せきゆゆしゅつこくきこう

デジタル大辞泉

せきゆゆしゅつこく‐きこう【石油輸出国機構】

読み方：せきゆゆしゅつこくきこう

⇒オペック（OPEC）

石油/天然ガス用語辞典

石油輸出国機構

読み方： せきゆゆしゅつこくきこう
【英】: organization of petroleum exporting countries
略語: OPEC

(1) 設立の経緯：1960 年 9 月 14 日、ベネズエラ、サウジアラビア、イラン、イラク、クウェートの 5 大石油輸出国の関係閣僚がバグダードに会合し、5 日間の討議の後設立した国際組織で、通称オペック（OPEC）と呼ばれている。 第二次世界大戦後、世界の原油生産力が飛躍的上昇を示したなかで、中東の原油価格は 1951 ～ 54 年のイラン石油国有化紛争の期間（→コンソーシアム）および 1956 ～ 57 年のスエズ封鎖により一時的に急騰したことがあるが、その後市況は軟化し、国際石油会社は 1958 年末に一斉に公示価格を引き下げた。中東産油国は、この石油会社の一方的な公示価格の引き下げにより財政収入は多大の損害を被ることとなった。1959 年カイロで開催された第 1 回アラブ石油会議は、石油会社に対して「原油価格の変さらについては、産油国側の意向を事前に聴取すべし」との要望決議を行ったが、その矢先の 1960 年 8 月、Exxon を始めとし、BP その他の大手国際石油会社が再び相次いで一連の中東原油公示価格の引き下げを発表した。このことは産油諸国に強い衝撃を与え、それからわずか 3 週間後の 9 月にはサウジアラビアおよびベネズエラ両国の呼びかけにより、イラン、イラク、クウェートを含めた 5 カ国の関係閣僚会議がバグダードで開催され、共同の対抗措置が討議された結果、共同機構 OPEC の設立が決議されたわけである。その目的とするところは「加盟国の石油政策を調整、統合し、加盟国の利害を個別的かつ集団的に擁護するため、最善の手段を決定し、必要がある場合、加盟国政府に勧告する」にある。加盟資格は石油収入がその国家収入の大部分を占めていることを要件とする。加盟国はその後増え、1985 年末現在では上記 5 カ国にカタール、インドネシア、リビア、アルジェリア、アラブ首長国連邦（UAE）、ナイジェリア、エクアドル、ガボンの 8 カ国を加えた 13 カ国となっている。 (2) 組織・機構：OPEC の組織としては、最高決議機関として加盟国政府代表より構成される総会（Conference）があり、これは OPEC の政策を討議し、その結果、合意に達したものは決議（Resolution）の形で公表される。総会は通常年 2 回開催され、その決議は加盟各国が批准することにより、条約と同様の効力をもつ。決議は全会一致を原則としている。理事会（Board of Governors）は OPEC の業務を管理し、総会の決定を実施する。事務局（Secretariat）はオーストリアの首都ウィーンに常置されており、事務局長の下に 5 部と 2 ユニットが置かれている。その外必要に応じて臨時に設置される特別委員会がある。 (3) 活動の経緯：OPEC 創設以来の 25 年間はおおよそ以下の三つの時期に区分され得よう。すなわち、 (i) 国際石油会社との団体交渉によって税制の改善などは勝ち取ったものの石油価格引上げという目的は達せられなかった雌伏の時期（1960 年 9 月～ 69 年まで）、 (ii) リビアにおける 1970 年代初頭の原油公示価格の引き上げの実現に始まり 1973 年秋のアラブの「石油戦略」の発動による「石油危機」に際して原油公示価格の 1 バーレル 3 ドル台から 10 数ドル台への引き上げ、さらに 1978 年末以降の第二次石油危機を経て 34 ドル原油時代を実現させ、国際政治と経済に大きな影響を与えた存在であった時期（ 1970 年～ 81 年）、 (iii) 原油価格の過度の高騰による世界的な石油需要の減退と、非 OPEC 地域における原油生産の上昇の結果、世界的な石油需給関係の緩和が生じ、原油価格引下げと生産調整を強いられ、カルテル体制防衛に追われるに至った時期（ 1981 年以降）、の三つがそれである。　 (i) OPEC の雌伏期：OPEC は当初、活動の目標を原油価格の維持とその引き上げに置き、国際石油資本との交渉にあたってきたが、価格の現行水準以下への下落については防止し得ていたものの、その引き上げについてはこの時期めぼしい成果を上げ得なかった。