「童顔」を含む用例
・田中貢太郎 蛾 (青空文庫)
には樺色の杉板に背を凭せるやうにして二人の客が話してゐた。一人は髪も頬髭もむしやむしや生えた童顔の太つた男で一人は背のひよろ長い神経質らしい顔をして長い髪の毛を綺麗に撫でつけた若い男であつた。 浪花節の若衆の前に立つてゐたお菊ちやんが二人の前に来た。童顔...
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・佐藤垢石 岡ふぐ談 (青空文庫)
に、わが輩の顔の色沢を見給え、青年からさらに遡り童顔に等しかろう。どうじゃ、わが輩の腕の筋肉の盛り上がりよう。 ところで貴公、貴公は先年来、猫を常食にしているというが、いままでに何頭ほど食ったかな、三十...
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・寺田寅彦 二十四年前 (青空文庫)
( ざんまい ) にはいっているようなふうに見えた。他の多くの演奏者と対比した時にいっそう何かしら全くちがったいい感じがした。 まっ黒なピアノに対して童顔金髪の色彩の感じも非常に上品であったが、しか...
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・田中貢太郎 雨夜詞 (青空文庫)
いち北村と云ふ家もなければ、何所へ行つたのかさつぱり判らなかつた。しかし客には失踪したとも云へないので、聞く者があると、 「芝の親類へお嫁に行つたんですよ、」 と云つてゐた。ところが或る雨の降る静な晩、時たま店へ来る童顔...
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・正岡容 艶色落語講談鑑賞 (青空文庫)
ス以外の遊客に支障を生じるからだともまたさらに原さんはつけ加えた。 いくつかの曲が終わって、場内が急に明るくなり、ダンサーたちは花の散るように四散していった。終了時刻の午後八時がきたのである。 「先生の好きだとおっしゃる女性は見つかりませんか」 童顔のA氏が、その...
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・人外魔境 水棲人 (青空文庫)
ザンのオジサンという子供の人気もの——折竹にはそういう反面もある。童顔で、いまの日本人には誰にもないような、茫乎(ぼうこ)とした大味なところがある。それに加えて、細心の思慮、縦横の才を蔵すればこそ、かの世界の魔境未踏地全踏破という、偉業...
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・芥川龍之介 文章 (青空文庫)
用語じゃありません。小説の中にあった言葉なんです。」 中尉の出した紙切れには何か横文字の言葉が一つ、青鉛筆の 痕 ( あと ) を残している。Masochism ——保吉は思わず紙切れから、いつも 頬 ( ほお ) に赤みのさした中尉の童顔...
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・北原白秋 白帝城 (青空文庫)
根の色をした鳶の子がちやうどこの対ひの角の棒杭に止つてゐたのを観た七八年のことを思ひ出したのである。私はあの時 木菟 ( みみづく ) かと思つた。ちかぢかと寄つて見ると、鳶は頭のまるい、ほんとに罪のない童顔の持主であつた。 さうだつた、これが針綱神社だつたと私はまた微笑した。 あの...
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・堀辰雄 木の十字架 (青空文庫)
して雪の深いなかに一人でそのお守りをしているのもなかなか愉しい気もちがいたします。……」 この雪に埋まった高原にある小さな教会の管理をしている、童顔の、 律儀 ( りちぎ ) そうなHさんはそんな事を私に言ったが、こういうごく普通の信者に過ぎないような人にとっても、こちらで 他所者 ( よそ...
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・さようなら (青空文庫)
が迫るとこっそり田舎に帰って死んでしまった。ぼくはそんな彼に最後まで、「さようなら」を云えず、彼もぼくたちに、「さようなら」をいわず、永遠に別れることとなった。それ故、ぼくは十五年後の今でも、ふッと川合が生きていて、そのスラリとした長身に青白い童顔...
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・海野十三:国際殺人団の崩壊 (青空文庫)
軍技術本部長の蓑浦(みのうら)中将や、テレヴィジョンで有名なW大学の工学部主任教授の土佐博士の丸い童顔や、それからそれへと、我国科学界の最高権威を残りなく数えることができるのであった。勿論(もちろん)、その...
