かこいのはらいせき

国指定文化財等データベース

栫ノ原遺跡

名称：	栫ノ原遺跡
ふりがな：	かこいのはらいせき
種別：	史跡
種別2：
都道府県：	鹿児島県
市区町村：	南さつま市加世田村原
管理団体：
指定年月日：	1997.03.11(平成9.03.11)
指定基準：	史1
特別指定年月日：
追加指定年月日：
解説文：	栫ノ原遺跡は、薩摩半島の西側にあり、北西は東シナ海に面した加世田市の市街地東南部に位置する。独立丘陵上に立地し、縄文時代草創期から弥生・古墳時代を経て中世の尾守城に至る複合遺跡である。 　この独立丘陵に市の区画整理事業が計画され、市教育委員会によって平成元年～５年に事前調査が実施された。最終段階の平成４・５年になって台地北西部の約４，０００平方メートルの範囲から縄文時代草創期の集落跡が発見され、その重要性によって保存されることとなった。 　本遺跡は、万之瀬川と加世田川の合流地点の西側に位置する標高約３８・４メートルの小高い丘陵上に立地する。丘陵は、シラス台地の上に新期火山灰が堆積したもので、縄文時代草創期の集落が広がる台地北西部は南から緩く北に傾斜する地域である。約１１，０００年前に桜島から噴出したサツマ火山灰によって覆われ、遺跡の残された年代を確実に示すとともに遺跡を良好に保存していた。西側斜面に近い遺跡の西側には、溶結凝灰岩の板石を舟形に組んだ長軸約７５センチメートルの舟形配石炉２基を含む配石炉４基、焼け礫が径１メートルから２メートルの円形の範囲に密集した集石遺構２２基、土坑８基などが構築されていた。１基のみ確認調査した土坑は、長さ２メートル、幅１メートル、深さ約４５メートルほどの長楕円形土坑の底部から高さ約８センチメートル、横約３３センチメートルのトンネルが、隣接して掘られた径７０センチメートルほどで深さ４２センチメートルの円形土坑に向かって斜めに上がるように長さ約２９センチメートル掘りぬかれたもので、長楕円形土坑の底部には焼け土と思われる部分と炭粒が目立ったところが確認された。ほかの土坑も平面形から見て同様な構造のものと思われる。これらは煙道付炉穴と呼ばれ、薫製用の施設と考えられている。 　調査区の全体からは、隆帯文土器片が、１，０００点以上発見され、石鏃７点、磨製石斧１４点、打製石斧、磨石、石皿、スクレイパーなど多量な遺物が出土している。隆帯文土器は、指頭によると思われる刻みをもつ幅約１センチメートルの隆帯を２条から４条口縁部に巡らし、胴部に屈曲をもつものもあるが、底部は平底であるらしい。磨製石斧には、打製と敲打によって成形され、体部中央のやや上部両側に抉りをもつもの、頭部片面に段をつくりだし刃部を丸鑿状に研磨したもの、縄文時代に普遍的な全面を研磨した定角式のものまで発見されている。縄文時代に普遍的な土器・石鏃・磨石や石皿、各種の磨製石斧が普及している事実は、中小型獣の狩猟、堅果類の粉食など植物性食料の利用、森林の伐採や木材の加工など縄文時代的な生業・食生活などの開始を示している。 　近年、南九州地方では縄文時代草創期の遺跡が多数発見され始め、竪穴住居、貯蔵穴、底部に杭跡をもつ陥し穴、そして本遺跡で発見されたような各種の遺構や遺物も発見され、すでに定住生活を満たすための施設と道具類が開発されていたことが明らかになってきた。最終氷期の終末に向かって急激に温暖化・湿潤化し、縄文時代的な自然環境が列島の南部から整うにつれて、新たな環境に適用し始めた実態を良好に示している。草創期としては規模が大きく、多量な遺物が発見された本遺跡は、わが国に特徴的な縄文文化の南からの始まりの状況を雄弁に物語り、わが国の歴史を正しく理解するうえで欠くことのできない遺跡である。よって史跡に指定し、その保存を図ろうとするものである。

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