物語要素事典 |
にせ花嫁
『うつほ物語』「藤原の君」 源正頼は、上野の宮があて宮を奪おうとしていることを知り、家人の娘のうちで美貌の一人を選んで着飾らせ、車に乗せておく。上野の宮は彼女がにせ者と気づかず、かしづく。
『エプタメロン』(ナヴァール)第3日第19話 十四~五歳になった息子が小間使いに言い寄る。母親が息子を叱るために、小間使いの代わりにベッドで息子を待つ。ところが母親は肉の力に負けて、息子と関係を持ってしまう。
『おようの尼』(御伽草子) 日用品を売買・交換するおよう(御用)の尼という老尼が、独身の老法師の庵を訪れる。独身の侘しさを嘆く老法師に、おようの尼は「花嫁を世話しよう」と言う。老法師は花嫁を待ち焦がれ、数十日を経て、ようやく婚礼が行なわれる。恥ずかし気に顔を隠す花嫁と、老法師は共寝をするが、翌朝隣を見ると、七十歳ほどの老女が寝ている。それはおようの尼だった。
『終わりよければすべてよし』(シェイクスピア) 侍女ヘレナは伯爵バートラムを愛するが、バートラムはヘレナの身分が低いとの理由でこれをしりぞける。バートラムが某家の令嬢に求愛するので、夜、ヘレナは令嬢のふりをしてバートラムを迎え入れ、彼の子を宿す。
『がちょう番のおんな』(グリム)KHM89 王女が他国の王子の所へ嫁ぐ。その旅の途中で、腰元が姫をおどして衣装を取り替え、にせ花嫁となって王子と結婚する。本物の王女は鵞鳥の番人にされる。
『古事記』中巻 景行天皇が、大根王の娘兄比売・弟比売を召そうとする。ところが、息子の大碓命が二人を自分のものにして、他の女を兄比売・弟比売と偽り父帝にたてまつる。
『木幡の時雨』 中納言は時雨が縁で故奈良兵部卿右衛門督の中の君と契り、彼女との結婚を望むが、中の君の母が中納言を欺き、中の君の妹三の君を与える。中納言は花嫁が別人であると気づき、中の君を恋い続ける。式部卿宮(後に東宮)も時雨が縁で中の君と契り、別れた後も彼女を恋い続ける。やがて中の君の身代わりに妹三の君が東宮(=式部卿宮)妃となるが、東宮はにせ花嫁と気づかない。
『史記』「五宗世家」第29 孝景帝に召された程姫は、生理中だったので、侍者の唐児を着飾らせ参上させた。酔っていた帝は、これを程姫と思って寵愛した。やがて生まれたのが長沙の定王発である。
『白い花嫁と黒い花嫁』(グリム)KHM135 母親とその実の娘は心がけが悪く、継娘は心がけが良かった。そのため、神が母親と実の娘を色黒に、継娘を色白にする。色白の継娘は王妃として迎えられることになり、母親がこれを憎んで、継娘を馬車から川へ突き落とす。代わりに色黒の娘が王妃に変装し、御殿へ行く〔*色白の継娘は鴨に変身して王の所へ行き、母親と色黒娘の悪だくみを訴える〕。
『太平記』巻22「佐々木信胤宮方に成る事」 高土佐守は任国に愛人お妻(サイ)を伴おうとするが、彼女はいやがり、迎えの輿に老尼を乗せる。
『ドイツ伝説集』(グリム)400「アルボインとロジムント」 ロジムント妃は、父の敵である夫王アルボインを殺すため、家来のペレデオを味方に引き入れようと計る。彼女は、ペレデオの恋人の腰元の寝台に忍び入り、ペレデオは何も知らず妃と寝る。ロジムントは、自分が妃であることをペレデオに知らせ「こうなれば、王を殺すか王に殺されるか、二つに一つ」と迫る。
『日本書紀』巻24皇極天皇3年正月 中大兄皇子と蘇我倉山田麻呂の長女との結婚が決まった夜、長女は一族の者によって盗まれた。困惑する父倉山田麻呂に、次女が「私を身代わりとせよ」と申し出、中大兄に仕えた。
『ペンタローネ』(バジーレ)第5日第9話 黒人の女奴隷が、シトロンから生まれた美女の頭にピンを刺し、美女になり代わって王子と結婚する。女奴隷は「魔法をかけられてしまい、一年間は黒いが次の一年は白くなる」と言って王子を欺く。
*→〔姉妹〕2aの『創世記』第29章・〔処女〕3の『トリスタンとイゾルデ』(シュトラースブルク)第16~18章・〔女装〕1の『スリュムの歌』・〔ほくろ〕1aの『武家義理物語』巻1-2「ほくろは昔の面影」。
『兄と妹』(グリム)KHM11 魔女が、継娘が王妃になったのを憎み、王妃を風呂場へ入れて殺す。魔女は自分の片目の娘を王妃にしたててベッドに寝かせる。王に気づかれぬよう、娘は目のない側を下にして横向きに寝る。
『白鳥の湖』(チャイコフスキー)第3~4幕 ジーグフリード王子の花嫁選びの舞踏会に、悪魔ロットバルトの娘オディールが、オデット(*→〔夜〕1)そっくりの姿で現れる。王子はオディールをオデットと思いこみ、永遠の愛を誓ってしまう。ロットバルトとオディールは悪魔の正体を現して去り、ジーグフリード王子とオデットは、もはやこの世では結婚できぬ運命と知って、死を選ぶ。
『アーサーの死』(マロリー)第11巻第2章・第8章 騎士ラーンスロットは、アーサー王の妃グィネヴィアを熱愛していた。そのことを知るブルーセン婦人がラーンスロットに魔法をかけたため、彼はエレーン姫をグィネヴィアと思い込んで、二度にわたって床をともにする。一度目の交わりで、エレーン姫はガラハッドを身ごもる。二度目の時には、グィネヴィアが隣室にいて、ラーンスロットの寝言を聞いてしまう→〔寝言〕2。
★4.雲から造られたにせ花嫁。
『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要第3章 トロイアの王子アレクサンドロス(=パリス)は、スパルタ王メネラオスの妃ヘレネと駆け落ちした。しかしこれには異説がある。実はヘレネは、ゼウスの命令を受けたヘルメスによって、エジプトへ運ばれ、エジプト王プロテウスの保護下に置かれていた。アレクサンドロスは、雲から造られたにせヘレネを本物と思って船に乗せ、トロイアへ連れ帰ったのである。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第4章 テスピアイの王は、自分の五十人の娘が皆ヘラクレスの子を生むことを望み、十八歳のヘラクレスを五十日間歓待して、毎夜一人の娘をともに寝かせた。ヘラクレスは、それをすべて同じ一人の娘だと思って、全員と契りを交わした。
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