。漢字表記は特にない。ただし江戸時代の「大岡政談」などに、「豈夫」と書いて「よもや」と読ませた例がある。なお「豈夫」は漢文の語彙であり、「よもや」の他に「よも」「まさか」と読まれることもある。
「よもや」の語源・由来
「よもや」の語源は、「まさか・決して」「十中八九そのようなことは起こらないという予想」を意味する、古語の「よも……じ」である。日本三大随筆と呼ばれる平安時代の『枕草子』や鎌倉時代の『徒然草』の中でも使用されている「よも……じ」は、副詞の「よも」に打消し推量の助詞「じ」を組み合わせた言葉だ。時代が下るとともに、打消し推量の意味を持つ「じ」が外れ、肯定否定のどちらでもない単なる強調の助詞である「や」がついて、「よもや」となった。言葉の意味も、あとに否定の推量表現がついたときには「まさか・いくらなんでも」、あとに単なる推量や可能推量表現がついたときには「きっと・たぶん」と、2種類の意味を使い分けるようになったのである。「よもや」の熟語・言い回し
「よもや」は、幅広い世代に知られていることから、さまざまな熟語・言い回しのある言葉だ。『鬼滅の刃』の大ヒット後に派生した熟語も、あわせて解説する。よもやよもやとは
「よもやよもや」とは、まさか・決して、という意味を持つ「よもや」を2回重ねて用いることで、まさかの意味を強める言い回しだ。現在では、大ヒットしたマンガ『鬼滅の刃』の煉獄杏寿郎のセリフから引用して、使用されることが多い。元となる煉獄杏寿郎のセリフは「よもやよもやだ 柱として不甲斐なし!!穴があったら入りたい!!」というものだ。不覚を取った自分を恥じて「まさかこんな事態に陥るとは」という意味であり、「よもやよもや」も、誰かが何らかの失敗をした際に使われることが多い言い回しである。
よもや短文とは
「よもや短文」とは、「よもや~」を使用した短文を作ることである。国語の試験問題では、指定した語句を使って短文を作る設問が出題される場合があるが、「よもや」や「そもそも」は指定されることが多い人気の語句といえるだろう。短文SNSのTwitter内では、ランダムで出されたお題に回答して遊べるプログラムを提供するアカウントがあり、指定された副詞を使った短文を作るためのお題の中に「よもや」が取り上げられている。プログラム作成者の公式サイトによると、85万人以上が短文を作るお題のプログラムを使用した実績がある。
まじよもやとは
「まじよもや」とは、「本気であること・真剣なこと」「本当のこと・事実であること」の意味で使われる「まじ」に、「よもや」を組み合わせた言葉である。本当に想像もしなかったほどまさかの出来事や、その出来事が起こって驚いている感情を表すために使う言い回しだ。そのほか、マンガ『鬼滅の刃』の煉獄杏寿郎のセリフとの関連から派生した使い方も、2通りある。1つめの使い方では、本来当然できるはずのことができず、穴があったら入りたいような失敗をしたときに用いる。2つめの使い方では、煉獄杏寿郎と関係のある物事や、連想させる物事が起こった際に、「本当に・まるで、煉獄杏寿郎のようだ」と感じたときに用いる。
ばりよもやとは
「ばりよもや」とは、SNSのインスタグラムで、USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)の『鬼滅の刃』アトラクションで煉獄杏寿郎を見た一般の個人アカウントが、「煉獄おるやん、ばりよもや」と感想を投稿したことから広まった言葉である。当該の投稿がインスタグラムからSNSのTwitter内で画像引用された投稿は、6万件を超える「いいね」がつく人気となり、さらに広まることとなった。
「ばり~」とは、もともと福岡県の方言で「とても~」という意味を持ち、自分の予想を超える物事に対して使う表現である。ギャルが使う語彙になって、全国に広まった。「ばりよもや」では、すでに強調の助詞がついている「よもや」に、さらに強調する接頭語「ばり~」がついているため、「一切予想もしていなかったまさかの出来事に直面して、大変驚いた」という意味になる。
「よもや」の使い方・例文
