三省堂 大辞林 |
ひゃく 2 【百】
(2)多くのもの。たくさんあること。
「―の説法も及ばぬ」
(3)一〇〇歳。
「お前―までわしゃ九十九まで」
(4)銭百文。〔金銭証書などでは大字の「佰」を用いる〕
» (成句)百に一つ
» (成句)百も承知
» (成句)百も承知二百も合点
ほ 【▽百】
もも 1 【▽百】
物語要素事典 |
百
★1.百日待つ。
『仮名手本忠臣蔵』10段目「天河屋」 お園は夫天河屋義平から離縁され、さらに賊に髪を切られて尼姿にされる。髪がもとどおりに伸び、義平とふたたび夫婦になれるまでには、百日待たねばならない→〔髪〕2a。
『三国遺事』巻1「紀異」第1 熊と虎が、「人間になりたい」と神に願う。神が「艾(よもぎ)と蒜(にんにく)を食べ、百日間日光を見なければ人間になる」と告げる。熊は言われたとおり物忌みして二十一日で人間の女になるが、虎は物忌みができず、人間になれなかった。
『長谷雄草子』(御伽草子) 中納言長谷雄は鬼と双六をして勝ち、美女を得る。「百日過ぎてからうちとけ給え」と鬼は告げるが長谷雄は待ちきれず、八十日あまりたった時女を抱く。たちまち女は水になって流れ失せた〔*百日待てば→〔絵〕1cの『太平広記』のごとく、女は生身の人間となるはずだった〕。
★2.百年待つ。
『眠れる森の美女』(ペロー) 王女が紡錘で手を刺して百年間眠る。百年たって王子が訪れ、ちょうど魔法のとける時が来ていたので、王女は目覚め、王子を見つめて「あなたでしたの。ずいぶんお待ちしましたわ」と言う〔*『いばら姫』(グリム)KHM50には、この言葉はない〕。
『夢十夜』(夏目漱石)第1夜 女が「もう死にます。また逢いに来ますから、私の墓の傍に坐って百年待っていて下さい」と言う。「自分」は苔の上に坐り、日が昇り沈むのを「一つ、二つ」と数えて、待ち続ける。長い年月がたって、「だまされたのではなかろうか」と思い始めた時、墓石の下から青い茎が伸び、白百合の花が咲く。「自分」は花弁に接吻し、百年たったことに気づく。
★3a.百物語。何人かが集まって怪談を語り合う。最後の百話目に到れば怪異が起こるという。
『諸艶大鑑』(井原西鶴)巻2-5「百物語に恨が出る」 夜、女郎たちが百物語をして、人喰い婆や産女など百以上の怪談を語り合うが、何事も起こらなかった。しかし話題が、騙して捨てた男たちのことになった時、彼らの霊が現れて、女郎たちに恨み言を述べた。一人の女郎が「皆さん、揚屋の勘定の残りはどうしてくれます」と言うと、霊は消え失せた。
『百物語』(森鴎外) 豪商の飾磨屋が百物語の会を催し、二十人以上の客が集まる。「僕」も誘われて出かけ、三十歳ほどの飾磨屋を見て、彼も「僕」同様に人生の傍観者であることを知る。雇われた噺家の怪談が始まる前に「僕」は帰ったが、飾磨屋も怪談の途中で芸者を連れて二階へ上がり、寝てしまった〔*飾磨屋も「僕」も怪談を最後まで聞かず、結果的に怪異を避けたことになる〕。
『武道伝来記』(井原西鶴)巻5-4「火燵もありく四足の庭」 大雪の積もった冬の夜、武士たちが百物語をする。話が進むにつれ、次第に皆緊張し顔色も変わる。最後の百話目になった時、縁側で不気味な音がするので恐る恐る見ると、炬燵の櫓が庭を走って行った→〔見間違い〕2。
『エプタメロン』(ナヴァール) 温泉地での保養の帰途、洪水で足止めされるなどした貴族や貴婦人、男女五人ずつが、十日間毎日午後に牧場の木陰に集まって、一人一日一話、本当にあった話だけを語り合う。十日たてば百の物語ができるはずだった〔*ただし、第8日第3話の前置きまでで中断されており、未完である〕。
『サン・ヌーヴェル・ヌーヴェル』 十五世紀ブルゴーニュのフィリップ善良公殿下と廷臣三十数人が、艶笑譚など百編の物語を語り合った。それらは筆録され、書物の形になって、殿下に献上された。
『神曲』(ダンテ) ダンテは、古代ローマの詩人ヴェルギリウスに導かれて地獄・煉獄を訪れ、永遠の恋人ベアトリーチェに導かれて天国に昇る。『神曲』は、「地獄篇」全三十四歌・「煉獄篇」全三十三歌・「天国篇」全三十三歌、合わせて百の物語から成っている。
『デカメロン』(ボッカチオ) フィレンツェにペストが流行し、人々は町を捨てて避難する。郊外の別荘にこもった七人の若い貴婦人と三人の青年紳士が、一人一日一話、十日間に渡って合計百話の物語を語り合う。
