天の川
『天稚彦草子』(御伽草子) 天上世界の鬼が、息子・天稚彦(天稚御子)と彼を慕い天へ上って来た妻との、月に1度の逢瀬を許す。ところが妻はそれを「年に1度」と聞き違える。鬼は瓜を打ちつけ、そこから天の川が流れ出る。天稚彦と妻は、彦星・七夕(織姫)となって、年に1度だけ、7月7日に逢うことになった。
『牽牛星と織女星』(中国の民話) 牛飼い男が、地上に降りた織女を捕らえて、妻にする。織女は男女2児を産んだが、3年後、西王母が来て、織女を天へ連れて行く。牛飼いがあとを追うと、西王母は、牛飼いの前に天の川を作って、織女との間を隔てる。織女は「毎月7日に逢いに行くわ」と叫ぶ。牛飼いは「毎月7日」を「7月7日」と聞き違え、そのため、年に1度しか逢えなくなった〔*牽牛星のそばに小さな星が2つあるのは、織女との間の2児だ〕。
『牛郎と織女の物語』(中国の神話・伝説) 牛郎星(わし座のアルタイル)と織女星(こと座のベガ)は互いに愛し合い、男の子と女の子を1人ずつ授かった。しかし西王母が、髪飾りで空を引っ掻いて広い天の川を作り、牛郎と織女を両岸に引き離した。西王母は、年に1度だけ7月7日に2人が逢うことを許し、その日には、たくさんの鵲(かささぎ)が天へ飛び立ち、2人のために天の川に橋を架ける。
*一年に一度、「女護が嶋」の女と「男の嶋」の男の交わり→〔性交〕9。
『雪国』(川端康成) 駒子は島村に「1年に1度来る人なの?」と問い、「1年に1度でいいからいらっしゃいね」と言った。冬の夜、2人は天の河を見上げる。裸の天の河は夜の大地を素肌で巻こうとして、すぐそこに降りて来ている、と思えた。火事騒ぎの混乱の中(*→〔狂気〕4)、島村は駒子のそばへ寄ろうとするが、男たちに押されてよろめく。踏みこたえて目を上げた途端、さあと音を立てて、天の河が島村の中へ流れ落ちるようであった。
『天の川は聖母マリアの乳の川』(アルゼンチンの民話) 聖母マリアが幼な子イエスにお乳を飲ませていた。幼な子は歯が生え始めていて、おっぱいを噛んだ。聖母があわてて幼な子を胸からはずすと、お乳がほとばしり、天に乳の川ができた。
『ギリシアの神話―英雄の時代』(ケレーニイ)第2部第1章の2 女神ヘラが眠っている時に、ヘルメスが赤ん坊のヘラクレスを天上の彼女の部屋へ連れて行き、乳を吸わせた。ヘラはあまりの痛さにヘラクレスをはらいのけると、乳がほとばしって、天の川が生じた。
★4.灰が天の川になる。
星を作った少女(アフリカ、ブッシュマンの神話) 大昔、天には星が1つもなく、夜空には月が光っているだけだった。1人の少女が「広い空に、お月さまだけではかわいそう」と考え、家のいろりの灰をつかんで、繰り返し空へ投げ上げる。灰は風に吹かれて昇り、ひとすじの帯のように空に広がった。これが天の川の始まりだ。次に少女は木の根をいくつも空へ投げ、それが星になった。
*土が天の川になる→〔太陽と月〕10の『天体で遊ぶイエス』(ブルガリアの民話)。
天上にかかった光の橋 昔、ズラミスとサラミという夫婦がいたが、死後2人は天に昇って別々の星となったため、逢うことができなかった。そこで2人は、天上界にあるかすかな光のもやを集め、千年かけて光の橋(=天の川)を完成させた。ズラミスとサラミは、光の橋を両端から渡ってシリウス星のところで出会い、仲睦まじく暮らした(フィンランドの伝説)。
『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治) 丘の上にいたジョバンニは、気がつくと軽便鉄道の車室に座っており(*→〔旅〕3a)、前の席にカムパネルラがいた。もうすぐ11時で、白鳥の停車場に着く手前だった。天の川の左岸沿いの線路を、列車は南へ南へと進んで行く。白鳥座の北十字、アルビレオの観測所、鷲(わし座)の停車場、蠍の火(さそり座)を経て、南十字(サウザンクロス)へは次の第3時頃に着いた。さらに進んで石炭袋の近くまで来た時、カムパネルラの姿が消えた〔*第1次稿~第3次稿では、石炭袋を過ぎて、マジェラン星雲の見える所まで行く〕→〔乗客〕4。
『剪燈新話』巻4「鑑湖夜泛記」 元の天暦年間(1328~1329)のこと。初秋の夕暮れ時、成令言が鑑湖(浙江省にある湖)に舟を浮べ、天の川を仰いでいた。すると舟が自然に動き出し、次第に速力を増して、人間世界ではない所へ着いた。そこは、すがすがしい光に満ち、ぞっとするほどの寒さだった。冠をつけ白絹の衣を着た織女が出迎え、「ここは天の川です。人の世から8万里以上離れております」と教えた→〔女神〕1。
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