「よもや」は3文字で、まさか、万が一にも、いくらなんでも、といった強い感情を豊かに表現できる言葉である。マンガの中で使用されて幅広い世代に知られるようになり、派生した熟語もあるため、さまざまな形で使われることが増えた。例文を挙げてそれぞれ解説する。例文1:「学年トップの彼が、よもや不合格になることはないだろう」
「よもや」のあとに、「~ないだろう」と打消しの推量を続けて終わることで、「まさか」と否定の意味を表す使い方だ。まさか不合格になることはない、を別の言い方で表現すると、実力通りに行けば必ず合格するはずだ、となる。例文に出てくる彼の学力の高さから、結果は合格間違いなしだと予想していることを表す。
例文2:「あの試合で自分に勝ったことを、よもや忘れはしまい」
「よもや」のあとに、「~まい」と打消しの推量をつけて否定する言い方だ。「万が一にも、忘れていないだろう」という意味で、高い確率で相手が自分を覚えているだろう、と考えているときの表現である。
例文3:「この提案内容で、よもや他社にプレゼンで負けるとは」
「よもや」のあとに推量の言葉を置かずに、「とは」で終わる使い方も可能だ。「とは」は、文末に置いた場合、続く語句を省略して感情を強く表す言葉になる。「よもや」自体に、「まさか・いくらなんでも」の意味があるため、まさか他社に負けるとは想像もしなかったと大きな衝撃を受けたことを表現している。
例文4:「よもや、大卒だからこの程度の計算はできるだろう」
「よもや」のあとに、可能推量の言葉を続けることで、肯定的な意味を表す使い方だ。否定の推量の場合の「まさか・いくらなんでも」とは違い、「きっと・たぶん」と解釈するため、「きっと、この程度の計算はできるだろう」という意味である。
例文5:「よもやに引かされて、彼が来るのを待っていた」
「よもやに引かされて」は、熟語として使用される語句である。よもや(まさか)叶うことはないだろうが、きっといつか思いが叶う、という期待に引きずられている状態を表す。例文での意味は、「十中八九起こらないとわかっていても、ひょっとしたら来るかもしれない、というかすかな期待を捨てられずに、彼を待っていた」となる。
例文6:「恩師の紹介で信頼した相手だが、よもやに掛かってしまった」
「よもやに掛かる」も、熟語として使用される語句だ。まさかそんなことはないだろうと思うような相手、信じていた人物に騙されることを表す。恩師の紹介があったから信頼した相手に、騙されていたことがわかった、という状況で使う例文である。
例文7:「10年も通い慣れた道を間違えるなんて、よもやよもやだ」
「よもやよもやだ」は、煉獄杏寿郎のセリフからの引用で、その人の立場でするはずのない失敗をしたときに使う表現である。自他ともに使える言葉だが、この場合は自分に対して用いる使い方だ。通い慣れてよく知っているはずの自分が、道を間違えるという失敗をしたことを「まさか、とても信じられない」と恥じている。
例文8:「チームの4番打者が満塁のチャンスで三振するとは、よもやよもやだ」
「よもやよもやだ」は、他人に対して用いることも可能だ。野球の試合中の大きなチャンスで、本来最も期待される人が実力に見合った結果を出せなかった、という状況である。他人の失敗に対しても、「まさか、こんな結果になるなんてとても信じられない」と驚く気持ちを表現することができる使い方だ。
例文9:「眉毛についた寝ぐせが煉獄さんで、まじよもやだ」
「まじよもや」を用いて、大きな驚きを表す2つの意味を同時に表現する使い方だ。1つめは、眉毛についた寝ぐせを、特徴的な眉毛の形の煉獄杏寿郎になぞらえ、「まるで煉獄杏寿郎だ」と表現している。2つめは、眉毛に煉獄杏寿郎のような寝ぐせがつくとは、「本当に思いもよらないまさかの出来事が起こって驚いている」という意味で用いているのだ。
例文10:「よもやよもやだ、まじよもや」
「よもやよもやだ」と、「まじよもや」を続けて用いる場合もある。本来、一語で強調の意味を持つ「よもや」を3回も重ねて使うことで、通常の使い方では言い表せないほどの最大級の驚きや、まったく想定外の出来事であることを表現できるのだ。
よも‐や
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