OPEC は 1964 年から 65 年にかけての税制改正の交渉のなかで、会社側にロイヤルティの経費化を認めさせる協定を結んだが、この協定は同時に原油公示価格からの値引き控除などを会社側に認めており、この点で原油価格の引き上げという OPEC の当初の意図のざ折を意味するものとなっていた。 その後、1966 年から 68 年にかけて会社側と値引き控除額の漸減について交渉し、1972 年までにゼロとする同意を取り付けるなど、着実な前進もみられた。注目されるのは、1968 年 9 月の第 16 回総会において自主開発、利権参加、過剰利潤の抑制などを含む 10 項目の共通政策の基本原則を打ち出したことで、これはそれまでの 8 年間に育ってきた思想を整理し、その後における OPEC の活動指針となった。（→OPEC の基本10原則） (ii) OPEC の躍進期：1969 年の冬には米国を中心として重油の供給不足の現象が現れたが、翌 70 年 5 月シリアにおいて TAP ラインが破壊され、一時的な原油市場のタイト化が出現した。 この機をとらえてリビアの革命政権はリビアで操業中の Occidental Petroleum に対し生産制限命令などの圧力をかけ、原油価格および所得税率の引き上げに成功した。このことが契機となって、以後数年にわたって原油価格の引き上げと石油資源への支配権の奪還を図る OPEC 諸国と国際石油会社グループとの一連の集団交渉が行われた。 この結果、テヘラン協定（1971 年 2 月）、トリポリ協定（1971 年 4 月）、ジュネーブ協定（1972 年 1 月）、リヤド協定（1972 年 12 月）、新ジュネーブ協定（1973 年 6 月）などの諸協定が締結され、OPEC 側の主張を大幅に受け入れた原油価格、利権料、所得税の引き上げや事業参加が合意ないしは実施される一方、これと並行してアルジェリアやリビア、イラクなどの諸国で相次ぎ石油資産の接収、国有化が断行された。そして第四次中東戦争に際して発動されたアラブの石油戦略によって石油危機が出現していた中で 1973 年 12 月の総会で OPEC は標準原油の公示価格を 11.56 ドル／バーレルとするという決議を行い、世界の経済史の流れを変えたといわれるほどの大きな衝撃を与えた。またこれ以後原油の価格は OPEC が決定することとなり、原油の高価格時代が定着するに至った。 その後小刻みの上昇があった後、1978 年～ 79 年のイラン革命に端を発した第二次石油危機の進行のなかで、原油のスポット取引価格は急上昇を続け、 OPEC はこれに追随して相次いで臨時総会を開いて公示価格を引き上げ、1981 年 10 月以後はついに 34 ドル／バーレルという史上最高値を記録した。その過程で、最大の石油資源国であるサウジアラビアと 2 、3 の追随国はあまりにも急激な引き上げに反対し、1980 年以降の一時期、原油価格の分裂状態が現出される事態となったが、その後、34 ドルの統一価格に復帰した。 (iii) OPEC の混迷期：原油価格の高騰に伴う世界的な石油需要の減退と非 OPEC 地域における原油生産の増加によって 1981 年後半以降原油の生産過剰が急速に表面化し、原油のスポット価格は下がり続け、OPEC 諸国は減産を強いられ、OPEC の決めた公式販売価格は絶えざる値下げ圧力にさらされた。 このため OPEC は、1982 年 3 月の総会で加盟 13 カ国の生産上限を日量 18 百万バーレルとすることで合意したが、その後も市況の軟化は続き、1983 年に入って北海原油の値下げにナイジェリアが追随して単独値下げをするに及んで、OPEC は 1983 年 3 月のロンドン総会において、公式販売価格の 5 ドル値下げ（ 1 バーレル 29 ドルへ）決議に追い込まれた。この会議ではまた合計 17.5 百万バーレル／日という生産上限枠と各国の生産枠が設定され、市場監視委員会（ 82 年 3 月設立）を通じて各国の減産状況を監視することになった。OPEC はその後も長期戦略委員会（ 1978 年設置）における討議、あるいは 1984 年の総会における市場監視体制の強化策の論議など、カルテル維持のための方策を懸命に模索しているが、1985 年 1 月には再び、公式販売価格の 1 ドル値下げ（ 28 ドル／バーレル）を決めた。