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・国枝史郎 天草四郎の妖術 (青空文庫)
上に老人がいて何か喋舌っているのでした。 白い頭髪は肩まで垂れ雪を瞞く長髯は胸を越して腹まで達し葛の衣裳に袖無羽織、所謂童顔とでも云うのでしょう 棗 ( なつめ ) のような茶褐色の顔色。鳳眼隆鼻。引き縮った唇。其老...
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・国枝史郎 銅銭会事変 (青空文庫)
見ると弓之助の正面に、一人の老武士が腰かけていた。雪白の髪を総髪に結んだ、 無髯 ( むぜん ) 童顔の威厳のある顔が、まず弓之助の眼を惹いた。左の眉毛の眉尻に、豌豆ほどの 黒子 ( ほくろ ) があった。 「はてな?」と弓...
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・坂口安吾 逃げたい心 (青空文庫)
つくやうに言ひだしたのだ。 蒲原氏はもう昔からどういふものかこの几帳面な会社員が気に入らなかつた。一喝をくふと 吃驚 ( びっく ) りして、孔のあくほど正義派の会社員を瞶めてゐたが、やがてまるまるとした童顔...
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・佐藤垢石 岩魚 (青空文庫)
皮の甚兵衛を着て、もんぺと 雪踏 ( せった ) をはいているのである。賢彌に近づくと、 「お前は賢彌じゃろうな、するとお前はわしの 曾孫 ( ひまご ) じゃ」 白髪の老人であるが淡紅の童顔に、声も若い。突然、こう...
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・寺田寅彦 変った話 (青空文庫)
の電車の道中に知らず知らず全巻を卒業してしまったのである。 不思議なことには、このドイツ語で紹介された老子はもはや薄汚い唐人服を着たにがにがとこわい顔をした貧血老人ではなくて、さっぱりとした明るい色の背広に暖かそうなオーバーを着た童顔...
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・小栗虫太郎 「太平洋漏水孔」漂流記 (青空文庫)
に奇談もなにもないものは、聴いても仕様がないよ」 すると、折竹がいきなり童顔をひき締めて、オイと、一喝するように呶鳴った。 「おいおい、話というものはしまいまで聴くもんだ。僕が、何百、何十万年秘められていたかもしれぬ『太平...
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・小酒井不木 メデューサの首 (青空文庫)
たび湯滝に打たれると、念入りな落書きもみごとに洗い去られてしまいました。 ある日の午後、わたしたち三人が例のごとく身体じゅうを 面妖 ( めんよう ) な墨絵に包まれて、笑い興じながらお湯にやって行きますと、一人の五十ばかりの白髪童顔...
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・石川啄木 詩 (青空文庫)
毒嘴 ( どくはし ) の鳥。 鳥 啼 ( な ) きぬ、二度。——いかに、其声の 猶 ( なほ ) 終らぬに、 何方ゆ現れ来しや、幾尺の白髪かき垂れ、 いな光る剣 捧 ( ささ ) げし童顔の 翁...
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・渡辺温 嘘 (青空文庫)
倍おしゃれな井深君は何時もきまって中山帽をかぶり立派な黒服を着て出かけるのだった。——断っておくが、井深君の齢は、そんな 身形 ( みなり ) をしても、未だ三十二歳には少し間があって、しかもその実際よりも更に三つ四つ若く、つまり 弱冠 ( はたち ) そこそこにしか見えないような童顔...
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・中戸川吉二 イボタの虫 (青空文庫)
つしやいまし……」 不意に、格子障子があけられて、奥からゴマ塩頭のツルツルと滑つこい皮膚を持つた六十あまりの童顔のぢいさんが、店へ出てきて、私の前で手をついて、 屁 ( へ ) つぴり 腰 ( ごし ) をし...
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・豊島与志雄 田舎者 (青空文庫)
は感歎の念でまた見直すのだった。 ところが、或る晩、岸本が少々酔って、帰りかけると、扉の外に「若禿」がよっかかるようにして立っていた。童顔の頭が禿げかかって近眼鏡をかけてる、一寸胡散にも利口にも見える背広の中年の男で、いつ...
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