★4a.お百度参り。祈願成就のために、社寺の境内の一定距離を百回往復する。
『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』(山東京伝) 仇気屋の艶二郎は色男の評判を立てたいために、自分から父親に願って勘当してもらう。そして芸者七~八人を雇い、「艶二郎さんの勘当が許されますように」と、浅草の観音にお百度参りをさせる。芸者たちは、「十度参りくらいでいいのさ」などと話し合う。
『夢十夜』(夏目漱石)第9夜 明治維新の前後のこと。侍である父が、ある夜、出かけたまま帰らない。若い母が三歳の子供を背負い、父の無事を祈って弓矢の神の八幡宮へ毎夜通い、お百度を踏む。しかし、その時すでに、父は浪士によって殺されていた。こんな悲しい話を、夢の中で母から聞いた。
★4b.百日参り。
『古本説話集』下-66 比叡山の貧僧が鞍馬寺に百日参り、「清水へ行け」との夢告を得る。清水寺に百日参ると「賀茂に行け」との夢告がある。僧は賀茂神社へ百日参り、ようやく「御幣紙・打撒の米を取らせよう」との夢告を得る〔*『宇治拾遺物語』巻6-6に類話〕→〔箱〕3。
『諸艶大鑑』(井原西鶴)巻7-4「反故尋て思ひの中宿」 遊女井筒は自分を捨てて身を隠した男を恨み、谷中の七面(ななおもて)明神に百日参りをして、百本の針で毎日指の血をしぼり、道の芝草を赤く染めて祈る。井筒と男はいったん縒りを戻すが、男はまた逃げ出し、やがて井筒の生霊に取り殺される。
枡伏せ長者の伝説 貧しい男が「金持ちになりたい」と願い、七キロ離れた湯山横谷の毘沙門天に百日参りをする。帰りには境内の小竹を一本ずつ持ち帰り、庭に植えて満願の日を待つ。九十九日目の夜、毘沙門天が「願いを叶えよう。ただし小竹はすべて返せ」と夢告するので、男は小竹を返して詫びる。その後まもなく男は大金持ちになる(愛媛県松山市)→〔長者〕2a。
*百日詣でをして子を授かる→〔申し子〕1の『太平記』巻3「主上御夢の事」。
『封神演義』第10回 易の卦によれば、西伯姫昌(周の文王)には百人の子があるはずのところ、百人目がなかなか生まれない。西伯が殷都朝歌へ赴く途次、将星出現を告げる雷雨があり、古墓の傍らで泣く赤子が見つかる。「これこそ将星である」と西伯は考え、赤子を第百子として認知する。
*→〔一夫多妻〕の『王様と私』(ラング)のシャム王には、百人以上の子供があった。
『十六歳の日記』(川端康成)五月五日 十六歳の「私」は、七十五歳の祖父を看病しつつ、原稿紙を百枚用意して日記を書く。日記が百枚になるまでに祖父が死にはしないかと不安を覚え、また、日記が百枚になれば祖父は助かる、という気持ちもする〔*三十枚ほど書いたところで祖父の病状は悪化し、五月二十四日に祖父は死ぬ〕。
*百日の日照りに百人の舞い→〔雨乞い〕2の『義経記』巻6 「静若宮八幡宮へ参詣の事」。
「ひゃく」の用例一覧
楠山正雄 雷のさずけもの (青空文庫)
楠山正雄 雷のさずけもの 雷のさずけもの 楠山正雄 一 むかし、 尾張国 ( おわりのくに ) に 一人 ( ひとり ) のお 百姓 ( ひゃくしょう ) がありました。ある 暑...
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楠山正雄 姨捨山 (青空文庫)
ている 一人 ( ひとり ) のお 百姓 ( ひゃくしょう ) がありました。ところがおかあさんが 今年 ( ことし ) 七十になりますので、 今 ( いま ) にも 殿様 ( とのさま ) の 家来 ( けら...
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楠山正雄 赤い玉 (青空文庫)
( とちゅう ) で 出会 ( であ ) いました。 王子 ( おうじ ) は 百姓 ( ひゃくしょう ) が 人通 ( ひとどお ) りのない 谷奥 ( たにおく ) へ 牛 ( うし ) を 引 ( ひ...
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