かていけっていけいかくずとは? わかりやすく解説

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過程決定計画図

読み方:かていけっていけいかくず
【英】:process decision program chart (PDPC)

概要

新QC七つ道具1つ. システム特性入出力過去履歴依存する場合, あるいは相手出方に応じて対応を変化させる必要がある場合, 現在の状況から最終結末に至る過程生じ得る様々な状況対策ならびにそれらの推移を, 問題解決の手順として有向グラフ描いたもの. システム挙動予測し, 適切な対策模索し, その効果事前に予測して, 最終的に望ましい結果に至るように計画するツール. 危機管理集団意思決定に有効.

詳説

[PDPCとは何か]

 過程決定計画図はPDPC (process decision program chart)と略称され, 問題解決のための手順を有向グラフの形に表わしたものである. システム特性入力・出力によって変化する場合過去履歴依存する場合, あるいは交渉相手競争相手居て相手出方に応じて対応を変化させる必要がある場合などは, システム意思決定者の意図通り制御することが極めて困難である. このような場合でも, 意思決定者は何らかの良い結果もたらすように, 事前に計画立て, 要所々々的確な判断を行う必要性迫られる. PDPCは, 現在の状況から最終結末に至る過程生じ得る様々な状況対策, ならびにそれらの推移視覚化し, 人間を含む複雑なシステム挙動予測し, 最適運用を計画したり, 不測の事態備えようとするものである.

[PDPC起源]

 PDPC日本産まれたORツールである. 1970年代後半, 全国大学学生紛争吹き荒れ, 中でも東京大学学生紛争全国象徴として激烈極めた. 当時, の近藤次郎教授は, 一方当事者として大学学生側交渉する際の道具としてPDPC発案した.

[PDPCによる危機管理ハイジャック事件-]

 具体例として, 国内線旅客機ハイジャックされ場合危機管理考えてみよう. 犯人乗員乗客人質取り, 航空会社に対して人質身代金10億円国外指定口座振り込むことと, このまま国外へ飛行することを要求している.

 このハイジャック事件解決する上で様々な目標考えられが, 主な目標

1. 人命の無事を最優先とし, 乗員乗客早期解放する
2. 国際問題発展しないように, 可能な限り国内解決する
3. 機体無傷帰還させる
4. 犯人逮捕する

優先順であることに異論なかろう. すなわち, 当面緊急事態に対して最良結末が「犯人投降」と「乗員乗客の無事解放」であることは衆目一致するところとなる. したがって, これを目標に, なるべくこの目標から外れないように, 様々な手を打ち, 事態解決図れれば良い.

 ハイジャック発生連絡受けた時点からこの最良結末に至る過程生じ得る様々な状況とそれらに対して想定し得る種々の対策, さらには犯人取り得であろう行動思い描き, それらを図面上にノード(点)として配置し, 状況進行順序時間推移表わすアーク(有向)で結び, 事態全体構造大まかに表わしたものが, 図1である. 人々の対応や偶然事象によって, 発生する状況複数枝分かれするところは, 分岐点表示してある.


図1:ハイジャック事件のPDPC
図1:ハイジャック事件PDPC


[PDPC描き方]

1. 想定される状況対策複雑に絡み合い, 途中経過極めて不確定である場合でも, それらを無視して, システム最終結末, それも最も望ましい結末予見することはそれほど難しくない. PDPCではこの性質積極的に利用し, まず最良結末(目標)を定める.
2. 現在の状況初期状態, 最良結末最終状態として記入する.
3. 次に, 現在の状況から最良結末に至る過程予測する. その間生じ得る様々な状況対策ノードで, またそれらを結ぶ推移アーク表わす. アーク時間の経過状況進行順序表わすが, その長さは必ずしも時間長短意味しない. 現在の状況から最良結末に至る経路を太い線で表わす.
4. 最良結末加えて, 次善場合含めて限られた数の結末追加する. これらの結末に至る過程考えられる種々の状況対策書き加える.
5. 対策, 分岐点, 状況終末とは区別して描き, 合計30程度押さえる.
6. システム変化激しく, 複雑に枝分かれする場合は, あらゆる状況対策のすべてを考慮することは不可能である. このような場合, すべての状況対策を描く必要はない. 状況対策詳細に考慮する必要がある場合には, その時点で別に詳細図描けばよい. 要は現在の状況から最良結末までの大まかな流れ分かり, 悪い結末に至る方向避けられればよいのである.
7. 全体アークが左から右へ, 上から下へと移行するように描く.
8. 状況予想から大きく外れた場合は, 必要に応じて全体修正あるいは描き直す.

[PDPC使い方]

1. 最良結末への経路実現するように, またその経路踏み外さないように, 前もって打つべき適切な対策立てて, システム最終目的達成する.
2. 最良結末への経路踏み外したら, いかにして望ましい経路戻れるかを検討し, 必要な対策立てて, 最終目標達成する努力をする.
3. 不幸にして最良結末に至る経路に戻ることが不可となった場合, 次善あるいは次々善の結末に至るように誘導する.

[PDPC効果]

1. 適切な対策模索し, 最終的に問題最適に解決するのに役立つ.
2. 成功に導くための方策吟味したり, あるいは直面する不測の事態に対して, 種々の対策もたらす結末予測するのに役立つ.
3. 状況遷移確率推定できると, 複数対策用意できる分岐点で, 各対策ごとに最終結末出現確率推測し, 対策効果事前に見極めることができる.
4. 状況が望ましい方向進んでいるのか, 逆に悪い方向進んでいるのかの診断に役立つ.
5. 意思決定者やシステム設計者が頭の中で漠然と捉えているシステム全体構造明示化できる.
6. 複数意思決定主体関わる集団意思決定場合, 個々意思決定者の認識違い視覚化できる. これにより, 複数意思決定者間でコミュニケーション図られ, 互いに知恵出し合うことで, より良い決定に繋がる可能性が高い.

[PDPC特徴]

1. 極めて主観的であり, 意思決定者の強い意思決意を表わしたものである.
2. 作成するのに特段事前準備必要ない.
3. 予測と対策両方同時に考慮することが可能.
4. 同時平行的に進行する現象を扱うことが可能.
5. システム特性入出力過去履歴依存するシステムを扱うことが可能.
6. 交渉相手や偶然事象依存するシステムを扱うことが可能.
7. 機械電気などのハードシステムの故障対策最適運用, あるいは最適運用実現するシステム設計利用可能.
8. システム動的変化見通し, 適切な数学モデル構築するのに利用可能.
9. 情報不足している場合の多段決定に役立つ(情報が十分得られる場合動的計画法良い).
10. PDPCは, 一見するとPERT (program evaluation and review technique)に似ているが, 以下の点でPERT異なる.



参考文献

[1] 近藤次郎, 『オペレーションズ・リサーチ』, 日科技連出版社, 1981.

[2] 近藤次郎, 『システム分析』, 丸善, 1983.

[3] 雅夫他, 『オペレーションズリサーチ』, 朝倉書店, 1989.




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