梵字(ぼんじ)
武士や刀鍛冶は、戦勝や護身等を願って自らの信仰対象を刀身に彫刻で表した。ことに鎌倉から南北朝にかけて流行した密教の影響を受けて、梵字や倶梨迦羅・不動明王像等を表した例は多い。梵字は、インド古来のサンスクリット文字であり、種字が仏教神を表しているため、神体をこの梵字に託して刀身や武具等に表すことが行われた。梵字の彫刻例では不動明王が最も多く、続いて愛染明王・毘沙門天・摩利支天等が散見される。不動明王 五大明王の一。大日如来が悪魔を降伏させる為に忿怒の相を表したもの。降三世明王 五大明王の一。東方を守り、煩悩を断ずる。右足に大自在天を、左に烏摩妃を踏む。軍多利明王 五大明王。南方を守り、衆生に平等性智の法水をそそぎ、万徳を生ぜしめる。大威徳明王 五大明王 。西方を守り、害のある毒蛇・悪龍を降伏する。阿弥陀如来の変化身。金剛夜叉明王 五大明王の一。北方を守護し、悪魔を降伏する。五鈷杵・剣・弓等を持つ。摩利支天 武士の守り本尊で、障難を除き利益を与える。本来は陽炎を神格化したもの。大黒天 自在天の化身で仏教の守護神。忿怒神。戦闘神。弁財天 音楽・弁才・福智・延寿・除災・得勝を司る。吉祥天と共にインドで尊崇された女神。毘沙門天 四天王の一。忿怒相の武神で、須弥山の北方に住し、北方世界を守護する。帝釈天 十二天の一。梵天と共に仏法を護る神。東方の守護神。須弥山山頂の忉利天に住む。多聞天 毘沙門天の別称。説法の道場を守護して法をよく聞くところからこの名がある。大自在天 ヒンズー教シヴァ神の異名。万物創造の最高神とされている。大日如来 光明が万物を照らすところから大日といわれ、宇宙と一体化した本尊。薬師如来 薬師瑠璃光如来のことで、衆生の病苦を救い無明の痼疾を癒す。矜迦羅童子 八大童子の一。勢多迦童子と共に不動明王の左右に侍す。勢多迦童子 八大童子の一。不動明王の横に侍して頭上に天衣をまとう。愛染明王 衆生の愛欲と煩悩がそのまま悟りであることを表す明王。獅子冠を戴き弓を持つ。文殊菩薩 普賢菩薩と共に釈尊の左に侍して知恵をつかさどる。獅子に乗る姿が一般的。普賢菩薩 仏の理定行の徳をつかさどり、仏教の教化済度を助ける。釈尊の右に侍し白象に乗る。弥勒菩薩 釈尊入滅後五十六億七千万年の後に下降して衆生を救う未来仏。虚空蔵菩薩 胎蔵界曼荼羅虚空蔵院の中尊。福徳の如意珠と智慧の利剣を持つ。将軍地蔵菩薩 鎌倉期以降に武家の信仰対象となった。将軍不動明王もその変化身。聖観世音 大慈悲で衆生を済度する。阿弥陀如来に侍する。千手観音等多くの形象がある。千手観音 六観音の一。四十の手と目を持ち、一手で二十五の救いを有す。馬頭観世音 馬頭明王とも称し、頭上に馬の冠を戴く。馬の守護神として信仰された。十一面観世音 十一の異なる面を有し、十一の無明を断ずる。楊柳観世音 風になびく柳のごとく慈悲深く衆生を救う。手に柳の枝を持つ。荒神 三宝荒神とも称する。火や炉・竈の神。西国では屋敷神として祀られる。まきえ 蒔絵 金や銀の粉或いは金箔・金泥などを素材として漆の上に図像を描き出した、平安時代に始まる日本独特の工芸絵画手法。平面に施す平蒔絵、高肉の彫刻風に施された高蒔絵、表面を研ぎ出した研出蒔絵、また下地塗では技法により平目地・梨子地・沃懸地などがある。華麗な装飾効果を示すところから工芸品全般に用いられ、刀剣類では鞘・刀掛、稀に鐔などに用いられている。
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